月は無慈悲な夜の女王 ―― TV版25話からの初期プロット√のエヴァンゲリオン 作:◆QgkJwfXtqk
Thou art more lovely and more temperate:
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer’s lease hath all too short a date;
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature’s changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow’st;
Nor shall death brag thou wander’st in his shade,
When in eternal lines to time thou grow’st:
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.
Act.A-1 「夏への扉」
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沈鬱な雰囲気に沈んでいるNERV本部会議室。
戦術作戦部作戦局と技術開発部技術開発局による会議であった。
主題は、壊滅状態となっている戦力 ―― エヴァンゲリオン部隊の再建に関する事であった。
エヴァンゲリオン零号機が先の
エヴァンゲリオン弐号機は、その専任操縦者である惣流アスカ・ラングレーが搭乗不能の状態に陥っている。
使える
戦力は事実上、7割失われているのだ。
軍事的に言えば壊滅状態と判定される状況であった。
新たなエヴァンゲリオンの建造、そして早期の本部への配備。
戦術作戦部作戦局としては、ソレを強く欲していた。
だが、技術開発部技術開発局は同意が難しいとした。
「人も金も無いのが実情ですね」
赤木リツコに代わって技術開発部技術開発局局長と成った男が、頭を掻きながら戦術作戦部作戦局側の主張を否定する。
続けて言う。
「やれと言えばやれますよ? ですが時間は極めて掛かります。補正予算では追い付かない来年度予算でしか出来ない所があります」
金を言う技術開発部技術開発局局長。
生々しくも現実の話であった。
NERV本部がエヴァンゲリオンを最後に建造したのは10年以上も前のエヴァンゲリオン初号機であり、その治具や技術者等は各支部でのエヴァンゲリオン建造支援に譲渡され、或いは移管/移籍してもいるのだ。
改めてNERV本部で建造するとなると、その周辺への投資が莫大なモノとなる事が予想されていた。
故に、早期の戦力回復手段として、新規に
「マルドゥック機関だ! マルドゥック機関に6人目を探して貰った方がまだ早い!!」
「見つける事が出来たとして、素人だぞ!?
戦術作戦部作戦局の反論も道理であった。
第16使徒戦を見ろと言う。
エヴァンゲリオン弐号機を筆頭に、好調とは言えない状態であったが、それでも歴戦である3機で挑んで手痛い反撃を喰らっていたのだ。
新しい
誠にもって道理であった。
甲乙つけがたい議論を、戦術作戦部作戦局を預かる葛城ミサト二佐は醒めた目で見ていた。
疲労がべっとりと張り付いた顔で、只、目だけが薄暗い会議室にあってギラギラと浮かび上がっていた。
結論を得られぬ儘に終わった会議。
その事を糊塗するかのように、取り合えずの態で綾波レイとエヴァンゲリオン弐号機のシンクロ試験が決定していた。
三々五々と足早に自分の仕事に戻っていくNERVスタッフにあって、伊吹マヤは俯いたままにふらつく様に歩いていた。
その様は、まるで幽鬼めいた風であった。
先代の技術開発部技術開発局局長であった赤木リツコが失踪して以降、仕事はしていても嘗ての朗らかさは何処かに置いてきた風であった。
だが、誰も関わろうとはしなかった。
誰にも、技術開発部のスタッフに余裕のある人間は居なかったのだ。
そしてもう1つ。
伊吹マヤは赤木リツコの愛弟子と目されていたが為、新しい技術開発部技術開発局局長が赤木リツコ的な路線を否定 ―― 技術開発方針の刷新を図っている現状では、危険な爆弾と見られている部分があったのだ。
誰であれ、
伊吹マヤは自分の置かれた状況を理解していた。
周りの目を把握していた。
だが、赤木リツコの失踪から心の活性を失った今、只、それらを受け入れていた。
先輩。
上司。
師。
