呪術廻戦の世界でMobが頑張る話   作:不知火りん

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評価していただけるだけありがたいとはいえ、評価1はなかなか心にきますね。理由は分かりませんが、転生者が主人公だと思って読んでいたら違った、ということで不快に思われたのかな、と勝手に予想し、小説のあらすじに注意書きを追加しておきました。不快に思われた方には申し訳ありません。

それでは10話です。


【日記形式】第10話 死線

●1996年 8月17日

 若様。

 

 今日から、私も日記をつけることにしました。

 

 ここは「呪術廻戦」の世界で、これから最悪なことがたくさん起きる場所。

 若様は、それを変えたかったんですよね。でも、若様は私のせいで……。

 

 だから、私が代わりにやります。

 

 若様の代わりに、私が最強になります。

 

 若様が作りたかった、誰も簡単に死なない世界。古い因習に囚われない世界。それを作って見せます。

 

 この日記は、若様への誓いの記録です。

 

 見ててね、若様。絶対に、この世界(呪術廻戦)をハッピーエンドにしてみせるから。

 

 

 

 

●1996年 8月18日

 本家の跡取りになったので、蔵にある古い本を読めるようになりました。

 昔の本家の人たちが書いた、術式の本です。そこには反転術式とか、術式反転とか、領域展開とか、その他様々なことが書いてありました。

 

 反転術式は、マイナスの呪力を掛け算して、プラスにする技。頭ではなんとなく理屈がわかるんですけど、実行するのはすごく難しいです。昔の人でも、できたのは数人だけだそうです。

 術式反転については「塩清操術を反転させれば、恐るべき破壊力を生むが、制御を誤れば術者自身も自壊する」という警告文だけがありました。危険すぎるためか、具体的な記述は意図的に削除されたみたいです。

 領域展開に至っては、誰も成功したことがないみたいです。

 

 でも、高専に行くまでに、全部できるようになってみせます。若様がなりたかった「最強」にならなくちゃいけないんですから。

 私は天才・汐宮瀬那になったんです。これくらい、できないとだめですよね。

 

 

 

 

●1996年 9月3日

 初めての単独任務に行きました。3級呪霊の討伐です。

 

 当主様は「まだ早い」と反対しましたが、強引に押し通しました。

 

 結果は、圧勝。

 

 若様と一緒に訓練してきた技術があれば、3級程度なら敵ではありません。塩の刃で四肢を切り落とし、塩の槍で頭を貫きました。

 

 帰りの船で、ふと気づいたことがあります。私、死ぬのが怖くないんです。若様がいない世界で息をしていることの方が、よっぽど怖い。だから、死に急ぐような戦い方ができてしまう。避けるよりも、肉を切らせて骨を断つ。その方が早いですから。

 

 でも、今死ぬわけにはいきません。絶対に、ハッピーエンドにしなくちゃいけない。

 

 矛盾していますね。

 

 早く死んで若様のところに行きたいのに、死ぬわけにはいかないなんて。

 

 会いたいです、若様。

 

 

 

 

●1996年 10月12日

 また任務です。今度は2級呪霊。  

 

 当主様には「死にたいのか」と怒鳴られました。私だって、まだ死にたくはありません。

 でも、生ぬるい訓練では、若様が憧れたあの人……五条悟という化け物には届かない。命をかけた実戦でしか、得られないものがあるはずです。

 

 2級呪霊は、3級とは違いました。左腕を落とされかけ、意識が飛びそうになりました。

 でも、歯を食いしばって塩で無理やり傷口を塞ぎ、反撃しました。海水から大量の塩を抽出して、呪霊を押し潰してやりました。

 呪力を使い果たして倒れ、目が覚めたら家の医療室でした。

 

 腕は家の術師の方に治療してもらったようです。当主様には酷く叱られましたが、聞き流しました。私には、立ち止まる時間なんてないんです。

 

 

 

 

●1997年 1月15日

 また2級呪霊を祓いました。

 今度もギリギリで右足がなくなりかけました。千切れた足を拾って、塩で義足を作ってなんとか自分で家まで帰りました。

 汐宮家の術師様たちは大騒ぎでした。「反転術式を他人に施しても、失くなった手足は生えてこない」って。まぁ、それを知っていたからわざわざ千切れた足を持って帰ったんですが。

