バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第4話「メイド服とブティックの戦場」

その日、ナイアは珍しく学校を休んでいた。

端末には「風邪をひいた」とメッセージが届いていたが、ハイネはジト目で画面を見つめる。

 

(あいつが風邪ねぇ……どうせ、あのデータを調べてるんだろ)

 

溜息をついたハイネに、後ろから元気な声が飛んできた。

 

「ちょっとハイネ! メイド服! ちゃんとしたのを着せてあげなさいよ!」

 

振り返ると、ナナミが腕を組んで仁王立ちしていた。

隣にはミミミが控えめに立っている。

 

「え、メイド服? 別にいいだろ……」

 

「よくないわよ! 昨日の戦闘で汚れだらけじゃない! ほら、行くわよ!」

 

有無を言わせぬ勢いでハイネの手を引き、ミミミが後ろをちょこちょことついてくる。

リラリも後を追い、彼らは学園近くのバイオロイド専門ブティックへと入った。

 

扉をくぐると、そこは光と布地の世界だった。

整然と並ぶマネキンには、様々なメイド服や執事服が飾られている。

フリルやリボン、ハイテク繊維が織り交ぜられ、未来感あふれる衣装の数々が目を奪った。

 

「わあ……こんなにあるんだな……」

 

「でしょ! ほら、これなんてどう?」

 

ナナミが手に取ったのは、ミニスカートタイプの可愛らしいメイド服だった。

布地は光沢を帯び、装飾も凝っている。

値札を見てハイネは目をむく。

 

「……たっけぇ! 俺の小遣いじゃ全然足りないぞ!」

 

「えー、いいじゃないのー」

 

ナナミがむくれた顔をする横で、リラリはそっと別の棚を見ていた。

そこにはセール品のタグが付けられたメイド服。

黒を基調としたシックなデザインだが、肩や袖には強化繊維が織り込まれ、戦闘時にも耐えられる仕様になっている。

 

「……これ、なら」

 

リラリが服に手を伸ばしたそのとき、店内の扉が突如として開いた。

冷たい風とともに、黒服の男たちが現れる。

空気が凍りついた。

 

「なっ……またかよ!」

 

ハイネが叫ぶ間もなく、乾いた発砲音が響いた。

ミミミが短い悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。

 

「ミミミ!!」

 

ナナミの目が怒りで燃え上がった。

彼女はポシェットの留め具を外し、そこから重厚なハンマーを展開する。

折り畳まれていたハイテクハンマーが唸りを上げて伸び、金属音を響かせた。

 

「よくも……!」

 

ナナミが踏み込み、ハンマーを振り抜く。

黒服の男が一人、カウンターごと吹き飛ばされた。

残る男たちが銃を構え、ハイネはリラリを庇いながら身を低くする。

 

戦場のようなブティックで、再び命を懸けた戦いが始まろうとしていた。

 

ブティックの店内は、すでに戦場と化していた。

ナナミは怒りに目を燃やし、ハンマーをぶん回すたびに黒服の男たちが壁に叩きつけられ、棚をなぎ倒されていく。

 

「このおおおおっ……!!」

 

その勢いと膂力、まさに戦闘マシーン。

ハイネはその光景を見て思わず叫ぶ。

 

「いや戦闘マシーンかよ!? ナナミお前何者だよ!!」

 

しかしそんなツッコミがかき消えるほど、ナナミの猛攻は凄まじかった。

黒服の男たちは次々と意識を失い、撃っても撃っても前に出てくる彼女に恐怖を覚え始めていた。

 

だが、負けてはいないのがリラリだった。

彼女は黒服の銃撃をしなやかにいなし、近くの陳列台を足場に跳躍し、残る腕と義手を使って敵の武器を破壊していく。

手刀一閃、銃が真っ二つに折れ、蹴り一発で通信機が粉砕される。

 

「リラリ……お前も戦闘マシーンじゃねーか!」

 

ハイネは目を見開き、ただその場に立ち尽くすしかなかった。

ミミミはカウンターの陰で体を震わせている。

戦闘は短時間で決着した。

店内に転がる黒服の男たち。呼吸音だけが響く。

 

ナナミは、はっと我に返ると、急いでミミミの元へ駆け寄った。

 

「ミミミ! しっかりして!」

 

「だ、大丈夫。ちょっと、かすっただけだから……」

 

ミミミがか細い声で言うが、ナナミは涙目で大騒ぎだ。

 

「かすっただけって何よ! もう! 血……いやオイル? なんか出てるじゃない!」

 

その騒ぎをよそに、ハイネとリラリは息を整え、倒れた棚の方へ向かった。

棚は無残にひしゃげ、セール品の服の梱包がぐちゃぐちゃになっている。

 

「……これ、平気そうだな」

 

リラリが静かにその服を手に取る。

黒を基調とした戦闘特化型メイド服。

汚れも破れもない。

 

「……これ、下さい」

 

ハイネがレジに向かって言うと、店員は驚いた顔で頷いた。

 

「! ハイネ様?」

 

リラリが小さく目を見開く。

ハイネは照れくさそうに後頭部をかいた。

 

「おまえ、これ見てただろ? 気に入ったんだろ?」

 

梱包がぐちゃぐちゃになったことで、店員は少し安くしてくれた。

ハイネは財布の中の小遣いを数え、どうにか支払いを済ませる。

 

「ハイネ! リラリ! ミミミを連れてナイアのとこ行くわよ! どうせ仮病で休んでるんでしょ!」

 

ナナミの勢いは衰えない。

泣き顔のままミミミを抱きしめ、怒鳴りながらも先頭に立って店を飛び出す。

 

「ま、待てって! リラリ、行くぞ!」

 

「はい、ハイネ様」

 

夕暮れの街を、二人と二体のバイオロイドが駆けていく。

ハイネの後ろを歩きながら、リラリは胸に手を当てた。

機械の心臓が、また暖かくなるのを確かに感じていた。

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