第十三話【闘う者達】
―――ビッグブロック・二階大広間。
螺旋階段を駆け上がる仲間たちの足音が遠ざかる。
静まり返った広間に残されたのは、二体の「悪魔」だけだった。
一方は、ラブド最凶の格闘能力を誇る漆黒の魔人――ブラックメイル。
もう一方は、蝿の王の異名を冠し、己を磨き上げるためだけに戦場を渡り歩く十二使徒――ベルゼルガ。
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ベルゼルガ: 「フン……。他の連中を逃がして良かったのか? 貴様一機で我を止められるなど、買い被りも甚だしい」
ベルゼルガが、司教冠のような頭部を僅かに傾け、両腕を静かに持ち上げる。
そのレンズの奥には、冷徹な殺意と、それ以上に深い「渇き」が宿っていた。
ブラックメイル: 「……ガタガタうるせぇな、さっさと闘るぅ~…ぞッ」
ブラックメイルの駆動音が、臨界点を超えて咆哮を上げる。
刹那。漆黒の影が爆ぜた。
急な加速。ブラックメイルが、ベルゼルガの懐へと肉薄する。
ブラックメイル: 「オラァッ!!」
渾身の力で振り抜かれた右腕のハンマー。
ベルゼルガはそれを避けない。左腕のパーツを、突き出した。
ベルゼルガ: 「サクリファイス――!!」
ドォォォォォォォォンッ!!
広間の空気が圧縮され、凄まじい衝撃波がブラックメイルを襲った。
ブラックメイルは衝撃を殺しきれず、背後の壁まで弾き飛ばされる。
一方のベルゼルガも、サクリファイス攻撃の反動で左腕パーツを火花と共に霧散させていた。
ブラックメイル: 「……チッ。パワーでは俺の負けぇ~…かッ」
ベルゼルガ: 「フン…。……我を震わせてみろ、ラヴドの兵士よ!」
ベルゼルガが四枚の白銀の羽を激しく羽ばたかせ、宙に飛ぶ。
直後、彼の失われた左腕が瞬く間に再構成されていく。頭パーツヘルメットによる復活行動。
再生を終えたベルゼルガが哄笑と共に、ブラックメイルへ襲い掛かった。
ここから、広間は二体の悪魔による壮絶な殴り合いの場と化した。
ブラックメイルの暴力的な右ストレートがベルゼルガの顔面に向けて放たれたかと思えば、
ベルゼルガは右腕で防御しながらも、左腕のサクリファイスでブラックメイルを狙う。
ギリギリでかわすブラックメイルだが、その衝撃波により少しずつダメージを蓄積していく。
ガギィィィィィィンッ!! という金属同士の激突音が絶え間なく響き、ドゴォォォォォォンッ!! という爆発音が轟く。
散る火花と爆発が暗い広間を断続的に照らし出した。
ブラックメイル: 「まだまだぁ~ッ!」
ベルゼルガ: 「フン…! いいぞ、やるではないかッ!!」
ブラックメイルがベルゼルガの頭部を掴み、そのまま最高速で壁へと叩きつける。
コンクリートが蜘蛛の巣状に砕け、ベルゼルガの装甲が悲鳴を上げる。
しかし、ベルゼルガは笑いながらその腕を掴み返し、ゼロ距離からサクリファイスを放った。
ドォォォォンッ!!
至近距離での爆発。ブラックメイルの右腕の装甲が弾け飛ぶ。
ベルゼルガの再生能力は異常だった。ブラックメイルがどれほど深手を負わせても、次の瞬間には致命傷が塞がっている。
対してブラックメイルの装甲は、一撃、また一撃と、確実に削られ、剥がれ落ちていく。
数分に及ぶ、息をもつかせぬ攻防。
ついに、均衡が崩れた。
ベルゼルガの連続攻撃がブラックメイルの脚部駆動系を焼き切り、その漆黒の巨躯が膝を突く。
ブラックメイル: 「が、はぁッ……!!」
両手足の装甲が剥がれ、内部フレームが剥き出しになる。オイルが血のように床に溢れ出した。
もはや立っていることさえ奇跡に近い状態。
ベルゼルガは、跪くブラックメイルを見下ろした。
ベルゼルガ: 「フン…。終わりか」
そう言いながらもベルゼルガは決して油断はしていない。
サクリファイスの反動で破壊された腕を再び復活させ、
たとえブラックメイルが再び立ち上がったとしても、迎撃できる準備を整えている。
ブラックメイル: 「……ケッ……まだまだだぁ~…ぞッ」
ブラックメイルは息も絶え絶えに、ティンペットの骨組みが丸出しになった足で何とか立ち上がる。
ベルゼルガ: 「ほう、両手両足を失い、パワーでも我に劣り、これ以上どうするつもりだ?」
ベルゼルガは冷静に、しかしまだ何かあるのかと期待をしながら尋ねる。
ブラックメイル:「腕が……ねぇ? だからなんだ。お前、俺がただの格闘戦だけで……ラヴドの『最凶』になったと思ってんのぉ~…かッ!?」
ブラックメイルのスピーカーから、異様な低音の振動が漏れ出す。
彼のセンサーが、どす黒い紅色の輝きを放った。
ブラックメイル: 「見せてやるよ……。地獄の底から這い上がってきた……『本物の悪魔』の姿を~…なぁッ!!」
――デビルボディ、最大解放。
ブラックメイルの全身の排熱ダクトから黒煙が噴き上がり、大気が不自然に歪む。
その口元が、金属の軋みを上げて不気味に開かれた。
そこから溢れ出したのは、光を吸い込むほどに濃厚な漆黒の霧。
いや、それは霧ではない。数多のメダロット達の絶望と怨念が凝縮された、形なき質量――『ゴースト』攻撃。
広間全体の気温が氷点下まで急降下し、壁や床が悲鳴を上げて凍りつくかのような重圧。ただそこにあるだけで、周囲の物質を崩壊させるほどの禍々しい威圧感が、ブラックメイルを中心に渦巻いた。
ベルゼルガ: (なんだ……この、寒気は……!?)
