Fate/eastan phantasm   作:Astrad

14 / 30
彼の礼装の飛行機能は最近権能を得たことでアップデートされたものです。それまでは滑空機能がメインでした。


深淵にて

 ただ、落ちていく。上から私たちを追ってくる蚯蚓たちを私が大雑把に薙ぎ払い、ルヴィア殿が撃ち漏らしを処理する。このサイクルを数度繰り返すことで蚯蚓たちは姿を消し、私たちは墜落のごとき直滑降から緩やかな降下へと切り替える。

 

「お二人とも凄いなぁ! こんなんなら魔眼買う必要なかったわ!」

 

「魔眼持っていたなら援護ぐらいしてくれてよかったんじゃないですか!」

 

 そんな会話もありながら私たちは底なしの闇に落ちていく。どれだけ視力を強化しても見えるのは切り立った壁。何時間も落ちているが未だに底は見えない。それだけならまだよいがこの穴は時々曲がりくねり、狭まったり広がったりと絶えず安定しない。フリューの誘導がなければ確実にこの穴を降りるだけで犠牲者が出ていただろう。

 

 そのうちに、空気が変わる。いや、大源の濃度がさらに濃くなり私に更なる活力を与えてくれる。神秘の濃さは私の活力へとつながる。しかし、私以外の人達にとってはそれは体を蝕むものである。

 

「冠位決議が、始まったようだ」

 先生はその一言を区切りに、礼装の操作と念話に集中し始める。様子を伺うために、清玄殿が魔術回路に接続し、魔術を用いてイメージを共有する。

 

「母さん⁉」

 そのイメージに映し出されたのは私の義母たる蒼崎燈子。まさか、自首しに来たのかと思ったがそうではなく、中立派閥の代表として、そしてライネスの策謀の結果として来たようだ。

 

「皆様、敵襲です!」

 共有されたイメージに集中していた私たちを現実に引き戻したのはルヴィア殿の敵襲を告げる声。

「Lead me!」

 すかさずフリュー殿が安全な方角に誘導する。それによって、私たちは致命傷を避けることが出来た。

 

 空を埋め尽くす稲妻と衝撃。それをもたらしたのは二頭の骨竜にひかれた戦車。摩天の車輪。フェイカーの宝具ではあるが誰も乗っていない。

 

「自動制御か...紫音、頼めるか!」

「了解です、あれは私が引き付けます! 皆さんは先に行ってください!」

 先生の頼みに従って皆に先行するように言い、効果速度を落として魔術回路を全力で稼働させる。要は、相手の脅威度判定において最高優先度の位置に立つことで敵を引き付ける。

 

 案の定戦車は私に引き付けられ、他の人達には目もくれず突進してくる。実のところ、私がどこまで戦えるのか知りたかった。英雄王の遊びには付き合えた。ただそれは、慢心と油断が重なったからこそのモノであり、真剣勝負とは程遠かった。残りの人達はもう遥か下に離脱している、ならば。

 

「どこまで私が戦えるか、練習台になってください」

 もの言わぬ戦車を曳く骨竜に告げる。

 

 

 彼と戦車の戦いは拮抗していた。骨竜たちの生み出す稲妻は彼の生み出した霧に吸収され、無効化される。反対に、彼が一撃を放とうとすれば骨竜はその兆候を嗅ぎ付けて準備動作を妨害する。近接攻撃を試みようとすれば彼は霧から出る必要があり、無防備な状態になってしまう。

 互いに決め手を奪われた二人、紫音は賭けに出る。

 

(グレネードで注意をそらしてその間にチャージして一気に叩き込む!)

