Fate/eastan phantasm   作:Astrad

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 副題 埋葬機関師弟コンビVS夜劫の大体総戦力


夜劫最後の日?

 夜劫の本拠地、その御山の正門に一つの車が停止する。スモークガラスの窓と教皇庁の紋章、米軍ナンバーのその異質な気配を纏う珍妙な装甲車に、夜劫の構成員たちは警戒しつつも周囲を取り囲む。

 

 降りてこい、武器を捨てろ、跪け。大体そんな事を口にしながら銃火器や刀で武装した構成員たちは警戒を崩さずにいる。

 

 やがて、両側のドアが開く。それが夜劫壊滅前に彼らが見た最後の景色であった。運が悪い人間は自分たちが不可視の刃で斬られ、床に叩きつけられたことを知覚したかもしれないが、それで終わり。

 

「それじゃ行こうか。さっきも言ったけど殺しはなし。手足の腱を切って動けなくするぐらいで留める様に」

「了解です」

 車から降りてきたキャソック姿の二人。一組の男女は武装を携え門を越えて敷地に侵入していく。監視設備があったのか、警報が鳴り響いている以上、さっきみたいな不意打ちは使えない。

 

 途中で小隊程度の敵と何度か接触するも鎧袖一触。敵は一瞬で制圧される。それもそのはず。彼等は聖堂教会埋葬機関が第七位を預かるものであれば一介の魔術を使えるだけのヤクザが戦闘できる程度の実力差には収まらない。最も、彼等の中での熟練者であれば多少はマシなのかもしれないが。

 

 

 敵を何度か制圧しながら進んで行くと、やがて屋敷が見えてくると同時にこれまでとは違い、それなりに腕の立ちそうな集団が現れる。そして、その中で最も腕の立ちそうな男が呼び止める。

 

「止まって頂きたい、諏訪の方とそのお付の方。今日一日だけは誰にも邪魔されてはならないと、当主は仰せです。それが終われば、貴方の先生には先に提示した報酬に、更に色を付けても良いとのことです」

「おや、せっかくこっちの服で来たのに驚きもせずとは。ただね、もう交渉なんてものは意味がない。君達の封印に使った術式だってもう当たりはついているし、私達の神様は呪いの専門家だ。どうとでもなるさ。君達が提示した報酬だって君達を倒してから君達の魂に聞き出せば良いし、残りのものは君達の屋敷を荒らせばなんとでもなる。それにね、君達は根本から間違っている」

「根本から、とは?」

「我々は既にロードから制圧と奪還の命令を受けているし、我々に交渉権はない。君がすべきことはただ一つ、最初からアキラちゃんとあの野郎を解放し、報酬を差し出す。そうすれば私達も先生が来るまでここで待つことを選んでいましたよ」

 

「私達……? まずい、(ハシバミ)、半分連れて当主のもとに!」

 私達、という言葉を邪推したか、別動隊の存在を察知した男は部隊の半分、およそ十名程度を分離させようとする。

「シエル。全部使っていいからあっちに行かせないように。私は中心の1番強そうなやつを相手する」

 シエルに聖典の使用権を全て与えて、取り巻き達の対処を頼む。

「了解です」

 彼女は雷光を迸らせながら彼等の向かおうとする方向に回り込み、冷徹な顔をして言い放つ。

「ここから先は通行止めです。私達を倒すまで通れるとは思わない事ですね」

「君は私と一緒に。連携なんてさせませんよ」

 そういって紫音は刀を抜く。

 

 

 

 

 山の中を走る彼女達。遠坂凛と東風谷早苗は現在、2人で潜入をしていた。念話による情報伝達で既に陽動が始まっている事を、知っている2人は陽動を見抜かれる前に目的を果たさんと駆けている。既に礼装の操作に慣れた彼女らの走りは飛ぶように、と言うべきものであった。

 

「ねえ、防衛機構の対策は任せていいのよね!」

「はい、任せてください!」

 

