合流場所、かつて私の母の工房だった所へ向かう車内でエルゴと
「あれ…僕は、どうして縛られているんですか…?」
「おいおい、まるで鳥籠の中の鳥かよ。頼むから出してくれ。」
異口同音に解放を求める声、だが彷徨海の魔術師の関係者を名乗るルォロンを運転中の車内で解放するわけにはいかない。
「運転中だから後にしてくれ、目的地に到着したら解放するよ」そう答えてしっかりとハンドルを握り締め、目的地へ向かう。途中、後ろから聞こえてくる5人の会話に耳を傾けながら。
到着した後、エルゴは車から降りたタイミングで拘束を解放し、白若瓏には事務所で封印を解放することにした。
「へー、ここがあの冠位魔術師、蒼崎橙子の工房だったのねぇ…少し見てきてもいい?」
「どうぞ、私はこの男に尋問するからね。」
遠坂は好奇心に引きずられるように工房の探索へ向かった。
「さて、」
封印を解放する。手乗りサイズの立方体はその体積を増していき、人間大になった所で内蔵していたものを解放する。
「ふう、ようやく解放されたぜ。どうせ知っているだろうが、俺は白若瓏、あんたは?」
「そういえば、早苗は自己紹介していたようですけど私はまだでしたね。私は蒼崎紫音。今尚この世に残っておられる建御名方神と洩矢神の眷属です。」
そう言うと、彼は目を瞬かせた後、何処か納得したように頷いた。
「成程なぁ、どうりであの時お前さんから神気がしたわけだ。して、あのお嬢さんは何なんだ?どっからどう見ても人間じゃないようだが…」
「そちらに言われたくないですね。貴方が連れていたあの子も貴方自身も、何かしら混ざっているでしょうに。」
そう言ってから、思い出したかのように虚数ポケットから取り出した水出し緑茶を2つのコップに注ぎ、若瓏に片方を渡す。
「おう、ありがとな」
「いえ、こちらも聞きたいことがありましたので」
「何だ?言えることなら答えてやるぜ。」
「では一つ。先程の戦いで私に打ち込もうとしていた術式はどのようなものですか?」
紫音は問う。ある程度当たり自体はついているが一応確定させておきたいし流用可能な物なら術式を見てみたい。
「あれか?一応俺の師匠から渡されていたやつでな、神核を封じることが出来る奴なんだそうだ。といっても、時間制限付きで容量も一柱分しかないから本当の緊急用なんだがな。」
「成程、確かに緊急用の代物としては十分ですね。ただまあ、私に神の核は存在しないのであまり意味はないんですけどね。さて、本題に入ってよろしいですか?」
コップの中身を一口に飲み干してから問い掛け、向こうも雰囲気を変える。
「君の連れている少女、夜劫アキラ。彼女と君がどうしてともに動いているのかを教えて頂きたい。ああ、一応言っておくが私は彼女が君と居ることを自発的に望んでいるのなら引き裂くつもりはないのでご安心を。」
少し圧を掛ける事になるが確認しておきたい。そして願わくば君達を引き裂く事にならないで欲しい。
そんな願いを知ってか知らずか、彼は望んだ言葉を返した。
「別にどうってことはない。あいつが神體の移植の拒絶反応とあそこでの暮らしに苦しんでいたから連れ出したってだけだ。それ以上でそれ以下でもない。」
そうか、それなら良かった。君の人の良さは分かっていたからね、君の気まぐれの悪巧みであるのなら引導を渡していたがそうでないのなら何より。
結んでいたパスのおかげで2人が近づいてきたことを確認し、紫音は話を切り上げる。
「そうか、それなら問題ない。それなら私は建御名方神の名において君達から危害を加えられない限り君達を守護すると誓おう。」
「あのなぁ、襲わないってのは有難いが流石にこっちを弱く見過ぎじゃないか?こっちもまだ切り札を切っていなかったからな。」
「おや、君も切り札をまだ隠し持っていたのかい?迷わずに切っておけば良かったものを。」
紫音は話を切り上げようとしたものの、直感と脊髄に従い煽った結果、ルォロンと煽り合いを始める。このままでは2人共全力を出した結果、関東平野が消し飛ぶ事態になりかねなかった所に1人の男が現れる。
「全く。彷徨海の魔術師から事情を聞き出しているのかと思えば煽り合いを始めて一体何がしたいんだお前はーー!」
グレートビッグベン☆ロンドンスターが紫音の前に現れ、一瞬沈み込んだかと思えば全力のアッパーカット。そこから肘打ちを腹に入れ、くの字になった背中にまた肘打ちを入れる。
