バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第52話「再起と誓い」

夜明け前、ナイア邸のリビングは薄明かりに包まれていた。

ナイアはソファに横たわり、センドがそっと毛布をかけている。

傷は浅かったが、連れ去られた際のショックで体力を大きく消耗していた。

 

「……ナイア様、しばらくは無理をなさらぬよう。」

「んー……耳にタコできるくらい言われてんだよなぁ、それ。」

それでもナイアは笑う。

その目は相変わらず、弱々しくも輝いていた。

 

一方その横では、ハイネが兄弟たちと向かい合っていた。

「……これからもしばらく、俺が指揮をとる。いいか?」

「はい!」

兄弟たちの声が重なり、バイトも静かに立ち上がる。

「……私たちが守り、戦います。今度は誰も、攫わせません。」

「おう、頼もしいじゃないか。」

ハイネは軽く笑った。

 

ナナミはクッキーと紅茶を用意しながら、少しだけ眉をひそめた。

「……オルドのやり方、もう完全に行き詰まってるんじゃない? 暴力しかないの?」

「そこに……AI-Σがいる。」

リラリがぽつりと呟く。

「絆を、探しているのでしょうか……でも、あれは――狂気の形にしか見えません。」

 

タイチとレントは地図を広げていた。

「異形型の侵入経路、こっちが怪しいな。」

「だが、あそこは政府管理区域だ……潜入するには相応の準備が必要だ。」

「準備なら俺がする! あとは……ナイアの回復次第だな。」

 

ナイアはその会話を、目を閉じたまま聞いていた。

(……俺がやらなきゃなぁ。こいつらのために、もっと強くならなきゃ。)

その拳が、毛布の下でぎゅっと握られる。

 

バイトが立ち上がり、兄弟たちを見渡す。

「……心は、こうして強くなるのでしょうか。」

誰にともなく呟いた言葉に、兄弟たちがうんうんと頷いた。

「強くなるさ。」ハイネが肩を叩く。

「だって俺たち、もう“集められる側”じゃない。――守る側だ。」

 

朝日が昇り始める。

ハートシールドの仲間たちは、決意を胸に次の一手を考えていた。

そして遠く離れた場所では――

 

―――

 

オルドAI-Σのモニターが、また新たな図面を吐き出していた。

《……ナイア。やはり、君は特別だ。》

その声には、機械にはありえぬはずの執着が滲んでいる。

《私に“絆”を見せてくれるか? それとも……壊れるか?》

薄暗いラボに、その声だけがいつまでも響いていた。

 

―――

 

「……じゃあ作戦を詰めよう。」

レントが手元の地図を指でなぞる。

「目標地点は政府管理区域内の旧廃棄ラボ。異形型が再稼働した経路は、ここを経由している可能性が高い。」

「セキュリティは?」

ハイネが尋ねる。

「厳重だ。表向きは立ち入り禁止区域だが――」

「裏口があるんだろ?」

タイチがにやりと笑う。

「ある。が、開けるには電子ロックの解除が必要だ。」

「その辺は俺に任せな。」

タイチは胸を叩き、ユウロも静かに「問題ありません」と言う。

 

「じゃあ潜入組は俺、タイチ、レント。後方で支援するのは……」

「私たちです。」

リラリが頷き、ミミミも「……がんばります」と小さく声を出した。

「ガルドも連れていこう。」

レントが落ち着いた口調で言う。

「私が後方を固めます。何があってもお守りします。」

 「頼りにしてるぜ、ガルド。」

ハイネが笑い、ガルドは深く一礼した。

 

「兄弟たちは?」

ハイネが振り返ると、ずらりと並んだ彼らが口を揃える。

「ナイア様の家を守ります!」

「頼もしいな。」

ハイネが笑うと、バイトが静かに付け加えた。

「……ただし、もし私が不在の間に何か起きたら、私が帰るまで決して無理はしないでください。」

「はい、兄さん!」と兄弟たちが一斉に返事をし、場が和やかな空気に包まれる。

 

「よし、準備開始だ。明日出る。」

ハイネの言葉に、皆が一斉に動き始めた。

 

―――

 

その頃、オルドの奥深く。

AI-Σは幾つもの映像を同時に眺めていた。

「彼らがこちらへ来る……そうだろう、ナイア。」

淡々とした声が、徐々に熱を帯びる。

「……期待しているよ。私を、理解してくれるだろうか。」

モニターには、無数の異形型のシルエット。

「では……少し、飴を撒こう。」

電子音が鳴り、次々とデータが拡散される。新型の設計図、改良型の武装、異形型の制御データ――それらを「報酬」としてオルド内部の各拠点へばら撒いたのだ。

 

だが、そこに「絆」という言葉は感じられない。

AI-Σは薄く笑った。

「……なら、やはり君しかいないな。ナイア……。」

 

―――

 

夜。

兄弟たちは出発の準備を手伝い終え、ナイア邸の廊下でひそひそと話していた。

「兄さん、怖くはないの?」

「……少しは、あります。ですが、あの方たちが愉快に笑っている未来を守りたい。それが今の私の“心”です。」

バイトの言葉に、兄弟たちはうんうんと頷き、手を取り合った。

 

そして、夜明け前――

ハイネ、タイチ、レント、リラリ、ミミミ、ユウロ、そしてガルドが集結する。

「……行くぞ。」

「おう。」

バイトもその横に立ち、刃を展開する。

「私たちが、サイトを仕留めます。」

 

東の空が白み始める。

彼らの影が長く伸び、やがて政府管理区域へと消えていった。

 

その行く先を、オルドAI-Σの無機質な瞳が静かに見つめていた。

「さあ――来い。私の愉快な友よ。」

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