 結局、私の足は、京都からすごい術師様を呼び寄せて、くっつけてもらいました。元通りになるまで、2週間もかかりました。

 もし、反転術式を自分で使えれば、その場ですぐ治せるのに。

 

 あのトンネルで、若様が私にくれたあの温かい光。痛いのを全部消してくれた、優しい呪力。

 思い出そうとしても、まだ掴めません。

 

 足りないのかな。もっと、死にそうにならないとダメなのかな。

 

 

 

 

●1997年 3月22日

 たまたま、1級呪霊に遭遇しました。

 それを目にした瞬間、お腹に穴が開いて、肩が砕けて、あぁ、これで終わりなんだって思いました。

 

 意識がフワフワして、目の前が暗くなっていく中で、ふと、不思議な感覚がありました。お腹の辺りで呪力が、グルグル渦巻いているのがはっきり分かるんです。あ、これだ、って思いました。これをどうにか分けて、ぶつけ合わせることができれば……。

 

 でも、あとちょっとで手が届きそうなのに掴めませんでした。指先をスルリと抜けて、感覚が消えちゃいました。  

 

 そして、その時点でもう戦う力は残ってませんでした。

 

 塩を目くらましにして、泥だらけになって、這いつくばって情けなく逃げ帰りました。

 

 目が覚めたら、また医療室でした。当主様はもう、何も言いませんでした。

 

 

 

 

●1997年 7月25日

 あれからずっと、あの時の感覚を探してました。

 でもいくら3級呪霊を倒しても、いくら2級呪霊を倒しても、あの時ほどの感覚を得ることはできませんでした。

 だから今日、自分から1級呪霊の任務を受けました。

 

 結果から言うと、死にかけました。

 前回と同じように心臓の近くを貫かれて、血が止まらず、呪力で傷口を塞ごうとしたけれど、間に合わない。

 意識が遠のく。このままじゃ、死ぬ。

 そんな時、若様への誓いを思い出しました。

 

 まだ死ねない。

 

 絶対に、死ねない。

 

 死ぬわけにはいかない。

 

 その「死ねない」っていうドロドロした執着が、頭の中を埋め尽くして……その瞬間、世界がクリアになりました。

 

 あぁ、なんて清々しいんでしょう。

 自分が世界の中心に立っているような、万能感。木の葉が落ちる音も、空気の揺らぎも、呪霊の呼吸も、すべてが手に取るようにわかります。

 なるほど。これが、呪力。これが、術式。なんだ、こんな簡単なことだったんですね。

 

 私は、溢れ出る正のエネルギーで肉体を修復しました。そして、そのエネルギーを術式へと流し込む。

 

 術式反転。

 

 指先を向けるだけで、あんなに硬かった呪霊の体が、呆気なく崩れ去っていきました。

 

 1年近くかかっちゃいましたけど、やっと一歩前進しましたよ、若様。

 

 

 

 

●1997年 7月28日

 反転術式を覚えたので、この家の中で私が一番強いです。

 

 だから、当主様と本気で戦いました。

 結果は、私の圧勝です。

 傷を治しながら笑う私を見て、当主様、すごく怖がってました。子供を見る目じゃなかったです。

 

 私は冷めた目で父さんを見下ろして言いました。「私を当主にしてください」と。当主様は、コクコク頷くだけでした。  

 この家は腐ってます。古い決まりばっかり大事にして、誰も変えようとしない。

 

 だから若様は……あんな目に遭わなきゃいけなかった。

 

 なんて……わかってます。若様が死んだのを家のせいにするのは、お門違いだって。あの日若様が死んだのは、他の誰のせいでもなく私のせいです。私が弱かったからです。私が弱くて、守られてばっかりの足手まといだったから、若様は死んだんです。 だから、悪いのは全部、私。この家を恨むのは、ただの八つ当たりです。

 

 とはいえ、若様が夢見た世界にも、こんな家はいりません。邪魔です。不要です。ゴミです。 だから、私が当主になります。まずはこの腐った家を変えなきゃいけません。

 

 

 

 

