Remember Red   作:カメA

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路地裏

 閑静な夜の路地裏で、1人の少女がコツン、コツンと一定のリズムを刻みながら歩いている。

 その音が、路地裏の出口の方へと通り抜けようとした時。

 

ガサッ

 

 突然物陰から現れた、大柄の女が道を塞ぐ。

 女は何も言わずに、こちらを鋭い目で見下ろしている。

 

「悪い、そこをどいてくれ」

 

「……チッ」

 

 少女が声を掛けるが、女は何も言わずに威圧的な態度を取り続けている。

 しばらくすると、少女は諦めて来た道を引き返す。

 

 すると、別の女が戻り道を塞いだ。

 

(しまった、コイツら……!)

 

 少女は顔をしかめる。

 2人の女に退路を絶たれたその時、最初の女が初めて口を開く。

 

「生徒会の指名手配受けてるような野郎が、よくもまぁこんな所を1人でうろついてるもんだ。ターゲット、お前にしといて正解だったな」

 

「お前ら、賞金目的なのか?」

 

 少女がそう聞き返した瞬間、ドンッ! と、女が力強く壁を叩いた。

 

「黙れ。今アタシが喋ってんだよ」

 

 女は少女に顔をグッと近づける。

 

「恨むならアタシじゃなくて生徒会を恨むんだな」

 

「待て、じゃあなぜ私を狙う?」

 

「黙ってろって言っただろ!」

 

 女は毅然とした少女の態度に苛立ちを覚えながらも続ける。

 

「そんなの、お前が一番チビでひょろっちい見てくれしてっからに決まってんだろ!」

 

「『ジャンクション』だぁ? あんな酒場かなんだか分かんねぇぼろっちい場所に居るからって、有る事無い事ウワサされてずいぶん怖がられてるらしいけどなぁ」

 

 捲し立てるように話し終えると、女は数歩後ろに下がった。

 

「所詮は、この程度の奴って事だ」

 

 そう言うと、女は懐から拳銃を取り出し、少女に向けて構える。

 その重厚感や、『ホンモノ』の証である金属音に、場の空気が凍りつく。

 

「……ッ! お前!」

 

「動くな!」

 

 女が叫ぶ。

 

「いいか、少しでも妙な真似したら、すぐに撃ってやるからな……!」

 

 女は威勢のいい声をあげて少女に対して銃口を向けているが、その動作の節々に緊張や動揺が隠しきれていない。

 

(この女、もしかして……)

 

 銃口を向けられ続けている間も、少女は冷静な態度を崩さなかった。

 

「チッ……なんだよお前! さっきから妙に落ち着いて……どうせもう時期死ぬってのに!」

 

 少女とは対照的に、女は明らかに動揺していた。

 

「あぁクソッ! もうどうでもいい!」

 

 覚悟を決めたのか、女は再びしっかりと拳銃を構え直す。

 

「どうせ何もしてこねぇってんなら、ここでスパッと殺してやるよ!」

 

 そう言い放ち、女は拳銃のトリガーに指を触れる。

 

「死ね!」

 

 女が目を瞑り、指に力を入れたその瞬間。

 

 突然、少女が銃口を掴み、女の手から拳銃を叩き落とす。

 

「なっ……!? コイツ……!!」

 

 呆然としている女の顔に、少女は右ストレートを打ち込む。

 

「ほごぁっ!?」

 

 女はそのまま仰向けに地面に倒れる。

 

(やはり、銃器を使うのは初めてか)

 

「クソッ……クソッ……」

 

 女は頬を抑えながら起き上がる。

 少女は転がっている拳銃をすかさず拾い上げ、寝転がった女に向け構える。

 

「おい待て……!まだ話し合—」

 

 女が言い終わる前に、少女は引き金を引く。

 コンクリートで仕切られた空間に、鈍い銃声が響き渡る。

 

「悪いな」

 

 女は頭から血を流し、再び地面に崩れ落ちた。

 

「こっ、この野郎!!」

 

 すると、もう1人の女が背後から鉄パイプを振り下ろしてくる。

 

「……来た」

 

 少女は体を捻り、重い一撃を避ける。

 女は荒く呼吸をして、鬼気迫った顔でこちらを見ている。

 少女が再び銃口を向ける。

 しかし、女はお構いなしに鉄パイプをこちら目掛けて振り下ろそうとする。

 

(来る前に、殺る)

 

 少女は女目掛けて発砲する。

 ……つもりだったが、拳銃からは、カチャッ、カチャッと機械の噛み合う音がするだけで、弾が出ない。

 

(嘘だろ、一発分しか用意してないのか! ロシアンルーレットじゃないんだぞ!)

