国王の部屋の前。
そこまでの衛兵は、爺さんを見るなり道を譲ってくれたため、何の苦もなく通ることができた。
やっぱりこの爺さん偉かったんだな。
名前もラーゼン様とか呼ばれてたから分かった。
さて、国王の部屋の前まではそれで倒れたのだが、扉の前で邪魔が入った。
騎士長フォルゲンと名乗る筋肉質なおっさんである。
「ラーゼン殿、何故異世界人を連れて来たのだ?ここは道具如きを連れてきて良い場所では無いはず」
一応疑われたら言い訳をするように命令しているけどどうなるかな?
「ああ、この異世界人が自力で支配の魔法を解いたようでな。まあ、儂が更に強力な支配の魔法をかけた故、大した問題はないのだが、何かあってからでは遅い。それ故、この異世界人を処分するか陛下に判断を仰ごうかと思ってな。幸い、まだ陛下はご就寝されておらぬだろう?」
「なるほど、確かにそれなら納得だ。……が、ラーゼン殿よ。私の『解析鑑定』では、今貴方は支配された状態だと出たのだが……それはどういうことだ?」
フォルゲンは、剣を抜き放ち、こちらに構えた。
「フフッ、なるほど流石に騙せないか」
強キャラを意識しろ。
格を落とすなよ俺!!!!!
自分に言い聞かせながら、前に出る。
「ラーゼンは僕が支配した。このまま国王も……と思ったのだけど、その前に君から支配しよう」
「ぬかせ!!!貴様如き召喚されたばかりの異世界人に支配などされるものか!!!どうせラーゼン殿も卑怯な手を使って支配したのだろう!?」
「そう思うなら好きにしなよ。ただ、君の思考力が足りないだけだから、僕は責めないさ」
「ほざけーーー!!!!!」
剣が振り下ろされ、避けきれずに俺に直撃した。
けど、その斬撃によって負う『傷』に俺は『従わない』。
俺に傷が付くことはなかった。
「君の攻撃程度、どうということはない。君は強いんだろうさ。少なくともこの国では。何せ騎士長なんだろう?すごいじゃないか」
「どこまでも……馬鹿にするか!!!!!」
「馬鹿になんてしてないさ。君は強い。ただ僕の方がもっと強い。それだけのことなんだから。賞賛は本音だよ。受け取りな」
「無敵になるユニークスキルでも持っているのか?だが、限界はあるだろう!!!!!それまで、ただ斬り続ければ良いだけのこと!!!!!」
「フフッ、そうだね。そんなありもしない希望に縋るのは別に構わないよ。でもさ、君の相手が僕だけだと思ってるのかな?」
「なっ……まさか!!!!!」
「『
ラーゼンのその声と共に、フォルゲンの足元から凍りつき始め、そしてそのままフォルゲンを固定した。
「さて、ラーゼンが旧知の相手より僕を優先する確認も取れたことだし、どうしようか。殺す?それとも生かす?」
大量の魔法陣を出現させながら考えるそぶりをする。
まあ、生かして支配する方が良さそうだからその予定なんだけど……雰囲気作りにね。
「どう、ラーゼン。こいつ有能?」
「ハッ!フォルゲンは目の前で死んだ部下の能力を獲得できるユニークスキル『
「なるほど、じゃあ支配しよう」
フォルゲンの顔がどんどん曇る。
正直、こいつならこの拘束もすぐに抜け出せるだろう。
けど、多分ラーゼンが本当に完全に支配されている事実に打ちのめされているんだろうなー。
ま、どうでも良いか!!!!!
『征服者』が支配できる判定出してるし、問題ないでしょ。
「『征服者』……君も今日から僕の部下だ。よろしくね」
「ハッ!!!」
拘束を解くと、跪いてきた。
よしよし、後は国王だけ!!!
「フォルゲン。君が開けて」
「ハッ!承知したしました」
国王の自室の扉が開いた。
「誰だ!?!?!?許可なく扉を開けたのは!!!」
デブの爺さんが声を荒げ威嚇してくる。
うわー、情けな。
「フォ、フォルゲン!!!それにラーゼンではないか!!!!!何用だ!?!?!?何故ノックもなく……だ、誰だ貴様は」
2人を見て落ち着くと同時に、俺にも気付いたようで狼狽え始める。
「フフッ、そうだね。自己紹介をしよう。僕は恭弥。橘恭弥。召喚されたばかりの異世界人。そして、今この時から君の主。よろしくね」
「なっ……何を馬鹿なことを!!!!!ラーゼン!フォルゲン!早くこの無礼者を殺せ!!!!!」
「「……………」」
2人は動かない。
「な……何故動かない!?……なんとか申せ!!!!!」
あー、これこれ!!!!!
最高だ!!!
今俺は橘恭弥を演じることが出来ている!!!!!
そう確信できる!!!!!
でも気を抜くな。
気を抜くなよ俺!!!
仕上げがまだだ。
「無駄だよ。2人の主は既に君じゃなくて僕だから」
ゆっくりと歩み、国王に近づく。
「な……何を」
震えてる。
既にこいつは僕に勝てないと思っているようだ。
「『征服者』」
この日、俺は一国を掌握した。