第十五話【トランプメダ集合!】
――――ビッグブロック・最上階。
ブラックメイルとビーストマスターに背中を預け、数々の死闘を潜り抜けてきた特殊選抜部隊。
そのうち、最上階まで辿り着いたのは四機だった。
クロ。
ワンダ。
ディスト。
ローラ。
全員がすでに大小さまざまな損傷を負っている。
それでも足を止める者はいなかった。
目の前に立ちはだかるのは、要塞の最深部へ続く巨大な鋼鉄の扉。
クロ:「……この先です」
クロが静かに告げる。
四機が警戒を強める中、重厚な扉が地鳴りのような音を立てながら左右へ開いていった。
その先に広がっていたのは、これまで通ってきた無骨な要塞内部とはまるで雰囲気の異なる円形の大広間だった。
天井から吊り下げられた巨大なシャンデリア。
磨き上げられた大理石の床。
そして、その中央に立つ四機のメダロット。
?:「ファッファッファッファッファ……!! 待っていたぞ、ラヴド軍!」
中央にいた一機が、両腕を大きく広げた。
?:「来なかったらどうしようかと、不安になっていたところだ!!」
ワンダ:「……ずいぶん楽しそうに待ってたのね」
ワンダが呆れ気味に呟く。
高笑いを上げていたのは、水色を基調とした装甲を持つメダロットだった。
トランプの「エース」を象徴する機体――ファーストエース。
彼は警戒するL班を前に、芝居がかった仕草で胸を張る。
メッシュ:「我が名は、十二使徒が一人! ファーストエースの『メッシュ』! そして、こいつらは我が同志たち!」
メッシュが勢いよく隣の三機を指し示した。
最初の一機は、鋭利な刃を思わせる細身の機体。
トランプの「ジャック」を冠するジャッカル――『カリパー』。
その隣には、優雅な佇まいの女性型メダロット。
「クイーン」を象徴するメイクイーン――『キドゥ』。
そして最後に、巨大な甲冑を思わせる重厚な身体を持つ「キング」――ガンキングの『ゲンジ』。
エース。
ジャック。
クイーン。
キング。
四機すべてが、トランプをモチーフとした十二使徒だった。
なお、ファーストエースという機体そのものは本来女性型に分類される。
しかし、目の前のメッシュに搭載されているメダル人格は、その口調や振る舞いから見ても明らかに男だった。
メッシュ:「貴様らが持つ『フォー・パーツ』を頂くからな!」
メッシュは三機の仲間へ振り返る。
メッシュ:「ゆくぞ、カリパー! キドゥ! ゲンジ! 我が心の友よ!」
カリパーたちが、一斉に構えた。
メッシュ:「
号令と同時に、四機の身体が変形を開始した。
カリパーは四肢を折り畳み、鋭利な刃を持つ巨大な「大剣」へ。
ゲンジは全身の重装甲を組み替え、巨大なランス状の装甲を交差させた「大盾」へ。
キドゥの優美な機体も収束し、先端に輝きを宿した「杖」へと姿を変える。
そして最後に、メッシュ自身の装甲が大きく展開した。
水色と紫色の外装が次々と本体から分離し、周囲へ浮かび上がる。
その内側から現れたのは、機動性を重視した細身のフレームだった。
左右へ割れたマスクの奥で、ピンク色の星を思わせる瞳が不気味に輝く。
分離した装甲は、そのまま複数の浮遊ビットとしてメッシュの周囲へ展開した。
そしてメッシュは、変形した仲間たちを手に取る。
右手に、大剣となったカリパー。
左手に、大盾となったゲンジ。
杖となったキドゥは背後へ浮かび、いつでも補助行動を行える位置へ収まった。
メッシュ:「ファッファッファッファッ!! これぞ、我らトランプ兄弟が誇る究極奥義――」
大剣を掲げる。
メッシュ:「
広間に高笑いが響き渡った。
ワンダ:「……いや、仲間を武器にして持っただけじゃないの?」
ワンダの冷静なツッコミが飛ぶ。
メッシュ:「なんだとぉ!?」
見た目だけなら、その指摘も間違ってはいなかった。
しかし――。
この形態の恐ろしさを、L班が理解するまでに時間はかからなかった。
メッシュ:「おりゃぁッ!!」
メッシュがカリパーを振り抜く。
刃そのものは、まだ誰にも届いていない。
それにもかかわらず――。
ズガァァァァンッ!!
