第十四話【更に闘う者達】
―――ビッグブロック・三階、中央大階段。
階下からは、黒い悪魔が放つ怨嗟の咆哮が地鳴りとなって響いてくる。
三階へと続く巨大な踊り場。そこで対峙するのは、軍事演算の粋を極めた、新旧二体の「最終兵器」だった。
―
ゴッドエンペラー: 「キーーッシャッシャッシャ!! ようこそ、ラヴドの兵器! レッツパーリーだぜっ!」
ゴッドエンペラーが、多脚戦車のような下半身『デスクローラー』をガチガチと鳴らして笑う。
その巨躯には一切の殺気がない。
ただ、これから始まる破壊の遊戯に、幼子のような純粋な愉悦だけを漂わせていた。
ビーストマスター: 「……何やら歓迎されているようですが、長く付き合うつもりはありません」
ビーストマスターが、その異形の脚部『スパゲティ』を蠢かせた。
無数の太いコードが意志を持つ触手のように展開し、周囲の柱を掴んで自身の姿勢を固定する。
ゴッドエンペラー: 「つれねぇこと言うなよ! 俺とお前、どっちが真の『最終兵器』か……。さぁ、遊ぼうぜッ!!」
開戦の合図は、鏡合わせの砲撃だった。
ビーストマスター&ゴッドエンペラー: 「デス――」
ビーストマスター: 「―― ボ ム ッ !」
ゴッドエンペラー: 「―― ミ サ イ ル ッ !」
放たれたナパーム弾とミサイル。同等の火力を秘めた二つの火線が空中で激突し、火球となって踊り場を紅蓮に染め上げる。
ビーストマスター&ゴッドエンペラー: 「デス――」
ビーストマスター: 「―― ビ ー ム ッ ! !」
ゴッドエンペラー: 「―― レ ー ザ ー ッ ! !」
爆煙を貫いて放たれたのは、黄金と白銀の熱線。
二条の光が正面から噛み合い、凄まじい電磁火花を散らしながら互いのエネルギーを相殺し、霧散していく。
二機の間で、寸分狂わぬ破壊の交換が繰り返された。
撃てば撃ち返され、焼けば焼き返される。踊り場は瞬く間に焦土と化し、熱せられた装甲の匂いが充満していく。
ビーストマスター: (……射撃の精度、出力、共に完全に拮抗している。ならば――)
ビーストマスターが動いた。脚部のスパゲティを触手のように射出し、頭上の梁へと絡みつかせる。重厚な機体が重力を無視して宙を舞い、ゴッドエンペラーの死角へと回り込む。
ゴッドエンペラー: 「キーーッシャッシャ!! 面白いねぇ、その足! だが、逃がさないぜ!」
ゴッドエンペラーが多脚を激しく駆動させ、壁を垂直に駆け上がる。
宙を舞うビーストマスターに対し、ゴッドエンペラーは空中で姿勢を制御しながら肉薄した。
ビーストマスター&ゴッドエンペラー: 「 デ ス ――」
ビーストマスター: 「―― ブ ラ ス ト ッ … … ! ! !」
ゴッドエンペラー: 「―― ブ レ イ ク ッ ッ ッ ! ! !」
至近距離での重力弾の激突。
歪んだ空間が二機を押し潰そうと軋む。
ビーストマスターはスパゲティをさらに数本射出し、ゴッドエンペラーの四肢を絡め取ろうとした。
ビーストマスター: 「捕らえ――」
ゴッドエンペラー: 「甘いんだよっ!」
ゴッドエンペラーがデスミサイルを上方に放ち、その反動で急降下し、絡みついたケーブルごと、ビーストマスターを引きずり下ろす。
――ズ、ドォォォォォォォォォンッ!!
二機が床へと激突した。
その直後、ゴッドエンペラーが追加のデスミサイルをゼロ距離で叩き込む。
ビーストマスターも即座にデスボムを放つが、爆心地のあまりの近さに、双方が爆炎に飲み込まれた。
煙の中から立ち上がったのは、ゴッドエンペラーだった。
白銀の装甲は至る所が赤熱し、火花を散らしているが、その顔には依然として愉悦の笑みが張り付いている。
ゴッドエンペラー: 「あはははは! すげぇ、すげぇぜ! 俺のデスクローラーが、こんなに傷ついたのは久しぶりだ!」
対するビーストマスターは、その体を支えきれずに地を這い、センサーの光を不安定に明滅させていた。
スパゲティのコードが数本焼き切れ、機体各部からオーバーヒートの警告が鳴り響く。
ビーストマスター: 「……損傷率四〇%……、冷却系に深刻な不具合……。ですが、まだ……」
ゴッドエンペラー: 「悪いな、兄弟。俺の方が、ほんの少しだけ『頑丈』にできてるみたいだぜ!」
ゴッドエンペラーが跳躍した。
重厚なる体が、巨大な質量兵器となってビーストマスターへと降り注ぐ。
ビーストマスターは回避を試みるが、熱暴走を起こした脚部がコンマ数秒、反応を遅らせた。
――ガァァァァァァンッ!!
