一般TS転生村娘Aちゃんの、因縁とか全部台無しにする脳筋ゴリ押し成り上がり 作:ゴリゴリ
転生チートは特になかった。
生まれも普通の片田舎だった。
容姿はそこそこ……だと思う、そこだけは間違いなくプラス要素。
前世男が女になってしまったので、そのプラス要素は打ち消されるけど。
でもそれ以外は、本当に普通の村娘として私は生まれた。
ただ、幼い頃に「魔力は使えば使うほど増える」ということを偶然耳にして、これだと思った。
周囲に同年代の友人もおらず、暇にあかせて魔力を消費し続けたのだ。
来る日も来る日も、限界まで魔力を消費し続けた。
こればっかりは、やることのない田舎じゃないとできなかったことだろう。
魔力量が増えてきたら、畑の手伝いをするようになった。
身体強化で魔力を消費すれば、魔力が更に成長するし、村の人達にとっても助けになる。
優しい両親や村人のため、私は少しでも力になりたかったのだ。
そうこうしていると、段々と村で私より力持ちな人がいなくなった。
木を素手で掘り起こせるようになると、村は開墾が進んだ。
岩を粉砕できるようになると、更に畑は大きくなった。
村の周囲にいる魔物を狩るようになると、食事に困ることもなくなる。
そうして、私は村の人達の助けになりながら、自分のパワーと魔力量を増幅させていったのだ。
無論、私も別にただ村に奉仕するため鍛えていたわけではない。
前世は普通の現代人だった私にとって、冬は寒くひもじい村の生活に耐えられなかったのだ。
少しでもよい生活をすることは、私のためでも会った。
そうしてだんだんと成長し、私も十二歳。
この世界では、仮成人として認められる年。
十五歳までの三年間を、どこかの見せに弟子入りしたり花嫁修業に費やす時期。
私はこのタイミングで冒険者になって、外の世界に出ると決めた。
村での生活は幸福そのものだったけど、それでもやはり刺激がなさすぎる。
それに私が冒険者になれば、仕送りで更に村を裕福にできるはず。
そんな思いで、惜しむ村人と両親に見送られながら村を出た。
これが私の、新しい人生の経緯。
これだけである。
それ以上もなければ、それ以下もない。
人に話せばつまらないと言われてしまうだろう。
でも、構わない。
私だって何も、そんな面白い人生を送るつもりはないのだから。
かくして、私――一般TS転生村娘のアルナは、冒険者になった。
それが、思いも寄らない事件と、私の成り上がり物語の始まりだと、知る由もなく。
+
「新規冒険者登録の列はこちらでーす」
ギルドはとても賑やかで、その中でも新規冒険者登録を行う子供達の列は長蛇をなしていた。
受付の案内にしたがって、私は列に並ぶ。
そこには主に十二歳くらいの少年少女と十五歳くらいの少年少女が並んでいる。
仮成人、ないしは成人し冒険者となることを選んだ者達だろう。
なんとなく、十二歳組の方がキラキラしている気がするのは気のせいか。
「君、見たことない子だね。君も冒険者になるの?」
「あ、はい。私はアルナです、あなたは?」
「ボクはセノだよ、よろしくね。それにしてもきれいな子だなぁ」
そうやって列に並ぶと、前に並んでいたボーイッシュな女の子に声をかけられた。
肩の当たりまで伸ばしたざっくりと切った茶髪の少女、セノというらしい。
対する私は、金の髪と幼い中でも更に小柄な背丈。
人形さんみたいだ、とたまに言われるけれど、腕の細さとかは実際そんな感じ。
胸だけが、年齢と華奢な体躯の割に少しだけ大きかった。
きれい、と言われると少し照れるな。
「アルナは、どこから来たのさ」
「ここから西にしばらく歩くとたどり着く、えーと……ファイという田舎の村です」
「ファイ……? ごめん、聞いたことないや。遠いところから来たんだね」