剣圧によって発生した衝撃波が大理石の床を一直線に走り、クロたちの足元を粉砕した。
ワンダ:「うわっ!?」
クロ:「散開してください!」
四機が左右へ跳ぶ。
続けてローラが前へ出た。
ローラ:「ならば、こちらから行くぞ!」
左腕を振り抜き、冷気を放つ。
白い霜が床を走り、一気にメッシュへ迫った。
だが――。
メッシュ:「ゲンジ!」
左手の大盾が前へ出る。
冷気は巨大な盾へ直撃したものの、その表面をわずかに凍らせただけで、完全に受け止められた。
ローラ:「……硬い!」
ディスト:「だったら、盾のない方向から!」
ディストが側面へ回り込み、右腕の射撃パーツを構える。
照準をメッシュの頭部へ固定。
ディスト:「そこだっ!」
光学攻撃が放たれた。
しかし、メッシュは避けようともしない。
周囲を漂っていた紫色の装甲ビットの一枚が、射線へ滑り込んだ。
閃光。
ディストの一撃はビットへ命中し、メッシュ本体へ届く前に霧散した。
ディスト:「そんな!?」
剣による攻撃。
盾による防御。
杖による支援。
さらに、本体の周囲を守る浮遊装甲。
四機が別々に戦っているのではない。
それぞれの長所を一つへ集約し、互いの弱点を補い合っているのだ。
しかも、四機分のメダルレベルとメダフォースまで一つに集中している。
ただ仲間を武器として持っているだけではない。
これこそが、四機の十二使徒が生み出す完成された連携戦闘だった。
メッシュ:「ファッファッファッファッ!! どうしたラヴド軍! 我らの友情の力、思い知ったかぁ!!」
ワンダ:「くっ……言ってることは暑苦しいのに、本当に強い……!」
ワンダたちは距離を取り、再び構え直した。
ビッグブロック最深部を守る四機のトランプメダ。
その奇妙な姿からは想像もできない圧倒的な力を前に、L班は攻略の糸口を掴めずにいた。
メッシュは大剣となったカリパーを肩へ担ぎ、にやりと笑った。
メッシュ:「……そして、これでも食らえッ!!」
そう言うなり、懐から何かを取り出す。
黄色い、細長い物体。
ワンダ:「……は?」
ディスト:「え?」
メッシュが、それを勢いよく投げつけた。
床へ落ちたのは――。
バナナの皮だった。
ワンダ:「なんでぇぇぇ!?」
あまりにも場違いな攻撃。
しかし、極限まで速度の上がった戦闘では、そんなくだらないものですら致命的な変数になり得る。
ディスト:「わ、わわっ!?」
側面へ回り込もうとしていたディストの脚部が、見事にバナナの皮を踏み抜いた。
ズルッ――。
ディスト:「うわぁぁぁっ!?」
派手に足を滑らせ、そのまま仰向けに転倒する。
ワンダ:「ちょっと、ディスト嘘でしょおぉぉ!?」
慌ててかわそうとしたワンダだったが、倒れ込んできたディストと正面から衝突した。
ワンダ:「きゃあっ!?」
二機がもつれるように床へ転がる。
メッシュ:「隙ありーーーー!!」
待ってましたと言わんばかりに、メッシュがカリパーを振り上げた。
狙いは、起き上がれないワンダとディスト。
ローラ:「させるか!」
ローラが割って入ろうとした――その瞬間。
――ゴォォォォォンッ!!
広間の巨大な扉が、外側から凄まじい衝撃を受けた。
メッシュ:「なにぃ!?」
次の瞬間。
扉そのものが内側へ吹き飛んだ。
メッシュ:「あーれー!!」
振り上げたままのメッシュが、飛来した鋼鉄の扉に巻き込まれる。
ガァァァァンッ!!
