魔法剣士TS女子は、器用貧乏を良しとする   作:アカマ

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2 色々あった魔法剣士

 前世のころから、器用貧乏な生活を送ってきた。

 学業においては常にそこそこの立ち位置だけど、一番にはなれず。

 ゲームにおいてもそれなりの腕前にはなるけど、トッププレイヤーには遠く及ばない。

 社会に出ても大した人物になることはなかったけれど、社会の歯車としては問題ない生活を送れていた。

 

 それは異世界に転生してからも変わらなかった。

 私の生まれは、とある貴族の側室の娘というものだ。

 まあなんともいろいろ苦労しそうな出自。

 実際、私が生まれた段階ではほかに子供がいなかったせいで、人生の大半を後継者としての教育に費やし。

 本妻に子供が、それも男が生まれたとなったとたんに見捨てられた。

 あとに残ったのは、いろんな教育を中途半端に詰め込まれたせいで、貴族淑女としても後継者としても器用貧乏な側室の娘という立場だけだった。

 

 しかも実家は色々あって没落。

 私は何一つ原因にはかかわってない……というか没落するまで知りもしなかったんだけど。

 貴族の世界ってのはおっかないもので、一族郎党皆殺しらしい。

 ふざけるなって話で、私は即座に逃げ出した。

 名前も捨てて、本名の一部からそれっぽい部分をとってアカネとし、冒険者になったのだ。

 

 そこからは大変だ。

 十とそこらの身寄りのない女なんて、食い物にしてくれと言わんばかりの存在。

 しかも私は貴族時代の中途半端な教育と、私自身の趣向もあって器用貧乏な魔法剣士という立場。

 まぁ狙ってくる男は多いわ、役に立たねぇと追放しようとしてくるパーティは多いわ。

 それなら自分ひとりでなんとかしたるわ、ってことで私はより一層器用貧乏を極めて行くことになった。

 

 そもそも私は魔法剣士を好きでやっているんだ。

 だったら極めればいいじゃないか、という当たり前といえば当り前の話。

 でまぁ、実際これが上手く行った。

 上手くいくんだ……って自分でも驚きだったけど、まぁ私にも得意といえる分野があって、それと魔法剣士の相性がよかったのだ。

 

 発想力、もしくはアイデア。

 私はそれを生み出すことに長けていた。

 眼の前に課題があれば、手持ちの能力から何とか解決策を見出す。

 この時、魔法剣士はとにかくこの「手持ちの能力」の引き出しだけは多いから、私の発想力とめちゃくちゃ相性が良かったのである。

 

 後あれ、魔法戦士って対人クソ強い。

 対人に限らず、息をしていて思考して動く存在相手への勝率がめちゃくちゃたかいのだ。

 そうだね窒息だね。

 他にも相手のウラをかいて搦め手で敵を倒す方法を、私は複数持っている。

 これのお陰で、私は八歳で貴族の家を逃げ出してから、十六になるまで生きてこれたのだ。

 

 そういう搦め手を複数用意しないと行けない人生を送ってきたということでもあるのだけど。

 結果的に、今の私は三等級の冒険者。

 三等級アレば冒険者としては一流で、一人でもだいたいの依頼を受けられるようになる。

 等級すら器用貧乏とかたまにいわれるけど、私はそれでも構わないと思っているのだ。

 先日の何とかボアみたいな、街の近くに出現した危険な魔物の討伐を行う義務みたいなものはあるけど。

 ダンジョン探索の遠征に参加しないと行けない、みたいな面倒な義務はないからね。

 

 かくして頭の天辺からつま先まで器用貧乏でできている女は、今日もそれをよしとして生きているわけだ。

 

 

 ◯

 

 

 私の普段の仕事は、比較的地味なものが多い。

 というか、戦闘を行うことは滅多にないのだ。

 じゃあ具体的にどんな仕事をしているかといえば――一言で言えば、雑用だ。

 

「アカネちゃん、それじゃあ頼むわ!」

「んじゃ行くよー、”水の玉”」

 