 既に夜刧の用いる行、その手の内は紫音の元々持っていた情報、両儀の家の資料、そしてロードの持つ資料によって詳らかにされていた。朽縄山、蛇を表す言葉で呼ばれるその御山の持つ防衛機構は形を持って侵入者を排除しようとする度、早苗によって消し飛ばされていた。地形の変化を以て侵入者を除こうとしても、圧倒的な力の奔流によって強制的に道は開かれる。

 

「よし、出来ました! この山の防衛機構は私の制御下にあります!」

「でかした! それじゃあこのまま行くわよ!」

 如何に夜刧の家が神代からの神の破片を用いた魔術や防衛機構を用意し、土地と融合させたとしてもそれは早苗の持つ特異性の前には無力でしかなかった。

 

 早苗は現人神であり、早苗の神としての特性は祖神でもある諏訪子様に由来している。即ち土地神としての特性を持つということだ。加えて諏訪子様は蛇神たるミシャグジを従える身。いくら夜刧が神の力を以て土地を永きに渡り調律し続けていたとしても相性が悪いのだ。とはいえ、神秘の古さは本物である為に多少の時間は掛かったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 刀で打ち合う二人の戦いは佳境に入っていたが未だ終わりを見せない。それもその筈、彼の使う退魔の技術は紫音だって知っている。両儀の家にもその技術は伝わっており、神奈子様も知っている技術である。当然、紫音も同じ技術を使える以上、後は性能差・経験差が出てくる以上雪信に勝ち目はない。ではなぜまだ彼は戦えているのか。それは、彼の持つ天才性によるもの、そして夕方に近づくことで彼らの術式の性能が上昇していた事であった。 

 

 しかし、シエルと夜劫の取り巻きの戦いも既に終わりに近づいていた。紫音は自分が持つ技術の全てをシエルに教え込んでいる以上、彼に近しいほどの実力を有している。加えて彼女は不死であり、圧倒的な力を以て大剣(第三死因)を振り回すだけで彼らは回避を余儀なくされる。彼らの戦法は集団と頭領の連携を基本としている以上、連携させないように動くだけで戦力としては半減してしまう。

 

 徐々に劣勢となっていく一団。そこに、とどめの一撃が来た。別動隊として動いていた早苗による土地の掌握。彼らは土地と深くつながっている為にそれを感じ取ってしまった。

 彼らの動きが止まる。そして、それを見逃す二人ではない。

 雷光が一団を焼き、意識を奪う。辛うじてそれを避けたものが一人、夜劫雪信。

 だが、そこまでであった。

 

 一瞬の隙をついて紫音の拳が彼の腹部を直撃しする。彼は吹っ飛び、地面をバウンドしながら屋敷の壁に衝突し、意識を失う。

 

「あなたは私と同じだったのかもしれませんね」

 刀と刀の語り合いは、時に言葉を交えるよりも雄弁である。彼の太刀筋から彼の精神性は読み取れてしまった。普通の日常を願いつつも環境がそれを許さない。手の内から取りこぼしていく悲しみ。そう言ったものを彼からは感じた。

 

「行きましょう、師匠。早くあの子を」

 シエルが語りかけてくる。しかし、紫音は何かを察知したのか足を止める。

「まさか.無理やり儀式を強行したか!」

 圧倒的な魔力の奔流と瘴気が山の頂から流れてくる。

「急ぐぞ! 手遅れかもしれんがこれはまずい!」

 全速力で二人は駆ける。駆けて、駆けて、そして最奥にある儀式場の近くの高所に辿り着く。

 

 そこに広がるのは倒れている術者たちと早苗と遠坂、先生とグレイ、そして仮面をつけたエルゴとルォロン、そして倒れて先生に保護されているアキラであった。

 

 こう言いかえるべきであろうか。 

 竜の力を発揮しながら戦っているルォロンと、砂を自在に操るエルゴ、死神の鎌を操るグレイ、大地を操りながら攻撃を加える早苗。そして、先生を守りながら援護を欠かさない遠坂嬢。

 

 いったい何が起きている? だが、やるしかないか。

 ルォロンが切らなかった奥の手、エルゴが今使っている力の双方には恐らく何らかの大技があるだろう。例えば、ブレスだったり。ならば、成すべき事は一つ。大技にこちらの最大火力を与えて相殺する。

 

