禪院家に強術式の男として生まれても詰むことあるんだ……   作:ある日の残り香

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 不動明王。火炎を背負い怒りの表情を浮かべ、右手に三鈷剣を持ち、左手に羂索を持つ、人々を煩悩から解放し正しき道へと進ませる慈悲深き仏。










第二十六話【脳みそが溶けていく】

 

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視点:禪院真希

 

 私は憂太と共に禪院家へ辿り着く。

 

「……真希さん、何かあれば僕の後ろへ。」

「お姫様扱いかっての。私も戦える。」

 

 それから顔を見合わせて頷くと、禪院家の敷居を跨ぐ。一番最初に私たちを出迎えたのは、よりによって直哉だった。

 

「真希ちゃんやん。何で戻ってきたん?」

 

 その顔に浮かぶのは、歓迎の表情ではなかった。むしろ、すぐに帰れとでも言いたげな、排斥の感情が浮かんでいる。

 

「一樹が当主になったんなら、挨拶しないわけにはいかないだろ。」

「そか。んで、乙骨くんはなんなん?結婚の挨拶?」

「いえ!真希さんの付き添いです。」

「付き添い、ね。他には来とらん?」

「ああ、私たち二人だけだ。」

「ふーん……。ほなら、ここでしばらく待っといてくれへん?当主サマに二人をこのまま上げていいか聞いておかへんと。」

 

 違和感。直哉が一樹を呼ぶ時、これまでは常に「一樹くん」と呼んでいたはずだ。それが、「当主サマ」なんて一枚壁を隔てたような呼び方になっているというのは、どうにも不自然だ。

 もしかして、直哉は気づいているのか。遺品発言といい、一樹が既に羂索の手に落ちていることを。

 

 直哉が奥へ歩いていくと、私たちが好き勝手動かぬように監視がついた。と言っても躯倶留隊、憂太を押し留めるのには力不足だ。本気で抑えるつもりはないらしい。

 とはいえ、下手に突破しようものなら炳が飛んでくる。そうなれば正直、私じゃ憂太の足手纏いになる。あるいは負傷した私を見て憂太が正気を失い禪院家が潰される可能性もある。流石にそれはまずい。

 だから、大人しく直哉を待つ。その間、躯倶留隊がボソボソと喋る雑談に耳を傾ける。

 

「真希の奴、男連れてきやがった。」

「乙骨憂太……五条家と同じルーツを持つ特級術師だ。」

「マジかよ。」

「真希なら、今の当主様の狂気を止められるんじゃ……」

「真希に会うことで余計に様子がおかしくなったら嫌だから、帰って欲しいけどね。」

 

 私と憂太を揶揄するくだらない会話かと思えば、一樹に関する話を聞くことができた。狂気、様子がおかしい……いつものことのようには思えるが、基本的に一樹に懐いていた人間の多い躯倶留隊からこのような発言が上がるのは少々妙だ。

 

 なんて考えていると、直哉が戻って来る。

 

「"真希ちゃんは帰れ"やって。乙骨くんは当主サマが通してもええって言っとる。真希ちゃんのことは俺が護衛したるから、高専戻んで。」

「は?なんでだよ。」

 

 憂太だけを通す……何故だ、その理由がわからない。普通は逆だろう。憂太も訝しむような表情をする。いや、それより……直哉は普通に一樹と会話しているのか、これ。

 

「ってか、直哉。遺品つってたのに一樹生きてんじゃねえか!」

「おかしいなぁ、乙骨くん。冗談のつもりで言ったんに、真面目に受け取ったん?」

「え?!冗談だったんですか!?」

「そりゃそやろ。俺言うたやん、"笑うところやで"って。」

「面白くないですよ。」

「酷いなぁ、人の心とかないんか?」

「不謹慎ネタするオマエが言えたことか?」

 

 憂太はズバズバ言う。それはそれとして、不謹慎ネタを挟む直哉も直哉だ。紛らわしい。

 