ゴッドエンペラーの全体重が、ビーストマスターの胸部を真っ向から踏み砕いた。
床が崩落し、ビーストマスターの全身に過負荷電流が駆け巡る。
ゴッドエンペラー: 「あーあ、壊れちまったか。もっと遊べると思ったのになぁ。……じゃあな、楽しいパーティーだったぜ」
ゴッドエンペラーがトドメのデスレーザーをチャージし始めた、その時だった。
―
静寂。
死に体となったはずのビーストマスターの内部から、異様な電子音が漏れ出した。
それは警告音ではない。ビーストマスターの内に潜む『何か』が、限界を超えた損傷によって目覚めてしまった音。
ビーストマスター: 「……イ……ス……ル……」
ゴッドエンペラー: 「……あぁ?」
ビーストマスター: 「ハ……イ……スル……。……ハ……カ……イ……ス……ル……」
ビーストマスターの全センサーが、血のような赤に変色した。
彼の意志はもはや、組織も、勝利も、合理性も失っていた。
焼き切れた回路の中に残ったのは、「眼前のすべてを灰にせよ」という純粋な狂気。
ビーストマスター: 「ハ カ イ ス ル ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
―
突如、踊り場は「地獄」へと変わった。
砲身が融解しかかっているのも構わず、ビーストマスターが『デスボム』と『デスビーム』を全方位へ連続射出した。
一発一発がそれまでの倍近いエネルギーを叩き出し、
ビッグブロックの重厚な壁を、柱を、そしてゴッドエンペラーを、容赦なく蹂躙していく。
ゴッドエンペラー: 「なっ……!? おい、やめろッ! 機体が持たねぇぞ、おいッ!!」
愉快な皇帝の顔から笑みが消え、その声に初めて焦燥が混じる。
だが、ビーストマスターは聞かない。
ビーストマスター: 「ハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイィ!!!!!」
本来であればここまでの出力で暴走し続ければ、そう長くはもたない。
しかし、ビーストマスターから氾濫するメダフォースは無尽蔵に破壊を続ける。
爆発が、爆発を呼ぶ地獄。
高熱のナパームがゴッドエンペラーの白銀の装甲を瞬時に赤熱させ、ビームの奔流がその核を無慈悲に貫く。
ゴッドエンペラー: 「ぐぁ……ッ!!」
兵器としての完成度を誇った伝説の怪物も、理性を焼き切った「狂気」の前ではただの鉄の的に過ぎなかった。
ゴッドエンペラー: (こ 、 こ い つ … … 本 当 に 『 メ ダ ロ ッ ト 』 な の か … … ! ? )
敵がいなくなった後も、ビーストマスターは叫び、撃ち続けた。
床を焼き、天井を削り、世界を更地にするまで止まらない。
そこにいたのは、誇り高きラヴドの兵士ではない。ただの「無差別破壊装置」だった。
―
その時だった。
ブラックメイル: 「何やってんだぁ~…よッ、お前はぁッ!!!!!」
下の階から駆け上がってきたブラックメイルの飛び膝蹴りが、ビーストマスターの頭部を強打した。
強引な強制再起動。
ビーストマスターの砲門から煙が上がり、その巨躯がガクンと膝を突いた。
ビーストマスター: 「……ピ……ガ……。……あ、おや。ブラックメイルさん、下の愚者は……もう片付いたようですね」
センサーの光が平時の青に戻る。
辺りには、ゴッドエンペラーだった「黒焦げの鉄屑」が転がっているだけだった。
ブラックメイル: 「……お前、また覚えてねぇのかよ。城ごと俺たちまで吹っ飛ばす気かぁ~…よッ、このハカイ魔め」
ビーストマスター: 「暴走? ……フッ。私がそのような品のない真似をするはずがないでしょう。……すべては、計算通りですよ」
平然と言ってのけるビーストマスターだったが、その肩からは激しい排熱の白煙が、今も止まることなく上がり続けていた。
ビーストマスターVSゴッドエンペラー
《勝者:ビーストマスター》
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[機体解説]
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【キャラクター名】
ビーストマスター
【機体名】
ビーストマスター
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット1、2など)
【モチーフ(型式)】
兵器(WEA)型メダロット
【パーツ】
[頭部]
デスブラスト/プレス(ねらいうち)
[右腕]
デスボム/ナパーム(ねらいうち)
[左腕]
デスビーム/ビーム(ねらいうち)
[脚部]
スパゲティ/多脚
【備考】
公式情報を参照
脚部の形状を応用して、敵機の拘束、地形の突起を掴んだ移動が可能
大きな衝撃でたまに暴走してしまうという悪癖アリ
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【キャラクター名】
ゴッドエンペラー
【機体名】
ゴッドエンペラー
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット2、4など)
【モチーフ(型式)】
兵器(WEA)型メダロット
【パーツ】
[頭部]
デスブレイク/ブレイク(ねらいうち)
[右腕]
デスミサイル/ミサイル(ねらいうち)
[左腕]
デスレーザー/レーザー(ねらいうち)
[脚部]
デスクローラー/多脚
【備考】
公式(メダロット2)情報を参照
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第十四話【更に闘う者達】終わり