非対称型VR対戦ゲーム『呪術廻戦 Battle Of Remnant』   作:挙句タゲミ

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1.チュートリアル

 というゲームをやっていたんだけどログアウトボタン消えてるの普通に人生オワタじゃね? っていうのが今。

 この世界は呪術廻戦の世界……なんだけど、普通にさしすが教師をやっていたり、かと思えば縫い目ロン毛が呪詛師として呪霊(オレら)任務(ミッション)を課してくるしでよくわからん世界線だ。多分呪術師側と呪霊側で次元が違うんだと思う。重なり合っているから同じ場所にいるっぽく感じられるだけで。

 何が言いたいかと言うと。

 

○▽&(特級二人はズルだろ)ー!」

「何言ってんのかわかんねー、よっ!」

 

 頭上をカッ飛んでいく瓦礫。とんでもない威力のそれは最早砲弾であり、当たっていたらグチャ☆の自信がある。

 当たらなかったのか故意に外されたのかはわからないけど、とにかくこの一秒を生き延びたことに感謝をしつつ、「憂太! そっち行ったよ」斬! と……視界が左右に泣き別れする。

 

「はい、ナイス」

「……最近の総監部、おかしくないですか?」

「ん、なにが?」

「こんな呪霊に僕たち二人が駆り出されるなんて……しかも指名で」

「まー、言いたいことはわかるし、僕も何かおかしなことがないか気を付けてはいるから……とりあえず今は良い小遣い稼ぎだとでも思っておきなよ」

「──あ! もしかしてもう終わっちゃった?」

「悠仁おそいよー」

 

 呪力の込められた刀によって両断され、祓われ、消えながら思うことは唯一つ。

 

 四級呪霊一匹に特級二人と主人公はアタマおかしーって!!

 

 

 とはいえ、上手くいく時もある。

 

「チッ……どういう組み合わせなんだよこれは」

「落ち着いてください、真希さん。この呪霊、どうにもおかしい」

「この俺、真希、七海一級術師殿を呼び出しての四級呪霊退治。キナ臭いにも程があるが、成程こういうカラクリというわけか」

 

 この世界に時系列というものがあるのかどうかは知らないが、とりあえず陀艮線は経験していないらしい。

 既に残穢が発見され、帳まで降ろされてしまったけれど、疾病呪霊として三級時点で得たステルス術式が功を奏し、まだ見つかっていない現状にある。ステータスの強化も速力に重きを置いた構成にしているため、未だフィジギフではない禪院真希、ナナミンはとりあえず圧倒できている。直毘人の爺さんは……単純に透明だから見えていないと信じよう。

 これらのステルス性能の甲斐あって、非術師から掠め取った呪力だけで二級にまで進化できた。あとは必死に逃げ回って時間経過を待ち、準一級となって強力な術式を得られたら、そこでようやくこっちのターンになる。欲を出したり舐めプしたりしてそれまでに殺されるのはNG。

 会話は以上の通りであるけれど、中身まで無知であるかは正直わからないのが現状だ。『呪術廻戦 Battle Of Remnant』でも呪術師側のキャラクターは臨場感底上げのためかこういうセリフを良く吐いていたし、それは状況によってしっかりその場に即したものに変わっていた。哲学的ゾンビよろしくアレらの中身が本人なのかプレイヤーであるのかは、彼らが死して尚わからないことであると言えよう。

 

「初めに感じた呪力は四級呪霊のものでした。ですが……この短時間で既に二級相当にまで呪力が上がっています」

「体感約十分ってところか。一般的な呪霊の進化速度から考えりゃとんでもない速度だな」

「……私は……特級を相手にできるほどだとは驕っちゃいねぇぞ」

「それは私も同じです。直毘人さんであれば問題はないのかもしれませんが、私達が足を引っ張る結果となりかねない」

「オイオイ、この老い耄れに過度な期待をかけるんじゃねぇよ。──それに」

 

 ──次の瞬間、殴られていた。

 

 げ……。

 

「特級になる前に祓っちまえば関係のない話だ。そうだろう、覗き見趣味の呪霊さんよ」

「|▽◇☆《それができたら苦労しねえよって言ってやってくれそっちの二人》~!」

 

