バイオロイドサーヴァント   作:fuu349ari

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第9話「祝勝とそれぞれの理由」

初勝利を収めたその夜、訓練場の片隅にある共有スペースで、ささやかな祝勝会が開かれていた。

テーブルにはジュースとお菓子が並び、疲れた身体を癒やす甘さが広がる。

戦いの緊張感がまだ抜けきらないまま、しかしそこには笑顔があった。

 

「とりあえず、初勝利おめでとう!」

 

ナイアがジュースを掲げると、皆が紙コップを軽くぶつけあう。

 

「……ふぅ、まさか勝てるとは思わなかった」

ハイネが苦笑する。

「思ったよりやれたな!」

ナナミが肩をすくめ、ミミミが微笑む。

 

タイチがポテトチップを頬張りながら、ぽつりと言った。

「俺、実はこの訓練場に迷い込んだんだよなぁ……。で、たまたまナイアに拾われたんだ」

「迷い込んだって……そんなことある?」とハイネ。

「あるんだよなぁ、不思議と。目的? 特には決めてないけどさ……正義感ってやつかな。お前らを守ってやるよ!」

 

その無邪気な言葉に、リラリが静かに微笑む。

ナナミは少し呆れたように「単純すぎる」と笑った。

 

一方、レントは黙って飲み物を口に運んでいたが、やがてゆっくりと話し始めた。

「……俺とナイアは幼馴染だ。だが家が没落してから疎遠になった。学園に入ってから、また会って……代理戦争への参加権を貰った」

「復権のため……か?」とハイネ。

「ああ。俺は……家をもう一度立て直したい」

 

ナイアは肩をすくめ、苦笑した。

「俺は単純だよ。家が偉いから、参加せざるを得なかった。ただ……目的ははっきりしてる。バイオロイドを守ること。それだけだ」

 

ハイネとナナミも、それぞれ自分たちの事情を話した。

リラリとミミミを守りたい、そのために戦うと。

お菓子をつまむ音が小さく響き、やがて皆の間に不思議な連帯感が芽生えた。

 

そんな折、話題は自然と次の戦い――予選へと移っていった。

 

「本線はトーナメント形式だが、予選は混合戦だ」

タイチが語る。

「混合戦?」

ナナミが首をかしげる。

「生き残りをかけた戦い……らしいな」

レントが低い声で補足する。

 

沈黙が落ちた。

ジュースの甘い香りも、急に遠くなる。

 

「……本当の命を懸けるのはバイオロイドだけですから……」とミミミが小さく言った。

その瞳には不安が映っていた。

 

「それでも……残酷だよな」

ハイネが拳を握りしめる。

「なんでこんなことを……代理戦争なんて……俺は……嫌いだ」

 

その言葉に、リラリがそっと隣に座り、ハイネの手に自分の手を重ねた。

機械の温もりが、静かに彼の怒りを和らげていく。

 

それぞれの事情を抱えたまま、彼らはチームとして親睦を深め、そして次の戦いへと心を整えていった。

 

祝勝会の熱気がひと段落すると、テーブルの上には作戦用のメモや簡易マップが広がっていた。

ナイアが端末を操作しながら言う。

 

「さて、予選のことをもう少し具体的に話そうか。混合戦は基本的に何でもありだ。チーム同士の即席の同盟もあるし、裏切りもある」

 

「……なんでもあり、か」

ハイネが苦々しく呟く。

 

「だからこそ、自分たちの役割をしっかり決めておかないとすぐにやられる」

ナイアは真剣な目で皆を見渡した。

 

タイチが肩に乗るユウロを軽く撫で、得意げに笑う。

「俺とユウロは偵察と情報収集担当だな。敵の位置をいち早く掴んで教えてやる」

 

「助かるわね、それ」

ナナミはハンマーを手に取り、軽く振って感触を確かめる。

「あたしとミミミは前衛。あんたたちの進路を確保するわ」

 

「……私も、ナナミさんを守ります」

ミミミが小さくも強い声で応じた。

 

レントは腕を組んだまま、低く言った。

「俺とガルドは、真正面から敵を叩く。ナイア、後衛は任せたぞ」

 

「了解~、センドと一緒にゲームコアは絶対に守るよ」

ナイアはヘラリと笑って見せるが、その目は鋭い。

 

そしてハイネとリラリ。

二人はしばらく黙っていたが、やがてハイネが口を開く。

「俺とリラリは……?」

 

「お前たちは臨機応変に動いてくれ。防御も攻撃もできる、柔軟な戦力は貴重だからな」

レントが言うと、リラリがすぐに頷いた。

 

「……はい。ハイネ様をお守りしつつ、敵を討ちます」

 

「いや、俺が守るって言ったろ」

ハイネは照れたように笑う。

その表情に、リラリは胸の奥でまた心臓が脈を打つのを感じた。

 

「……予選ではバイオロイドが命を懸ける。俺たちは守るしかできない。それが、どうしても……許せないんだ」

 

ハイネの声が、静かな部屋に落ちた。

ナナミは黙ってミミミを抱き寄せ、ナイアは口をつぐむ。

タイチがそっと肩を叩いた。

 

「でもさ……守りたいって思える相手がいるなら、戦えるだろ?」

 

ハイネはその言葉を胸の奥で反芻し、ゆっくりと頷いた。

「……ああ。絶対に守る。リラリも、ナナミたちも。俺が、守る」

 

リラリはその言葉を聞き、また胸に手を当てる。

暖かさが広がり、彼女は小さく微笑んだ。

 

こうして夜は更けていく。

明日から始まる予選に向けて、彼らはそれぞれの想いを胸に刻み、眠りについた。

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