バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第11話「狂気の男、サイト」

廃墟での戦いを終え、ハイネたちは再び予選フィールドを進んでいた。

砂煙の立つ瓦礫の間を駆け抜けると、前方に別のチームの姿が見えた。

 

「……あそこにチームがいるぞ。どうする?」

レントが大剣を構え、周囲を警戒する。

 

だがその瞬間、ナイアが顔をしかめ、思わず後ずさった。

「い~や~……あいつはやめとこう! うん! 撤退! すぐに!」

 

「えっ?」

 

意味が分からないまま、ハイネたちはナイアの指示に従い、一斉に身を翻した。

だが、走り出した直後、空から重いものが落ちてきた。

 

鈍い音と共に地面に転がったそれを見て、ハイネは思わず息を詰めた。

 

「……バイオロイド……?」

 

いや、もうバイオロイドだったものだ。

四肢は引き裂かれ、胸の機械の心臓は砕かれ、光を失った眼が虚空を見つめている。

 

ナナミが息を呑み、ミミミは顔を覆った。

リラリは無言でハイネの腕を握りしめる。

 

その時だった。

背後から軽やかな声がした。

 

「やぁ、ナイア! 久しぶりだね! 今からでも僕のチームに入る気はないかい?」

 

歩いてくるのは、先ほど見かけたチームの……いや、二人だけだった。

だがその後ろには、無残に破壊されたバイオロイドと、絶望に膝をつく人間たちの姿が転がっている。

 

「……あれ、全部……」

ハイネは声を失った。

 

ナイアは一歩前に出て、低く言い放った。

「やだな~。バイオロイドをぐちゃぐちゃにする奴についていくわけないだろ?」

 

普段の軽さとは違う、真剣で冷え切った声だった。

 

男は首をかしげ、どこかどうでもよさそうな笑みを浮かべる。

「そっか。残念だな。一緒に遊んで壊れなかったのは君たちが初めてだったのに」

 

その目は楽しんでいるようで、底の見えない虚無が漂っていた。

 

「まぁいいや! じゃあ本戦でまた遊ぼうね!」

 

軽い口調で言い残すと、男はふっと背を向け、瓦礫の向こうへと歩き去っていく。

その後ろ姿に、誰も声をかけることができなかった。

 

沈黙が訪れる。

ハイネは拳を握り、低く問う。

「……あいつ……誰だ……?」

 

ナイアが短く息をつき、険しい目で答えた。

「……あいつはサイト。バイオロイドをおもちゃとしか見ていない、狂った奴さ」

 

ハイネは怒りに声を震わせ、リラリは胸の心臓を押さえた。

戦いの中で生まれた暖かさが、今はただ痛むだけだった。

 

サイトの後ろ姿が瓦礫の向こうに消えると、フィールドには重い沈黙が降りた。

ハイネは拳を握りしめ、肩を震わせていた。

 

「……ふざけんなよ……あんなの……」

 

ナナミはミミミを抱き寄せ、目を伏せたまま震える声を漏らす。

「……あいつ……許せない……こんな……バイオロイドを……」

 

リラリはその場にしゃがみ込み、胸の機械の心臓を押さえた。

内部から響く鼓動が、不安と怒りで不規則に鳴っているのがわかる。

「……ハイネ様……私……ああいう者と戦うんですね……」

 

ハイネはリラリの肩に手を置き、必死に言葉を絞り出した。

「……怖いよな。でも……あんな奴を野放しにはできないだろ。お前を……誰も傷つけさせない」

 

リラリは顔を上げ、ゆっくりと頷いた。

「……はい。私も、ハイネ様を守ります」

 

ナイアは黙っていたが、やがて深く息を吐き、普段の軽薄さをかなぐり捨てたような真剣な目で言った。

「サイトは……代理戦争の常連だ。勝つためなら、平気で仲間のバイオロイドを壊す。遊び感覚でな」

 

タイチが眉をひそめる。

「そんな奴が許されるのかよ……」

 

「……許されてるさ。戦場だからな」

ナイアは苦く笑う。

「あいつと出会うときは、覚悟を決めろ。あれは狂ってる。普通の戦いじゃ勝てない」

 

レントが静かに立ち上がり、大剣を背に収めた。

「ならば俺は、あいつを討つために剣を振るう。家の復権だけじゃない。こんな戦いを終わらせるために」

 

その言葉に、ナナミもハイネも強く頷いた。

リラリとミミミは互いの手を取り合い、決意を込めて見つめ合う。

 

「……ナイア。あんたも覚悟、決めてるんだろ?」

 

ハイネの問いに、ナイアはいつもの笑顔を見せたが、目だけは鋭かった。

「もちろんだよ。俺たちは絶対に勝つ。サイトみたいな奴に、これ以上好き勝手はさせない」

 

その決意の言葉に、チームの全員が強く頷いた。

再び走り出す足取りは迷いなく、予選の続く戦場へと向かっていく。

 

遠くで、また別の戦闘音が響いた。

誰もが胸の奥に怒りと覚悟を抱えたまま、次の戦いへ進んでいった。

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