伊吹マヤにとって赤木リツコは言葉で言い表せない相手であったのだから。
「おいおい危ないって」
だが、そんな空気をぶち壊す様な軽い調子の声が掛けられた。
同時に、体がポスっと何かに当たったのが判った。
「青葉さん?」
ぶつかったのは人 ―― 青葉シゲルであった。
気が付けば伊吹マヤは第2発令所近くの、喫茶コーナーにまで歩いてきていたのだ。
ドリンク類や軽食の自動販売機とベンチが並べられているだけの無機質な場所であったが、第2発令所で勤務する人間にとっては憩いの場所だ。
その入り口でぶつかったのだった。
「ほら、甘い奴でリフレッシュすると良いさ」
青葉シゲルが差し出した炭酸ジュースを両手に持った伊吹マヤは、黙って俯いていた。
封を開ける事無く、両手にもって俯いている。
疲れ。
特に、精神的な疲れがまだ20代前半の若い体を蝕んでいるのだ。
その事を何となく理解している青葉シゲルは、黙って隣に座って言葉を待っていた。
何かを他人に言う事で、吐き出す事で救われる事もあると思っての事であった。
暫しの時間。
そして、ポツリと口から言葉を漏らす。
「みんな、怖いんです」
そう言って先の会議の様相を言っていく。
人を人とも思わない物言い。
まだ子供なのにエヴァンゲリオンに乗って戦ってきてくれた、傷ついてきたアスカや綾波レイを、碇シンジを
使える。
使えない。
「NERVも人類も、使徒と勝つためにはエヴァを使わなきゃならないし、エヴァを動かすにはシンジ君たちが乗ってくれないと駄目だって、重い負担を背負わせてるって__ 」
大人が子供に負担を強いているのに、その事を恥じる事無く、使えるだの使えないだのと偉そうに言う。
それが耐えられなかったのだ。
自分がソレを止めらない事が、そしてそんな人間たちの中に居る事が耐えがたかったのだ。
「NERVって、人を護る為の組織って言ってますよね。なのに、そこにシンジ君たちが居ないんですよ」
食いしばった歯の隙間から押し出す様に言う伊吹マヤ。
その姿に青葉シゲルは何も言えなかった。
薄汚さが許せないのは潔癖だから、そんな風に言うのは簡単かもしれない。
諭すのは楽かもしれない。
だが、それが全てだと思える程に青葉シゲルは傲慢になれなかった。
「………辛いな」
只、やるせなかった。
自分の手元にある缶コーヒーを握る。
ギタリストらしい細い指に込められた力では、スチールの缶はびくともしない。
これが現実だ。
スチール缶から言われている様な、そんな益体も無い事を考える青葉シゲル。
と、シンジとアスカを家族だと言って憚らなかった人物を思い出す。
「そう言えば葛城さんはどんな感じだった?」
「葛城さん。葛城さんも、ナニか怖かったです。でも__ 」
そこで口ごもった伊吹マヤ。
小さく、本当に小さく口の端を曲げて笑った。
「アスカを守ってました」
それは漆黒めいた暗闇の空に輝く星を見た ―― そんな笑いであった。
「ふん」
不機嫌さを隠そうともせず、葛城ミサトは技術開発部技術開発局の現局長から渡された資料を絞り上げていた。
ホチキスで纏められ、表面には
その表面には
「胸糞の悪い話ですね」
「全くだ」
資料を見た誰もが顔を顰めていた。
「NERVの為、人類の為__ 綺麗事を言う気はないですけど、限度ってモンがありますよ」
葛城ミサトの副官、日向マコトが心底から耐えられぬと言い切った。
それ程のモノであったのだ、アスカに行われていた処置と言うモノは。
現場最高指揮官である戦術作戦部作戦局たる葛城ミサトですら知らなかった処置、それは赤木リツコから代わった新しい技術開発部技術開発局局長が
それは、現時点でギリギリにエヴァンゲリオンの起動下限には達しているアスカに特殊な向精神薬を投薬する事で生理的方向から精神状態を固定しようとする内容であった。
精神状態を
簡単に書かれているが、ソレは
精神状況が改善してしまえばエヴァンゲリオンに完全に乗れなくなってしまう ―― そんな危惧故の処置であった。
NERVは
だが使徒と言う存在と戦争をするという必要性から準軍事組織であった。
エヴァンゲリオンに乗る駒、エヴァンゲリオンを操る為の
その事を葛城ミサトら戦術作戦部作戦局のスタッフとて自覚はしていた。
非情な決断を行い、子供たちに強いる事があると認識もしていた。
ある種の諦観で人類の存続を掛けるというのは綺麗事ではないと受け入れていた。
自分自身を責める ―― エヴァンゲリオンに乗る為に自分を追い込んでいるアスカの姿を見ていた者たちは等しく激怒していた。
