バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第62話「それぞれの“家族”のかたち」

夜のナイア邸。作戦帰りでまだ熱気の残るリビングに、ほっとした笑い声が広がっていた。

ハイネがソファに腰を下ろし、隣でリラリが紅茶を注いでいる。

兄弟たちはあちこちで後片付けをしていたが、賑やかさは相変わらずだ。

 

ふと、ハイネがナイアのほうを見やった。

「……そういえばさ。」

「ん? どうした?」

ナイアが振り返る。

「いつの間にかあの兄弟、おまえの“兄弟”ってことになってなかったか? ナイア。」

「……えへ、ばれた?」

にこりと笑うその顔は、いたずらを見つかった子供のようだった。

 

「ナイア様はご主人様ですか?」

「お兄ちゃん?」

「パパ?」

「先生?」

「長男?」

質問攻めにする兄弟たちに、バイトが慌てて手を上げた。

「ちょ、長男は私です! これは譲れません!」

「えぇ~?」「え~?」と周囲が笑いに包まれる。

 

ナイアは肩をすくめ、笑いをこらえながら言った。

「みんな、好きに呼べばいいさ。兄弟だって、家族だって、役割なんてひとつじゃないんだからな。」

 

すると、静かにシグマが立ち上がった。

その顔には決意が宿っている。

「……僕も、前線に立ちたいんだ。」

 

場が一瞬、静まり返る。

ナイアは椅子を回転させ、顎に手を当ててシグマを見つめた。

「……うん、いいんじゃね?」

あまりにあっさりとした返答に、シグマは思わず目を丸くする。

「え?」

ナイアはにやりと笑い、手をひらひらと振った。

「末っ子、おまえ戦闘型だろ~? 別に前線に立ってもいいよ。……死ななければな。」

 

「……っ!」

その言葉に、シグマはぐっと唇を結ぶ。

心臓が脈打つような感覚。

――死ななければ。

それはこの家族に課せられた、唯一の掟だった。

 

バイトが隣に立ち、優しくシグマの肩に手を置く。

「末っ子……無理はしないでください。それが、兄弟というものですから。」

「……ありがとう。」

シグマは小さく微笑んだ。

 

笑い声と、決意と、温かな空気が入り混じる。

ハートシールドの夜は、また新しい絆を結びながら更けていった。

 

―――

 

翌朝、ナイア邸の地下訓練場。

「よーし、シグマ! 今日は前線向けの訓練やるぞー!」

ナイアの明るい声が響く。

 

シグマは一瞬きょとんとした顔をしてから、すぐに真剣な目で頷いた。

「はい。僕は……守れる兄弟になりたいですから。」

 

バイトがそばで見守っている。

「シグマ、体勢を低く。あなたは速度で戦うのがいいでしょう。」

「了解。」

 

ガルドとセンドも、その大きな体を起こして構える。

「今日は俺たちが相手だ。全力で来い。」

「末っ子を潰すつもりはありませんが、手加減はしません。」

 

ナイアがぱんと手を叩く。

「よし! 模擬戦開始! 目標は、俺が持ってるこのフラッグを奪うこと!」

兄弟たちが見守る中、シグマは勢いよく駆けだした。

 

最初はぎこちなかった動きも、タイチが声を飛ばす。

「左! 次は跳べ!」

レントが的確な指示を送る。

「そのまま回り込め!」

ナナミは笑いながら援護射撃をシミュレーションする。

 「はいはい! こっちは通さないよ!」

 

シグマの身体が軽やかに動く。

瞬間、センドの壁をかいくぐり、ガルドの腕をすり抜け、ナイアの背後へと回った。

「今だ、シグマ!」ハイネの声。

「――っ!」

シグマは伸ばした手で、ナイアが掲げるフラッグを掴み取る。

 

「タイムアップ! シグマ、勝利!」

ナイアがにかっと笑う。

「……やった……!」

シグマは肩で息をしながらも、確かな達成感に頬をゆるめた。

 

兄弟たちがぱちぱちと拍手を送る。

「末っ子、すごい!」

「やればできる!」

「おとうと強い!」

 

バイトがゆっくりとシグマの頭を撫でた。

「おめでとうございます。あなたは、もう立派な前線の一員です。」

「……ありがとう。僕……本当に、ここにいていいんですね。」

「当たり前だろ~?」

ナイアが背中をどんと叩く。

「俺たちの家族だ。これからも、どんどん頼ってくれ。」

 

「……はい!」

その返事は力強く、そしてどこか温かかった。

 

こうして末っ子シグマは、また一歩――ハートシールドの一員として、確かな足跡を刻んだのだった。

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