そのまま壁へ叩きつけられた。
メッシュ:「いってぇぇぇ……!」
メッシュがよろめきながら起き上がり、自分の攻撃を台無しにした乱入者へ視線を向ける。
その向こうから、不気味な笑い声が響いた。
シロ:「アッヒャッヒャッヒャ……!!」
白い機体。
そして左腕には、かつてローラの親友フェニを殺したパーツ――『スバル』。
ヘッドシザースのシロだった。
シロ:「クロぉ……見〜つけたぜぇぇぇっ!!」
クロ:「シロ……!」
シロの視線には、クロしか映っていなかった。
メッシュも。
ワンダたちも。
そしてエデンとラヴド、どちらの戦争も。
そのすべてが、彼にとってはどうでもいい。
求めているのは、ただ一機。
これまで何度戦っても決着のつかなかった、黒い宿敵だけだった。
シロ:「アッヒャァァァァッ!!」
床を蹴る。
白い影が、一直線にクロへ迫った。
クロ:「くっ……!」
クロは右腕の『マーブラー』を構え、即座に射撃を放つ。
だが、シロは左腕の『スバル』を振るい、迫る弾丸を切り払った。
そのまま勢いを殺さず、クロへ肉薄する。
ガキィィンッ!!
マーブラーとスバルが激突した。
クロ:「皆さん!」
クロはシロの刃を押し返しながら、背後の仲間たちへ叫ぶ。
クロ:「メッシュたちは任せます! シロは私が引き受けます!」
ワンダ:「でも、クロさん!」
クロ:「ここで全員がシロに構えば、向こうを止められません!」
視線の先では、壁へ叩きつけられたメッシュがすでに立ち直り、大剣と大盾を構え直している。
メッシュ:「おのれぇ……! 俺の見せ場を邪魔しやがってぇぇぇ!」
その背後では、キドゥの杖がメダフォース「全体回復」による光を放ち、メッシュの受けた損傷を回復させ始めていた。
ただでさえ攻略の糸口を掴めない相手。
そこへシロまで加わった。
このまま全員で乱戦になれば、最悪の結果になる。
クロ:「行ってください!」
再びスバルが振り下ろされる。
クロは左腕で刃を受け止め、正面からシロを押し返した。
クロ:「ここは私が……!」
ワンダは一瞬だけ迷った。
だが、やがて強く頷く。
ワンダ:「……分かった! 絶対に無茶しないでよ、クロさん!」
ディスト:「こっちは僕たちで何とかする!」
ローラ:「必ず戻れ、クロ!」
クロ:「ええ」
クロはいつもの穏やかな笑みを浮かべた。
クロ:「任せましたよ」
直後。
シロの刃と、クロのマーブラーが再び激突する。
その一方で、ワンダ、ディスト、ローラはメッシュへ向き直った。
広間の中央を境に、戦場は完全に二つへ分かれた。
クロ対シロ。
そして――。
ワンダ、ディスト、ローラ対、トランプメダ四機。
二つの戦いが、同時に始まった。
先に動いたのは、メッシュだった。
メッシュ:「隙ありーーーー!! 二回目ぇぇぇッ!!」
カリパーを振りかぶり、そのまま三機へ叩きつける。
ワンダ:「またそれ!?」
ワンダとディストが左右へ飛び退く。
しかし、メッシュの狙いは二機ではなかった。
大剣となったカリパーが、そのまま正面に残ったローラへ振り下ろされる。
ローラ:「甘い!」
ローラは右腕の『ダブレスト』を前へ突き出した。
青白い光が広がり、巨大な障壁を形成する。
ガァァァァンッ!!