「で、なんで私は帰らなきゃいけないんだ。理由まだ聞けてないんだが。」

「当主サマには会いたくない人間が四人おる。そのうちの一人が君や、真希ちゃん。」

「……他の三人は?」

 

 詳しい理由を話してくれるとは思わない、こうなればメンバーの共通点から大体の理由を考察するしかない。

 

「悠仁くん、恵くん、あとは裏梅とかいう氷の呪詛師や。ほら、渋谷事変で補助監督殺して回っとった奴。」

「……そうか。」

 

 メンバーの人選が意味わかんねえな……。共通点がわからん。

 

「そういうわけやから、そろそろ帰るで。真希ちゃん。」

 

 事実、私はここにいても憂太の足手纏いになるだけだ。目の前にいる直哉でさえ、本気で私たちを始末するつもりになれば憂太でも苦戦するだろう。そんな時、私という足手纏いがいれば、憂太も下手をすれば負けかねない。

 一樹の顔は見たい。真実は知りたい。だが……私には、それができるだけの実力がない。

 

"そのカラクリによってお前が完成する時、真依が死ぬ。だから、もういいんだ。お前は、強くならなくていい。吾輩が二人とも守ってみせるから。"

 

 こんな時に思い出すのは、かつての一樹の言葉。どこまでも私たちを庇護対象としてしか見ていない、一樹の言葉。私が強くなることを拒んだ、呪いの言葉。

 

「……直哉さん、保険として縛りを結んでくれませんか?」

「あーはいはい、どうせ真希ちゃんを無事に送り届けて危害を加えるな、とかやろ?信用ないなぁ。ええで、縛り結んだる。」

「話が早くて助かります。」

 

 推定羂索が、私を殺す気がないのは……弱すぎて、殺す必要がないからか?

 

「……直哉、最後に一つだけ聞きたい。」

「なんや。」

「真依のこと、何か知らないか?」

「……知らんね。」

 

 今の間は、絶対に知っている人間の間だ。しかし、その目は追及を許さないと言外に伝えている。そんな中で、躯倶留隊の一人が口を開く。

 

「直哉さん!話してやりましょうよ、今の真依は──」

「アカンで。」

 

 次の瞬間、その隊員の姿が消えた。見れば、壁から鋭い嘴のようなものが飛び出している。足元には血溜まりだけが残っている。絵のような質感を持っているそれはおそらく式神……それも、【鳥獣戯画法術】によるものだ。

 

「当主サマの意向から著しく逸れるようなことしたらアカンやろ。壁に耳あり障子に目あり……当主サマは聞いとるで、全部。」

 

 目の前でいとも容易く行われた殺人。そして、それに対して騒ぎ立てる様子もなく、ただ恐怖に身を震わせて黙り込む他の躯倶留隊と、呆れ顔の直哉。

 

「これは──」

「当主サマの式神や。篭城、暗殺用やね。聴覚を同期させとる式神で、今みたいに遠隔で起動できるんよ。」

 

 そんな式神、一樹が使ってるところを見たことはないし、一樹がそんな悪趣味な式神を作るとは思えない。

 

「憂太──」

「大丈夫、真希さん。僕に任せて。」

 

 今私たちは、禪院家当主にして特級術師の独擅場にいる。憂太の表情も、真剣なものに変わる。私がこれまで話した一樹の人物像とのギャップに憂太も確信を持ったようだった。

 

「そんで?真希ちゃんはもうわかったやろ。今の真希ちゃんの実力じゃ、一樹くんに会うのも難しいで。ここは乙骨くんに任せたほうがええやろ。」

「……。」

 

 真依のこと、一樹のこと、他にも色々聞きたいことはあるが直哉の言う通り。今の私には力がない。

 

「憂太、死ぬなよ。」

 

 私は、直哉と共に禪院家から踵を返した。その心はまるで、葦を咥えずに飛び始めた雁のようで、足元がおぼつかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

視点:乙骨憂太

 