「シエル、借りてもいいか!」

「はい!」

 

「主の御名において起よ、第七の死因!」

 第七聖典の最奥の機能。一つの巨大な破城弩弓。圧倒的な暴れ馬を御し、一瞬で発射体制に持っていくには私の能力だけでは足りない。シエルだけでも足りない。

 

 だから、その為の術式を作った。複数人の魔術回路を一つの演算機として用いる為の術式を以て、二人分の力で狙撃体制に移る。

 

「アンカー固定。魔力充填89%.95.100%」

「安全装置解除、照準を予測位置に.発射!!」

 

 二人の共同作業で放たれた弾丸は見事に彼らの大技が激突する瞬間、激突する場所に直撃し彼らの攻撃を消し飛ばした。

 

(紫音さん、ありがとうございます。後は拙に.!)

 グレイのフードが外れ、彼女の素顔が露になる。

「シエル、しっかり見ておきな。あれが、こいつ(第七聖典)と並ぶ特級の神秘、世界の柱であり繋ぎ止める錨、ロンゴミニアドだ」

 

最果てにて礎なる夢の塔(ロンゴミニアド・ミュトス)———!」

 

 彼女が放つ光、それは紫音が見た覚えがある姿とは違い塔とそれを囲む城壁を象っていた。

 何だあれは...? そう思ったがその光が見せた効果、ルォロンの纏っていた装甲や奔流が消え去る事でその効果を容易に察することが出来た。要するに、あれは繋ぎ止める錨なのだ。

 

「先生、大丈夫でしたか」

 高所から一気に飛び降りて先生のもとに駆け付ける。こんな事隙だらけの事は普段ならしないが、脅威が排除された今なら問題ないだろう。

 

「紫音と、シエルか。成程、先ほどの一撃は...」

「そういう事です。あれについて、ちょっと解説が欲しいんですけれどいいですか?」

 

「構わない。恐らくあれは、聖槍の本質をロゴスリアクト・レプリカが拾い上げることで創り出された仮想宝具と言うべきものなのだろう」

 成程、やはり予想と同じか。

「だが、どうしてあんなものが.」

 何かを呟きながら考察の沼に沈み込もうとしたロード、だがそこに現れた異質な気配が彼らを戦闘態勢へと引き戻した。

 

「誰だ!」

 先生を庇う様に前に出る。

 

 出たばかりの月光が一人の影を映し出している。

「ん、ふ、ふ」

 影が笑う。

「まさか現代に生きる現人神、現代に誕生した半神、竜喰らいと神喰らいが争いあって、その結果がお嬢さんの横取りとはね。規模が大きすぎて予想もしていなかったところから勝者が現れるとは、予想できないだろう」

 

「クソオヤジ」

 ルォロンが言う。成程、彼の師匠か。()に魔術を教えた存在であるのなら相当な手練れと言うべきであろうか。

「よお、不肖の弟子。よく生きているな」

 

 その男は美しかった。背筋が凍るほどの美しさ、例えるなら一人氷河を歩む灰色狼と言ったところか。

「あなたは?」

 グレイが、問う。

「彷徨海のジズ、っていうんだよ? お嬢さん」

 天然気味なのか? こいつは。

 彼がこちらを向き、思わず刀に手をかける紫音。

「確か君は、蒼崎の家の異端児だったか。ふむ、星の剣か。また会うことになるだろうから、よろしくね?」

 星の剣...?べ・ゼの原理血戒の事か?

 彼が話を続ける。彼曰く、彼が先生たちを誘導し、ルォロンを焚きつけて今回の一件を作らせたようだ。 

 

 

 そこからは、彼の独壇場であった。

 目を覚ましたアキラから移植され神體の一部を取り出し、それぞれ夜劫とルォロンに分配した。

 アキラは賭けの対価という事で、ルォロンに引き渡され、そしてジズと3人で姿を消した。

 

 正直、やろうと思えば伏せていた裁きの一撃を打ち込むことで奪還することもできたかもしれないが聖典を一瞬で狙撃体制に持ち込んだ負荷が抜けてない状態では勝てる気がしない事と、例えアキラを奪還しても預ける先がなく、ルォロンになついている以上一番安心できる場所に置いていくのが最善であると思い、追撃は賭けなかった。