●1997年 8月1日

 正式に当主になりました。

 もちろん、家の重鎮たちは猛反対しました。まぁ、当然ですよね。「8歳のガキに」「女のくせに」って裏でコソコソ言ってました。

 

 だから、全員、わからせてあげました。

 

 塩の鎖で縛り上げて、地面に這いつくばらせたら、誰も文句を言わなくなりました。むしろ、ヘコヘコしてきて気持ち悪いです。吐き気がします。

 

 結局話し合いや説得では、この家は変わりません。力で従わせるしかないんです。

 

 もし若様なら、こんなやり方はしなかったんでしょうね。私に考えつかないような、もっと冴えたやり方で、この家を改革したに違いありません。

 

 だけど、私は若様じゃない。私には、若様のような才能も強さも優しさもありません。

 だから、若様の夢を叶えるためには、非情なことだろうと何でもするつもりです。

 

 

 

 

●1997年 8月10日

 領域展延を覚えました。

 領域展開はまだ無理ですが、代わりに展延を試したら、思いのほかすんなりとできました。1級呪霊と戦って反転術式を覚えた時、呪力の形が手に取るようにわかるようになったのが大きかったみたいです。

 

 五条悟の無下限呪術。日記に書いてありました。あれは(さわ)れないバリアだって。でも、展延があれば(さわ)れます。私の拳を、あの最強に届かせることができるかもしれません。

 まぁ、戦うつもりはないですけどね。

 

 

 

 

●1997年 8月31日

 明日、五条悟に会いに行きます。

 

 当主交代の挨拶回り。それが表向きの理由です。本当の目的は、最強がどんなものなのか確認すること。

 

 若様が憧れたこの世界で一番強い術師。分家だった頃の私でも、その名前は知っていました。

 

 本当は怖いです。

 

 私は、その人(五条悟)に認められるでしょうか。若様の代わりとして、恥ずかしくない存在になれているでしょうか。

 

 ですが、夏油傑の闇落ちを防ぎ、引いてはこの世界をハッピーエンドに導くためには、五条悟と繋がりを持っておく必要があります。

 

 私にできるでしょうか。

 不安です。

 

 

 

 

●1997年 9月1日

 五条悟に会いました。

 生意気で、意地悪で、子供っぽくて……そして、どうしようもなく強い人でした。才能、センス、術式のスペック……全て私とはモノが違いました。

 

 最初は、戦うつもりなんてありませんでした。

 

 でも、あの人は言ったんです。自分が「最強」だと。「最強の俺に負けるのが怖いの?」って。

 

 その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になりました。

 

 最強。

 

 若様が目指した場所。

 

 それを、あんなにヘラヘラと。もちろん分かっています。彼は後に本物の「最強」になるんでしょう。

 

 でも許せなかった。

 

 いや、私自身、どれぐらいそこに近づいているのか、自分を試したくなったのかもしれません。

 

 気づいたら、戦うって言ってました。

 

 最終的に、不意打ちで勝つことはできましたけど、それは彼が油断してたからです。

 

 まともにやったら、今の私じゃ勝てません。

 

 でも、それでも、不意打ちとはいえ、最強(五条 悟)に土をつけることが出来たんです。

 

 ……若様、これで少しは若様に見せても恥ずかしくない()に近づけたでしょうか。

 

 

 

 

●1997年 9月2日

 禪院家に行きました。

 色々ありましたが、ちょっとここでは書ききれません。

 

 ただ一つ言えることは、あの家は糞だということです。

 

 若様や私の目指す世界の敵だということです。

 

 とはいえ、私に現状できることは何もありません。

 私も力をつけないと、と改めて思いました。

 

 

 

 

●1997年 9月3日

 加茂家に行きました。

 汐宮家は加茂家の遠縁の親戚ということもあり、表面上は良くしてもらえたのですが、今頃は裏で陰湿な悪口を言われているんでしょう。

 どこの家門も似たり寄ったりです。

 

 これで名実ともに、本当の意味で、私は「汐宮家当主・汐宮瀬那」として呪術界に認知されました。

 

 次は高専。そこが、物語の始まりの場所。

 

 待っていてください、若様。私が、若様の代わりに最高のシナリオを描いてみせますから。

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