 病的なまでに静かな廊下を進む。当主の部屋まで案内してくれる躯倶留隊の人はさっきから震えて、一言も言葉を発しない。

 やがて、一つの襖の前で立ち止まると「ここだ。」と言って走り去ってしまった。ここが、禪院一樹……真希さんのお世話になった術師の部屋で、今の羂索がいる所。

 

「失礼します。」

「どうぞ。」

 

 襖を開けると、座布団に正座する女性が一人座っていた。向かい合わせになるように彼女の前には同じく座布団が置かれており、部屋の主は僕がそこに座るように促す。

 

「……あなたが、一樹さんですか?」

「うむ。そうである。」

 

 額には、一文字の切り傷と縫い目。高専でみんなから聞いた羂索の情報と一致する。

 

「座りたまえ。」

「……はい。」

 

 座布団の上に正座し、いつでも抜けるよう傍に刀を置く。

 

「初めまして、乙骨殿。真希が世話になって──」

「本題に入りましょう、羂索。」

「……まったく、強引な子であるなぁ。」

 

 部屋の中には、何枚もの呪符。全てに絵が描かれており、おそらくどれも即座に使用することができるだろう。そして、壁にかけられているのは筆のような形をした呪具。血の臭いが染み付いているから、たぶん話に聞いた【穢筆】っていう呪具だろう。そして、その横には教科書で見たことのあるような剣が飾られている。呪力を感じるから、これも呪具なのかな。

 

「本題、か。まず初めに断っておくが、吾輩は禪院一樹である。そこに偽りはない。」

「……信じられるとでも?」

「ふふっ、確かに証明する方法はないな。」

 

 とはいえ、僕が知る禪院一樹という人物の情報も真希さん経由で聞いただけ。禪院家の中で、唯一と言っていいほど真希さんと真依さんのことを気にかけてくれたこと、高い実力を持つこと、20歳になってからお酒に溺れるようになったこと、呪霊によって女性になってしまったこと。

 目の前の女性が本当に禪院一樹であるのかどうかを見極める材料は持っていない。ただ一つ明らかなのは天元様の証言と、額の縫い目。

 

「……その額の縫い目は?」

「羂索にやられたのだ。」

「具体的に。」

「脳を取り出され、肉体に寄生された。」

 

 自白した!?

 

「じゃあ、羂索じゃないですか!」

「違うのだ!吾輩にも詳しい故はわからぬのだが……事実吾輩は吾輩なのだ。」

「……今のところ、信用できる要素がないんですが。」

 

 刀を握り、いつでも抜けるように構えたが、羂索は一切構える様子がない。敵意がないと示すように。

 

「……順を追って話す。が、話す前に縛りを結ばせてほしい。この話を、高専の他の術師には聞かせないこと。特に、虎杖悠仁、伏黒坊にはな。」

「なんでその2人は名指しで駄目だと言うんですか?」

「宿儺の器だからだ。」

「──っ!伏黒くんも?」

「うむ。吾輩の正体は宿儺にバレたくない。故に、保険として縛りを結びたい。結ばぬのなら、貴殿をここで殺すことも辞さない。」

「……。」

「平時ならば負けるだろうが、禪院家においてならば……吾輩も貴殿の首に手が届く。」

 

 僕は、縛りを結ぶことに応じた。

 

「──では話そうか。奇妙で、意味のわからないこれまでの経緯を。」

 

 

 

 

 

 

 

視点:禪院一樹

 

 吾輩は死んだ。全てがどうでも良くなったのだ。吾輩が出しゃばった真似をしたせいで、真依が死んだのだからな。ならば、吾輩などという異物は早々に退場すべきだ。生きていていいわけがない。

 

 羂索が吾輩の身体を乗っ取る可能性は低いと考えておった。羂索にとって、【呪霊操術】は天元と日本人の同化に必要不可欠であったからな。

 