時計塔一の武闘派揃いのエルメロイ教室を預かる彼は確かに弟子のグレイや紫音と比べてはスペックで劣る。しかし、武闘派を束ねる為に鍛えた徒手格闘の分野では教室内でも五本の指に入るほどの実力者でもある。
「さて。ミスタールォロンと言ったか。私の弟子が失礼した、改めて事情を聞かせていただいてもよろしいか。」
伽藍の堂、その一番広い部屋に全員が集まり今後の対策を協議する。話し合いの結果、アキラを夜劫へ連れ戻す事はなくなったがその後をどうするか。そしてエルゴの記憶飽和に対しての対処を話し合っている時にそれは言い当てられてしまった。
「あの、ちょっと良いですか?ルォロンさん。」
「何だ?東風谷のお嬢さん。」
「会った時から気になっていたんですけれど、ルォロンさんは何処の神様なんですか?」
早苗は時々小さなミスを起こす。その多くは大したことのない、殆どの被害は早苗自身か私に降りかかるのだが今回のは格別だろう。何せ、藪蛇をつついてしまったのだが。
「そうか。俺が竜を喰らった事をそこの先生が言い当て、俺が神であることをそこの嬢ちゃんが言い当てる。片方は理論、片方は感性。全く、エルメロイ教室は恐ろしい所だな。」
先程ロードが言い当てたことで剣呑な空気になりかけていた所に、更に早苗が神である事を言い当ててしまった。それだけならルォロンが否定すれば回避できそうだったがそうはならなかった。
「流石だな、エルメロイ教室は。だが、こいつの記憶飽和を解決するすべはないだろう。俺もないが、師匠が連れてこいと言っているのでね。師匠の命令は絶対だし、師匠なら何かしらの用意はしているだろう。よこせよ、エルメロイⅡ世。」
「断る。私は弟子の身柄を売り払うつもりはない。ここにいる紫音のように自由意思で二足の草鞋を履こうとするのなら話は別だが、お前はただ連れ去ろうとしているだけだ。」
2人は睨みあっている。本来の世界線ならばここで臨戦態勢をとる遠坂とグレイの2人であったが、彼らはある程度安心していた。というのも、
ロードに脅しかけるルォロンに対して対抗する様に紫音も戦闘態勢に入る。未だ武装を手にしてはいないものの彼の虚数空間につながるポケットは既に開いており、戦闘になったとしても一瞬で応じることが出来る。互いに魔力が迸り、部屋の中で衝突する。
そんな一触即発の状況に割って入る
「ちょっといいかな、ルォロンさん。」
「あ?なんだ」
「君たちは、何かしらの身分証を持っているのかな。ちょっと怪しいものでもいいけど。もし持っていなかったら力になれるよ」
紫音は唖然とした。きっとルォロンも。それ程までに、彼は緊張の糸が張り詰めた、関東平野が消滅する一歩手前の所に割って入ったのだ。
「もし良かったらここを暫くの塒にでもすればいいと思うよ。所有者には話を通してあるし、水道も電気もガスも通ってる。保存食も多少はあるけど賞味期限切れが大半だと思うからそこは確認してほしいかな。」
その普通過ぎる言葉で、彼は2人の戦意を失わせ、戦いを未然に防いだのだ。
「あーやめだ、締まらねえ。取り敢えず、日も暮れてきたし飯でも食ってそれから考えるか。」
「そうですね。何か適当に作りましょう。貴方は何か作れますか?」
つい先ほどまで衝突しかけていた二人は一瞬で切り替え、食事を作りに台所へ向かう。そこに先ほどまでの戦意はなく、ただ同年代の友人と話すかのような空気だけがそこにはあった。
日が暮れて夜が来る。次の日に起きることなどつゆ知らず、彼らは食事を作り、食べた。そこにはひと時だけではあるが笑顔と団欒があったのである。
ちなみに、あんまり本編と関わらないので描写していませんでしたが、現在の衛宮邸にはロリ姉とそのメイドが暮らしています。ロリ姉も紫音の自作した人形に魂を移す形で多少弱体化しましたが一般的な人生を全うすることは余裕で出来ます。
あと、聖杯の汚染問題とか小細工をした事などはイリヤと紫音ぐらいしか知りません。遠坂嬢には意図的に打ち明けていないのです。
ちなみに、IFルートとの隠れた差分としてはあっち側の紫音は転生者としての原作を知る者としての意識が強めで、こっち側の紫音はこの世界で生きる者としての意識が強めです。
ジェスター、どうしたい?
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即落ち
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逃走成功!