Fate/eastan phantasm   作:Astrad

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 早苗視点での紫音の三年間。彼がどのような旅路を歩んだのかを少しだけ開示します。


The reason why I stand

 人生初めての、イタリアで過ごす朝。少しだけ早く起きて、愛しい人の横顔を眺める。未だ幼さを残し、それでも武人の顔をするその顔。少しずつ、少しずつ私に近づいてきてくれる、それでも(現人神)と同じには成れない愛しい人。

 

 彼は強くて弱い。矛盾するようで矛盾はしない。彼は確かに誰かを守る強さを持ってはいます。だけれど、彼は不器用で割り切ることが出来ない。目の前の悲劇を見過ごせない、遠くで起きる悲劇を飲み込むことが出来ない。だからこそ、あの人は段々と疲れたような様子を見せていきました。 

 

 最初に様子がおかしくなったのは高校一年生の夏休み明け。あの人は夏休みをバイトと称して世界中を飛び回りました。世界で起きている死徒による悲劇はとても多く、日本を抜け出て外の国を見れば、1年の間に何十万人もの人々が生命を誰に知られることもなく奪われる。そのデータを読んだ彼は最初こそ、割り切って考える事が出来ていたのかもしれません。

 

 だけど、戦場はそうではなかった。彼が実際に見たのは吸血鬼に襲われ1夜にして地獄と化した街。老若男女、善人悪人問わず殺され尽くされた光景、弄ばれた死体。そういった者を見てしまったあの人はもはや割り切って考えることは出来なくなりました。

 

 夏休み明け、学校が始まった後も人形を学校に向かわせて世界中を飛び回る事が増えました。彼は地獄の中でその価値を証明してしまったからです。そうして、日常生活においても些細な物音に反応するようになりました。それは、きっとPTSDという物なのだと思います。

 

 そして、あの人は眠れなくなりました。正確には、私か神奈子様がいなければ浅い眠りにすらつけなかったらしいです。彼曰く、1人で寝ると夢を見るそうです。今迄助ける事が出来なかった人達の事を。腕の中で事切れた幼子を。先人達と共に行き、1人で帰って来た時の事を。

 

 それはきっと、悲しい事です。あの時、あの人がするべき事はしっかりと休みを取る事だったのでしょう。もしかしたらカウンセリングを受けるべきだったのかもしれません。だけれど、彼はそれを隠し続けました。

 

 彼が戦う事を止めてしまえば、それだけ多くの人が死んでしまう。だから彼は自らに暗示をかけて薬を打って、無理矢理戦い続けました。心に罅が入り、欠け落ちながらも必死に自分は大丈夫、まだ戦えると周りに言い聞かせるように、自分に言い聞かせるように。

 

 だけれど、それは虚勢でしかなく、それも長くは続きませんでした。秋を越え冬に入り、春が見えてくる頃には彼は限界を迎えていました。

 

 紫音さんの心は摩耗しきって、感情を表に出す事が出来なくなりました。あの人は、ただ死徒を殺すだけの装置と成り果ててしまったのです。

 

 勿論、それに見合う結果はありました。あの人の戦いは多くの人と街を救い、例年比で3割、それだけ多くの人が、何万人もの人々が命を救われました。

 

 だけれど、あの人は自分を助ける事をしませんでした。その結果がこれです。この有様です。そして、こうなってもあの人は死徒と戦おうと動き続けていました。

 

 だから、私は紫音さんを閉じ込めて、縛り付けました。これ以上壊れないように。きっと、これ以上紫音さんを信じては完全に壊れ切って何もできなくなってしまうと思ったからです。諏訪子様と神奈子様に手伝ってもらって紫音さんが私から離れられなくしました。

 

 後から聞いた話だと、それと同時にエルメロイ二世先生と、ユリフィス先生という同じくらい偉い先生が教会と話をつけて紫音さんの休みをもぎ取ったらしいです。だから暫くはゆっくりとした日々が続き、少しずつ紫音さんは自分を取り戻していきました。その過程で私に強く依存するようにはなりましたが。

 

 だけれどそんな日々は永遠に続くわけではありません。梅雨に入る頃には彼の休みは終わり、再び戦わなくてはいけなくなりました。だから、私は一緒に戦う事にしました。彼の苦しみも悲しみも、分かち合う事で彼の心が少しでも守られるなら。

 

 そうして私は紫音さんと一緒に戦う事を決めて、1人は2人に、そして暫く経った後にシエルさんが加わる事で3人で世界を戦う事になりました。勿論、紫音さんが語っていたような光景もありました。だけれど、3人で戦う事で1人の時よりも多くの人を助けることが出来る様になりました。

 

 そうして、私はここに居ます。

 

 彼が少し身じろぎをし、そしてゆっくりと目を覚ます。だから私は笑いかける。いつでも、あなたのそばにいると示す為に。あなたの手を絶対に手放さないと、そう示す為に。

「おはようございます、紫音さん」

 




 喜びも怒りも、悲しみも楽しみも全て分け合う。信じ続けるだけではなく、疑う事も、信じないことも大事だと考えている。そんな最強ヒロインが早苗さんだと思います。

 別に紫音は転生者であっても人生経験は大してありません。彼は前世でもそれなりに優秀だったので特に苦労することなく生きていました。もし彼が前世で志望した通りの職に就いてそれなりの経験を積んでいれば、もう少しはましだったかもしれませんが。

 因みに、プロットは現在破棄されているのでfakeにいつになれば辿り着くのか不明です。

ジェスター、どうしたい?

  • 即落ち
  • 逃走成功!
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