甲竜伝説ヴィルガスト 再編   作:白豚くん

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亜美さんは原作漫画2部に出てくる人です。
本当はもっと出番がある予定だったんじゃないかな、と思います。
原作雑誌が廃刊になったので、2部は最後駆け足で進んだんですよね・・・。エンディングは今でも納得できないので、この作品を作ってもらおうと思った次第です。


第6話:真実の記憶

記憶を漂白され、己の名すら失った空虚な器――。 神殿の静寂の中で呆然と立ち尽くす少女に対し、邪神は最後にして最も残酷な仕上げを開始した。何も書かれていない真っ白な魂に、毒に浸した筆で「偽りの真実」を書き込んでいく。

 

「……あ……、……あ……」 少女の口から漏れるのは、もはや言葉を形成しない、ただの空気の震え。 その無防備な精神の深淵へと、邪神の声が「神託」として響き渡る。

 

「名もなき人形よ。お前が誰であるか、そしてお前を裏切った者が誰であるか、余が教えてやろう……。これこそが、お前が忘れていた、血塗られた真実だ」

 

邪神が「忘却の兜」の黄金の角に指を触れると、禍々しい紫色の魔力が三智子の脳髄へ奔流となって流れ込んだ。

 

■ 第1の光景:親愛の崩壊

 

【偽りの記憶:放課後の裏切り】

 

真っ白だった三智子の視界に、鮮やかな、だがどこか歪んだ色彩の光景が広がる。 それは夕暮れの教室。三智子(と定義された自分)は、親愛を込めて一人の少年の名を呼ぼうとしていた。その名は、三池瞬。邪神は彼女の意識に「これがお前が愛した男であり、幼馴染であり、そしてお前を最も深く傷つけた男だ」と定義を叩き込む。

 

記憶の中の瞬は、見知らぬ女子生徒と親しげに寄り添っていた。 三智子は、震える声で彼に問いかける。 『瞬ちゃん……その子、誰? ずっと一緒にいようって、約束したのに……』

 

瞬は、三智子を冷たく射抜いた。その瞳に宿っているのは、かつての優しさではなく、ゴミを見るような嫌悪感だった。 『……しつこいんだよ、お前。付き合ってる? 幼馴染? 笑わせるな。俺がいつそんなことを言った?』 隣の女子生徒がクスクスと笑いながら瞬に聞く。 『えー、瞬くん。三智子ちゃんと付き合ってるって聞いたけど、いいの?』

 

瞬は女子生徒の肩を抱き寄せ、三智子の目の前で吐き捨てた。 『あんな奴、彼女なわけないだろ。亜美。ただの近所の迷惑なストーカーだよ。顔を見るだけで反吐が出る。お前がそばにいるだけで、俺の人生は汚されるんだ。二度と俺の名前を呼ぶな、この「出来損ない」が!』

 

三智子の胸に、鋭い痛みが走る。 (……痛い。苦しい。瞬ちゃん……どうして、そんなこと……) 記憶を消されている彼女には、これが「偽り」であると見抜く術はない。ただ、脳に直接流し込まれる瞬の罵声が、彼女の新しい「真実」となっていく。

 

■ 第2の光景:肉体の支配

 

【偽りの記憶:理由なき暴力】

 

次の光景は、暗い路地裏。 雨が降りしきる中、泥まみれで倒れ込む三智子を、瞬が冷酷に見下ろしている。 理由などない。ただ、瞬にとって三智子は「自分を満足させるためのサンドバッグ」に過ぎないという定義が、邪神によって補強される。

 

『……ひっ、ごめんなさい、瞬ちゃん……っ!』 三智子は泥の中で這いつくばり、彼の靴を掴んで許しを請う。だが、瞬の容赦ない蹴りが彼女の腹部を抉った。 『誰が口をきいていいと言った? お前は俺の所有物だ。殴られ、蹴られ、俺の不機嫌を解消するためだけに存在する肉の塊なんだよ』

 

瞬は彼女の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。 その瞳には一欠片の慈悲もなく、ただ支配の悦虐だけが宿っている。 『お前のような価値のない女には、痛みだけが相応しい。いいか、お前は一生、俺の下で這いずり回っていろ』

 

三智子の身体が、記憶の痛みに反応して痙攣する。 (……暴力、……冷たい目。私は、この人に……こんなに痛いことをされていたの……?) 本能レベルで植え付けられた「恐怖」が、かつての愛を「服従」へと書き換えていった。

 

■ 第3の光景:絆の孤立

 

【偽りの記憶:家族の裏切りと洗脳】

3つ目の光景は、彼女の「家」だった。 食卓を囲む三智子の両親。その中央で、瞬は完璧な優等生を演じながら、両親に毒を吹き込んでいた。

 

『お父さん、お母さん。三智子は本当に駄目な奴なんです。学校でも馬鹿にされて、僕がいないと何一つできない、救いようのないクズなんです。僕が面倒を見てあげないと、すぐに犯罪でも起こしかねない』

 

両親は、瞬の言葉を鵜呑みにし、自分の娘である三智子に冷酷な蔑みの視線を向けた。 『……そうね、瞬くん。本当に、あんたはどうしてそんななの?』 『三智子、お前は我が家の恥だ。瞬くんの言う通りにしていればいいんだ。彼に見捨てられたら、お前には生きる価値もないんだからな』

 

瞬は三智子の耳元で囁く。 『見たか? お前の親も、お前の味方じゃない。お前を理解し、お前を「正しく」扱ってくれるのは、世界で俺一人なんだよ。だから、俺に逆らうな。俺の言葉だけが、お前というゴミの唯一の救いなんだ』

 

周囲の全てが敵に回り、本来自分と心がつながっているはずの瞬が、自分を虐げているという孤独。 三智子の精神は、底なしの泥沼へと沈んでいく。 (誰も……誰もいない。お父さんも、お母さんも……。瞬ちゃんが、瞬ちゃんの言うことだけが……正しいの……?)

 

三智子の魂は、絶望のあまりひび割れ、砕け散る寸前まで追い詰められていた。 だが、邪神はまだ手を止めない。 「ククク……よく耐えている。だが、これを見てもお前は、その男を『大切』だと言い張れるか?」

 

邪神は、最も決定的な「4つ目の光景」を提示する準備に入った。 それは、彼女の魂を完全に破壊し、ルシーズという名の「憎悪の化身」へと変貌させるための、最高の「真実」である。

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