Fate/eastan phantasm   作:Astrad

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何とかかけました。


夜の帳の最中より

 皆で囲んだ食事を終えて、片づけをした後全員に適当な寝具を配った後、1人屋上で瞑想にふける。昼間に起きた事、最大出力での飛行や神性の解放、そして戦闘。それなりに昂る戦闘のあとはこうやって一人になる事で精神を落ち着かせ、心身をメンテナンスする。

 

 やはり、星空は良い。諏訪ほどよく見えるわけではないが前世の地元よりは良く見える。手を星空にかざしながら暫く物思いに更けていた。そこに、一つ足音が聞こえる。

 

「おや、エルゴか。どうした?」

「ちょっと聞きたいことがあって。そっちに行って良いですか?」

「ああ。構わないよ」

 よく見れば彼は、あまり顔色が良くない。何かに飢えているようだ。昼間の暴走しかり、何かしらの衝動が巡っているのか。

 

「紫音さんは、どうして僕に親切なのですか?凛さんは僕を拾った責任があると言っていました。先生や姉さんは弟子に取ったからと言っていました。だけど、紫音さんは違う。教室の生徒ではあるけど、ほとんど初対面で関係のない人間だった。なのに、どうしてそこまで助けようとしてくれるのですか?」

そう。実際紫音にとってエルゴは対して重要な存在ではないし、するかしないかは別として口先だけの応援でそのまま仕事を口実にアメリカなりヨーロッパなりアフリカなりに飛んでみなかったことにすることは出来たのだ。

 

「そうだねぇ、それに対して答えるとするなら少し君にとってショックな話になるかもしれないが、良いかい?」

「大丈夫です、聞いたのは僕ですから。」

 

 そうして紫音は語り始める。

「私が教室に所属しながら教会にも所属している、中途半端な存在だという事は知っているだろ?私はね、代行者として各地で戦っている間に気づいた事があるんだ。」

「何に、ですか」

「人とは何か。魔性の者であったとしても己の内に潜む魔と戦い、之を制して人として生きる者。人であるのにも関わらず己の欲望のみに従い他者を脅かすもの。君は前者に属する者というべきでしょう。」

言外に、君は人ではないと告げる紫音。彼は己の内から赤く、脈打つ宝石のような球体を取り出して続ける。

「これは前者であり続けようとした私の師の一人が、私に残した物。彼の名はべ・ゼ。聖堂教会に助力し、埋葬機関に所属することになった私の師匠の一人であり、私が唯一討伐した死徒二十七祖。」

 

 そう。剣僧べ・ゼは彼の師の一人、彼は人を守る為に吸血衝動に抗いながら、己の技を受け継ぐに足る者を探す為に堕ちた同族を狩り続け、永き時を生き続けていた。彼の生き様を見れば、知れば、魔であるからと滅することはない。

 彼に師事した時間はたった一度、その一度で私は彼に認められ、そして全てを託された。彼の長き生き様は他の埋葬機関の人達...ノイ神父や局長から聞いたが、彼は私にとって目指すべき理想像である。

 

 その球体を手にしながら彼は続ける。

「君にも死徒のように何らかの衝動を内に抱えているのだろう。だからこそ、君がそれに抗い続けている限り、人として生きる限り、私は君をエルメロイ教室の生徒として、私の友人の一人、手の届く一人として君の助けとなるというだけだ。まあ、何が言いたいかというと、私は手の届く範囲で困っている”人”を助け続けるだけという話だ。話は終わりだ、恐らくだが明日はそれなりに忙しくなる。早く寝ておいた方がよい。」

 

 そうして彼はエルゴを帰して又瞑想にふける。その中では新たなる魔術のアイデアが山のように浮かび上がり、そしてその多くは否定され消えて行く。しかし、いくつかのアイデアは消えずに前世の記憶と結びつき、彼の思考の中に残る。

 

「ああでも、何か起きそうだし、用意はしておこう。もしもしシエル?今からあれ東京に持ってきてくれない?私の名前でジェット手配していいから。横田に迎えは用意しておくから、頼んだよ。」

 

 

 そして翌日。それは起きた、否。起こってしまった。

 

「助けて!ルォ!痛い痛い痛い!」

少女の悲鳴が上がる。同時に魔力の奔流をも。紫音はそれを見てしまった。

 

