コメント欄を読んで思ったけど、厨二病真っ盛りのトムにFateシリーズは確かに劇物だよね。
だって、Fateシリーズそのものが厨二病の塊的な感じだし。
ある意味でFateシリーズって魔法族特攻だなと思う今日この頃。
ホグズミード村の小さな本屋にて、限定発売されている本がある。
そんな些細な噂が、少しずつではあるがホグワーツの生徒達の間で広まりつつあった。
ある人はその本の内容は言葉で言い表せない程に素晴らしいと語り、ある人はこれは一つの小説というよりかは一つの芸術だと絶賛し、ある人はこの本を読んだがために価値観が変わったと公言する程に、俗に言うところの高評価とも取れるレビューが生徒間の間で共有されていった。
その結果、彼ら彼女らのレビューを聞いた生徒達は続々とホグズミード村の本屋へと足を運び、少ないお小遣いをやりくりして例の本を上下巻込みで買う....という感じで、いわゆるバズりに近い現象が起こっていた。
そして、本を開ければ脳内に広がるのは、厨二病真っ盛りの年頃である生徒達には刺さるであろうストーリーと、それから心と胸が躍る盛り盛りな設定。
その本を、【Fate/stay night】を読んだ生徒達は皆口を揃えてこう言った。
良いから読め、話はそれからだ。
そんな大ヒットに近い状態の【Fate/stay night】に対し、当時ホグワーツに勤める一人の教師であったアルバス・ダンブルドアは、その本が自身のホグワーツでの教え子の一人で、マグル界にて出会ったトムが夢中になる程のモノなのかを確かめるため、彼もまたホグズミード村の小さな本屋にて、【Fate/stay night】のセイバールートを上下巻購入。
そのままホグワーツに戻ると、ダンブルドアはその本をペラペラと一枚ずつ捲りながらその物語を、【Fate/stay night】の世界に触れていった。
今の魔法界やマグル界と似たような世界を舞台に、日本という国の小さな地方都市で繰り広げられるのは、七人の魔術師達によって召喚された七騎の英霊による聖杯を求める争い。
七騎の英霊達は神話・伝説・史実に纏わる英雄ばかりなのだが、その英霊達をサーヴァントという名の使い魔として召喚し、令呪と呼ばれる呪いを駆使してサーヴァント達を使役する........という設定がまずダンブルドアにとって衝撃的だったようで、彼はすぐにこの小説がとんでもないモノだと理解したものの、その時にはもう既に読む手が止まらなくなっていたのか、あっという間に【Fate/stay night】のセイバールートの上下巻を読破していたのだった。
「ふぅむ.......」
確かに、これは生徒達が夢中になるのも致し方ないな。
【Fate/stay night】の上下巻を読み、その衝撃的な世界観に触れたからなのか、心の中でそう呟くダンブルドア。
と言うのも、劇中に登場するキャラクター達の中には魔法界にて偉人として扱われている者もおり、そういった偉人達に対する新たな解釈に加えて、宝具というカッコいいにも程がある必殺技の概念。
そして、英霊であるセイバーとそのマスターであるシロウとの恋愛要素もあってか、ダンブルドアはこんな小説が存在していたという事実に対し、世界は広いのだと実感せざるを得なかったのである。
「......この本を書いた者は、間違いなくマグルや魔法界の神話や伝説について相当調べたのじゃろうな」
金の装飾が施された青い表紙の本を手に持ちながら、セイバーとシロウの結末に思いを馳せながらそう呟くダンブルドア。
その顔には、戦時中の魔法界に一筋の光が差し込むかのような感覚になっていたとか。
正義の味方を志す主人公のシロウと、自らが辿った結末のやり直しを願うヒロインのセイバー。
そして、様々な陣営の思惑が複雑が絡み合った結果、願望器を求める戦いであるはずの聖杯戦争は思わぬ形に傾いていき、そして二人はとある決断を下す。
ダンブルドア自身は、【Fate/stay night】のように心を震わせる程の美しい物語に出会ったことがなかったのか、それとも胸の中にある感情が昂る程の高揚感をまた味わいたいと思ったのか、再び【Fate/stay night】を読み始めていた。
その彼の姿を見た不死鳥のフォークスは、何をしているの?とばかりに彼の肩に乗った後、興味津々な様子でその本を覗き込んでいたため、ダンブルドアはクスッと微笑んでいた。
同僚であるホラス・スラグホーン曰く、トムは【Fate/stay night】を通してマートル・ワレンという少女と仲良くなり、最近では【Fate/stay night】に登場するキャラクターについての考察や、魔法界の偉人がサーヴァント化したらどうなるのか?などなどの話を繰り広げているらしく、それを聞いたダンブルドアはこの本の作者であるグラミー・シードに対し、心の底から感謝の念を抱いていた。
それと同時に、彼はある疑問を抱いていた。
その疑問というのは、いわゆるリンのサーヴァントであるアーチャーの正体で、劇中に登場する他のサーヴァント達の真名が明らかになっていく中、唯一アーチャーだけがその正体が明かされていないため、ダンブルドアはその脳内をぐるぐると回転させながら、アーチャーの正体について考察していた。
リンのサーヴァントであるアーチャーは弓兵のクラスのサーヴァントではあるものの、短剣などを用いて戦うその姿はとても弓兵らしからぬ姿であった。