 

 想定外の事に気を取られる少女に女は構わず鉄パイプで殴りかかる。

 

(まずい!)

 

 少女は先程と同じように攻撃をかわす。

 しかし、反応が少し遅れたからか先程より余裕の無い様子である。

 

「ぐっ……」

 

「へっ……! どうもその銃はもう弾切れみたいだな!」

 

 女は少女を路地の奥へ追い詰めるように、じわじわとにじり寄ってくる。

 少女もそれに合わせて奥へ奥へと下がって行く。

 そして、少女はついに袋小路へと追い詰められてしまった。

 

「さすがのアンタも、その状態じゃ抜け出せないな……!!」

 

 女は震える手で、こちらを指差す。

 

「これで……終わりだ……!!」

 

 そして、女は身動きのできない少女に渾身の一撃を振り下ろす。

 

 それは、ガコンっと何かに強くぶつかる音がした。

 勢いよく振り下ろされた鉄パイプは、路地裏のコンクリートの壁にぶつかっていた。

 

「なっ……!アイツ、どこ行った!?」

 

「下だ」

 

 少女は、女の攻撃を身を屈めてかわした。

 

(あの手の長物武器は、狭い場所だと扱いにくい。あの女、気付かずに私を追い込んだな)

 

「なんだよ……!ちょこまかと」

 

 少女は、その隙を突き、女の懐に潜り込む。

 そして、腹に目掛けて、力強いアッパーを決める。

 

「お゛ぐぁっ!!」

 

 女は、突き上げられた勢いのまま、その場に倒れ込む。

 少女が、女にトドメを刺そうとしたその時、路地裏の天空から女の頭に室外機が降って来た。

 先程の女の攻撃による衝撃で、不安定に固定されていた室外機が倒れ落ちて来たのだ。

 女の頭の位置にある室外機の下からは、真っ赤な流体がじわじわと広がっている。

 

(即死か……まあいいか)

 

 少女は事を済ますと、何事もなかったかのように路地を後にした。

 

 

————————————————————

 

 

 物音ひとつしない、薄暗い寮の自室のベッドの上で、私は力無く座り込んでいた。

 

「はぁ……」

 

 無意識のうちにため息を吐く。

 そして、そのままベッドで仰向けに倒れる。

 何もない部屋の天井をぼんやりと眺め続けていたその時、ピコン、と通知音が鳴る。

 私は枕元に乱暴に放り投げられた自分のスマホに手を伸ばし、眩しい画面を見る。

 

 

 

「おい、遅いぞ!」

 

 恐る恐る2人に近づく私に、蒲田ちゃんが声を荒げる。

 私は友人である蒲田ちゃんと羽田ちゃんに、寮のトイレに呼び出されていた。

 

「蒲田ちゃん、羽田ちゃん、遅くなって本当にごめん……」

 

「チッ」

 

 蒲田ちゃんが静かに舌打ちをする。

 羽田ちゃんも私のことをただ黙って見ている。

 

「えっと……そうだよね!」

 

 私は2人にしっかりと頭を下げる。

 

「ごめんなさい」

 

「遅えんだよ、ノロマバカガメ」

 

 呼び出しに遅れて来た私に対して、蒲田ちゃんは苛立ちながらそう言う。

 

「ごめん、ちゃんと間に合うように来たつもりだったの」

 

「え〜、遅れたくせにまずは言い訳とか、春っち感じ悪〜」

 

 羽田ちゃんが冗談っぽくそう言うが、声色は明らかに笑っていなかった。

 

「ごめんなさい」

 

 私は二人に深々と頭を下げる。

 

「はぁ、もういいわ。ちょっと、お前に用があんだ」

 

 蒲田ちゃんが話を切り出す。

 