 が、吾輩の悪い癖でな。頭が悪くて、様々なことに思い当たらないのである。そう、羂索は虎杖悠仁の母の術式を保有しておった。これは、長年使い込んだ術式が脳に刻まれたからだと考えておったのだが、重要なのはおそらく、浸かった時間ではなく、術式を使った密度だったのだ。羂索は、この一年程度で通常ではありえないほどの数の呪霊を取り込んでおった。

 それ故に、きっと羂索の脳には既に【呪霊操術】が刻まれつつあった。それを、彼奴は【反重力機構】を手放す縛りか何かによって刻みつけたらしい。

 

 結果として、羂索は吾輩の死体をしばし弄んだのち、頭を開くと奴の生得術式を発動させたのだろう。

 

 ……吾輩はこの世界における未来の記憶を持っておってな。もしもそれが羂索の手に渡れば、どうしようもない詰んだ状況になっていただろう。つまり、吾輩の愚かさによって世界の危機が訪れていたわけだ。

 

 生きていても死んでいても、どちらにせよ害悪になるなぞ……生まれてくることさえ間違いだっt──痛いっ!痛いのであるっ!乙骨殿、吾輩の頭を叩くのはやめたまえ!!

 

 ──して、ここからが重要であり、吾輩でもまだよくわかっていない部分なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?吾輩は死んだはずでは?」

「……く、くく!やられたね、君の作戦勝ちだよ。禪院一樹。」

 

 吾輩は死後、自身の生得領域で目を覚ました。目の前には、人間の脳みそくらいの大きさの紙が、吾輩の領域内に広がる水たまりでふやけて溶け始めていた。

 

「なるほど、肉体が魂に勝つ……そんなこともあるんだね。」

「ん??」

 

 その紙が羂索だと気づいたのは、その紙に漫画風にデフォルメされた彼(所謂メロンパン)が描かれていたのを確認したからである。正直、なぜこのようなことになったのか吾輩でも見当がつかなくてな……。

 

「ふふっ、君の最後の一手……君にしては賢かったね。私の知的好奇心をくすぐって、肉体を奪った私を逆に食い殺すなんてね。」

 

 故に、羂索が吾輩のことをベタ褒めしていても、その理由がてんでわからなかった。

 

「──まあ、吾輩は天才であるからな。」

 

 その時は訳もわからずドヤ顔で羂索を見下していた。負けたのが悔しくて見た、今際の際の夢か何かだと思ったのだ。

 

 

 

 そのままふやけて、溶けていく羂索を眺めていると、吾輩は現実で意識が覚醒した。

 

 その瞬間目に入ったのは、頭が開かれて転がってる夏油傑の遺体。吾輩は焦ってすぐに【円鹿】を複数召喚した。お陰で禪院家が【呪霊操術】の暴走で吹き飛ぶことは回避されたのだが、それと同時に吾輩が生きている事実も実感してしまった。

 

 鏡を見れば、額には悪趣味な縫い目。机の上には禪院憲倫の名で認められた遺書。

 

「……つ、妻、禪院一樹に当主の座を譲り、全財産も譲渡するものとする?」

 

 遺言状というものは基本的に、開封してしまったらその時点で無効となるのだが、おそらく吾輩が……いや、吾輩の肉体でこの遺書を読むことで呪術的な効力を持つようになっておったのだろうな。

 吾輩が死んでおるうちに婚姻届も提出されたようであるし。なんらかの暗示の呪術でも用いて手続きを進めたようだ。

 

 羂索が自分のためにやったことなのだろうが、全部がまるで吾輩のために用意されたようであった。故に吾輩は、笑うことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「──というのが、羂索の末路である。」

「すみません、意味がわからないです。」

 

 吾輩も良くわかっておらぬから、正確な説明ができぬ。

 

「吾輩の脳は今羂索のものに置き換わっておるのだが、彼奴の記憶を読むことができぬが故、この出来事に関する真実が明らかになることはなかろう。」

「そもそも、魂が肉体に負けるってなんですか。」

「それについては渋谷事変における禪院甚爾の一件で前例があるのだが、あちらに関しては呪力ゼロの天与呪縛という非常に稀有な事例であったし、吾輩のものとは大きく事情が異なるのよな。」