 次の瞬間、殴られている。次の瞬間、殴られている。次の瞬間、髪を掻き上げられている。次の瞬間、殴られている。

 投射呪法。自らの視界を画角として「一秒間の動きを二十四の瞬間に分割したイメージ」を予め頭の中で作り、その後それを実際に後追い(トレース)する術。 動きを作ることに成功すればトレースは自動で行われる。ただし、動きを作るのに失敗するか、成功してもそれが過度に物理法則や軌道を無視した動きであれば、フリーズして一秒間全く動けなくなってしまうペナルティが課せられる。

 これはそのペナルティの強制押し付けによるフリーズと、単純呪力強化身体能力による殴り。

 

「本当に透明で触れもしないのか、それともただ光を誤魔化しているだけなのかの判別にちと時間を食われたが、光を曲げているだけなら大したことはない。透明なままでも殴ってやれる」

「ジジイ! 遊んでないでさっさと祓っちまえよ。舐めてかかってて特級になっちまって負けた、なんてことになったら真依にまたどやされるぞ!」

「そいつは勘弁願いたいな。まったく誰に似たのかお小言だけは立派になりやがって……」

 

 HPはもう心許ない。準一級への進化は……ここから逃げられたらワンチャン。

 ただしこのフリーズデバフ、特殊な術式や領域無しで解除できる気がしない。

 ……いや、一か八か、余っている強化経験値を速力に全投入して──。

 

「む。……消えやがったな」

「まさか、飛び足で特級にまで進化したのですか?」

「いや、そんな気配は無かったが……単純に速度が上がった……か?」

「私達には件の呪霊の姿も見えてなかった。……不味いな。現時点でジジイが追えない速度となると……」

「残穢を辿り、無理矢理にでも仕留めましょう。嫌な予感がします」

 

 逃げる。逃げる逃げる逃げる逃げる。

 帳は指定戦闘域全体には下ろせない。よってオレが向かうべきは帳から遠く、そして非術師が沢山いるところ。彼らの吐き出す負のオーラを根こそぎ掠め取り、一刻も早く準一級になれるよう邁進する。

 

 ──そうして。

 

 

 進化を終える。それによって発された呪力が呪術師に見つかってしまったようだった。進化の間に非術師が遠のいていったし、帳も既に下ろされている。

 けど……これなら。

 

「ようやく追いかけっこも終わりか?」

「|◇■□《この状態になっても喋れないんだよねこのゲーム》」

「あん?」

 

 進化及び強化完了。

 二級疾病呪霊改メ、特定疾病呪霊『大眼虎列刺(ダイマナク・コレラ)』。

 

 必要な手順はただ一つ。

 相手と目を合わせ──「ようとしているのが丸わかりだぞ、呪霊」突然、蹴られた。

 

「進化の速度は確かに異常だが、戦闘能力が比例するわけではない。むしろ蓄積経験の少ない分脅威度は低い。長い間三級や二級でいた呪霊の方がまだ怖いだろうな」

 

 蹴られる。突然だ。やはりフリーズのペナルティに対する対抗手段がない。

 領域は習得していない。手に入れた術式は相手と目を合わせるだけで良い代わりに相手と目を合わせなければ何も発動してくれない。

 だが……だが、問題ない。進化時に確かに一部ステータスの強化が初期化されるけれど、最終的な強化上限は上がっている。ここに速力強化をブチ込めば。

 

「失礼。もうそろ定時ですので」

 

 ゴガァン! と……頭頂から股下までが真っ二つに……いや、七三の割合で割断される。

 

 え……マジ? 一撃?

 

「獲物を奪ってしまったことを謝罪させてください、直毘人さん」

「なぁに構わんさ。それに、噂に名高い十割呪法を見ることもできた。真希の今の実力を測る目的は果たせなかったが、この規模の呪霊を前にしていれば仕方もあるまい」

☆◇(やっぱり)……&%(このゲーム)……」

「っ、まだ……!」

「いや」

 

 グチャ、と。……なんらかの打撃系呪具によって潰されるオレの頭蓋。

 ちょ、文句も言わせてもらえないのか!

 

「……○%&(パワーバランスおかしいってぇ)ッ!!」

 

 上手くいくこともあるとはなんだったのか。

 また祓われたァ!