「用って、何……?」

 

「今からコンビニに買い出し行ってこい」

 

「えっ、でも、もう寮の門限過ぎて——」

 

 突然、蒲田ちゃんが洗面台を強く叩く。

 

「ひっ!」

 

「お前、バカガメの分際でアタシに逆らう気か?」

 

 そのまま少しずつ、蒲田ちゃんは距離を詰めてきている。

 声色から明確な怒りが伝わってくる。

 

「あーあ、馬鹿じゃないの〜?」

 

 呆れたように羽田ちゃんが言う。

 

「ごめん……! 門限過ぎて抜け出したら怒られると思って!」

 

「だったら何だってんだよ、そんなんお前がバレねぇ用に抜け出して買いに行ったらいいだけの話だろ」

 

 蒲田ちゃんがギラリと睨みつける。

 

「言わせておけば、さっきから言い訳ばっかりしやがって……」

 

 そう言うと突然、蒲田ちゃんは私の頭を掴む。

 

「根暗の癖に、友達の言う事すら聞けねぇってのかよ!」

 

 そして、そう怒鳴って私の顔を思いっきり床に叩きつけた。

 

「まっえ、ごめ……かまたちゃ……」

 

「まだ文句あんのかこの野郎!」

 

 そう言って、そのまま2、3回追加で叩きつける。

 その度に、ドゴン! という重い音が響き渡る。

 

「い゛だぃっ……」

 

「どうせ呼び出しもわざと遅れて来たんだろ? あぁ!?」

 

「おねがぃ、ゆるじて……」

 

「うわ、ここトイレの床だよ。春っちきたなっ」

 

「チッ、わざわざ痛がるフリまでしやがって。羽田、もう行くぞ」

 

 そう言うと蒲田ちゃんは床で横たわる私に、お金を雑に投げつける。

 

「待って、2人とも……」

 

 私は掠れた声で、2人を呼び止める。

 

「春」

 

 蒲田ちゃんが振り向く。

 

「アタシが優しいからってあんま調子乗ってんじゃねぇぞ」

 

 そう言って、蒲田ちゃんは私を置いて去って行った。

 耳鳴りが響くこの場所に、私は独り取り残された。

 

 

————————————————————

 

 

 5月の夜、もうそうとう涼しくなってきた頃。夜の街並みは昼間とは全く違った様相を私に見せてくれる。

 

 眩しく光るネオン、夜になっても止まない都会の喧騒。そして、湿ったアスファルトのにおい。

 いわゆる、田舎娘が憧れていた都会の風景ってやつだ。

 

 私の名前は吉祥寺 春(きちじょうじ はる)。東北の地元を離れ、今年から東京にある私立高校、東学園(あずまがくえん)に通い始めた高校1年生だ。

 

 蒲田ちゃんと羽田ちゃんは、入学してすぐの頃、友達をうまく作れなかった私に話しかけてくれた人たちだ。

 今までの人生で、私は親以外の人とまともに関わったことなんてなく、小中学校でも同世代の人とは全く話せなかった私にとって、2人は初めての友達であり、かけがえのない存在であった。

 

 ただ、最近は2人とあまりうまくいっていない。いかんせん友達なんて初めてなもので、どう接していいかよく分からずに2人を怒らせてばかりだ。

 

 さっきの事だって、私がもっとうまくやれていれば……

 それとも……

 

 私がそんな黒い思考を巡らせかける度、『大切な友達に対してそんな邪推をしてはいけない』と、自分に何度も言い聞かせて押さえつけている。

 それは超えてはいけない一線を超えない為、あるいは押しつぶされそうな自分を守る為……

 

 私がそんな物思いに耽っていたら、スマホの通知が鳴った。

 

『 買ってきてほしい物リスト 』

 

 羽田ちゃんからだ。羽田ちゃんと蒲田ちゃんが頼んでいる買い出しリストが送られてきた。そうだ。こんな駄目な私の面倒を見てくれてる友達のためにも、これくらいの事はしっかりこなさないと!