カリパーの一撃と障壁が正面から激突した。
衝撃が広間全体へ伝わり、大理石の床に細かな亀裂が走る。
メッシュ:「ぬぅぅぅぅッ!?」
メッシュはさらに力を込める。
だが、ダブレストの障壁は簡単には崩れない。
ローラ:「その程度で、妾の盾を破れると思うな!」
メッシュ:「だったら力ずくでぇぇぇッ!!」
カリパーを押し込みながら、メッシュがさらに踏み込む。
その瞬間。
ローラの口元に、わずかな笑みが浮かんだ。
ローラ:「……かかったな」
メッシュ:「あ?」
ローラ:「後ろだ!」
メッシュが振り返る。
その死角へ、すでにディストが潜り込んでいた。
メッシュ:「なにぃ!?」
ディストの左腕――『エアスト』の爪が、強い光を帯びている。
狙撃に用いる集中力。
光学攻撃を制御するための技術。
それらすべてを、今度は一撃の
ディスト:「僕が狙ってるのは……メッシュじゃない!」
ディストが床を蹴る。
一直線に向かった先は、メッシュ本体ではない。
その背後。
杖へと変形し、絶えず回復と補助を行っていたキドゥだった。
メッシュ:「キドゥ! 避けろぉぉぉッ!!」
だが、もう遅い。
ディスト:「これで――!」
ディストの左腕が振り抜かれる。
ディスト:「終わりだぁぁぁッ!!」
『エアスト』の爪が、杖となったキドゥの中心部を貫いた。
バキィィィィンッ!!
強烈な衝撃によって、キドゥの変形が強制的に解除される。
女性型の機体へ戻りながら、その身体が床へ叩きつけられた。
キドゥ:「……ッ……!」
装甲の各所から火花が散る。
そして、そのまま動かなくなった。
メッシュ:「うぉぉぉぉぉッ!! キドゥゥゥゥッ!!」
メッシュが悲鳴のような声を上げる。
背後で支援を続けていた回復役が沈黙した。
ワンダ:「やった!」
ディスト:「これで、回復はできない!」
ローラ:「一角は崩したぞ!」
これまで完全に噛み合っていた四機の連携。
その一つに、初めて明確な亀裂が入った。
メッシュは倒れたキドゥを見つめたまま、しばらく動かなかった。
やがて、ゆっくりと顔を上げる。
先ほどまでの騒がしい笑みは消えていた。
メッシュ:「……よくも」
カリパーを握る手に力がこもる。
メッシュ:「よくもキドゥをぉぉぉぉッ!!」
怒号が、最上階の広間に響き渡った。
―
一方。
広間の反対側では、クロとシロの戦いが激しさを増していた。
クロ:「……ッ!」
クロが右腕の『マーブラー』を構える。
至近距離から放たれた銃弾が、ほとんど隙間なくシロへ襲いかかった。
だが――。
シロ:「アッヒャッヒャッヒャッ!!」
シロは笑いながら左腕の『スバル』を振るう。
刃が閃くたびに、弾丸が次々と弾き落とされていった。
そのまま一気に踏み込む。
白い影が銃撃の間を縫い、クロの懐へ潜り込んだ。
クロ:「くっ!」
スバルが横薙ぎに振るわれる。
クロは左腕で受け止めた。
ガキィィンッ!!
金属同士が激しくぶつかり、火花が弾ける。
そのまま脚部を軸に身体を捻り、シロの脇腹へ蹴りを放つ。
しかし、シロは床を蹴って跳躍した。
空中で身を翻しながら蹴りをかわし、その勢いのまま頭上からスバルを振り下ろす。
クロ:「……!」
クロは咄嗟にマーブラーを掲げて防いだ。
激突。
二機の間に再び火花が散る。
これまでと、何も変わらない。
クロが撃てば、シロが斬り払う。
シロが斬れば、クロが受け流す。
何度戦っても、どちらも決定打を与えられない。
九十五度にわたって繰り返されてきた、二機だけの戦い。
――本来ならば。
クロ:「……はぁ……っ」
クロの呼吸が、わずかに乱れた。
ビッグブロックへ突入してから、戦闘は途切れていない。
数え切れないほどの敵を相手にし、最上階へ辿り着いた時点で、クロの機体にはすでに無視できない損傷と疲労が蓄積していた。
対するシロは、この戦場へ途中から乱入してきたばかり。
いつもなら存在しないはずの差が、今だけは確かに存在している。
シロ:「アヒャ……?」
シロも、それに気づいた。
クロの反応が、ほんのわずかに遅い。
シロ:「アッヒャァァァァッ!!」
その隙を見つけた瞬間、シロの攻撃がさらに加速した。
上段。
横薙ぎ。
突き。
息をつく間もない連撃が、クロへ襲いかかる。
クロ:「くっ……! まだ……!」
クロは必死に受け続ける。
だが、一撃を防ぐたびに姿勢が崩れていく。
マーブラーを構える右腕にも、徐々に力が入らなくなっていた。
シロ:「アッヒャッヒャッヒャッ!! どうしたクロぉ!? 遅い、遅いぜぇぇぇッ!!」
クロ:「まだ……終わっていません!」
クロが距離を取り、マーブラーを正面へ向ける。
銃撃。
しかし、その照準は普段よりわずかに甘かった。
シロは身体を大きく捻るだけで弾丸をかわす。
そして。
一気に距離を詰めた。
クロ:「しまった……ッ!」
スバルが閃く。
最初の一撃が、クロの右腕を強く弾き上げた。
クロ:「……ッ!」
マーブラーの銃口が逸れる。
続く二撃目。
鋭い刃がクロの胴体を深く抉った。
クロ:「ぐっ……!」
装甲片が飛び散る。
それでも、クロは倒れない。
反撃しようと左腕を振り上げる。
だが。
その動きより、シロの三撃目のほうが速かった。
シロ:「アッヒャーーーーーーッ!!!」
スバルが、頭部へ振り下ろされた。
――ガァァァァンッ!!