けれども、【Fate/stay night】の序盤にて描かれていたアーチャーの戦闘描写にダンブルドアは惹かれていたのか、アーチャーの正体に関する伏線はないかとページを一枚一枚凝視しながら読んでいた。
と、その時.......どこからかノックがする音が聞こえたかと思えば、そこにトムが現れたため、ダンブルドアは読んでいた本に栞を挟む形で閉じると、その本をテーブルに置くのと同時に自室にやってきた彼に対し、にこやかな顔で対応していた。
一方、トムの方はダンブルドアの顔から目を逸らすことなく見つめると、彼に向けてこう言った。
「ダンブルドア先生。一つ、相談したいことがあるのですが......大丈夫でしょうか?」
トムの口から出た相談という言葉に対し、目を見開くダンブルドア。
そして、トムが自身に相談してきたことが嬉しかったのか.....彼の悩み事に対し、真摯に向き合おうと決めたような顔になって後、彼に向けてこう言った。
「ほぅ、君が相談事とは珍しいのぉ」
珍しく悩み事を持ちかけてきた彼に対し、ダンブルドアがそう言うと....その言葉を聞いたトムは、自身の胸の内にある思いを語る覚悟を決めたのか、意を決した様子でこう言った。
「その......ダンブルドア先生は、誰かのことが好きになった経験ってありますか?」
トムの口から出た言葉を聞いたダンブルドアは、愛を知らないトムが愛について理解を深めたいと思っているのだと理解したのか、難しい質問をするのぉと呟いた後、それでも彼の相談事に寄り添おうと思ったのか、トムの質問に対してこう答えた。
「あぁ、あると言えばある。だが.....誰かを好きになると云うことは、良いことばかりではない」
「そう......なのですか?」
愛を知らないが故に、愛を知ろうとする姿勢を取るトムに対し、ダンブルドアは自身の経験を踏まえた上でそう言った後、その言葉に続くようにこうも言った。
「そうだとも。少なくとも恋をすることで傷つき、苦しむ人々も居る。だが.....それらは全て相手を思いやっているからこそ、相手のことを愛しているからこそ、そうならざるを得ないのじゃよ」
「愛.......」
ダンブルドアがそう言った瞬間、トムの脳裏に浮かんだのは.....お互いのことを想いつつも、いつの間にかすれ違ってしまうシロウとセイバーの姿で、そのことが脳内に浮かんだトムはますます愛について分からなくなってきたものの、胸の中にあった空虚が埋まる感覚のことを思い起こしたのか、あの感覚が愛だったのかと納得するような様子になっていた。
ふと、トムはそう思いながら視線を机の方にズラすと.....そこにあったのは、見覚えのある本こと【Fate/stay night】のセイバールートの上下巻だったため、彼が目を見開いたのは言うまでもない。
「どうかしたのかの?」
「......先生も、この本を読んでいたのですね」
そう呟くトムの顔には、自身をホグワーツへと導いた人物もまた【Fate/stay night】を読んでいたことに対する嬉しさ、そして喜びの表情が浮かんでいて、それを見たダンブルドアもまたニコニコとした様子で笑っていた。
あぁ、ダンブルドア先生も自分と同じ部類の人間なんだ。
そう思ったトムは、完全に吹っ切れてしまったのかは分からないものの、とにかく【Fate/stay night】が好きな仲間と出会えたことに対する嬉しさを噛み締めていた。
それはダンブルドアも同じだったようで、これ程までに嬉しそうな顔をするトムを見たことがなかったのか、彼もまた嬉しそうな顔になっていたのだった。
「そうじゃな......私はつい最近読み始めたばかりなのだが、これ程までに面白い作品は初めて読んだ気がするのぉ」
「ダンブルドア先生もそう思っていたのですね!!」
【Fate/stay night】という作品を通し、自身がそれを読んで感じた感想や想いと共に、同じ喜びを分かち合っていく。
孤独な人生を歩んでいたはずのトムにとって、それは何より楽しかったようで.....この後、彼はダンブルドアと共にアーチャーについての考察合戦を繰り返した後、マートルを含めた【Fate/stay night】のファンの生徒達と共に秘密裏に話し合いを進め、ダンブルドアが顧問になる形でホグワーツ内に【Fate/stay night】のファンクラブを設立。
そのファンクラブは、後々魔法界における一大オタクコミュニティになるのだが.....それはまた別の話である。
(グラミー・シード.....か。出来ることなら、生きているうちに彼と会ってみたいのぉ)
ちなみに、その本の作者がホグワーツの生徒であることを彼らが知らなかったのは言うまでもない。
アルバス・ダンブルドア
皆さんご存知ホグワーツの学園長。
ホグワーツ内にて、ジワジワと【Fate/stay night】が流行っていることを把握していて、そんなに面白いのかと思って読んでみたところ、案の定どハマりした模様。
その結果、トムとの関係性が良好となるというオマケ付き。
そして、トムとマートルが立ち上げた【Fate/stay night】のファンクラブの顧問としてちゃっかり就任したとか。
なお、この後出版される凛ルートや桜ルートなどでしっかり曇った末に大火傷を負ったらしい。