 ルォロンにしがみついて助けを求める彼女が不吉な黒に覆われていく。顔は不気味な仮面に、体は黒暗淵の黒に。とっさに破壊しようとする早苗と紫音。

「こんなもの―――!!」

全力の拳で破壊しようとする早苗だが、それを紫音が羽交い絞めにして止める。

「なんで邪魔するんですか!このままじゃアキラちゃんが!」

「よく見ろ!あれはあの子を起点にしている、下手に壊せばあの子にバックファイアが来て死ぬぞ!」

同じく破壊しようとしていた紫音だが、不吉な予感を感じた為に早苗を止めながら観察した結果見えてしまったその起点。

「紫音さん、何が!」

エルゴ達も悲鳴を聞きつけて駆けつけてくる。丁度いい。

「エルゴ!君の幻手で一時的に止めて、遠坂嬢は宝石でマーキングを!」

「わかりました!」

「ええ!」

この場で事態を打開することは不可能と考えた紫音は敵の企みを利用しようと考え、相手が封印を解放したタイミングで奪還することを目指すことにした。

(どうせこのタイミングで神體を起点にアクションを起こす時点で夜劫が企んでいるんだろう、ならその企みを正面からぶち壊してやる。)

「すまん、紫音、エルゴ!しくじった、後は任せる!」

その言葉を最後に、2人は闇に包まれ、立方体に封じられてしまった。

 

 そこに、3人の男が現れた。

「あなた達が、アキラちゃんを...」

 早苗の反応は激怒。それは圧倒的な魔力の奔流として溢れ出る。それは、紫音が戦闘の時に発するものよりもはるかに強力かつ強大なもの。そして、そこに含まれるは暗き、黒き魔力。瘴気と呼ぶに等しい禍々しいものであった。

 

(まずい...!)

 紫音は全力で早苗を羽交い絞めして暴走しないように努める。現人神である早苗の身体能力・魔力は紫音のそれを遥かに凌駕している。戦闘センスが紫音よりも劣っているために武力が互角近くに収まっているが、なりふり構わずに暴走してしまえばその限りではない。

 

 故に、紫音は早苗がこの場で暴走しないように拘束するだけで精いっぱいだった。もし本当に暴走してしまえば、大惨事は免れ得ない。全力で相殺しようとしても、最低限この街が崩壊する。それを防ぐ為に彼は抑え込むことに全力を投じていた。

 

 半神である自らの肉体を触媒として、英雄王から頂いた双剣と御柱の礼装を結界の楔として6角形の結界を多層的に展開して全力で封じ込めにかかった。

 

 

 結果として、紫音は早苗を抑え込むことに成功した。

「なんで...どうして...止めるんですか!」

息も絶え絶えに早苗は抗議する。そりゃ眼前の敵を打倒することなくみすみす逃してしまったのだから当然だ。その言葉に、紫音はうまく返す言葉が見つからずにいた。プランならある、先ほど遠坂嬢に仕掛けておいてもらったマーキングを頼りに夜劫の儀式が始まるタイミングで殴り込みをかけてそこで夜劫を凹してアキラちゃんを奪還する。幸い、あちらの戦力は私だけでも対処可能だし、あちらにとって早苗はとても相性が悪い存在だからだ。だが、それをうまく説明できない

 

「レディ、その怒りは当然だろう。だが、物事には時期と順序というものがある。それに、ただ強引に取り返すだけで彼女が救われると思っているのかね?」

 ロードは紫音が説得しようとしているも思うように言葉が出ず、難航してしまっている姿を見て迷わず助けに入った。それはロードの経験から。基本的に、紫音は余裕を持っている時は滑らかな口を持っているが、何かの要件が満たされないと途端に口下手になってしまうという弱点を持っているのだ。

 

 それから、ロードと遠坂、それと口が回り始めた紫音による説得でようやく矛を収めた早苗を含めた一行は両儀邸に移動し、作戦を練っていた。

 

「さて、これからの動きだが、グループを2つに分けたい。ミスター幹也、頼んでいたものは用意できたか」

「はい、こちらが彼の居場所です。」

 ロードは幹也から受け取ったファイルを片手に話を続ける。

「まず、夜劫の目的はアキラに神體を移植し、新たな黒櫃にすることだ。これに対処するために必要な技術を持っている人物の情報を入手してもらったのでこれから接触しに行く。だが、既に手が回っている可能性を考えると護衛が必要だ。エルゴとグレイはこちらに来てもらいたい。」