 

 

 さて、既にわかっていると思うけど、どうにもオレは死なないらしい。

 死なないというか、呪霊になったら当然死ぬんだけど、その後も意識が続くというか。

 人の無意識は全て同源の湖に繋がっている、なんて考え方があるけれど、それの呪霊バージョンが今のオレなわけだ。

 

 ただしいつ呪霊としての躯を得るのかがこちらで測れない……気付いたら呪霊類型を選ぶことになっていて、気付いたらゲームが開始されているため、オレ自身の感覚は断続的な夢を強制的に見せられている、という感覚だ。その全てが基本的に悪夢なため疲労がエグい。

 反面こういう時……ゲームプレイ以外では割合自由。フッツーにいる呪霊にも呪術師・呪詛師にも気取られない透明な意識となって呪術廻戦の舞台の観測ができるし、基本どこにでも入り込める。やってないけど多分むふーんであはーんなこともできる。

 観測できるだけで干渉は一切できないけど、あっちから干渉されないので良しとしたい。迂闊に手を出したら猛獣の檻案件がゴロゴロ転がってるからねこの世界ね……。

 

 尚、前述した通り、呪術師らの次元……っていうか時空? はめちゃくちゃだ。

 普通に高専教師をやっているさしすの授業を一年組が受けているし、死滅回游の泳者(プレイヤー)が高専へ出入りしていることもある。いわゆる全員参戦状態。

 反対に縫い目ロン毛を確認できるのは呪霊となってゲーム参加する直前の追加任務有りの謎空間だけだから、この世界自体では縫い目ロンゲではない羂索がどっかにいるのかもしれない。流石にどこにいるかはわからん。縫い目ロン毛は神出鬼没だし。

 夏油一派とされていた呪詛師も一部のやつ以外は観測できていない。一部のやつ……ミゲル、ミミナナ、ラルゥは普通に東京高専へ出入りしているのを見かけるので、呪詛師ですらないのかもしれない。

 ちなみに虎杖悠仁の中にアクセスすると宿儺空間へも行ける。相変わらず感知されることはない。

 

 謎だ。謎時空だ。……けど「全員参戦」なので灰原がナナミンと仲良くしているのが見えたり、さしすがフツーに生活しているのが見えたりして呪術オタクはホカホカです。髙羽史彦は見てないけどワンチャン羂索とナベナベでピンチャンやってる可能性まであるよな。

 

 一応。

 オレそのものの目的は多分、呪術師を殺すこと……なんだろうなぁ、って。特に何か言われたわけじゃないけど、そんな感じがする。

 もう少し具体的な気がするを語ると、四類型の呪霊全部で呪術師を殺しての任務達成を目指すこと……な感じがする。

 とても嫌である。が、何回も何回も祓われているせいで蓄積疲労がとんでもなく、終わらせたい気持ちもある。……言うてゲームだし、という感情が無きにしも非ずんば虎児を得ず。

 呪術師側がなー。禪院男衆とか呪詛師ーズとか灰原夜蛾センナナミンの三人とかだったらまだ罪悪感少なくて済むんだけど……。最後の三人は原作で死が確定しているからって理由であって、積極的に殺したいわけじゃないからね。

 

 ……もう一つ気になるのは、呪術師たちが最近ずっと言っている「総監部がおかしい」や「キナ臭い」という話。

 このゲーム……『呪術廻戦 Battle Of Remnant』そのものがなんなのか、という深読み考察は結構されていて、任務を追加してくるのが羂索だから、「何かあった世界線の、死滅回游をやらずにこっちをやった羂索」の術式である可能性が考えられていた。

 総則(ルール)のこともあるし、明確に呪霊(こっち)もまたプレイヤーであると認識しているのが彼だからね。

 また大陸版での表記が『呪術廻戦 残骸懐胎』であることから、呪胎九相図との関連性と、やっぱり黒幕羂索説がプッシュされていた。四類型の四級呪霊の選択画面にいるのも呪胎だからそれはもう。

 

 果たしてオレはこのまま自身にある「気がする」に従って呪術師を殺しまくり、そうして解放されるべきなのか。

 それとも黒幕羂索を呪術師と協力して討滅し、このゲームという名の術式を解体するべきなのか。

 

