某魔法界でFateを布教する奴   作:爆裂ハンター

4 / 9
副題:後にファーストFateインパクトと命名されたとか

今回の話は、とある人物がノベライズ版Fateシリーズの一作目(セイバールート)と遭遇する話です。
Fate/stay nightが発売された当時、隕石落下並みの衝撃を受けた人は一体何人居るのやら。

ちなみに、オリ主くんはグラミー・シードというペンネームで活躍しているとか。
なので、小説のファン達から林檎種と呼ばれることになるかも?


あの日の衝撃、覚えてますか?

トム・リドルはマグル界出身の半純血ではあるものの、非常に魔法の才能に溢れた学生であった。

しかし、彼自身の生い立ちが孤独そのものだったことに加えて、純血主義という閉鎖的な考え方に触れてしまったことにより、彼は悪の道へと堕ちる....はずだった。

 

その日、暇つぶしに読む本でも買おうと思っていたのか、ホグズミード村にある小さな本屋へと向かったトムは、そこでとある本に出会った。

【Fate/stay night】という変わったタイトルのその本は、青を基調とした表紙に金色の装飾が施されていた上に、そこにドレスの上に鎧を身に纏った少女の絵があったため、その表紙に惹かれた彼はその本の上下巻を購入。

そして、ホグズミード村からホグワーツへと戻った彼は、そのまま【Fate/stay night】を読み始めたのだが......たった数ページだけでも感じることが出来る感覚に、一つのページに詰め込まれた運命の夜から始まる怪奇譚に対し、何だこれという様子で目を見開いていた。

 

この運命の夜の物語は、フユキと呼ばれる日本の地方都市に暮らす一人の少年の......シロウ・エミヤという少年の何気ない日々から始まった。

自身のことを普通の人間だと自称しつつも、どこか正義の味方に憧れている節のあるシロウは、ひょんなことから槍兵(ランサー)弓兵(アーチャー)のサーヴァントの争いに巻き込まれた末に、自宅の蔵で剣士のサーヴァントを召喚する形にて、何とか危機を脱するに成功する。

それはまるで、運命の出会いとばかりに。

 

この展開を読んだトムは何が何だか分からなかったが、とりあえず本格的に物語が始まったのだと理解したようで、その顔には不思議そうな顔が映っていた。

 

〈問おう、あなたが私のマスターか?〉

 

そう問いかける剣士の少女、もといセイバーの活躍によって聖杯戦争に巻き込まれたことを知ったシロウは、そこから戦いの渦に巻き込まれていくことになる。

 

学校で高嶺の花扱いされているが、実は魔術師の娘であった同級生のリン・トオサカと様々な武器を操るアーチャー。

シロウの同級生でマトウ家側のマスターであるシンジ・マトウと魔眼を持つライダー。

聖杯戦争を生み出した一族の一人にして、ホムンクルスであるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと不死身のバーサーカー。

とある土地の霊脈によって召喚され、門番の役目を全うしているという特殊な状態と化している剣豪のアサシン。

シロウの学校の先生ではあるが、元暗殺者であるソウイチロウ・クズキと神代の魔術師であるキャスター。

神出鬼没でどこにでも現れる赤い槍を持ったランサー。

 

これらのキャラクターや魔術に関する設定、そして徐々に激しくなる戦いはトムの心をしっかりと掴んだようで、その顔には心なしか興奮しているような表情が浮かんでいた。

トム自身、ホグワーツに進学してからは魔法に纏わる本や物語をそれなりに読んできたと思っていたのだが......この【Fate/stay night】は、それらの本を上回る程の面白かったため、いつの間にやら無我夢中になって本を読んでいた。

 

英雄を使い魔として召喚し、自らの代わりに戦わせるという設定もさることながら、シロウを中心とした様々なキャラクターの人間ドラマも相まって、【Fate/stay night】という芸術作品の虜になっていた彼は、次の展開が見たいとばかりにペラペラとページを捲っていた。

 

やがて、物語が進んでいく中で前回の聖杯戦争にて召喚されたものの、敵として主人公の前に立ち塞がる世界最古の王にして英雄であるギルガメッシュや、聖杯戦争の要である聖杯に纏わる衝撃的な真実。

それから、キレイ・コトミネという神父でありながらも悪そのものである人物の企みを阻止するため、シロウとセイバーはギルガメッシュとキレイとの最終決戦に臨むことに。

 

戦いの中でお互いのことを想い合い、心の距離を近づけていったシロウとセイバーとの関係性を見たトムは、胸の中にポッカリと空いていた穴が埋まるような不思議な感覚になっていて、そのことを自覚した彼はこれが愛なのか?と次第に思っていた。

 

そして、ギルガメッシュやキレイ・コトミネとの戦いの末に勝利したシロウとセイバーは、汚染された聖杯を破壊するために彼女の宝具を使用することになったのだが....宝具である【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】を使用したことにより、セイバーはシロウに対して愛してるという言葉を告げた後、その場から消滅してしまう。

恐らく、あの技はサーヴァントである自分自身が消滅するのを見越した上で、彼女は宝具を解放させたのだろうとトムは思ったのだが、ようやく告げることが出来た切ない程の愛に対し、シロウにとっては忘れることの出来ない愛の告白に対し、トムは空っぽだった心は満たされていくような感覚になっていた。

 

その後、場面は彼女の生前の最後の瞬間へと移り変わったかと思えば、彼女自身がシロウとの出会いと戦いを走馬灯だと認識つつも、どこか幸せそうな顔を浮かべていたのを尻目に、シロウはセイバーとの駆け抜けた日々を思い起こしつつ、前を向いて生きていくシーンでこの物語は終わったのだが

 