了解と、異口同音に話す2人。

「それじゃあ、私たちは待機兼突入時の陽動ですかね。」

「そうだ。だが、もし我々が戻ってくるよりも早く儀式が始まったのなら突入して構わない。判断はミス遠坂に一任する。」

「わかりました、先生。紫音、そして早苗さん。」

 突入役のまとめとして指名された遠坂嬢が私たちを見ながら

「2人とも、普段から死徒討伐に行っているから戦闘には慣れているんでしょうけど、極力殺さないようにして頂戴ね。」

と宣う。

「はーい」

 紫音も早苗も苛立ちからかややぶっきらぼうに答える。しかし、紫音はすぐに何か考え込んでいるような表情を見せる。

 

 さて、どうするべきか。いいや、あれ出しちゃおうかな。

「遠坂嬢、ちょっとあれ出してもいい?」

「あれって何?いや、もしかしてあの服?ま、この状況を考えれば装備は良いものをそろえておいた方がいいでしょうし、許可します」

「待て、紫音。お前何を出そうとしてる?」

先生の答えに答えるかのように虚数ポケットから服を取り出す。

「先生とグレイさんは見せたことがありますよ。アルビオンに潜った時の礼装です。」

そう。当時の紫音の持ちうる知識と技術を集めて作り上げた紫音の至上礼装。それを紫音は取り出した。

「だが、それを使うにはお前みたいな桁違いの魔力量が必要だろう。」

「ええ。なので色々と弄って遠坂嬢にも協力してもらって作り直したものを用意しました。」

 

 戦闘服Ⅰ型。聖堂教会の代行者の殉職率が高いことに悩んだ枢機卿から相談を受けた紫音が考案したインナースーツ。機能は長期戦を前提にして身体強化や自動治癒、各種人体補助に特化した礼装だが、いくつか戦闘用の魔術をセットしてあり、いわば簡易的な魔術刻印のようなもの。そして、この礼装に遠坂の協力を得て搭載した機能が魔力の貯蓄機能及び人造宝石を用いたカートリッジ。

 このカートリッジさえあれば、魔力に乏しい代行者見習いであったとしても、上級死徒などに襲われない限りは生きて帰ってこれるし、熟練の代行者であるのなら消耗を抑えることでより長期戦を可能にする。

 

 「これ魔力を通せば自動でフィッティングして使い方を教えてくれるので、先生たちも出かける前に着込んでおいてくださいね。」

 

 「わかった。だが、せめて先に教えて欲しかったな」

何はともあれ、方針は決まった。シエルが装備を持ってくるのが先か、儀式が始まるのが先か、はたまた先生が目的を果たして戻ってくるのが先か。一先ずは休息をとりつつ戦闘準備をしなければ。




①この世界での早苗と紫音について。
早苗と紫音は両方とも2柱の神の血を引いていますが、それぞれ早苗は諏訪子様、紫音は神奈子様の血が強く出ています。
②シエルについて
 この世界では、ナルバレック局長によって紫音の弟子にされた後、紫音の手引きで教育を兼ねてエルメロイ教室にも所属しています(埋葬機関だから許される行い)。おかげである程度吹っ切れることが出来たので謎の代行者C.I.E.Lにメンタルが近い。そのほか2人で死徒退治に向かったり時には早苗も入れて3人で死徒退治に行くことも。欧米だとシエルと共に行動して、アジア圏だと早苗と共に行動することが多い。それ以外だと自分一人で、たまに現地の代行者と組む。
③シエルに頼んだものについて
 紫音は大体の武装は自分の虚数ポケットに備蓄していつでも戦闘できるようにしていますが、政治的な兼ね合いもあって普段は機関預かりにしている武装が一つ。まあ、例のあれですよ。
④ノエルについて
 シエルに相談された紫音が稽古つけて、神奈子様にも稽古をつけてもらいましたがどうも戦闘の才に乏しい為紫音が裏で手を回して今はライネス(嗜虐趣味者)のメイドをやってもらっています。
⑤紫音のIFルート
 紫音が早苗と出会わず、ロードとのみで会うのなら紫音はエルメロイ教室に入った後に聖堂教会に転職して代行者としての道を歩みます。その世界線では割と早く埋葬機関に所属します。
 紫音が早苗ともロードとも出会わなければ最初から聖堂教会に入っています。

 ただ、どちらの可能性でも紫音はこの世界程笑顔を見せることもありません。早苗が紫音に依存しているように紫音も早苗に依存しています。

ジェスター、どうしたい?

  • 即落ち
  • 逃走成功!
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