Fate/eastan phantasm   作:Astrad

29 / 29
 早苗視点での紫音の三年間。彼がどのような旅路を歩んだのかを少しだけ開示します。


The reason why I stand

 人生初めての、イタリアで過ごす朝。少しだけ早く起きて、愛しい人の横顔を眺める。未だ幼さを残し、それでも武人の顔をするその顔。少しずつ、少しずつ私に近づいてきてくれる、それでも(現人神)と同じには成れない愛しい人。

 

 彼は強くて弱い。矛盾するようで矛盾はしない。彼は確かに誰かを守る強さを持ってはいます。だけれど、彼は不器用で割り切ることが出来ない。目の前の悲劇を見過ごせない、遠くで起きる悲劇を飲み込むことが出来ない。だからこそ、あの人は段々と疲れたような様子を見せていきました。 

 

 最初に様子がおかしくなったのは高校一年生の夏休み明け。あの人は夏休みをバイトと称して世界中を飛び回りました。世界で起きている死徒による悲劇はとても多く、日本を抜け出て外の国を見やれば、1年の間に何十万人もの人々が生命を誰に知られることもなく奪われる。そのデータを読んだ彼は最初こそ、割り切って考える事が出来ていたのかもしれません。

 

 だけど、戦場はそうではなかった。彼が実際に見たのは吸血鬼に襲われ1夜にして地獄と化した街。老若男女、善人悪人問わず殺され尽くされた光景、弄ばれた死体。そういった者を見てしまったあの人はもはや割り切って考えることは出来なくなりました。

 

 夏休み明け、学校が始まった後も人形を学校に向かわせて世界中を飛び回る事が増えました。彼は地獄の中でその価値を証明してしまったからです。そうして、日常生活においても些細な物音に反応するようになりました。それは、きっとPTSDという物なのだと思います。

 

 そして、あの人は眠れなくなりました。正確には、私か神奈子様がいなければ浅い眠りにすらつけなかったらしいです。彼曰く、1人で寝ると夢を見るそうです。今迄助ける事が出来なかった人達の事を。腕の中で事切れた幼子を。先人達と共に行き、1人で帰って来た時の事を。

 

 それはきっと、悲しい事です。あの時、あの人がするべき事はしっかりと休みを取る事だったのでしょう。もしかしたらカウンセリングを受けるべきだったのかもしれません。だけれど、彼はそれを隠し続けました。

 

 彼が戦う事を止めてしまえば、それだけ多くの人が死んでしまう。だから彼は自らに暗示をかけて無理矢理戦い続けました。心に罅が入り、欠け落ちながらも必死に自分は大丈夫、まだ戦えると周りに言い聞かせるように、自分に言い聞かせるように。

 

 だけれど、それは虚勢でしかなく、それも長くは続きませんでした。秋を越え冬に入り、春が見えてくる頃には彼は限界を迎えていました。

 

 最早、彼の心は摩耗し喜怒哀楽どの感情も表に出ず、彼はただ死徒を殺すだけの装置となりました。それは彼が作る自動人形のように。

 

 勿論、それに見合う結果はありました。あの人の戦いは多くの人と街を救い、例年比で3割、それだけ多くの人が救われました。

 

 だけれど、あの人は自分を助ける事をしませんでした。その結果がこれです。この有様です。そして、こうなってもあの人は死徒と戦おうと動き続けていました。

 

 だから、私は紫音さんを閉じ込めました。これ以上壊れないように。きっと、これ以上紫音さんを信じては完全に壊れ切って何もできなくなってしまうと思ったからです。諏訪子様と神奈子様に手伝ってもらって紫音さんを私から離れられなくしました。

 

 後から聞いた話だと、それと同時にエルメロイ二世先生と、ユリフィス先生という同じくらい偉い先生が教会と話をつけて紫音さんの休みをもぎ取ったらしいです。だから暫くはゆっくりとした日々が続き、少しずつ紫音さんは自分を取り戻していきました。その過程で私に依存するようにはなりましたが。

 

 だけれどそんな日々は永遠に続くわけではありません。梅雨に入る頃には彼の休みは終わり、再び戦わなくてはいけなくなりました。だから、私は一緒に戦う事にしました。彼の苦しみも悲しみも、分かち合う事で彼の心が少しでも守られるなら。

 

 そうして私は紫音さんと一緒に戦う事を決めて、1人は2人に、そしてシエルさんが加わる事で3人で世界を戦う事になりました。勿論、紫音さんが語っていたような光景もありました。だけれど、3人で戦う事で1人の時よりも多くの人を助けることが出来る様になりました。

 

 そうして、私はここに居ます。

 

 彼が少し身じろぎをし、そしてゆっくりと目を覚ます。だから私は笑いかける。いつでも、あなたのそばにいると示す為に。あなたの手を絶対に手放さないと、そう示す為に。

「おはようございます、紫音さん」

 




 喜びも怒りも、悲しみも楽しみも全て分け合う。信じ続けるだけではなく、疑う事も、信じないことも大事だと考えている。そんな最強ヒロインが早苗さんだと思います。

 別に紫音は転生者であっても人生経験は大してありません。彼は前世でもそれなりに優秀だったので特に苦労することなく生きていました。もし彼が前世で志望した通りの職に就いてそれなりの経験を積んでいれば、もう少しはましだったかもしれませんが。

 因みに、プロットは現在破棄されているのでfakeにいつになれば辿り着くのか不明です。

ジェスター、どうしたい?

  • 即落ち
  • 逃走成功!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ムーンセルをつくろう!(作者:樫宮)(原作:Fate/)

現代のfate世界に転生したオリ主君が、「いつの日か神秘が衰退してなくなっちゃうなら、ムーンセルつくったるか」というクッソ軽い目的意識で、月の超大規模演算機にして最後の願望器であるムーンセル・オートマトンをつくろうとする話。▼なお、主人公が転生した世界はFGO世界線とする。▼※設定以外EXTRAはほとんど関係ないです。


総合評価:120/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年01月30日(金) 13:02 小説情報

型月信仰なんちゃって神父カエルム (作者:Senophas)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ゼンゼロ見切り発車その1▼神父の真似してたら強い人たちと合うだけ


総合評価:259/評価:-.--/短編:2話/更新日時:2025年12月27日(土) 03:15 小説情報

姉様、姉様、ごめんなさい(作者:イエスアマゾネス)(原作:Fate/)

死亡フラグ100%の種族にTS転生


総合評価:982/評価:8.9/連載:3話/更新日時:2026年05月12日(火) 02:03 小説情報

型月でセレビィ()に目を付けられた男の末路(作者:どういうことか説明しろユキナリ)(原作:Fate/)

本来のセレビィ『危険な未来には近付きません』▼今作の型月セレビィ『面白そうな景色をニンゲンといっぱい見に行く!」▼要するに頭の中身が型月妖精クオリティになっちゃったセレビィもどきってこと。


総合評価:1661/評価:7.12/連載:21話/更新日時:2026年01月20日(火) 01:07 小説情報

転生者が生前のジャンヌを火刑から救う話(作者:クソ眼鏡3号)(原作:Fate/)

ざっくり言ってしまえば転生者がジャンヌから初恋泥棒する話


総合評価:1572/評価:7.17/短編:8話/更新日時:2026年02月14日(土) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>