俺、転生先はチートハーレムって言ったよね??   作:むにゃ枕

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02.ポンコツジオン名家お嬢様少佐

 イッシュ軍曹からこの部隊についての説明を受ける。フリューゲル・ティルピッツ少佐は、所謂ジオン名家出身だそうだ。

 両親を交通事故で亡くしており、それがザビ家による謀略であったと信じ込んでいる。ティルピッツ家は叔父が管理しており、フリューゲルは叔父がジオン軍に寄贈した金により少佐の階級を得たという。

 

 もともとフリューゲルは、ジオン幼年学校に通っており幼年学校を卒業してから少佐となったらしい。

 

「今の話を聞くと、俺には叔父がフリューゲルを厄介に思って、騙して軍に入れたようにしか見えないけどな」

「そ、そうだったのですか!? 流石隊長殿です! 自分にはそんな発想はありませんでした!」

 

 イッシュ軍曹が目を輝かせる。褐色肌とショートカットが似合う彼女は、外見から受ける印象以上に素直なのだ。

 

「飽くまで穿った見方だ。その交通事故が本当にザビ家の陰謀で叔父も正義の心に燃えているのかもしれない」

「な、なるほど」

「人生色々ってことだよ」

 

 フリューゲルお嬢様は、ほぼ戦場経験のない素人のくせに危険な任務を求めそうだ。放置したらこの部隊すぐに全滅しそうだな。

 

「隊長殿は物知りです」

 

 めちゃくちゃキラキラした目で俺を見る軍曹。彼女は、ちょっとそういうところがある。アステロイド出身で幼少期に色々あったのか、自己肯定感が低いのだ。

 俺に依存してるところが有るんだよな。頼りになる部下ではある。デートくらいならしたい。それ以上は、この戦争を生き残ったら考えようかな……

 

「あ〜。お二人さん、イチャついてます? オレは出直した方が良いッスか?」

「いや、気にしなくて良い。久しぶりじゃないか。マクレーン」

「中尉とまた組めて嬉しいッスよ。いやー。マジで嬉しい」

 

 マクレーンは軍曹から曹長に出世していた。チンピラみたいな風体の男だが、コイツも俺の元部下だ。ルウム以来会えていなかった。

 

「モビルスーツ小隊は俺たちだけか?」

「そっすね。オレらだけみたいです」

「あの少佐ちゃん、お前はどう思う?」

「ティルピッツ少佐っすね。オレは好きですよ。少佐のポケットマネーから色々出してくれるんで」

 

 なるほど。俺も金払いが良い上司は好きだ。ジオン名家ってのは金持ちだな。おい。

 

「マクレーン曹長…! 自分が、隊長殿と話していたのです! 隊長殿は女の子が好きなんです!! うぅ〜」

 

 ばっと腕を広げ、よく分からないポーズでう〜う〜唸る軍曹。

 

「なんだそりゃ? 小動物の威嚇?」

「隊長殿は自分とデートに行くのです! だから、マクレーンは隊長殿と仲良くしないでください!」

「ヤダね。男同士の友情ってヤツだ」

「むむむ」

 

 仲良しじゃん。君たちそんなに仲良かったっけ? ちょっと疎外感を覚える。

 

「それで、俺たちのモビルスーツはどうなるんだ? ザクか?」

「いえ、グフっすね」

「グフ? あれは重力戦線で使われている地上用だろ?」

「宇宙用に改修した試作機っす」

「……おい、マジかよ」

「自分はあの機体は乗りやすいと思います! 敵を近接で叩き潰せば良いので、楽であります!」

「オレは正直言ってザクの方が良いな……イッシュ軍曹くらいだろ。そんなこと言うの」

「ええ〜!? そんなこと無いですよ! 隊長殿はどっち派ですか?」

「見てみないと分からん。乗った感覚も重要だしな」

 

 ウキウキしているイッシュ軍曹に、腕を引っ張られ格納庫へ向かう。

 

「げっ……」

 

 そこにいたグフを見て、俺は思わず溜め息を吐いてしまった。グフ・カスタムですらない。単なるグフだ。

 

「コイツを入れたバカの顔が見たいな」

ぁっ、隊長殿……

 

 そこに居たのは少尉の階級章をぶら下げたメスガキだった。飛び級のメカニックだな。徽章がある。

 

「ほうほう。新任の中尉は随分偉そうだね。ボクの顔がそんなに見たいかな? この天才エンジニアであるニカ・メカニカの顔が」

「天才エンジニア? 稀代の大バカの間違いじゃなくて?」

「……喧嘩を売っているのかな? 君の機体を整備するメカニックに向けてわざわざ喧嘩を売るなんて、素晴らしいパイロットだね。ボクは寛大だから、謝罪を受け入れてあげよう」

 

 宇宙の戦闘でグフなんてどうするんだよ。フィンガーバルカンやヒートロッドなんて宇宙で本当に使えると思うのか?