「終わった....のか?」

 

そのことを実感できない程にドップリと【Fate/stay night】の世界に浸っていたトムは、呆然とした様子で思わずポツリとそう呟いていた。

【Fate/stay night】で描かれた英雄の戦いと生き様、そしてシロウの並々ならぬ覚悟を本を読む形で触れたからか、これは物語というよりかは一つの芸術だと彼は思ったようで、物思いに耽るかのように【Fate/stay night】の表紙を優しく触れていた。

それはまるで、眩い光を見つけたかのように。

 

特にトムが驚いたのは、シロウのサーヴァントでセイバールートのヒロインであるセイバーの正体で、彼女の正体がイギリスにおいて神霊にも等しい存在である英雄....アーサー・ペンドラゴン、もといアルトリア・ペンドラゴンであることに対し、リアルで声を漏らしそうになっていた。

ついでに言えば、キャスターの正体やマーリンの描き方についても声を漏らしそうになったとか。

 

しかし、それ以上にサーヴァントの正体にまつわる真名という概念や、サーヴァントの武芸や武器が必殺技として昇華した宝具という設定も相まって、トムはその強烈な右ストレートを放つ世界観を持ったこの作品に、【Fate/stay night】にハマってしまったようで....いつしか、この思いを誰かに共有したいと思っていた。

 

「「....あ」」

 

そして、その思いが実るかのように彼と同じく【Fate/stay night】の本を持った少女と、虐められっ子として有名だったマートル・ワレンとバッタリと出会った彼は、その本を見た瞬間に仲間を見つけたとばかりの顔になると、こんな言葉を口に出していた。

 

「君も.....この本を読んだのか?」

「あ、う、うん。最初は表紙に惹かれて買ったんだけど......この本の内容が面白くて、つい夜更かしをしちゃって....」

 

モジモジとしながらマートルがそう言うと、トムは彼女もまた自分と同じく【Fate/stay night】に読み、そしてその物語にハマった存在なのだと理解すると、恥ずかしそうにしている彼女に対して自分もだと言わんばかりにこう言った。

 

「分かるよ。僕は今日この本を買った上で読んでみたんだけど....サーヴァント同士の戦いやセイバーの正体に痺れたというか、何というか」

 

仲間を見つけたとばかりにトムがそう言うと、マートルはパァッと顔を明るくしたかと思えば、興奮した様子で大事そうに本をギュッと抱きしめていて、分かる〜とばかりの雰囲気を出していた。

トムもトムで、ホグワーツの生徒で【Fate/stay night】の話が出来る仲間が居るとは思ってもいなかったようで、彼女と同じように顔を明るくしていた。

 

「分かる!!まさかセイバーの正体があの英雄だったなんて思わなかったし、何よりシロウとの恋模様が堪らないの!!」

「あぁ、ラストのあのシーンは胸にジーンと来たよ。アレはまさに、戦いの中で育まれた愛と言っても過言ではないね」

 

同じモノを愛する仲間と出会えたからか、喜びのあまり【Fate/stay night】について語り合う二人。

二人とも孤独な気持ちを抱えていたからなのかは分からないが、お互いにその孤独を癒すかのように【Fate/stay night】の素晴らしさや、何度も味わえる独自の世界観、それからキャラクターの関係性についてこれでもかと語り合う二人の顔には、胸の内に抱えていた闇が吹き飛んだような表情になっていたのは言うまでもない。

 

「....なぁ、マートル」

「ん?」

「また....君とこういう話をしても良いかな?」

 

今の今まで、心の底から好きな作品を他人と語り合う経験が無いものの、この機会を逃してなるものかとここぞとばかりにそう尋ねるトム。

一方、その言葉を聞いたマートルはさっき以上に嬉しそうな顔になると、彼に向けてもちろんだとばかりにこう言った。

 

「わ、私も....あなたと【Fate/stay night】の話が出来て楽しかった。だ、だから....また一緒に話したい、な」

 

ぎこちないながらも彼女がそう言うと、トムはマートルのその言葉が嬉しかったようで、心の底から嬉しそうな顔になっていた。

なお、その顔を見たマートルはトムもそんな顔をするんだと思ったとか。

 

かくして....同じ作品を愛する仲間を見つけたトムは、【Fateシリーズ】と言うビッグバン並みに衝撃的な作品と出会ったことにより、未来に纏わる運命が大きく変わったのだが、当の本人はそのことを自覚することなく、初めて真の意味での友人を獲得したのだった。

 

(グラミー・シード....か。こんなにも面白い物語が書けるなんて、この人は間違いなく天才だろうな)




トム・リドル
皆さんご存知、闇の帝王の学生時代の姿。
なので、純血思想に傾倒しつつあった....のだが、【Fate/stay night】と出会ったことにより、純血思想云々はすぐさま捨てた模様。
ついでに言えば、【Fate/stay night】にハマったようで........自身と同じく【Fateシリーズ】にハマったマートルと友人関係を築いたとか。
なので、この世界線のトムはヴォルデモートルートに入らない模様。
後々、マートルと共に【Fateシリーズ】のファンクラブを立ち上げるらしい。

マートル・ワレン
正史ではトイレの幽霊と化す女子生徒。
トムよりも前に【Fate/stay night】を読んだのだが、右ストレートで殴られたかのような内容に対し、どハマりした末に何度も読んでいるらしい。
【Fate/stay night】を語り合う仲間をホグワーツ内で探していたところ、そこで自身と同じく【Fateシリーズ】にハマったトムと出会ったことにより、生存ルートに入ったとか。
なので、この世界線のマートルはトムの友人的なポジションになる。
後々、トムと共に【Fateシリーズ】のファンクラブを立ち上げる模様。
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