Fate/eastan phantasm   作:Astrad

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神代の儀式

「なぜ、そう思った?」

 彼の言葉を受けたロードが返した途中式を問う言葉。的外れな回答ではないことを察した紫音がそれに答える。

 

「まず最初に、彼を最初に見た時に相が幻想に寄っている、つまり私や早苗、グレイさんのように人以外の存在が彼の中に含まれているというのが明白でした。その上で、彼の精神に潜ったことで何が彼に潜んでいるのかを知りました」

 あくまでも淡々と、時系列に沿って話を進める。

「彼の精神に潜った時に私の精神介入用の術式が投影してきたのは、複雑に絡み合った枝と4つの幹、これは彼の内側に潜んでいる存在が彼に制御されていない、もしくは制御しきれない存在であることを示します。そして、私はそこに神の存在を感じました」

 

「そうか、君なら神性という概念を私以上に理解しているのだから感じ取れるのだろうな。だが、神そのものであると断じた理由にはならないぞ」

 

「ええ、問題はそこなのです。もし彼が3つの神性を取り込んだ程度なら記憶飽和が起きるところまではいかないはず、これは2柱から神性を授かった人間として保証します。そして、だからこそ神格、つまり神を己が内に取り込んだ可能性が最も高いと考えます。どうですか? 先生」

 

 

 自分の肉体を彼と比較してその内側に潜むものが何であるか、それを導き出した紫音は筋道立ててロードに回答し、その返答を待つ。

「成程な。私と違う道から解き明かしたが回答は同じだな。だが、君は先ほど3つともう少しと言っていた。そのもう少しとは何だ?」

 正解であることを認めるが、説明し忘れていた部分を確認するロード。それに紫音は悩ましげにしつつも答える。

 

「そこなんですよね、先生。彼の精神に3つ以上の神性が含まれているのは確実で、ただその+アルファの部分は神格ではないから神性、つまり彼自身が神の系譜にあることを意味する。私みたいな方法(眷属化)というのもありえなくはないけどそんな存在がヨーロッパに居たらとうの昔に時計塔に嗅ぎ付けられているだろうし、時計塔でも教会でもそんな話を聞いたことはない。いや、待て。昔...?」

 自分で話しながら自分の言葉から何かを見出す。

「そうか、昔か。現代において神を取り込むにも神がいない以上神臓鋳體でも取り込まないといけないけど長い間神臓鋳體の数が変動した記録は存在しない。それならば神代、それも終わりかけの時代ならそれを成し得る。消滅しかけている神を何らかの形で加工して取り込むことだって神代の超越した腕を持つ者たちなら可能だろう。もしくはエルゴ自身がそうであった可能性もある」

「いや、彼は魔術師ではなく、3人の魔術師たちによる実験の産物との事らしい」

 ロードによる情報提供を基に更に考察を深めていく紫音。ロードも紫音の考察を聴き、顔を険しくしていく。

「成程、なら彼は被験者であったと考えるべきか。神代の末期に行われた神を取り込む実験。私が今なお眷属化の最適化が終わっていないことを考えると神格を取り込むのは更に時間がかかってもおかしくない」

「ああ。神代の末期であれば神も未だ衰退しつつあるものの存在しているからこそそのアプローチも可能だろう」

「後は元々の神性、私が感じたのは雷の気配、エルゴは赤毛」

 一つ一つ、材料を練り上げていくと回答に繋がっていく気がする。私は知っている、先生も知っているその存在。

「エルゴは征服王イスカンダルに連なる存在.?」

 その一見すると冗談にもならないようなそのお話に、遠坂が噛みつく。

「ちょっと待って、私がエルゴを拾ったのはシンガポール近海よ。流石に場所がおかしすぎる」

「そうなのか? それだと話が合わないなぁ.」

 せめて、実験場所がわかればもう少し絞り込めるんだけれどなぁ.そうつぶやく紫音であったが、本筋を思い出して我に返る。

「そうだ、忘れてた。先生、記憶飽和の件ですけど」

 そう声をかければ、ロードも考察から復帰して応じる。

「そうだったな。紫音、君には何か手立てはあるか?」

 紫音に対して解決策の有無を尋ねるロードであったが、紫音の回答は非情に近いものであった。

 