「私も普段、外の人から村の名前を聞かれないから名前があやふやなんですよ」
「あはは、なにそれ、面白い!」
ここに来る間、一度商人と道がおなじになった時。
自分の村の名前を口にできなかったのが大受けしたので話してみたら、ここでも受けた。
それからセノとお互いのことについて話す。
どうやらセノは仮成人になったのをキッカケに、家計を助けるため冒険者になったらしい。
冒険者といっても、外に冒険へ出ず街の雑用でお小遣いを稼ぐ人もそこそこいるそうな。
「私はいい生活を送りたいんです。村にも仕送りがしたいし、目指せるところまで目指すつもりですよ」
「へえー、そいつはすごいな。……あれ? でも田舎の人ってことは――」
と、その時である。
「失礼するぜ」
不意に、十五歳くらいの少年が私たちの前に割り込んでくる。
マナー違反だ、これは。
「ちょっとドルス! また君はそうやって人様に迷惑をかけて!」
「ああ? なんだこれは、皆の人気者のセノさんじゃないかぁ。どうしたんだこんなところでぇ」
「どうしたもこうしたもあるか! 列の割り込みはマナー違反だ。後ろにならべ!」
二人は、どうやら顔見知りらしい。
犬猿の仲というやつだろうか。
いやでもこれは……ドルスという少年、もしかして――
「あのぉ」
「ああん?」
「あ、ちょっと。関係ない子にまでガン飛ばさないでよ! アルナちゃんも、こいつに絡んじゃだめだよ。何の得もない」
「あ、いえ。ちょっと気になったのでお聞きしたいんですが……」
やってしまった。
こんなの、こういう場で聞くもんじゃないだろ。
解っているはずなのに、止まれなかったのだ。
眼の前に気になることがあると、止まれなくなってしまうのは悪い癖である。
それはそれとして、ここまできたら辞めるわけには行かない。
「ドルスさんって、セノのことが好きなんですか?」
「――――は?」
「はぁ!?」
その言葉に、何か停止したような反応を見せるのはドルス。
完全に思っても見なかったことを言われて、驚いているのがセノだ。
「こんな男に好かれたって、ボクなんにも嬉しくないよ!? 十五までろくに働かず、親に見放されていやいや冒険者になったようなやつに!」
「お、おま、おま……!」
「え、ええと……」
あ、周りからの視線が私に向けられている。
こ、これはもしかして……触れちゃ行けないやつだったのではないだろうか。
こう、セノだけはドルスがセノを好きだと知らず、周りもそのことに触れてこなかったとか、そんな……
「ご、ごめんなさい?」
「ふざけんじゃねぇぞテメェ! 謝って許されると思うなよ!」
その状態で、正面から全否定されたドルスは激昂。
まずい、私にむかって手を伸ばしてきた――!
「あ、ちょっとドルス!」
「わああ、ギルドで喧嘩はだめですよお!」
セノと、冒険者の列を整理していたギルドの受付さんの声が響く。
周囲の視線がこちらに集まっている。
周りがドルスを止める余裕はない。
ドルスの手が迫ってくる。
まずい、この状況は――
私の手が迫るドルスの手を叩くと、そのままドルスは勢いよく吹き飛んだ。
「ぐおあらっしゃああああああ!?!!?!?!?」
何とか人の居ない方向に転ばせたので、他の人には被害がでなかったけど……危なかった。
魔物との戦いで、敵意が迫ってくると反射的に体が勝手に動くようになってしまっているのだ。
ギルドに沈黙が響く。
全員が全員、近くの人間と顔を見合わせて――
「…………このまま順番までまってよっか」
「…………そうですね」
倒れるドルスに、見て見ぬふりを決め込むことにするのだった。
ううん……私の冒険者生活、どうなってしまうんだろうなぁ。
脳筋×TS×成り上がり。
いいですよね……というお話。