色々と端折っている部分があるので、原作を読んで補完して頂けると有難く。
それは正に劣勢の状況。エルメロイ教室と死徒二十七祖が共闘するという異例の状況。新たなる
如何に現代において戦闘力に秀でたエルメロイ教室の生徒とはいえ、グレイの切り札も、エルゴへの神問いも通じなかった以上拮抗させるのが精一杯。しかし、それすらも停滞の法則が世界を塗り替える事で徐々に劣勢へと傾きつつある。
「こうなった以上、切り札を切るしかないか」
徒手格闘を以て光で形作られた剣士を撃破しながら首にかけていたドックタグのチェーンにかけられていた銅色の札を取り出す。
「ロードよ、切り札があるならば早く使い給え。不甲斐ないが、私の出力ですら、この場を安定させるのが精一杯でしかない。」
ヴァン=フェムは魔城を展開することで、自身の持つ原理血戒を最大限励起する事でジズの世界の塗り替えに対抗していた。
しかしながら、全てを捧げているジズに対しヴァン=フェムの出力は充分とは言えない。元より多くのものにリソースを割いている以上、防御に割けるリソースはジズのそれよりも遥かに少ない。にも関わらず彼が拮抗出来ているのは長年の経験によるものであった。しかしながら、其れも限界に近付いている。
「思えば、あいつはこの為にこの礼装を用意していたのだろうな。来い、紫音!」
銅板の札を握り潰す。そして、虚空より浮かび上がる影一つ。現代に誕生した、神の血を拝領する事で眷属へとなった神官。それは人類の守護を担う者の一人、代行者の一人、世界にとっての異端者。
「埋葬機関第七位、そして軍神建御名方が一子、蒼崎紫音。先生の召喚に応じ、ここに参上しました。」
そう言って紫音は目を開く。
現状、遠坂嬢とルヴィア嬢達が謎の光の剣士達と交戦中、ヴァン=フェムはひとまずこちら側と。そして、エルゴは敵に捕らわれグレイ嬢は魔力切れ...?って、もしかしてあの敵ジズ?
状況把握を行っている紫音に、礼装経由で先生からの情報が共有された。そして、紫音は飛び出す。
「第一宝具、月光弓」
小手調べと言わんばかりに空から無数の光線がジズに降り注ぐ。
「成程ね…小手先程度の技では通用しないか」
しかし、それはジズに近づいて行く程減衰し、届かずに消える。
「やはり来たか…蒼崎紫音。古き神々の血を受け継ぐ者よ」
「ええ。流石にこんな大きな事を仕出かしてしまえば、
「だが、私の考えを聞けば考えを改めるのではないか?
そうしてジズは語り始める。曰く、人の愚かさは始めから定まっていたものと。神なき人理の世において、人は使命を抱けず、ただ妬み僻み憎み、浪費するだけの生き物と成り果てた。
勿論、かの征服王の如く抗った者もいた。しかし、彼の打ち立てた大帝国も僅か1代でそれを失ったと。
人類は始めから間違っていた。ならばその親に責を帰すべきであると。
そこまで言えば、紫音も彼が何を成そうとしているのかを理解した。そしてそれが可能であるという事も。
ああ…!確かに、それは私にとっては一つの解であるかも知れない。新たなる星を創り出し、それを以て諏訪子様や神奈子様の安住の地を確保する、幻想郷とやらに移住する以外の場所としてありなのかも知れない。
紫音の心が揺らぐ。無論、代行者として、エルメロイ教室の生徒としては魔術師の暴挙を打ち砕き、エルゴを助けなければならない。だが、
そして、その隙に複数体の光の剣士が紫音に襲い掛かる。心が揺らいだ隙を衝いた一撃は、彼に致命傷を与えることは出来ないものの、深い傷を負わせる。はず、だった。
数十体のドローンが光の剣士に攻撃を加える。それは彼らに傷を与えないが歩みを止める。そして、紫音は光の剣士を斬り飛ばす。
「誰だ...?」
ドローンの背後にいる謎の青年。その背中には衛宮士郎がいた。ヘルメットを被り、四肢の一部を回転鋸に置換した存在。いや?資料で読んだことがある、確か名前は...
「ジュスト」
ジズは困惑していた。恐らく、彼の肉体が光に置換されつつあり、先ほどの演説から察するに彼の認識範囲はこの空間全体に拡張されているのだろう。
ジュストも又譫言を呟き、混乱している様子。挙動から察するに、洗脳か?
