Fate/eastan phantasm   作:Astrad

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彷徨海の魔人編
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 ロンドンから帰ってきて1週間。マンションに引き籠って聖杯戦争の経過を確認していた紫音だが、聖杯戦争が終了したことを確認し、仕掛けを回収する為に円蔵山の洞窟に向かうことになった。

 

 「さて、確かこの辺りであったはずだがな...」

 結界に引っ掛からない様に魔術を用いない隠形で行く為、そして存在を秘匿するために夜の円蔵山に忍び込んだ紫音は大聖杯が安置されている洞窟を探していた。しばらく迷っていた紫音だが、やがて洞窟の入り口を発見した。

 

 「お、あったあった。あれ?誰か来ていたのか...?」

洞窟の入り口には相変わらず偽装用とその他さまざまな結界が張られているが、足跡が1つ。風化しかけているが紫音より小柄な人間がここを出入りした事を伺わせる。

 

 (どうして足跡がここにある...?監視していた限りではUBWルートに近い流れだった。マリスビリー・アニムスフィアがここに来た形跡もなし。この時点でここに来る理由がある者はいないはずだ。取り敢えず、中に入って確認して、場合によっては先生に報告だな。)

 

 そうして紫音は洞窟に足を踏み入れた。そこには依然と変わらない姿であった。ただ一つ、大聖杯へ向かう足跡があることを除いては。だが、紫音は仕掛けの回収を先にすることにし、枝道へ歩みを進めた。

 

 仕掛け、あるいはマキリの聖杯ともいう。奪い取ってから少し改造を加えたそれは、アインツベルンの小聖杯から大聖杯に送られる魔力を掠め取ることで己のリソースにするだけではなく、大聖杯の氾濫を防ぐ安全装置にして簒奪装置である。

 

 「良かった。こいつは無事に、しっかりと使えそうだ。」

 幸いにも、仕掛けはしっかりと狙い通りの役目を果たし魔力を蓄えていた。これなら、転移するときに必要な魔力を補うこともできるだろう。胸をなでおろした紫音であったがそれもつかの間。すぐに大聖杯の確認へと向かう。

 

 「さーて、ここに忍び込んだ人は何を狙っていたのかね。」

 大聖杯が安置されている広間。この世全ての悪を収める子宮とも呼べる場所は、以前に確認した時よりも禍々しさを減らしていた。

 

 「祓われた...?いや、違う。濃さは変わらず、総量が減っているだけだ。そうなると、泥が目的か?まあいい、撤収するか。」

 一つの謎を抱えながらも、ある程度の収穫を納めた為に冬木を後にし、諏訪への帰路へ着く。

 

 

 

 

 「ただいま、早苗。3週間ぶり!」

 新幹線で東京へ戻り、一泊してから特急を乗り継いで諏訪に帰ってきた紫音は、家に帰らずそのまま神社へ顔を出した。

 

 「お帰りー紫音、収穫はあった?後、早苗ならまだ学校だよ。」

 しかしそこに早苗はおらず、出迎えてきたのは炬燵に入っている目覚めていた諏訪子様と気が沈んでいる神奈子様であった。

 

 「はい、色々と情報を手に入れられました。それと、途中でイギリスに行くことにもなったのでお土産もあります!それと神奈子様、どうなされたのですか?」

 

 明るく笑顔で答える紫音であったが、神奈子様は立ち上がるやいなや、紫音を抱きしめて嗚咽交じりに声を漏らした。

 

 「ありがとう...無事に帰ってきてくれて...お前が、死んでしまうのかと思っていたぞ...」

 

 眷属として繋がっているから安否はわかるが、それでも心配だったんだぞ、そう漏らす神奈子様。

 

 「安心してください、あなたの眷属はそれほど弱くはありません。神奈子様から授けられた力も、武術も、決して弱くはありません」

 

 紫音はしばらく抱かれるがままにしていたが、やがて早苗が帰ってくる物音がした為慌てて振りほどいて入り口の方を向いた。

 

 「ただいま帰りました!諏訪子様、神奈子様!あ、紫音さんも帰ってきたんですねって、諏訪子様。神奈子様と紫音さんの雰囲気が変なんですけど、何をしていたんですか?」

 

 一瞬で変な空気が漂っているのを察知した早苗は段々と声を冷たくしていき、その一部始終を知っているであろう諏訪子様へと問いただす。

 

 「あー、それはね。帰ってきた紫音を神奈子が抱きしめていたからだと思うよー」

 

 その一言は、ただでさえ早苗と共に入ってきた冷気で冷えた部屋を外気温よりも冷たくするのには十分であった。そして諏訪子様は怯えからか寒さからか炬燵に隠れる。

 

 「正座」

 「はい」

 

 この一言で全てに決着がついた。そもそも、惚れた女に男は敵わないことは言うまでもなく、天性の肉体と才能を持ち合わせた現人神に諏訪の地では絶対に敵わない。

 

 「まあでも、気持ちはわからなくはないですよ。いくら事前に話していたとはいえ、3週間の間に頼りの一つもよこさず、ずーっと生きているか死んでいるかもわからなかったんですから」

 

 早苗の玲瓏なるその瞳が細められる。それはまるで蛇を思わせるような目だ。

 

 「それで、どうだったんですか?」

 

 蛇の如き目が彼を射抜く。忘れるな、紫音よ。お前の前にいるのは少女であるが、神である。人から生まれたが故に人の相を持ち合わせているが、そこにいるのは紛れも無い神であるのだ。




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