結果的に言えば、岡部くんとの約束は思ったよりも早く果たされた。
「秋山、此処が我が未来ガジェット研究所だ!靴を脱いで入るが良い!」
「はは…お邪魔するよ」
やたらハイテンションな岡部くんに促され、遠慮がちに室内に足を踏み入れる。中は至って普通なワンルームの部屋だ
2人がけのソファに雷ネットのうーぱのぬいぐるみが置かれており、ブラウン管のテレビが存在感を出している。奥にはかなりの巨漢がパソコンを弄っている
「ん?オカリン、お客さんだお?」
「うむ!ダル。こいつが前に話した新たな協力者の…」
「君は…橋田くんだったね。」
見知った顔だったので、すかさず挨拶する
「あ…えーと、こないだは助かったお」
「なんだ、既に知り合いだったのか。秋山、こいつが我がラボメンNo.003 スーパーハカーだ」
「ハカーじゃねぇよハッカーだよ常考」
どうやら橋田くんが岡部くんのいう、スーパーハカーらしい。
「まあまあ、橋田くんはスーパーハッカーなわけね。あんまり大きな声では言わない方が良いかもだが」
「ラボメンはまだ居るが、だいたいいつも居るのは俺とダルだな。紹介は追々するとして…協力を要請したい」
「!?オカリン?」
「大丈夫だ。お前と助手に相談出来たのは秋山のアドバイスがあったからだ。事情は知っている」
驚いた表情の橋田くんはともかく返答しないと
「椎名まゆりさんを助けるって目的の為だよね。俺に出来る事なら構わない」
「ふっ。流石だ秋山!ならば…機関の野暮を挫き、世界構造を破壊するため…」
「あーオカリンに任せたら長いから僕が説明するお。秋山氏、雷ネットやってたよね?」
「これでも一応、ランカーではあるよ?今度の大会にも出る予定でね」
「それなら話は早いお!」
「落ち着けダル!秋山、お前はフェイリス・ニャンニャンと戦い、勝って欲しい。いや、勝たなくても良いが時間を稼いで欲しい…というのも」
過去に送ったDメールにより、過去改変が起こり、あった物がなくなったりしている。つまりDメールを消去する事が出来れば世界線が変動し、改変を元に戻せるという結論になったらしい
「秋葉原が萌え文化…今の電気街ってのがおかしいね。なるほど…とりあえず分かった。大会で勝ち続ければフェイリスさん?に当たるだろ。そのあとは任せて良いんだよね?」
「うむ。頼んだぞ秋山!」
決着ーーー!!
秋山、あと一歩及ばずーーー!フェイリス・ニャンニャンの逆転勝利!!
「あはは…負けたか。ありがとうフェイリスさん」
「うん!貴方強かったニャー、またやろーニャ」
決勝戦はヴァイラルアタッカーズ?妨害行動が目立つチームだったな。ん、岡部くんから電話だ
「どうやら上手くいった様だな。後は任せろ」
「うん。とりあえず会場に居るから来てくれる?」
会場では歓声が上がった。フェイリスさんが優勝したみたいだな。流石だ…ん?
岡部くんとフェイリスさんが走って行った、それを追いかける黒ずくめの男たち…ヴァイラルアタッカーズか。仕方ない追いかけよう
追いついた時には、岡部くんは数人がかりでボコボコにされていた。通報はしてあるが危険だ。ああいう手合いはやりすぎる
「おにーさん、いい加減うぜぅよ。死ねば?」
ナイフを取りだし岡部くんに刺そうとする男
「やり過ぎは君らだ」
背後から股間を蹴り上げた
「ぐああああ!?」
「ひゅっ」
唖然としている男達の顎や腹に掌底や蹴りで倒していく
「ふぅ…」
不意を着いたといえ、数人の男達を瞬殺してしまった秋山
「大丈夫かい?岡部くん、フェイリスさん」
その後、岡部くんを担いで裏路地から出た所でフェイリスさんのお父様が車で迎えに来てくれ、僕らは車でフェイリスさんのマンションに招待されたのだった
怪我の手当を受けた岡部くんと僕は執事さんが入れてくれたら紅茶を飲んでいる。
「娘を助けてくれてありがとう。大会で優勝と聞いてお祝いに駆けつけたんだが居なくてね。探していたんだ」
岡部くんがフェイリスさんのお父さんと話している間、僕はフェイリスさんを見ていた。時折寂しそうな顔を浮かべている。もう遅いので泊まっていく事になった。
飲み物を貰いに廊下に出ると、フェイリスさんが岡部くんの泊まっている部屋から出てきた
「あ…えと、秋山くん」
「…驚いたな、泣いて…いたのかい?」
「…うん」
「良かったら、話してみないか?」
「そうだね。じゃあ、秋山くんにも聞いてもらおうかな」
フェイリスさん、いや、秋葉留未穂さんの過去改変の内容は亡くなってしまった父親が死なないようにする事だった。
岡部くんはまゆりさんを助ける為に、彼女の送ったDメールを消去したいと言ってきた。彼女としても親友を助けたい、しかし、取り戻した幸せを捨てなければならない。
「…それは」
「うん。わかってる…私だって、まゆしぃを助けたい!けど、パパが!事故で死んでしまったパパと…またお別れしなくちゃ…グスッ」
一度は落ち着いた感情の波が来たのだろう、彼女は両手で顔を覆ってしまう。
「…秋葉さん、実は俺もそうなんだ」
「…え?」
「俺も、事故で両親を亡くしてる。正確には、俺だけ生き残ったが正しいな」
俺が高校生の時、福引きで海外旅行が当たった。家族皆で飛行機に乗ったらエンジントラブルで墜落。両親と弟を一気に失った。リハビリを経て、高校を卒業し今に至る
「…凄く辛い目にあってたんだね」
「近しい人を失う気持ちはよく分かるつもりだ」
「…秋山くんの話を聞いて、私だけじゃないんだって思った。それにパパと短い間だけど過ごせたし」
彼女は笑みを浮かべている。しかし、無理をしているのが丸わかりだ
「こんな時は、無理に笑うんじゃない。泣いていいんだ」
無理に我慢して、背伸びをする子供の様に見えた彼女、秋葉留未穂の頭に無意識に手を乗せ、撫でていた
「…っ」
「ひとりで抱え込まなくていい。今だけは無理するな」
優しく、壊れ物を扱うように撫で続ける。かつて弟にしたように労わるように
「っく…グスッ…グスッ…うっ…うわぁぁぁ!!」
「……」
秋葉留未穂の泣きじゃくる声を岡部くんや執事さん、お父様は聴こえているのだろうか、あるいは部屋に防音加工でもしてあるのか、俺にはわからない。ただ、彼女が泣き止むまで頭を撫で続けてあげよう。明日には全てが変わるのだから
朝、目が覚めると彼女は居なかった。おそらく決心が着いたのだろう。岡部くんとDメールを消す作業を行うのだろう、俺はこのまま全てが終わるのを待つしかないのだ。
お話の補足として
アニメでは岡部くんを助けたのは執事さんの運転する車でしたが、秋山くんに助けてもらい、夜に岡部くんと話した後の秋葉留未穂ちゃんに秋山と遭遇して貰い、話をする展開を挟みました。これで朝に岡部くんと話したフェイリスは、やけスッキリしていたという流れになります。