 

 考えられるとすれば、これまで魂の座には一つ次元の違う■■■■という存在が座っていた為に規格が異なっていて、タイプCポートにUSB端子を差し込もうとして破損した……というような現象が起こったのだろうか。

 それならば羂索が二次元の姿、紙っぺらになっていたことについても説明がつくが、吾輩の肉体自体はこの世界のものであるはずだし、肉体である吾輩が彼奴の魂に勝てた理由がわからぬ。

 

「さて、羂索と吾輩については以上である。」

「……では次、真希さんの妹さん。真依さんについて。先ほど、死んだとか言ってましたけど。」

「これについては、真希には絶対に話すでないぞ。」

 

 吾輩は立ち上がり、乙骨殿に手を差し伸べる。

 

「直接見た方が早い。」

 

 

 

 

 

 

 

視点:乙骨憂太

 

 僕は一樹さんの案内のもと、忌庫の前に立つ。

 

「忌庫内の当該区画は天元様に捕捉されないように、式神が独自の領域を張っておる。少し静電気に当てられたような感覚がするだろうが我慢しておくれ。」

 

 ひんやりとした忌庫内には、1人の女性が磔にされていた。

 

「これって……」

「真依である、が。平安の術師に受肉されておる。」

 

 横目に見た一樹さんの目は、まるで墨を落としたかのように黒く染まっていた。

 

「死んだ、というのは……?」

「基本的に受肉は殺人と同じである。被害者の魂が奥底に沈められる訳であるが故な。」

「……基本的に?」

「うむ。そして、それこそが吾輩がまだ生きる理由であり、真依を介錯しない理由だ。」

 

 一樹さんが、僕の手を掴む。

 

「吾輩は、真依を取り戻したい。」

 

 その目はとても切実で、震えていた。

 

「そのためには、虎杖悠仁と来栖華の生存は不可欠……だが、吾輩の干渉によって、どこでどんなズレが起こっているのか見当もつかない。故に、あの2人をあらゆる危害から守ってはくれぬか?」

「……その2人が、真依さんを取り戻す鍵になるんですね?」

「うむ。だが、虎杖悠仁の中に宿儺がいるうちは不可能である。宿儺が虎杖悠仁から伏黒坊に移ったのち、九十九由基の手記を虎杖悠仁が確認して初めて準備段階が整う。」

 

 伏黒君が宿儺の器って言ってたけど、そういうことか。

 

「──伏黒君を見捨てろってことですか?」

「いや、伏黒坊に受肉した宿儺との戦いの中での黒閃を経た虎杖悠仁が【御厨子】を使用可能になり、伏黒坊は取り戻せる。」

「なるほど、見捨てるつもりかと思ってびっくりしました。つまり、宿儺との決戦後まで、2人の命を守ればいいんですね」

「……とはいえ、吾輩の知る未来とは既に戦力面などで大きく展開が異なるが故、吾輩は主要戦力の欠落等を埋める為にも参戦し、おそらく命を落とすだろうな。だから、後のことも任せたいのだ。」

 

 その言葉は、一見命を賭ける覚悟のようにも聞こえた。だが、僕はそれが覚悟じゃないと見抜いた。それは、逃げだ。罪の意識や、生きることへの疲労による、逃げ。それは、不誠実だ。

 

「ふざけないでください。生き残って、自分で……真依さんを助けてあげてくださいよ!!あなたには、その責任と義務がある!!」

「だが……」

「僕も最善は尽くします、それでも、あなたが死ねば……真依さんが戻ってきたとしても、真希さんと真依さんの心はどうなるんですか!?」

「……吾輩は」

「自分をもっと、大事にしてください。僕は、僕が大事だと思う人の大切な人を見殺しにはしません。」

「……。」

 

 ……あれ、一樹さん?