いつものクロなら。
全快の状態なら。
間違いなく、かわしていたはずの一撃だった。
だが今は、もう間に合わない。
刃が頭部装甲を直撃した。
黒い装甲が砕け、破片が宙へ舞う。
クロの視界が、一瞬で暗転した。
ワンダ:「クロさん!!」
身体が大きく宙を舞う。
そして。
力なく床へ落ちた。
動かない。
マーブラーを装備した右腕も、もう持ち上がらない。
漆黒のL班リーダーは、そのまま静かに機能を停止した。
シロも、すぐには動かなかった。
倒れたクロを見つめたまま、呆然としている。
シロ:「…………」
九十五度。
どれだけ斬っても。
どれだけ戦っても。
決して倒せなかった相手。
そのクロが、今。
自分の目の前で動かなくなっている。
シロ:「………勝った……?」
まるで、自分自身に問いかけるような声だった。
数秒の沈黙。
そして。
目の前の現実を理解した瞬間――。
シロ:「アーーーーッヒャッヒャッヒャッヒャーーーー!!!!!!」
これまで以上に甲高い笑い声が、広間に響き渡った。
シロ:「とうとうクロに勝ったぞーーーー!!」
シロは歓喜のあまり身体を震わせながら、倒れたクロへ歩み寄っていく。
その目的は、一つ。
クロの中にあるメダルだった。
シロは、倒れ伏したクロへゆらりと歩み寄った。
シロ:「アヒャ……アヒャヒャ……。これで、クロのメダルは俺のものだぁ……!」
手を伸ばす。
その先にあるのは、機能停止したクロのメダル。
ワンダ:「……っ!」
それを見た瞬間、ワンダの表情が変わった。
ワンダ:「クロさんを守らなきゃ!」
ディスト:「させるか!」
ローラ:「分かっている!」
三機はほとんど同時に動いた。
ワンダがシロへ照準を向ける。
ディストはクロのもとへ駆け出す。
ローラも右腕の『ダブレスト』を構え、二機を守るための障壁を展開しようとした。
――その瞬間。
三機の意識から、ひとつの存在が完全に抜け落ちた。
メッシュ。
キドゥを失った怒りに震えながら、すぐ近くに立っている十二使徒の一機。
彼は、先ほどからずっと待っていた。
自分へ背を向ける、その瞬間を。
メッシュ:「……お前らぁぁぁぁぁ……!」
ワンダたちが振り返る。
遅かった。
メッシュは、大剣となったカリパーを天高く掲げていた。
メッシュ:「オ レ を 無 視 し て ん じ ゃ ね ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ッ!!」
怒号が広間を震わせる。
メッシュ:「キドゥの仇だぁぁぁ!! 隙あり三回目ぇぇぇぇぇぇッ!!!」
カリパーが、強烈な光を放った。
ローラ:「くっ……ダブレスト!!……ッ!?」
ローラが障壁を展開した。
青白い壁が三機の前へ立ちはだかる。
しかし次の瞬間、ローラの顔色が変わる。
ただの斬撃ではない。
ローラ:「しまった!