 心情としては後者だけど……意思疎通ができな過ぎて今んとこ望み薄って感じなん──。

 

 

 ──だよな、とか考えてたらゲーム開始ですよ。

 

 今回選ぶのは……じゃあ、過呪怨霊にしてみよう。

 極めて高い攻撃力とかなーり低い防御力の呪霊類型(タイプ)。特級まで進化したら多分折本里香くらいになるんだろうけど、オレまだ二級までしか経験したことないんだよね。

 

 場所は……おお、良い餌場の廃ビルがある。まぁ餌場として優秀な分呪術師にも見つかりやすいんだけど、序盤に一人落とせたらデカいから。欠損まで行っても家入's反転術式で治せるみたいだし、怪我はさせ得なんだよな。失血死レベルのだとマズいけど。

 とりあえず見つかるまでパクパクタイムだ。総則(ルール)では説明がなかったけど、こういう如何にもな場所には負の呪力が溜まっているため、進化にはうってつけなんだよなー、って。

 そうやって油断していると……ほーら。

 

「……いないぞ、西宮」

『加茂君から見て六時の方向に逃走してる! 逃げ足がかなり早いから気を付けて!』

「東堂はどこへ行った。そちらには東堂がいるはずだ」

『!? 呪霊、いきなり方向転換して……地下鉄に入ったっぽい!』

 

 ……ちなみに京都高専の呪術師も福岡の方々も普通にいます。やめてほしい。

 まぁゲームに現れるのは三人までなので、ギリ対処可能範囲だけど……呪霊の追加投入も望めないからにゃぁ……。

 

「妙だな、加茂、西宮」

「東堂! オマエ、どこから……」

「俺は今日正午から始まる高田ちゃん出演のローカル番組『こんにちはTOKYObros.』を見るためにテレビの前に陣取っていたはずだが……何故このような場に駆り出されている?」

「おかしなことを言っていないで回り込め! この呪力の増加速度、最近報告されている特殊個体かもしれない!」

『加茂君、東堂君! あの呪霊また呪力が上がった! 既に二級相当! 気を付けて!』

 

 非対称型ゲームで大人数側がVCを繋ぐのは……良いゲームもあるけど! 『呪術廻戦 Battle Of Remnant』は無線機音質でしか喋れない上相手が喋っている時には喋れないゲーム内VCがあって……いや、だから、ちゃんと則っているのかあの魔女っ子は。

 

「ふん!」

&%△(どわぁ! 考え事してた)!」

「ほう? それなりの呪力を込めて殴ったつもりだが……タフだな」

 

 いえHP六割持っていかれていますアナタの一撃で。

 いや不味い。過呪怨霊は防御力が低いから、魔女っ子とカモ君だけならまだしもゴリラは管轄範囲外だ。

 やっぱり最初からある組み合わせや括りでパーティ組んでこられると役割分担がしっかりし過ぎていてつらい。全員アタッカーとか全員後方担当とかの組み合わせ来いよ~っ。

 

「──☆%☆(脱兎あるのみ)!」

「逃げるな呪霊よ! そして俺に祓われろ今すぐに!」

 

 ……仕方ない! あんましやりたくなかったけど、この相手には、これしかない!

 

「へ──きゃあっ!? ……あれ」

 

 悲鳴は遠く、背後で聞こえた。背後。というか、地上。

 

「呪霊よ。オマエが西宮に気付いていたことはわかっていたからな。狙いにいくことも読めていた。──そして」

 

 凄まじい呪力の高まり。自身の身体の下。

 恐らく、寸前まで……オレのいた場所。空中の魔女っ子、オレ、地上のゴリラの位置が、空中のオレ、ゴリラ、地上の魔女っ子という風に入れ替わったのだ。

 

「入れ替えさせてもらった。──東京の空で昼に咲く花となれ!」

 

 呪力で強化された、単なる蹴り上げ。

 そこに黒い火花が散っていなければまだチャンスはあったかもしれない。

 けれどオレの残り四割の命はいとも容易く摘み取られ──。

 

&♡☆(ヤなカンジ)-!」

 

 オレの身体は文字通り花火となって散った。

 彼らと協力とかできる気がしないデース。イェア。

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