 そう、強く思った。

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

 頼まれた物を一通り買って店を出る。

 商品の総額はもらったお金より明らかに高かったがあんまり気にしない事にする。

 

 ふと、街頭ビジョンで流れるニュースが目に入る。

 

「今朝、東京都調府市の街中で、女子高校生2名の死体が発見されました。現場付近では拳銃も見つかっており、警察は殺人事件の可能性もあるとして、捜査を進めています」

 

 げっ、調府ってここじゃん……

 どうもここ最近は物騒な事件が多いらしい。

 

「フンッ、どうせ都警は動かんさ。『()()』で起きた事件なんて気にも留めちゃいない!」

 

 近くで誰かがぼやく声が聞こえる。

 

 いや、ぼさっとしてる場合ではない。早く寮に戻って2人にこれを渡さないと!

 私は我に帰って再び歩き出す。

 余計な思考を働かせ過ぎて、結構遅くなっている、少し裏道を通って寮に戻ろう。そっちの方が早く戻れるはず。

 

 私はそう思って、人気の少ない路地へと足を進める。

 今思えば、なぜあのようなニュースを見た直後にそんな選択を選んだのだろうか。

 まさか、自分に限ってそんな事件に巻き込まれるなんてないと思っていたのだろうか。

 

 都会の繁華街から伸びる、薄暗くて狭い道に2、3歩歩みを進めたあたりで、突然私の口元に何か布のような物が押し付けられる。

 

「んっ! んーっ!?」

 

 息をしようと吸えば吸うほど意識が遠のいていく。

 やがて、完全に意識を失ってしまった。

 

 

————————————————————

 

 

私はどこかの建物の中に攫われているのだろうか。体は椅子に縛り付けられている。私の荷物はここからでも見える位置のテープルの上に置かれている。

 部屋を見渡すと、全面がコンクリートで作られていて、壁を見てみると、窓のあったと思われる場所から外が見れる。相変わらずの都会の景色だが、街の光が見えるということは、元いた場所からそこまで離れてはいなさそうだ。この場所はいわゆる廃ビルの中だろうか。

 

 自身とその周囲の状況から、自分が誘拐されたという事実を改めて思い知る。誘拐されるのはもちろん、こんな夜中に知らない場所で一人でいる事なんて、生まれて初めてである。私はかつて体験したことない程の恐怖に身の震えを抑え切れなかった。

 そうこうしていると、目の前の扉が開く音がする。

 

「やっと目が覚めたか」

 

 入って来たのは、自分よりはるかに背が高く、目つきの悪い女だった。よく見ると、雑な着こなしではあるが、私と同じ東学園の制服を着ていることがわかる。

 

「ごめんなぁ〜急にこんなことしちって」

 

「これ、何ですか……誘拐?」

 

 私が震える声で聞く。

 

「まぁそんなもんだわ。ウチらはアンタみたいな学園内の気弱な日陰者ひっ捕まえては身ぐるみ全部剥がして回ってるのを生業にしてんのよ」

 

 女はスラスラと答える。

 

「ただぁ、今日はちょっと訳が違ってなぁ〜、最近嫌な話をよく聞くもんで、ちーっと気が立ってんだ……」

 

 女は何かを言い淀む。

 

「ところでアンタさん、人間の臓器を全部売っぱらっちまったら、全部でいくらくらいになるか知ってっか?」

 

「えっ……」

 

 衝撃的な事をいう女を前に、私は息を呑む。それと同時に、どうしてここに連れ攫われたのか、これから何をされるのか、私の末路をぼんやりとだが知ってしまった。

 

「その様子やと、何されんのか分かってそうみてえだ」

 

 女は背後から突然大きなチェーンソーを取り出す。そして、そのチェーンソーのエンジンを起動させ、一歩、一歩と私の方向へ近づく。ブォン、ブォンと鳴る音が少しずつこちらへ寄って来る。

 

 私は自分の悲惨な末路を想像し、軽く錯乱状態にいた。恐怖のあまり息をするのもやっとであり、目からこぼれ落ちた水滴で視界が歪む。気づくと股間周りがじんわり温かくなってきて、初めて失禁してしまったのだと自覚する。どうしてこんなことになってしまったのか、そんなことは分からない。私はとうに抵抗することすら諦めた。ただ、そんな私の様子を見てなのか、女が話しかけて来る。

 

