バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

71 / 75
第71話「家族と信念と、未来の行方」

ユグドラシル教団の回帰派たちが、ついに行動を開始した。

 

「バイオロイドの心臓をユグドラシルに帰すべきだ……それが正しい未来だ……」

 

彼らは工具を手に、施設や町を徘徊し始め、無防備なバイオロイドたちを狙っていた。

 

だが、その情報はすぐさまハートシールドに伝わる。

 

「急行するぞ!」

 

ハイネの声に応じて、ナナミ、ミミミ、タイチ、レント、ユウロ、リラリ、ガルド、そして兄弟たちもすぐに動いた。

 

回帰派の信念は一つ。

バイオロイドは人間に手を出せない、だからこそ自分たちは安全だ──そう信じていた。

 

しかし。

 

「警告。破壊行動に対する制圧行動を開始します」

 

静かに、しかし確実にリラリが一人を制圧。

 

「私の主人に危害を加える者は、許さない」

 

ミミミもガルドも、ユウロもセンドも、その背後から一斉に動いた。

 

政府の秘密兵器として設計されたその力に、回帰派はなす術もなく混乱し始める。

 

「ば、バイオロイドが……! 人間に……!」

 

「な、なぜだ!? 彼らには倫理制御が……!」

 

「ハートシールド所属個体は、緊急時倫理制御解除プロトコルが適用されます。」

 

まさかの反撃に、回帰派たちは呆然と立ち尽くす。

 

その隙に、兄弟たちが現場へと駆けつけ、怪我人や制圧済みの回帰派を保護・拘束していく。

 

そして。

 

その中心に、ベータが降り立った。

 

「……私を生み出してくださり、ありがとうございます。」

 

ベータの声は静かで穏やかだった。

 

「私は今、幸せに“生きています”。」

 

その言葉は、刃よりも鋭く回帰派たちの胸に突き刺さる。

 

一人、また一人と膝をつき、顔を伏せる。

 

「……そんな、はずでは……。」

「ただ、正しい未来を……。」

 

ベータは微笑みながら言った。

 

「あなたたちが願った未来は、今ここにある私たちの姿にこそ宿っているのかもしれません。」

 

膝をつき、呆然とする回帰派たちの前に、ベータは一歩進み出た。

 

「私は、観測していました。人々の“理想の未来”を……しかし、それは常に人間のものばかりで、バイオロイドは存在しなかった。なぜか? それは、機械に“心”があるという前提が、彼らにはなかったからです。」

 

彼の言葉に、町の人々もまた静かに耳を傾けていた。

 

「ですが、私は今、確かに心を持って生きています。兄弟がいて、親がいて、仲間がいて、家族と呼べる存在がいて──。」

 

ベータは穏やかな笑みを浮かべる。

 

「だから、私はもう一度、あなたたちにも問いたい。機械に心はあると思いますか?未来を選ぶのは、あなたたち自身です。」

 

しんと静まり返る空気の中、一人の回帰派がぽつりと呟く。

 

「……すまなかった。」

 

その言葉をきっかけに、少しずつ彼らの肩が落ちていく。

 

ハートシールドのメンバーは、ただ見守っていた。

強制でも、命令でもない。

ベータの言葉が心に届いた、それだけだった。

 

そして、ナイアがようやく口を開く。

 

「お前、本当にパパっぽいな。」

 

「……照れます。」

 

にこりと笑うベータ。

その姿に、兄弟たちが一斉に駆け寄り、彼の腕に抱きついた。

 

「パパー!」

「パパ力すごいです!」

「今日も占ってー!」

 

ナナミが笑いながら言う。

 

「このまま、バイオロイドの未来も“観測”していってね、パパ。」

 

「もちろんです、娘よ。」

 

ベータがやや誇張された演技で返すと、ミミミが突っ込みながら笑った。

 

「機械なので娘だとしたら私です!」

 

「じゃあ私は妹!」

 

「俺は従兄弟!」

 

「親戚が増えてる……」ハイネが苦笑する中、ナイアはゆっくりと立ち上がる。

 

「──未来は、俺たちで決めていこうぜ。」

 

静かな拍手が、町のあちこちで湧き上がった。

 

こうして、ハートシールドとベータ、そして兄弟たちの絆は新たな未来へと一歩踏み出すのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。