西暦xxxx年。
長らく続いた深海棲艦との戦いに終止符がうたれたのはつい最近の出来事だ。人と物で溢れ、栄華を極めた帝都ネオトーキョー、もう今は何も残っていない。あるとすればみすぼらしい人の群れ、瓦礫の山とかした街、そしてぼんやりとした曇り空が永遠と広がっているだけだ。
俺たちは終止符をうった、戦争に負けるという形で。
簡単な話だ。そもそもこの戦争は在りし日の艦艇の魂を宿した艦娘が最前線で深海棲艦と戦うことでようやく均衡を保てていた。それが突如として崩壊した。艦娘たちが人類を不要と見なしたのだ。
各地に点在していた主要鎮守府にはそれぞれ最高練度の艦娘が在籍していた。一人で数百数千の深海棲艦を相手に出来る、艦娘の中でも稀有な存在。そんな彼女たちが一堂に会して人類へと反旗を翻した。
災害も疫病も核戦争でさえも滅びることのなかった人類が初めてその危機に際した。それもたった七人の艦娘によって。
後にこの七人の艦娘は魔女を意味するWICKEDというワードからW7と呼称されることになるのだが、俺にとってはそんなことはどうでもいい。
その七人の魔女の中に俺の嫁艦、駆逐艦不知火がいたということ。それが今でも俺には信じられないし、受け入れきれない現実として重くのしかかってくる。
そして嫁艦も生きる希望も失った俺が自らの命に決着をつけようとしたそんな時。俺はもはや形だけを残してボロボロとなった海軍本部の地下の地下、最下層部へと呼び出されていた。自暴自棄になっていた俺が出頭命令を断らなかったのは、嫁艦である不知火が人類を、俺を裏切った理由が分かるかもしれないと思ったから。何か手掛かりを掴めないかと藁をもつかむ思いだった。
呼び出された地下空間には俺以外にも六人の人物が集められていた。全員どこかで見たことがある顔ばかり。提督、いや今となっては元提督と言うべきか、そんな顔ぶればかりが集められていると気がつくのに時間はそうかからなかった。
『なぜあの娘たちが君たちを裏切ったか分かるかい?』
不意に声を掛けられた。辺りを見回すが声の主は分からない。皆、戸惑っていた。
『君たちの目の前にいるよ、よく見てごらん』
言われるがまま前に向き直し、息をのんだ。奴はそこにいた。今となっては懐かしささえ感じられる。かつて、愛する不知火の肩で純粋無垢な笑みを振る舞いていた妖精がそこにはいた。
『ワタシのことを皆は知っているよね?』
クスクスと笑みを浮かべる妖精。皆が知っている?お前は確か不知火の肩に載って…。
『まあ、そんなことはどうでもいいや』
『どうして愛する人が裏切ったのか知りたい?』
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「司令、どうしたんですか?」
ハッと我に返る。暗転していた世界から急に呼び起こされて目がチカチカしている。ここは…?眩んでいた視界がはっきりしてくると俺はどうやら執務室にいるようだった。お気に入りの椅子にもたれ、傍らには愛飲していたブラックコーヒーが美味しそうに湯気をたてている。なんだかひどく懐かしい。
いや、それだけではない。
「大丈夫ですか?」
そっと俺を心配そうに覗き込む顔は、忘れたくても忘れられなかった。大切な嫁艦が手を伸ばせば届く距離、そこにいた。
「不知火!」
思わず叫んだ。次いで目の前にいる彼女を力の限り強く抱き締めた。
「ちょ、ちょっと、司令!?」
鼻の中いっぱいに広がる不知火の髪の匂い。戦力増強を目的としたケッコンカッコカリから始まり、そのうち俺にとって不知火は本当に愛おしい存在になった。
「苦しいです…」
腕の中で彼女がもがかなければ、俺はいつまでも不知火を抱き締めていただろう。軽く謝罪をしてから俺は彼女を解放した。
「本当に大丈夫ですか?」
ふぅ、と一息ついた不知火がじっとこちらを見つめてくる。ああ、俺はどうやらひどく悪い夢を見ていたようだ。きっと激化する戦線に身も心も疲弊して、有りもしない世界線を夢にみたのだ。いや、全く。洒落にもならない、とんでもない悪夢をーーー
「そういえば司令、いつから眼鏡なんて…普段してませんよね?」
だから、そうーーー。
身に覚えのない眼鏡越しに見る彼女の姿に変なモノなんて写っているはずがないんだ。
俺は大切な嫁艦とこの鎮守府で一緒にいられればそれでよかったんだ。彼女が人類悪となって俺の元を離れていくなんて出来の悪いおとぎ話に過ぎないんだ…!