「とは言えだ、いくらなんでもいきなり殺すのは面白みがないよなぁ」

 

 女はそう言うと、チェーンソーのエンジンを止め、地面に置いた。すると、次は私の私物が置かれた机の方に向かい。私のバッグの中からスマートフォンを取り出した。

 

「アンタ、まだ死にたくないよな?」

 

 女がそう聞くと、私は小さく、ただ確実に首を縦に振った。

 

「よぉし、よぉし、そう来なくちゃ」

 

 すると女は、スマホを持ったまま私の目の前に近づいた。

 

「誰か助けを呼べる奴に電話しろ」

 

 女はただそう一言だけ告げた。

 

「えっ、助け……?」

 

「そうだ助けだ。もし今すぐここに来れる奴がいたら、特別におまえを助けてやるさ。ウチの気まぐれサービスや」

 

「助け……」

 

 朦朧とする意識の中、私は助けを呼べる相手を思い浮かべる。親は東北の地元にいるため呼べる訳がない。そもそも、こんな夜中なんだから読んだところですぐきてくれる人なんて中々いない。何より、私には呼べるような知り合いがいない。だから、今すぐ私の元まで助けに来れるのは……

 

 蒲田ちゃんと羽田ちゃんぐらいしか……

 

 いや、そんなの無理だ! 

 ただでさえ2人は今日の一連の流れで私に対して怒り心頭である。それなのに助けて欲しいなんて頼んだらさらに迷惑をかけてしまう。ただでさえ、買い出しの帰りが遅くなっているのにそんな事言ってしまったら、蒲田ちゃんが何と言うか分からない。

 

 二人に助けを求めたら、そのあとが怖い。

 

「……助け呼べる相手すらおらんのか?」

 

 私が考え込んでいると、女がそう言う。

 

「おらんようなら、もうとっととバラシちまうぞ?」

 

「ちょっと……ちょっとだけ時間を下さい!」

 

 私は必死に考える。呼ぶか、呼ぶべきでないか。

 

「分かった。ウチがバラす準備しとくから、首ブチ切られる前までには考えといてな〜」

 

 女はそう言うと、再びチェーンソーのエンジンをかける。

 

 あぁ……あぁ……!

 

 ただでさえ、不安な気持ちで碌に思考できないのに、うるさく唸るチェーンソーの音で、さらに冷静さを失ってしまう。私の脳内はもはや助けを呼ぶ事なんて考えれていなかった。

 

 ヤバい……!早く何とかしないと!何か言わないと!!

 

 そう思ったが、怖くて女の方向を見れない。ただ、私の最期がすぐそこまで近づいてきているのは何となく理解できた。音が私の思考を蝕む。目を閉じる。もはや死を直前にして何一つとして行動を起こせない。そうやって、私が生きる事を半ば諦めかけていたその時だった。

 

 奥の方から大きな音がした。

驚いたわたしはつい目を開けてしまう。

 すると、部屋の扉がバタリと倒れていた。

 

「だれかい! 何でここが分んねん!」

 

 女は露骨に焦った様子で入口の方に振り向く。

 しかし、そこには既に誰もいなかった。扉を蹴破った『正体』は、既に女の懐まで移動していた。

 

「なっ!? 早い!」

 

 その台詞を最後に、女の体は上方向に吹っ飛ぶ。手にしていたチェーンソーは地面に転がり落ち、女も地面に倒れ込んだ。

 

私は状況が飲み込めなかった。

私の目の前にいたのは、あの女はもちろん、私よりも少しだけ背の小さい少女だった。

暗めの紺髪ボブに前髪もサイドも綺麗に切り揃えた姫カットで、鋭い目つきをしている。

 そして少し大きめの学ランを羽織っていて、その胸元には真っ赤に輝くロケットペンダントを下げている。

 

「大丈夫か?」

 

 少女は落ち着いた声色で私に話しかける。

 

「あなたは……」




初めまして、カメAです。
今回はオリジナルのお話を。
オリジナルの話を書くのは初めてなので、随所に拙い箇所が見受けられるかもしれませんが、どうか温かい目で見ていただけると幸いです。
同内容のものを、pixivにも掲載しております。
それと、このシリーズは不定期更新となる予定です。
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