 

「そうですね、下級霊だったり精霊ぐらいなら私が人形を作ってそれに移し替えるなり、多少格が高くても流し雛の応用儀式を教室のメンバー総がかりで組み立てて行えば何とかなりそうですけど、神格となると押し付ける器がないし、作ろうにも材料がこの世には存在しないです」

 理論上は可能でも、それを行える前提条件が存在しないが故に不可能と紫音は断じ、エルゴは気を落とし、顔を暗くする。

 

「ただ、私が知っている範囲、つまり東洋の方法で出来ないだけであって聖堂教会の方面では何かしらの手が存在するかもしれません。手続きに少しかかりますが、天使の書庫を開いてもらって少し漁ってみます」

 

「天使の書庫? ってまさかアンタ.!」

 一瞬その名前に思い至らなかったがそれを思い出し、かつそれがどれほど無茶なことを言っているのかを察した遠坂が驚くように声を発する。

 

 天使の書庫、それは聖堂教会が長い年月をかけて蒐集した禁書、異端の学術書、この世には存在するはずのない知識、そういった書物の数々を収蔵した”存在しない書庫”。

 

「ええ、ラウレンティス枢機卿には幾ばくかの貸しがありますし、ノイ枢機卿も目をつむってくれるでしょう」

 

「あの、一つ良いですか。僕が聞いている限り、聖堂教会と時計塔は敵対しているのではないのですか?」

 遠坂と紫音が2人だけの話に入っていたところにエルゴが疑問を呈す。

 

「ええ。本来、聖堂教会と時計塔は表向きは協調体制をとっていても裏では喧嘩しているとても険悪な関係ではあります。しかし、それは現代魔術科以外の話です」

 

「紫音のおかげ、もしくは紫音が原因というべきなのだろうな。紫音が私の教室に所属するだけではなく、埋葬機関にも半分籍を置いているおかげで紫音の弟子や代行者が現代魔術科に頻繁に出入りすることになってな」

 おかげで他の君主たちには睨まれる羽目になったと愚痴をこぼすロード。

 

 そう。蒼崎紫音という存在は現代魔術科と聖堂教会の最奥部たる埋葬機関の両方に籍をおいているが故に、彼が仲立ちを務め、それにより現代魔術科のみは聖堂教会と良好な関係を保っているのだ。

 

「まあ、明日申請を出したとて数日はかかると思いますし、早苗と一緒にまだこっちの方に滞在するので必要なら使ってください。後、エルゴ君にはこれを飲んでもらいます」

 そう言うと、紫音は虚数ポケットから薬瓶を取り出す。

「これは?」

「私の工房で作った霊薬。高位の存在を降ろすときに使う負担軽減用の薬だから応急処置的には効くと思う。1日3回、水で飲むこと。それじゃあね、よい夜を」

 そう言って紫音は結界を解き、部屋を去っていく。

 

 ホテルから去り、人気のないところで紫音はポツリと呟く。

「可哀想に、あれでは半年も持つまい。遠からず己の内に潜む者を制御しきれぬであろうな」

 先生なら察しているだろう、彼自身も知っているだろう。だが、あまりにもやるせない。あの霊薬があれば負荷は軽減するだろうが、それでも多少延命が出来るかどうか。

 

「神奈子様、諏訪子様、どうか彼に命を繋ぐ機会のあらんことを」

 祈る。ここにあらずとも常世に確固たる存在をもつ神に祈りを捧げる。

 それはまるで、敬虔たる信徒のように。

ジェスター、どうしたい?

  • 即落ち
  • 逃走成功!
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