次の瞬間。
カリパーから、幾千もの衝撃波が全方位へ放たれた。
狙いなど存在しない。
敵も味方も区別しない。
広間そのものを切り刻む、無差別の破壊だった。
ズガガガガガガガガガガッ!!
ワンダ:「きゃあああっ!!」
ディスト:「うわぁぁぁぁッ!!」
ワンダとディストの全身へ、無数の衝撃が叩き込まれる。
ローラ:「くっ……」
デストロイは、援護が効かない直接攻撃。
ダブレストの障壁をすり抜けるように破壊の衝撃が突き抜け、三機へ直撃した。
ローラ:「ぐぁっ……!」
三機の身体が同時に宙を舞う。
床へ叩きつけられ、次々と機能を停止していく。
ワンダ:「ク……ロ……さん……」
ワンダの声が途切れた。
ディストも。
ローラも。
動かなくなった。
そして。
その全方位攻撃の射線上にいたのは、L班だけではない。
シロ:「……アヒャ?」
クロのメダルへ手を伸ばしていたシロが、間の抜けた声を漏らす。
次の瞬間。
幾重ものデストロイが、その白い身体へ直撃した。
シロ:「アヒャァァァァァァッ!!?」
装甲が弾け飛ぶ。
シロもまた、クロのすぐ傍へ転がるように倒れ、そのまま完全に動かなくなった。
―
静寂。
つい先ほどまで激戦が繰り広げられていた広間に、突然、不自然なほどの静けさが訪れた。
立っているのは、メッシュ達のみ。
メッシュ:「ハァ……ハァ……ハァ……」
肩で息をしながら、カリパーを下ろす。
倒れたキドゥへの怒りだったのか。
自分を完全に無視されたことへの腹立ちだったのか。
本人にも、おそらく分かっていない。
ただ感情のままに撃ち放った一撃で、結果として敵をすべて倒してしまった。
メッシュは周囲を見回した。
ワンダ。
ディスト。
ローラ。
クロ。
さらに、乱入者のシロ。
全員が床に転がっている。
数秒。
メッシュはその光景を眺め――。
メッシュ:「……ファーーッファッファッファッ!!」
高らかに笑った。
メッシュ:「四人+一人で来られたけど、勝ったぜぇぇぇぇぇッ!!」
結果だけを見れば、間違いなくメッシュの勝利だった。
メッシュは満足げに笑いながら、床へ転がる敗者たちへ歩み寄った。
メッシュ:「さてさて……。まずは戦利品でもいただくとするか!」
最初に目についたのは、すぐ近くに倒れているクロとシロだった。
どちらも頭部を破壊され、完全に機能を停止している。
メッシュは何の警戒もなく腰を屈めると、雑に背中のメダルハッチを破壊して、それぞれの機体からメダルを取り出した。
メッシュ:「ファッファッファ。これで二枚――」
その瞬間だった。
メッシュの両手の中で、クロとシロのメダルが眩い光を放った。
メッシュ:「……ん?」
光は急速に強くなる。
メッシュ:「な、なんだぁぁぁぁッ!?」
あまりの眩しさに、メッシュは反射的に二枚のメダルを放り投げた。
そして。
思いきり後ずさった。
一歩。
二歩。
五歩。
十歩。
なおも下がる。
メッシュ:「なんだなんだなんだなんだ!?」
結局、二十歩ほど離れたところでようやく足を止めた。
宙へ放り出された二枚のメダルは、床へ落ちなかった。
白い光に包まれたまま空中へ浮かび、その距離をゆっくりと縮めていく。
そして――。
二つの光が重なった。
広間全体を埋め尽くすほどの閃光が迸る。
メッシュ:「うぉぉぉぉぉっ!?」
倒れていたワンダたちも、その光に反応した。
ディスト:「……ぅ……」
朦朧とした意識の中、ディストがわずかに顔を上げる。
光の中心では、二つのメダルの輪郭が完全に失われていた。
代わりに。
その光そのものが、一つの身体を形作り始める。
頭部。
胴体。
左右の腕。
脚部。
白と黒。
相反する二色を基調とした、異形のメダロット。
その姿は、まるで道化師。
顔には、トランプの四つのスートを思わせる意匠が刻まれている。
光が消えた。
一機の男が、静かに広間へ降り立つ。
ディスト:「……ぁ……」
ディストは目を細めながら、その姿を見つめた。
ディスト:「クロさんと……シロのメダルが……」
一度、息を整える。
ディスト:「……合体……した……?」
