バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第32話「街を巡るハートシールド」

「ハートシールド」発足から数日。

彼らは大きな戦いに出る前に、まずは町の小さな困りごとを解決する依頼を請け負っていた。

 

「――次はバイオロイドと人間の喧嘩の仲裁、っと。」

ナイアがメモを見ながら歩く。

「……なんか、平和だな。」

ハイネは苦笑し、リラリは隣で静かに頷いた。

「ですが、これも大切なお仕事ですよね。」

 

街角では、小さな喧嘩をしていた少年とそのバイオロイドが、リラリの優しい声かけで素直に謝り合った。

「……ありがとう、お姉さん。」

少年が頭を下げ、バイオロイドも軽く会釈する。

「気をつけてくださいね。」

リラリが微笑むと、ハイネも安堵の笑みを見せた。

 

次の依頼は、倉庫街での泥棒の確保。

「おとなしくしな!」

ナナミがハンマーを振り上げると、泥棒は驚いて逃げようとしたが、センドがさっと回り込んで制止する。

「お怪我のないように、お静かに。」

その後ろでバイトが素早く縄を投げ、泥棒を拘束した。

「よくやった、バイト!」

ナイアが満面の笑みで親指を立てる。

「……ありがとうございます。」

バイトは短く返事をしたが、その目がほんの少し輝いていた。

ふと、センドが振り返り、ほんのり誇らしげな顔でナイアを見ている。

ナイアは思わず吹き出した。

「おいおい、センド、お前も褒めてほしいのかよ? よーしよし、よくやったな!」

「……恐縮です。」

センドが小さく頭を下げると、ナナミが「かわいいなぁもう!」と笑った。

 

さらに次の依頼は、いじめられていたバイオロイドと人間の保護。

タイチが敵意を向ける少年たちを見事な狙撃で威嚇し、ユウロが素早く保護したバイオロイドを安全な場所へと誘導する。

「大丈夫だ、もう誰も君を傷つけない。」

タイチの言葉に、怯えていたバイオロイドの瞳がわずかに光を取り戻した。

 

夕暮れ、町を巡る一日の任務を終え、ハイネとリラリは並んで歩いていた。

人通りの少ない橋の上、ハイネはポケットから小さな包みを取り出す。

「……リラリ。」

「はい?」

ハイネは少し照れくさそうに、掌に乗せたものを差し出した。

それは小さな銀のチャーム。

中心には透き通る赤いガラスで作られたハートが光っている。

「……ハート、好きなんだろ。」

リラリは目を見開き、そっとそのチャームを手に取る。

「……えぇ。ハイネ様に、一番大切なハートをいただきましたから。」

夕陽を背に、リラリは微笑んだ。

その頬がほんのり赤く染まっているのを見て、ハイネは慌てて顔をそむけた。

「……そ、そうかよ。なら、よかった。」

 

橋の上を、優しい風が吹き抜ける。

日常の中で積み重なる小さな絆が、確かな力へと変わっていくのを、ハイネは静かに感じていた。

 

―――

 

夕暮れの商店街。

バイトは倒れた荷物を拾い集めていた。

近くで泣いていた小さな子どもが、助けられたバイオロイドの手を握っている。

バイトはその子に視線を合わせると、子どもは涙を拭いながら問いかけてきた。

「……お兄ちゃんは、なんで助けてくれるの?」

バイトは一瞬だけ言葉を探した。

自分の胸に問いかけるように、静かに目を伏せる。

「……私は……。」

思考の奥で、リラリやハイネの言葉がよみがえる。

「心があるんだよ」

「守りたいと思ったからだろ?」

バイトはゆっくり顔を上げ、子どもの瞳を真っ直ぐ見つめた。

「――助けたいから……です。」

子どもはぱちぱちと瞬きをしたあと、ぱぁっと笑顔を咲かせた。

「ありがとう、お兄ちゃん!」

バイトは小さく頷き、その笑顔を胸に刻むように見つめた。

 

―――

 

夜、ハートシールドの拠点に戻った一同の前に、無機質なノックの音が響いた。

玄関を開けた瞬間、見覚えのある黒服がそこに立っている。胸にはオルド・ガーディアンズの紋章。

「……またおまえらか。」ナイアが眉をひそめる。

 先頭の男が一歩前へ出て、硬い声を発した。

「――最終警告です。」

 部屋の空気が一気に張り詰める。

「貴殿らの活動は危険であると判断しました。今すぐオルド・ガーディアンズに加入し、指揮下に入れ。」

ハイネはゆっくり立ち上がり、拳を握り締めた。

リラリがそっとその袖を掴むが、彼は真っ直ぐ前を見据える。

「……俺達ハートシールドは、お前らには屈しない。」

黒服の男の眉がわずかに動く。

「バイオロイドも、人間も――護りきってやる。」

その言葉は鋭く、しかし優しさを内包していて、部屋の隅にまで響いた。

 

ナイアが肩を揺らし、笑みを浮かべる。

「決まりだな。」

レントも頷く。

「……ここからが本当の戦いだ。」

バイトはその後ろで、先ほどの子どもの笑顔を思い出していた。

(……そうだ。助けたいから、戦うんだ。)

 

黒服の男たちは互いに目配せをし、短く告げる。

「……後悔なさらぬよう。」

そして静かに踵を返し、夜の闇へと消えていった。

 

残されたハイネたちは、しばしの沈黙の後、互いに目を合わせる。

その瞳には迷いはなかった。

「――行こうぜ、俺たちのやり方で。」

ハイネが呟くと、

「はい、ハイネ様。」

リラリが力強く頷いた。

 

こうして、ハートシールドはさらなる試練へと歩み出していくのだった。

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