 私は現在、桶に溜まった無数の洗濯物と、その上にどばっと巻かれた潜在を前に水の魔術を行使している。

 これは私が普段お世話になっている宿屋の洗濯物を私が手伝っている構図。

 宿の主人であるおばさんの合図を受けて、どばっと桶を水でいっぱいにした。

 

「いやぁ、生活魔術じゃここまでの水を一度に用意するのに十人くらい必要になるから、助かるわぁ」

「いえいえ。夕飯は期待してるからね」

「もちろん任せて、奮発しちゃう!」

 

 私はこの仕事を週に一回請け負う変わりに、宿の夕飯が無料になるサービスを受けられることになっている。

 ギルドが間の仲介に入った、正式な依頼だ。

 こうすることで、冒険者と依頼者間の金銭トラブルや様々な手間を取り除くことができる。

 仲介料は取られるけど、余計な手間がかからなくて楽だと人々は思っていることだろう。

 

「んじゃ、次は鍛冶屋の大将のところまで行ってくるね」

「昼食はどうするのかしら?」

「適当に食べてくるよ」

「わかったわ、行ってらっしゃい」

 

 私はこういう依頼を、複数掛け持ちした上で定期的な契約関係を依頼者と結んでいる。

 んで、週に一回まとめてドバっと処理していくのが定例となっていた。

 こういう定期依頼は依頼者との信頼を深められる上、街全体での自分の信頼度を稼いでくれる。

 更に私はあらゆる面において、人より少し器用な器用貧乏。

 街の雑用において、多分私より便利な冒険者はいない。

 

「大将、来たよー」

「おーうよく来たな、とりあえず釜に火を入れるから、いつものヤツ頼むわ」

「終わったらどうする?」

「その後もいつも通りで、裏のゴミを片付けてくれりゃいいからよ」

 

 ついでにいうと、私はぶっちゃけ仕事が好きじゃない。

 前世の頃は、仕事なんて金さえ貰えればそれでよかったし、それでも定期的に嫌になって辞めたくなるくらいやる気がなかった。

 しかしそれは、私が単純にその仕事を楽しいとおもっていなかったからで、今は違う。

 なにせ自分のスペックを存分に活かせるのだ。

 異世界転生は主人公のチートを活かすことこそ醍醐味と言えるけれど、私の場合はこうして街の雑用を自分の器用貧乏を存分に発揮して片付けるのがそれに当たる。

 派手なモンスターとの戦闘とか、ダンジョンを攻略しての栄誉になんて興味はない。

 周囲から頼りにされていて、自分もそれを誇らしいと思える状況が一番気持ちいいんだ。

 何より、週に一回やればいいってのも楽で助かる。

 仕事なんて、自分のやりたいようにやって、やりたいように稼げて生活に不満がでなければそれが一番なんだから。

 

「……大将、なんかゴミ多くない?」

「おー、悪いな! ちいと仕事が溜まっててよぉ。奮発するから、悪いが片付けてくんねぇか?」

「あんまり働き過ぎもよくないよ」

 

 まぁ、たまにこういう想定外の仕事が発生してしまうのは御愛嬌。

 ただこういう時、私には器用貧乏な魔法剣士としてのスキル以外に、発想力という強みがある。

 

「これ、全部壊しちゃってもいいんだよね?」

「ん? おお、好きにしてくれてかまわんが……何をするつもりだ?」

「まぁ見てて」

 

 私は手をかざして魔術を起動する。

 やることは、単純だ。

 

「”土の壁”」

「お、おお!?」

 

 今発動したのは、地面の一部をせり上げて壁を作り、攻撃から身を守る魔術。

 だけど今回はたまりにたまった”ゴミ”を対象に土の壁を発動した。

 壁は攻撃を防ぐため、せり上げる際に土を圧縮する効果がある。

 つまり――ゴミはひとまとめになった上、圧縮して運びやすくなるのだ。

 

「これでよし、でかい荷車とかあれば、それで運ぶけどなんかある?」

「お、おー……いや相変わらず考えることが飛んでるな、アカネちゃんは」

「それは言い過ぎですよ」

 

 というわけで、私は今日も日々の雑用を器用に貧乏に、そして大胆に片付けていくのだ。

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