その言葉に。
現れた男は、わずかに首を傾げた。
?:「……そいつは何気に違うな、ディスト」
ディスト:「……え……?」
男は自分の両手を眺める。
まるで長い眠りから目覚め、自分の身体がそこにあることを確かめるように。
?:「もともと、クロとシロは何気に一体のメダロットだったんだ」
落ち着いた声だった。
どこか飄々としている。
だが、その場にいる誰よりも自然に、この異常な出来事を受け入れていた。
?:「そいつのメダルが破壊されたとき……何気に強い意志が『死』を拒んだ」
男は、倒れているクロとシロへ視線を落とす。
?:「それで、一つだったものがクロとシロに分かれて、何気にしぶとく生き残った」
そして、ディストへ向き直った。
?:「だから、これは何気に『合体』じゃない」
一瞬の間。
男が笑う。
?:「――『復活』だ」
ワンダの指先が、かすかに動いた。
その声。
その口調。
そして。
目の前に立つ、白と黒の道化師。
ワンダ:「…………」
遠い記憶が蘇る。
まだ人間が生きていた頃。
自分が大切な人たちと共に過ごしていた、今では遠い昔の記憶。
その中に。
いつも、こんなふうに飄々と笑っていた男がいた。
ワンダ:「……その声……」
ワンダが震える腕で身体を起こした。
ワンダ:「その……姿……!」
信じられない。
そう思いながらも。
もう、間違えるはずがなかった。
ワンダ:「嘘……」
目を大きく見開く。
ワンダ:「まさか……」
そして。
二度と呼ぶことはないと諦めかけていた名前を叫んだ。
ワンダ:「『ヴァレン』なの!?」
男――ヴァレンは、何気なく笑った。
ローラ:「ヴァレン……?」
傷ついた身体を起こしながら、ローラが掠れた声で尋ねる。
ディストも、何が起きているのか理解できていない。
だが。
ワンダだけは違った。
彼女は知っている。
この男が何者なのか。
ワンダ:「ヴァレンは……愛称よ」
興奮を抑えきれないまま、ワンダは続けた。
ワンダ:「正確な機体名は――『ジョーカード』」
メッシュ:「ジョー……カード……?」
メッシュの表情から、先ほどまでの余裕がわずかに消えた。
ワンダは、目の前の男から視線を外さない。
ワンダ:「九年前……」
あの大戦。
世界を支配したエデン。
そして、その頂点に立っていた自称「神」――N・G・ライト。
ワンダ:「N・G・ライトを倒して、戦争を終わらせた――」
声に、力が戻る。
ワンダ:「ラヴドの英雄よ!!」
静寂。
伝説の名だけが、広間に残った。
ジョーカード。
かつて神を討ち、戦争を終わらせた最強の切り札。
その英雄が九年の時を越え、最悪の戦場で――。
何気なく、微笑んでいた。
第十五話【トランプメダ集合!】終わり
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[今回登場したメダロット]
【ファーストエース(メッシュ)】
十二使徒の一人。カリパー、キドゥ、ゲンジとの四機合体により、絶大な戦闘力を発揮する。
【ジャッカル(カリパー)】
十二使徒の一人。メダチェンジによって強力な大剣へと変形し、メッシュの主武装となる。
【メイクイーン(キドゥ)】
十二使徒の一人。メダチェンジによって杖へと変形し、回復を中心とした支援を担当する。
【ガンキング(ゲンジ)】
十二使徒の一人。メダチェンジによって巨大な盾へと変形し、メッシュたちの防御を担う。
【ジョーカード(ヴァレン)】※オリメダ
かつてN・G・ライトを倒し、「ラヴドの英雄」と呼ばれたトランプのジョーカー型メダロット。
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[機体解説]
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【キャラクター名】
メッシュ
【機体名】
ファーストエース
【公式/オリメダ区分】
公式(『メダロット3』『メダロット4』など)
【モチーフ(型式)】
トランプ「エース」型メダロット(TJO)