ベルゼルガの論理回路が、初めて警告を叩き出した。
だが、ブラックメイルは止まらない。残された全エネルギーをその「絶望」へと注ぎ込む。
ブラックメイル: 「ゴォォォォォォォォォスゥ~……トォォォォォォォッッ!!!!!!」
大地を爆ぜさせる咆哮と共に、黒い奔流が放たれた。
それは弾丸でもレーザーでもない。空間そのものを蝕みながら突き進む、死の侵食。
回避は不可能。迎撃も無意味。ただ真っ直ぐに、対象を消滅させるためだけの闇がベルゼルガへと襲い掛かる。
ベルゼルガ: 「させるかぁぁぁ!!両パーツ同時、サクリファイスッ!!」
ベルゼルガは己のすべてを投げうち、白銀の衝撃波をゴースト弾へ放った。
――しかし。
必死の抵抗は、漆黒のゴーストに触れた瞬間に「音もなく」消えた。
物理的な衝突音すらない。光を飲み込むブラックホールのごとく、ベルゼルガのすべてをゴーストが喰らい尽くす。
ベルゼルガ: 「な……っ……あが、がああああああっっ!!!」
着弾の瞬間、広間は「音のない爆発」に支配された。
ゴーストがベルゼルガの装甲を透過し、内部構造を分子レベルで腐食させていく。
装甲が剥がれ、メダルが軋み、鋼鉄の肉体が闇に溶けていく。
その極限の破壊、極限の不条理の中で――ベルゼルガの顔に、恍惚とした笑みが浮かんだ。
ベルゼルガ: 「フン……!!見事……見事だ……。強者よ……ッ!!」
凄まじい衝撃波が後から遅れて押し寄せ、広間の壁を粉砕した。
爆煙が晴れた時、そこにはボロボロになりながらも、
勝利の証として大地に深く脚を突き立てて立つ、一体の悪魔の姿だけがあった。
ブラックメイル: 「……勝負、ありだぁ~…なッ。お前……敵ながら、なかなか気合の入った野郎だったぜ……ベルゼルガ」
ブラックメイルは、消えゆく強敵の残滓に向けて、静かに、けれど誇らしげに右拳を掲げた。
ブラックメイルVSベルゼルガ
《勝者:ブラックメイル》
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[機体解説]
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【キャラクター名】
ブラックメイル
【機体名】
ブラックメイル
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット1、2など)
【モチーフ(型式)】
悪魔型メダロット(DVL)
【パーツ】
[頭部]
デビルボディ/ゴースト(がむしゃら)
[右腕]
デビルハンド/ハンマー(がむしゃら)
[左腕]
デビルアーム/ハンマー(がむしゃら)
[脚部]
デビルレッグ/二脚
【備考】
公式(メダロット1,2)情報を参照
頭がメダロット1仕様、 両腕がメダロット2仕様となっており、デビルボディの最終奥義感が増している
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【キャラクター名】
べルゼルガ
【機体名】
べルゼルガ
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット2、4など)
【モチーフ(型式)】
悪魔型メダロット(DVL)
【パーツ】
[頭部]
ヘルメット/復活(なおす)
[右腕]
ヘルマイト/サクリファイス(がむしゃら)
[左腕]
ヘルシング/サクリファイス(がむしゃら)
[脚部]
ヘルカオス/二脚
【備考】
公式(メダロット2)情報を参照
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第十三話【闘う者達】終わり