バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第14話「ナイア式地獄特訓」

翌朝、まだ日が昇りきる前から、訓練場の隅にある簡易フィールドにハイネは立たされていた。

「……ナイア、本当に朝からやるのか?」

「当たり前でしょ~? 本戦まで時間ないんだからさぁ!」

 

ナイアは妙にやる気満々で、手には怪しげなメモ帳を持っている。

そこには「ナイア式地獄特訓メニュー」と大きく書かれていた。

「じゃあまずは百本素振りから! その後は銃の早撃ち百回、最後にリラリ相手に回避訓練だ!」

「は、はぁ!? 百……? 一気に?」

「やるんだよ~! ほら、スタート!」

 

ナイアの掛け声とともに、ハイネは渋々剣を構えた。

リラリがそっと横に立ち、補助のタオルを差し出す。

「……お疲れになったらすぐおっしゃってください。」

「いや……すぐ疲れるに決まってんだろ……!」

 

剣を振り続けるハイネ。

汗が額から落ち、腕がじんじんと痺れる。

「もっと腰を入れろ~! 肩の力を抜け! あ、そこいい感じ!」

「……も、もう限界……っ!」

「まだ三十本目だぞ~? 根性出せ~!」

 

横ではタイチとユウロが興味深そうに見ていた。

「すっげぇ……あいつ、体力あるな。」

「彼の動き、以前より速いです。成長していますね。」

「だろ? 俺の特訓はマジで効くからな~!」

 

ハイネは歯を食いしばり、ついに百本をやり遂げた。

腕が震え、膝が笑う。

「つ、次……銃……か……?」

「そうそう、今度は早撃ちだ~! センド、タイマーセットして!」

「了解しました。」

センドが無駄のない動きで準備を整える。

 

手元の銃を握りしめ、ハイネは再び走り出す。

ターゲットを撃ち抜くたびに、リラリが後ろでそっと見守っていた。

「……ハイネ様、すごい……」

その瞳には、昨日まで以上に頼もしさが宿っていた。

 

休む間もなく最後のメニュー、リラリとの回避訓練が始まる。

「では……いきます!」

リラリが義手をブレードモードに変形し、素早く間合いを詰める。

「うわっ! ちょ、待っ……! あぶっ!」

「油断なさらないでください!」

「うわー! 本気すぎるだろ!?」

 

リラリの攻撃をギリギリで避け続けるハイネ。

彼の動きは少しずつ鋭さを増し、やがてリラリの攻撃を紙一重でかわすようになっていた。

「やるじゃん! ほらほら、もっと動け~!」

ナイアの笑い声が響く。

 

数時間後、ハイネは地面に大の字になり、息も絶え絶えになっていた。

「……死ぬかと思った……」

「お疲れ様です、ハイネ様。……ですが、とても素晴らしかったですよ。」

リラリがそっとハンカチで汗を拭う。

「……ありがとな……俺……もっと、強くなるから。」

 

ナイアは遠くを見つめていた。

普段の軽さとは違う、少しだけ真剣な表情で。

「……頼むぞ、ハイネ。お前が……未来を変えるんだ。」

 

夕陽が沈みかける頃、ハイネはまだ立ち上がっていた。

足元はふらつき、腕は震え、額から汗が滴り落ちる。

「……まだ、やるのか?」

「もちろんだよ~。でもさ、これが最後のメニューだ。自分の限界を超えろ!」

 

ナイアの声に押され、ハイネは剣を握り直した。

リラリが少し離れた位置で構える。

彼女のブレードが夕陽を受けて鈍く光った。

「……お願いします、リラリ。」

「……はい、ハイネ様。」

 

訓練最後の一戦。

リラリは本気で斬りかかる。

ハイネは必死に避け、受け流し、時に転がりながらも前へ出る。

「ぐっ……!」

「もっと腰を落とせ! 焦るな!」

ナイアの指示が飛ぶ。

 

リラリの動きは容赦がなかった。

だがその瞳にはハイネへの信頼が宿っている。

「……あなたは、もっと強くなれる。」

「……そうだな……俺は……俺は強くなるんだ!」

 

リラリの一閃を紙一重でかわし、逆に彼女の懐に飛び込んだ。剣を構える腕に力が宿る。

「やった……!」

ナイアの手が高く上がった。

「終了! よーし、これで今日の特訓はおしまい!」

 

ハイネはその場に崩れ落ち、息を荒げながらも笑みを浮かべた。

「……やりきった……!」

リラリが駆け寄り、そっと手を差し伸べる。

「お疲れ様でした、ハイネ様。……本当に、すごかったです。」

その手を握った瞬間、温かさが胸を満たした。

 

ナイアは腕を組みながら、夕陽を見上げて呟く。

「……センド、あの時お前が守ってくれた意味、今ならわかる気がする。」

隣に立つセンドが静かに微笑んだ。

「ナイア様も、ずいぶんと優しい言葉を口にするようになりましたね。」

「……やかましいな。」

 

タイチとユウロも遠くから拍手を送る。

「すげぇ……ほんとに強くなってる。」

「この調子なら、きっと本戦でもやれます。」

 

その時、訓練場の屋上に一瞬だけ影が揺れた。

――サイトと、静かに立つバイト。

夕陽の中、二人は訓練の様子を黙って見下ろしていた。

「……いいねぇ。強くなってる、なってる。」

サイトは不気味な笑みを浮かべ、ひらりと背を向ける。

 

ハイネはまだそれに気づかず、リラリと共にその場に座り込んでいた。

「……俺は、もう二度と……あんな悔しさを味わわない。」

「……はい。私も、絶対にお守りします。」

 

二人の誓いは、夕焼けの中で静かに重なった。

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