そこに、男が走って来た。印相を結んだ手を上げ、呪文を唱え、彼に洗脳を成している。ふざけるな。
紫音の雷撃が男を襲う。暗示が故か、それとも意識的かジュストは男を庇う。そうして、彼の仮面は砕けた。そこから見えたのは特徴的な、灰色狼のような髪の毛。
「そうか...お前は、俺の子孫だったのか!」
ジズの喜悦を含んだその声。だが、彼はそれに反応しているのかすら怪しい。
彼の様子を見るに、今は強いストレス下に置かれている状態だろう。どんな巧妙な暗示であっても極限化では脆い。私がそうであったように。今の彼には正気と狂気が入り乱れた状態だろう。
「これは...最終的な結論...世界に空白が多ければ競争はなく...闘争もない...」
その言葉は、
「ジズが正しい。巨視的な正義から見れば、この惑星の生命体は間違えた。世界中に蔓延り、繁栄を謳歌しすぎている。私達は生まれ落ちたとその時から間違っていた。なら、間違えを起こさない存在を創り出すべきだ。その為なら、天秤は釣り合う。例え神喰いを消費しても、モナコ一帯を消し飛ばしても、後の存在が間違えを起こさないように生まれるのであれば問題にならない」
そして、こう付け加えた。
「衛宮切嗣ならそうした...」
彼がジズに傾倒する意向を示すのと対照的に、紫音の心は急速的に冷却されていた。異聞の帯を知る者として、そして己の信念によって心は冷却されながらも燃え上がり始めた。
「いいえ。それは間違っている。」
紫音は、金色の眼に光を灯し、断言した。
「何が間違っていると?」
ジズは短く、それに答える。
「新たな星を創り出し、間違えのない存在を創り出す事だ。
「そうだ、俺達は間違っている。我々は美しいと思う物からして、間違っている。我々が真に美しいと思うべきなのは光が届かぬ暗闇、動くものとてない虚空だ」
動を否定し、静を尊ぶその思いは、既にこの空間を飲み込んでいる。もはや、この空間は彼の思い...いや、祈りに満たされている。
「いいえ。問題は、人の過ちに留まりません。あなたの思いです。人類の罪は人類が前へ進むために犯した物です。故に、人類の罪は人類の滅亡という罰を以て消える。あなたの世界では、永遠に消える事はなく残り続ける。全てが停滞するが故に、人は救われない。」
故に、紫音は一度目を閉じてそう呟いた。
「諸行は無常であるが故に、人の罪は何時か赦しを得る。人は何時か救われる。全ては移ろい続けるが故に。故に、私はあなたの祈りを踏みにじる!」
合掌をしながら紫音は目を大きく開いた。輝ける金色の瞳、胸に光る青い輝き。それを見てジズは言う。
「そうか!俺の
そうだ。もはや原理血戒だけではジズに押し勝てない。神性と原理血戒の双方を最大限に励起して抗う紫音と結界の対象外に設定されている血族のジュスト以外、満足に戦うことが出来る者はいない。その紫音ですら、単体では押し勝てない。
「
何処からか、そんな
「
傷だらけの体で懸命に立ち上がる。
「
無数の光の剣士がジズの指揮の下、衛宮士郎に襲い掛かる。
「|Unaware of loss Nor aware of gain《ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もなし》」
紫音が必死に立ち塞がり、撃ち漏らしを
「|Withstood pain to create weapons waiting for one's arrival《担い手はここに独り、剣の丘で鉄を鍛つ。》」
残り2節、数体が2人の防衛網を掻い潜り士郎に接近する。
「
最後、何処からともなく這い出てきたフラットが、最後の壁となり防ぎ切った。
「
そして、世界が書き換えられる。魔剣、聖剣、覇剣、神剣、王剣、妖刀。ありとあらゆる剣が突き刺さった墓標の世界。誰一人存在しない世界。ジズの理想に似て非なる世界。それを分けるのは空。
雲一つない、青空。
諸行無常。全ては生まれ、全ては消えて行く。全ては留まる事がないが故に生まれ死んでいくのであれば、全てが留まる世界では生まれることも死ぬこともない。であれば、人は罪を許されない。
罰の終わりは赦しの為にある。罰が停滞し続けるのであれば赦しはなく。人が罰されるのは赦され、救われるが為なれば、彼の祈りは紫音にとっては受け入れられる物ではなくなりました。
とはいえ、紫音もジズの主張の合理性を理解してはいます。しかし、それは紫音に受け入れられる物ではない。二つの正しさがぶつかり合うからこそ。
異聞の帯はこれを読んでいる時、奏章3が頭によぎったからです。
ジェスター、どうしたい?
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即落ち
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逃走成功!