 

「──ぅ…うぅ……!うぁぁああああぁ……っ!!」

 

 な、泣いちゃった!!

 

 ……背中さすっておこう。





振り返り

18話「降霊」より
 カット多様の中、わざわざ残された「肉体が魂に負ける!?」のシーンは、いつかどこかで使えるんじゃないかと思って当時の私が残したものでした。19話執筆中にこの生存ルートを思いついたので、本当に残して良かったなと思ってます。
 これがなかったら、絶命の縛りで身体を塵に変えて「僅かな可能性だとしても、記憶は読ませない」と、身体を利用できなくしたまま入水する死亡エンドでした。その場合、羂索が戦利品として手にした【贋作・草薙剣】は髙羽戦でハリセンに変えられてしまい、そのまま退場します。



20話の後書きより
Q,一樹に器の才能はありますか?
→皆無。仮に呪物が取り込まれた場合、何故か中に入った呪物が死にます。

これは、一樹の考察が微妙に当たっていて、禪院一樹の魂の座が擬似的な三次元空間となっており、二次元のキャラクターや物品は紙面に変換されるためです。そして、生得領域内には血の水溜りができているので……溶けて消えてしまいます。









オマケコーナー

Q,結局、どうして一樹の自我は残ってるの?
→禪院一樹の肉体そのものが茂井さんという三次元の存在の呪いによって生成された特殊なモノである上、田中静華が遺した「肉体の自我と肉体にギャップがあると大変そうだなぁ」と思って、現在の肉体に合わせて「描き直された」ことによってズレが減ったことで強度が増したため、1000年選手の羂索の魂にもギリギリ打ち勝てた形になります。……高次元存在の手が二回も加わった肉体に魂の強度でワンチャン勝ててたかもしれない羂索。



Q,田中静華はどうなった?
→元の世界で成仏して、姉と再会し、天国から茂井さんを見守っています。茂井さんが老いて死んだら迎えにいくんじゃないんですかね。禪院一樹の中からアルコールへの依存を持っていってくれた救世主。でもそれ、そもそもあなたが持ち込んだモノですよね。
→禪院一樹の脳内には「そんな魂が自分の中にはいた」という記憶こそ残っているけれど、顔も名前も何も思い出せない。残ったのは、漫画『呪術廻戦』の記憶だけ。



Q,え?茂井さんって元の世界で普通に生きてるの?
→ちゃんと生きてって言われたから、強迫観念に駆られるまま生きていきます。が、長く生きる中で少しずつ整理をつけていくでしょう。二度と、悲劇が繰り返されないように。



Q,ここ数話の闇堕ちしてたっぽい演出は?
→羂索の記憶さえ読めれば、もっと早くに真依を取り戻せるかもしれないのに、羂索が消えちゃったから記憶が読めなくて、一樹くんがメンタルぼろぼろで病んでました。真希と真依のためならなんでもやりますってメンタルで、邪魔する人間は殺す。乙骨くんの説教で正気に戻りました。成人男性のガチ号泣(見た目は女の子だけど)だぞ。怖いぞ。



Q,なんで真希を帰したの?
→真希に話したら、明らかに真依のために真希も無茶をするから。大正義覚醒フィジカルギフテッド状態じゃない状態だと普通に死にかねない。あと、最悪の場合万が真依のフリをして「全部壊して」するから。



Q,なんで宿儺に会いたくないの?
→知られたら邪魔されそうだから。宿儺さん絶対嫌でしょ、自分の術式を利用しようとする雑魚とか。







羂索「え?アレって策略とかじゃないの?禪院一樹が普通に馬鹿だっただけ?えぇ〜?」
一樹「あの戦犯とも言えるような負け惜しみが功を奏すとは思わんかった……。」

一樹くんが策略で羂索を倒せると思った?
一樹くんが何かを仕込めるタイプだと思った?
詰めの甘さで、羂索を討ったんだよ。
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