「取り敢えず
「そうね。正直、
「最初のロスト、相当に臭いですからね」
「あの子の身に何も無かったのは良かったけど、
籠の鳥である
その実として花形職場であった戦術作戦部作戦局への反発だったのだろう、と。
裏方として
出来て当たり前だからだ。
だから、自分たちの重要性を見せようとしたのだろう、と。
保衛部の部長と会話した際、そういうニアンスを葛城ミサトは感じ取っていたのだ。
そんなバカバカしいセクト主義めいたナニカに子供たちを巻き込む積りは無かった。
とは言え葛城ミサトも、保衛部との全面対立は想定していたのだが、後々に別の意味で少し後悔する羽目になるとは、神ならざる身故に判る筈も無かった。
世の中と言うモノは実に儘ならざるモノであると言えた。
アスカが見つかった。
その一報受けたシンジは、収容されているという病院へと急いで向かった。
うつむき加減、口元は引き締まっている。
自分が行ってどうするのか。
喜ぶだろうか。
喜ばないんじゃないのか。
むしろ、帰れと叫ぶんじゃないか。
そんな自問自答を繰り返していたのだ。
アスカが望んでいるのは加持リョウジなのだ。
でも、シンジには違う。
失踪した前日にも憎々し気に睨まれた事は記憶に新しい。
そんな自分が顔を出しても喜ばないかもしれない。
否。
喜ばないだろう。
内省の、自分自身を責める自分の声が頭の中で木霊する。
挫けそうになる。
だが、だがそれでもシンジはアスカに逢いたいという気持ちが抑えられなかったのだ。
自分が求められるとは思っていない。
自分に何かが出来るかなんてうぬぼれても居ない。
それでも、一目でも無事なアスカを見たかったのだ。
行きなれたと言って良いジオフロントの特別病院。
その、特別室にアスカが居た。
入り口からでも見えた。
判った。
真っ白なシーツに包まれ、白を赤く染めるが如く広がった髪の中で眠っているのがアスカである事が。
「アス……カ………生きて、本当に生きていてくれた__ 」
安堵し、感極まったかの様な声を漏らすシンジ。
よろよろと近づいていく。
近づいたから見えた。
「アスカ?」
葛城ミサト曰くの、たった10日と言う失踪時間。
それだけの筈なのに、頬は痩せこけ、くすんだ顔色になっている。
唇もカサカサに乾いている事が、注視しなくても見えた。
「アスカ?」
だらりと、シーツから出ている手も細く、筋張って見えた。
思わずといった態でその手を、アスカの右の手を取ったシンジ。
「生きてる………」
温かかった。
温かい人の手であった。
だけど、水気を失った手であった。
「どうしてっ! どうしてこんな事に成ってるんだよ!!」
悲鳴のような、否。
悲鳴を漏らすシンジ。
息が止まる様な衝撃だった。
只々、衝撃であった。
+
※
TV版と劇場版のエヴァンゲリオン、なんつーか、新劇と比べると似ているけども、どーも違うンだよナァ
特にシンジとアスカの関係性。
旧劇で描かれた湿度をアスカが全面に出していたら、シンジは普通に陥落している筈なんですよね。
自己肯定感が低いので、素直な自分への好意が示されたら、それが憎からずと思っていた相手からであれば、ええ。
コロっとね。
後アレだ。
TV版だとシンジがアスカを傷つける程の衝突と呼べるのは、それこそ「加持さんは死んだんだ」だけナンだよナァ
しかも、その後も普通にと言うにはアレだが、同居していた時間がある訳で。
それで旧劇の如く自罰へと流れるのは、無茶がありゃせんか? となるなる~
いや、ThanatosとKomm,süsser Todの対歌が示す2人の関係性はめっちゃくちゃに美味しいんですけどね。
でも、TV版とは少し、違うよね?
と言う事で、TV版の延長線上として最後の25話/26話を、人類補完計画を軸に書いてみますた。
尚、人類補完計画
旧劇のアレ、余りにも行き当たりばったりで作中の会話ですらも矛盾している部分があるので、アレは旧劇√の世界線での人類補完計画であり、TV版とは違います(25/26話? (∩゚Д゚) アーアー キコエナーイ)という事で__
とは言え、残り50分位の時間軸で全部解決できるもんかいね?(汗
多分に、アレだ
エヴァンゲリオン完結編(映画での完結)が作られる可能性がクソ高いです
TV版のNERV
設定が割と出て来ない部分があったりするので、組織名その他は拙作サツマンゲリオンから流用になっております。
只、雰囲気としてはTV版を踏襲する形となりますので、支援第1課や甘木ミツキ