「お久しぶりです、紫音です。依頼の件でいくつか確認したいことがあるのですが、よろしいですか?」
お得意さんでもある幹也さんからの依頼。その依頼内容に少し引っ掛かるものを覚えた私は、幹也さんに確認してみることにした。
その結果、幹也さんが母を通じて海外の魔術師を呼び寄せたという事であり、しかも式さんが家出したという事であった。式さんが家出してしまった以上、物理的な自衛力はあっても魔術的な自衛力の欠片もない幹也さんを一人で会わせるのは例え母さんの紹介であっても不安である。という事でその会合に同席させてもらうことにした。ついでに、大学の期末試験が終わった早苗と一緒に東京旅行へ行くことにした。
「成程、だから紫音さんも珍しく正装しているんですね。最後に見たのは高校の卒業式だったし、その前は女装してたから新鮮な気分です」
冗談めかして早苗が笑いかける。そう、ここは東京へ上る特急の車内。車内は人影もまばらだが念には念を入れて防音魔術でほかの人には聞こえないようにしている。
「女装の話はあまりして欲しくないなぁ。それにしても、早苗のおやっさんもおっかさんも泊りで東京観光、それも男と一緒に行くことをよく許可してくれたね。」
話題を逸らそうとして別の話を振る紫音。しかしその話は剛速球となって襲い掛かってきた。
「はい!紫音さんなら大丈夫だって送り出してくれました。後、お母さんから式はいつ挙げるの?と聞かれたんですけどどうします?」
にっこりと笑顔で結婚の話を持ち出しながら脇腹を指で突っついてくる早苗。
「と、取り敢えずそういうのは早苗が卒業してからでお願いしますー」
思いがけない返球に全力で回避する紫音、それを早苗がくすくすと笑う。
砂糖空間を展開しながらも列車は一路東京へと向かう。新宿で特急を降りた後、夏の熱気から逃げるように電車を乗り継いで両儀邸の最寄り駅に向かう。
最寄り駅に着くと、ロータリーには何台かのタクシーと車が止まっていた。そのうちの一つ、黒のSUVからこちらを見て寄せ場に移動する。
「お久しぶりです、秋隆さん。」
「ええ、お久しぶりです。紫音様、若旦那が屋敷でお待ちですので後ろへどうぞ。」
指示に従って早苗と共に後部座席に乗り、やがて車は走り始める。
「紫音様は今回の件について、どの程度知っているのですか?」
運転中の秋隆さんから質問が飛んでくる。
「そうですね、私が幹也さんから聞いたのは母さんを経由して魔術師を時計塔から呼び寄せた事に対して式さんと喧嘩した結果、式さんが家出したという事ですね」
まあ、恐らく何か厄介ごとがあるんだろうけれど。そう思いながら答えた所、秋隆さんから爆弾発言が飛び出した。
「実は、式様が家出したのは夜劫から人探しの依頼を頼まれたのが原因でして」
あー、成程。夜劫が絡むならそうなるか。自分に頼まなかったのもそういう事か。
「そういう事ですか。そうなれば確かに自分たちが、特に早苗は表に出るわけには行かないですね。」早苗なんて
日本の法術師たちが神臓鋳體を基盤として辛うじて神代の行を行使するのに対して
そのような爆弾発言もありながら、車は両儀の屋敷に到着する。車から降りた私たちを迎えたのは幹也さんであった。
「久しぶり、紫音。それと...そちらが早苗さんでよかったかな?」
「お久しぶりです、幹也さん。」
「は、初めまして、東風谷早苗といいます。今日から1週間お世話になります。」
手を挙げながら挨拶する紫音に対して、早苗は緊張で固まりながらお辞儀をしていた。
「そんなかしこまらなくても大丈夫だよ、東風谷さん。紫音の彼女さんなら姪っ子みたいなものだから。さ、部屋を用意しているから上がって夕食までくつろいでいるといい。」
幹也さんに従って早苗と部屋に行って荷解きをする。虚数ポケットから取り出した荷物を取り出してすぐに使えるようにして、ついでに霊脈の魔力を使った簡単な結界を仕込むだけでもすぐに時間がたち、夕食になった。
夕食の時には幹也さんと末那嬢、私と早苗という組み合わせになった。案の定、末那嬢は早苗に興味津々といった様子で食後は二人で話すといって早苗は末那嬢に拉致されていった。
「秋隆さんから聞きましたよ、今回の一件に夜劫が絡んでいると。それで、誰を呼んだんですか?」
食後、早苗が拉致された後に私は幹也さんの書斎で明後日の一件について話し合っていた。
「いやぁ、秋隆には口止めをお願いしていたんだけれどね。」
少し困ったような笑顔を見せる幹也。
「そもそも、魔術師に一人で会おうとする事が危険です。いくら母さんの紹介とは言え基本的に魔術師は人でなしの集まりですから」
「多分、大丈夫だと思うよ。既に誰が来るかは調べているから。ほら、見てごらん。」
そういうと、幹也さんは何枚かの写真を差し出してきた。先生とグレイ、遠坂嬢と謎の赤毛の青年といったところか。
「成程、それでしたら安心です。一人得体の知れない人物がいますが、私のクラスメイトと先生ですので安全な人たちです。」
どこか安心したような表情のまま話をつづける紫音。
「もしかして、追加で依頼が来たのはこの2人の為でしたか?」
赤毛の少年の写真を差し出しながら質問をする。
「そうだよ、途中までは君の先生とその助手の二人だったんだけど、途中で人数が増えたようでね」
ふーむ。3人は知っているから安心できるがもう一人は知らないし、先生が拾ったのならば何かしらの厄ネタを抱えていてもおかしくないな。
紫音は万が一の戦闘計画を考えながらも明後日の為の話を続け、そんな間にも夜は更けていく。
紫音と早苗の仲>小学校時代から一緒に居るので当然ながら周囲からは夫婦扱いされているし両親公認の仲です。早苗の両親は紫音に婿入りさせて神社を継がせようと画策しています。つまり、早苗の両親も両神も全力でくっつけようとしているという事。
ちなみに、設定上紫音は文系に、早苗は理系に得意科目が寄っているという設定です。まあ不得意な科目も人並み以上にはできますが。
ジェスター、どうしたい?
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即落ち
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逃走成功!