 虚数ポケットからグレネードをいくつか取り出す。フラッシュグレネードとフラググレネードをいくつか放り出し、衝撃を与えて起爆する。1秒か2秒。それだけの僅かな時間にありったけを注ぎ込む。やがて彼の意図に気づいたのか骨竜達は彼を轢殺さんと突進してくる。

 

 足りなかったか。そう思いながらも攻撃を放ってせめて相打ちに持ち込もうと限界までチャージを進めていたところに、一筋の光が戦車に衝撃を与える。

 

 それは、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの宝石魔術。神代の骨竜を穿つ程の威力ではないものの、それは確かに時間を稼いだ。

 

「風の大鎌よ」

 彼は蓄積した攻撃を解き放つ。その大鎌は断罪を成すように骨竜の首をはね、戦車を跡形もなく消し飛ばした。

 

「急がないと」

 先生の後を追うべく全速力で飛行する。重力任せの急降下ではなく、魔力放出を用いた最大速度。私を援護するために残っていたルヴィア殿を抱き留め、直感と僅かに見える壁からルートを算出して風の権能を用いてさらに加速する。抱き締めているルヴィア殿が何か叫んでいるが気にせず追いかけ──なんだあれは?

 

 巨大な三眼、直感で分かる、あれは獣であると。私にも有効な手段が存在しない、仮にあるとすればそれは星の聖剣か、もしくは最果ての槍、あるいは開闢を寿ぐ剣程度のモノだろう。少なくとも、今あれはこっちを見ていない。ルヴィア殿の体を隠しながら、万が一にでも興味をひかないように、魔術回路の稼働を最低限にして権能による加速も止めて徹底的に息をひそめて通り過ぎる。幸いにも加速しきっていたおかげで十数秒ほどで三眼から身を隠すことが出来た。しかし、その次に視界に入ってきた世界も又驚くべきものであった。

 

 見渡す限りの赤い荒野、そして地を埋め尽くすほどの大軍勢に囲まれている先生とグレイの姿。

 何よりも、赤毛の偉丈夫な男から発せられる、神奈子様や諏訪子様のような神気。ハートレスの企みは成功してしまったのか?

「ルヴィア殿、どう見ます?」

 地上には降りず、空に滞空したまま抱き留めていたルヴィア殿に問いかける。

 

「どうもこうも、前にロードが語っていた王の軍勢とその固有結界に見えますわ。後、そろそろ私を抱きしめるのをやめてくださるかしら?」

 

「それは失礼、では背中につかまっていてください。状況によっては急降下して先生とグレイさんを回収して離脱しますのでその際は援護をお願いします」

 背中に彼女を回していつでも突入できるように幾つかの魔術を並列で待機状態に移行させる。        

 

「その必要はありませんわ」

 背中から声がかかる、いや、あれは令呪か! 先生は令呪を掲げて何らかの命令を下したようだ。王の軍勢は消え去り、固有結界も砂上の楼閣のごとく消え去っていく。

 

「我がエーデルフェルト家が持ち帰った令呪、しっかり活用してくれたようで何よりですわ」

 そして、すべてが終わった。

 

 神霊イスカンダルは消滅し、ドクター・ハートレスの企みは打ち砕かれた。




 皆様高評価ありがとうございます。何とか勢いで大半を書き終えました。
 次回からは冒険とfakeに繋がっていく繋ぎの章に入りたいと思うのですが、ちょっとここで小話を。
 この世界線だと、紫音が間桐臓硯を排除してマキリの盃も取り除いたためにHFルートが物理的に消滅していますが、もしこいつが幻想郷の情報とそこに行くための理論を知ったことにより浮かれて間桐邸に押し込み強盗をせずに諏訪に帰る、もしくは一眠りしてからイギリスに旅立っていた場合、HFルートに突入します。
 その場合、イギリスから帰ってきた紫音がバーサーカーやセイバーと戦う可能性が浮上します。(つまり死亡します)それ以外にも、凛の査問会の場に現れる人物が魔導元帥のみならず最新の魔法使いも現れてストレートに睨みを効かせて場をぶち壊しにかかる世界線もあったり...

ジェスター、どうしたい?

  • 即落ち
  • 逃走成功!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。