【パーツ】
[頭部]
ベルディクト/重力制御(とくしゅ)
[右腕]
パニッシャー/回数ドレイン(ぼうがい)
[左腕]
ラストストライク/フォースドレイン(ぼうがい)
[脚部]
ペナルティ/二脚
【変形後】
[変形後ドライブA]
ホームシック(がむしゃら)
[変形後ドライブB]
反射(とくしゅ)
[変形後ドライブC]
転倒(おうえん)
[変形後脚部タイプ]
浮遊
【備考】
ファーストエースは本来、女性型のパーツで構成された機体だが、本作に登場するメッシュは搭載されているメダル人格が男であるため、男性として扱われている。
カリパー、キドゥ、ゲンジとの四機合体『トランプ・フォーメーション』という特殊技能を持つ。
合体中は四機分のメダフォース量とメダルレベルが合計され、メッシュ一機へ集約される。
基本形態では、右手に大剣へ変形したカリパー、左手に盾へ変形したゲンジを装備し、杖となったキドゥが背後で支援を行う。
状況に応じて武器の配置を持ち替えることも可能。
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【キャラクター名】
カリパー
【機体名】
ジャッカル
【公式/オリメダ区分】
公式(『メダロット3』『メダロット4』など)
【モチーフ(型式)】
トランプ「ジャック」型メダロット(TJK)
【パーツ】
[頭部]
コアヘッド/ナパーム(うつ)
[右腕]
ピットグリップ/ビーム(うつ)
[左腕]
ホールハンドル/プレス(ねらいうち)
[脚部]
チェンジブレード/飛行
【変形後】
[変形後ドライブA]
デストロイ(ねらいうち)
[変形後ドライブB]
火薬無効(とくしゅ)
[変形後ドライブC]
重力無効(とくしゅ)
[変形後脚部タイプ]
浮遊
【備考】
単独でパーツ性能を活かして戦うことも可能だが、本作ではメッシュたちとの四機合体による戦闘を主としている。
変形後は大剣となり、メッシュの主武装を担う。
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【キャラクター名】
キドゥ
【機体名】
メイクイーン
【公式/オリメダ区分】
公式(『メダロット3』『メダロット4』など)
【モチーフ(型式)】
トランプ「クイーン」型メダロット(TQN)
【パーツ】
[頭部]
クロウザー/メルト(なぐる)
[右腕]
アンプファー/ウィルス(なぐる)
[左腕]
インクリーズ/ホールド(がむしゃら)
[脚部]
キャリーハンド/潜水
【変形後】
[変形後ドライブA]
蘇生(なおす)
[変形後ドライブB]
光学無効(とくしゅ)
[変形後ドライブC]
症状クリア(とくしゅ)
[変形後脚部タイプ]
浮遊
【備考】
単独でパーツ性能を活かして戦うことも可能だが、本作ではメッシュたちとの四機合体による戦闘を主としている。
変形後は杖となり、メッシュの背後から回復や補助を担当する。
本作における回復行動はパーツ性能ではなく、メダフォース『全体回復』を利用している。
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【キャラクター名】
ゲンジ
【機体名】
ガンキング
【公式/オリメダ区分】
公式(『メダロット3』『メダロット4』など)
【モチーフ(型式)】
トランプ「キング」型メダロット(TKG)
【パーツ】
[頭部]
アンマスク/ファーストエイド(しかける)
[右腕]
ジャッジメント/カウントダウン(がむしゃら)
[左腕]
ディシジョン/カウントダウン(がむしゃら)
[脚部]
センテンス/二脚
【変形後】
[変形後ドライブA]
完全無効(なおす)
[変形後ドライブB]
回数ドレイン(ぼうがい)
[変形後ドライブC]
フォースプラント(せっち)
[変形後脚部タイプ]
浮遊
【備考】
単独でパーツ性能を活かして戦うことも可能だが、本作ではメッシュたちとの四機合体による戦闘を主としている。
変形後は巨大な盾となり、メッシュたちの防御を担当する。