なのに…。
なのにどうして…。
どうして愛おしき不知火の頭上にどこかの恋愛ゲームのようにパラメーターがあって、それがどす黒い色に染まっているんだ…。
「司令?」
不知火の頭上に浮かぶバーには、無機質なデジタルフォントで【CORRUPTED:98.99%】と意味ありげな言葉と数値が刻まれている。
しかし本当に恐ろしいのはそこではない。
そのバー自体が、まるで意志をもったタールのようにドロドロと波打ち、時折、枠組みからはみ出して不知火の顔を覆わんばかりにその黒い触手を伸ばすことにある。
声を発っせず、立ち尽くすばかりの俺にはもう不知火がどんな表情をしているのかさえ分からない。
ただ確かに言えるのは、あの荒廃した世界は夢ではなく、向き合うべき現実だったということ。
そして俺たちにつらつらと説教を垂れたあの妖精が俺を過去へーーーあの侵攻前の時間へと飛ばし、人類の存亡、いや嫁艦を救えるかどうかのチャンスを与えてくれたということ。
「司令? 顔色が悪いですよ。……もしや、また無理な夜勤でもしたんですか?」
不知火が再び俺の顔を覗き込んだ。そして甲斐甲斐しくも眼鏡の縁を直そうと手を伸ばす。
その瞬間、俺の視界にあるそれが狂ったように反応した。
【CORRUPTED:99.01%】
冷徹な青白いデジタル文字。その背後で、黒一色に染まった横長のゲージがまるで生き物のように脈打ち始めた。
不知火の指先が俺の肌に触れるか触れないかの距離まで近づいた時、ゲージ端から一気に吹き出すように黒いソレは溢れだした。
「ひっ……!」
俺は思わず、彼女の手を振り払って後ずさる。
「……司令?」
不知火の動きが止まる。
彼女の瞳には困惑とほんの少しの伺い知れぬ感情があった。
【CORRUPTED: 99.02%】
上がった。
何が原因だ? 俺が拒絶したからか? それとも、彼女の中で魔女が目覚めかけているのか?
俺の思考を嘲笑うかのように蠢く黒いタールは、今や彼女の頭上を覆い尽くし、執務室の壁にまでどす黒い影をおとしているように思えた。だが眼鏡を外して見れば、ただ困ったように小首をかしげる、いつもの可愛い不知火がいるばかり。
「…悪い、まだ寝惚けているみたいだ」
俺は震える声でそう言い、テーブルの上のコーヒーに逃げるように口をつけた。
冷めかけたコーヒー。その黒い液体さえも、今の俺には彼女から溢れ出すあの不気味なパラメーターの一部に見えて吐き気がした。
「…そうですか。ならば、不知火が特別に目が覚めるようなお薬を調達してきましょうか?」
クスクス、と彼女が笑う。
その笑顔に合わせて、黒いモヤが歓喜するように逆立ち、数値が不規則に点滅を始めた。
【CORRUPTED: 99.15%... 99.20%...】
このまま100%になったら俺の目の前にいるこの娘は、人類を滅ぼす存在へと成り果ててしまうのだろうか。
妖精の言葉を思い出す。
『たくさん愛してあげてね?』
わざとらしく笑みを浮かべる奴の顔に、何か裏を感じずにはいられないが。
それでも。
それでも俺がなすべきことはーーー
↓アンケート
この後俺がやるべき行動は?
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不知火を全力でくすぐる。
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不知火に人類を裏切るつもりか問いかける。
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不知火の耳もとで愛の告白。
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DO☆GE☆ZA
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キスして黙らせろ。
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胸揉んでからの押し倒し。