 それに、補給をどうするつもりなのだろうか? 潤沢に消耗品やパーツを所持しているのならば構わないが、ぱっと見では、そのような物は見当たらない。宇宙でグフの製造をしているなんて話は聞いたことがない。

 

 兵器は製品である。モビルスーツもその例に漏れない。なので、稼働率を高めるためには故障などに備えてパーツや消耗品を用意する必要がある。

 パーツがなければ動かない。単純な話だ。

 

「メカニカ少尉。発言は取り消す。失言だった。済まない」

「むっ。なかなか素直だな。分かれば良いんだ」

 

 俺がすんなり謝ったので、ニカ・メカニカは気勢を削がれたらしい。

 

「俺は貴官が賢明なメカニックであり、過酷な宇宙環境においても3機のグフを常に維持できると信じている」

「当然だね。ボクは天才だから」

「そうか。俺は心配性でね。代替パーツであったり、交換が必要な消耗品については、心配しなくて良いんだな。重力戦線から引っ張ってくるなんてこともしなくて大丈夫なんだよな?」

「…………」

  

 少尉は黙ってしまった。

 

「黙っていては分からない」

「……………………」

「航宙路が封鎖されたことで、部品が届かなくて、機体が完璧な状態じゃないとか、動かないなんて事態は生じないんだよな?」

「と、当然だろ! ボクがなんとかする! グフとザクには互換性が…………あん…まり、ないけど……パーツはザクのものを使えば…なんとか……それに、航宙路は確保されるものだ。ジオンが勝っている分には何の問題もない。中尉は敗北主義者だ。ふふーん。そう、君は敗北主義的なんだ」

 

 話題を逸らしたな。つまりグフの部品は重力戦線からの輸送頼りだったらしい。

 

「現に連邦軍が航宙路を脅かしている。それに重力戦線の戦況は拮抗している。連邦軍の反攻作戦により兵站線が切られることも考えられる。俺はモビルスーツ小隊の小隊長として隊の安全と充足を考えて発言している。メカニックとしての君の見解はそれで良いのか?」

「ひん……あの、ごめんなさい。ひん。うぇ〜ん」

 

 泣いちゃった。すごく居た堪れない。え? 俺が悪い?

 

「隊長殿! デリカシーが無いであります。ニカ少尉は悪い子じゃないのです。ただ、ちょっと難しい子で……」

 

 イッシュ軍曹、内心ちょっと少尉のことを苦手に思ってるな。

 

「あーあ。女の子泣かした。中尉、そんなんだから振られるんすよ」

「誰が誰に振られたって?」

「冗談っすよ。冗談」

 

 居た堪れない空気になってしまった。

 

「これは何の騒ぎなのかしら!? 中尉、またあなたの仕業なの? ここは私の指揮下にある場所よ。あなたが次席指揮官であっても勝手は許せないわ」

 

 どうやら立ち直った少佐が俺を追ってきたらしい。

 

「許さない、ですか。なら、どうするんです? 軍法会議にでも掛けますか? それとも私刑ですか? そんなことをされたら、俺は親衛隊にこの部隊のことをチクリますよ」

「……見損なったわ。あなたは私と志を同じくする人だと思っていたのに」

 

 残念ながら、俺はダイクン派じゃないんだ。そして少佐の復讐にも興味はない。元部下に未練はあるが、この部隊には全く思い入れがない。

 

「地球の貴族ってやつは、物事が拗れた時に決闘ってヤツをしたようですよ。ジオン名家に、そんな文化は伝わってますか?」

「少なくともティルピッツ家には伝わっているわ。良くてよ。その決闘、フリューゲル・ティルピッツの名により受けて立ちましょう」

 

 やる気だね。お嬢様。

 

「へえ。案外胆力がお有りだ」

「それでルールはどうするの?」

「俺はモビルスーツパイロットです。しかも単なるパイロットじゃない。22機を撃墜したエースパイロットです。ハンデとして俺は作業用の旧ザク(05)を借ります。

 この部隊を壊滅させれば俺の勝ち。俺の05を落とせれば少佐の勝ちで良い」

「あなたが勝ったらどうするの?」

「俺は、この部隊を見捨てて原隊に戻ります」

「なら、負けたら私に従いなさい」

 

 自信満々に言い切るお嬢様。勝つ気は満々らしい。05に乗るのは久しぶりだ。モビルスーツに乗れるとなると、年甲斐もなくワクワクしてしまう。

 こればかりは、幾つになっても収まりそうにない。

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