 

 その後、別途こちらに来ていた幹也さんとそれをこっそりストーキングしていた式の姉さんを拾い、適当な車両に分乗することで両儀邸に戻るのであった。

 

 

 正直、これから夜劫がどうなるのかは興味がない。早苗が一時的に御山のコントロールを奪取したことで悪影響が出るかもしれないが、それに対して何か思うでもない。彼らの勢力がそのまま衰退しようが自業自得でしかない。

 

 

 

 その後、4日がたった。

 帰ってきた翌日は疲労で動けない者が大半であったが、紫音が手入れをしておいた霊地である両儀邸は彼らの回復を助け、紫音がストックしていた霊薬や薬草を加工して薬膳や薬湯を用意したことで一日二日で回復し、先生はグレイやエルゴを連れて秋葉原に出かけていき、私は早苗やシエルと関東観光を楽しんだ。

 

 そして今、横田基地に面々は揃っている。

 私と早苗とシエルはバチカンに向かい天使の書庫を閲覧しエルゴを助ける方策を探す為に。先生達は、別の依頼があってエジプトに行かなければならないようだ。丁度経路上であったので全員纏めてプライベートジェットに乗ることになったのだ。

 

「それじゃあこれ。全員分の礼装と先生用に小道具を一つ」

 エジプトに行くという事で灼熱の大地に対応する為の礼装を詰め込んだスーツケースと

「感謝するが……これは何だ?」

「データロガーっていう奴ですね。これがある限り先生の得た情報をこっちで受信できるので肌見放さず持ち歩いてほしいです。ただ、どうにもならない緊急事態の時はこれを壊してください」 

 先生が依頼を受ける最中で何を知るかは知らない。だが、エルゴに関する情報があれば書庫で資料を探す時に精度が上がる。その意図を正確に認識したロードは素直に受け取る。

「何故だ? お前が私に押し付けてきた本みたいに最後まで情報があったほうが良いのではないか?」

「それ、一度限りの転移礼装になっているんですよ」 

 そんな一言に、ロードは驚きを隠せない。

「全く……お前は何てものを作ってくれたんだ。だが感謝する、ありがたく受け取ろう」

 

「紫音さん、ロードさん。もうすぐ飛行機出ちゃいますよ」

「おっと、紫音。行くぞ」

 早苗が呼びかけてくる。見れば、他の面々は既に飛行機に乗っているようで私たちも飛行機に急いで乗り込んだ。エアステアが格納され、扉が開く。

 取り敢えず虚数空間に荷物をしまい込んで各々座席に座ったら、それを待っていたかの如く飛行機が滑走路に向かい、やがて離陸する。

 

 上昇が終わり、ベルト着用サインが消えた後、一行はオフィス区画に集まった。

「さて、それでは祝杯を挙げるとしましょう。お酒はこちらに少しご用意しましたが呑まれない様控えめに。この飛行機は私たちの戦いに耐えられる程頑丈ではないので。代わりに食べ物は両儀邸の厨房を借りて作っておいたので、遅めの昼食としてたくさん食べてください」

 テーブルに虚数空間から湧き上げる料理の数々。湯気を立て、香ばしく匂わせる料理の数々。

 各々適当な飲み物を選び、注ぐ。それでは。

 

「「「「乾杯!!!」」」」




 ちなみに、最初2人が キャソックを着ていたのは聖堂教会に泥をかぶせようと閃いたからです。意味はなかったけど。

 ジズとの遭遇時、紫音もシエルも、一瞬で第七聖典の最大出力までもっていったおかげで実は結構消耗していますが、これで相殺しきれなかったら紫音が用意していた裁きを打ち込んでいました。

 尚、この祝宴の後に紫音は遠坂に叱られました。まあ、管理者に知らせず内々に聖杯の汚染問題を解決しようとしていたので当然ですね。


 後はモナコ編の終盤とアインツベルンの本拠地への潜入辺りを書いてfake本編に向かうつもり。
アンケートを取りたいのでちょっとご協力お願いします。

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