第十六話【?】
ワンダ:「ヴァレン……本当に、ヴァレンなのね?」
ワンダの声が震えていた。
長い年月を経て、もう二度と会えないと思っていた男が、今、目の前に立っている。
白と黒を基調とした道化師のような機体。
トランプの四つのスートを思わせる意匠。
そして何より、昔とまるで変わらない飄々とした空気。
間違いない。
胸の奥から込み上げる感情を抑えきれず、ワンダが一歩踏み出す。
だが――。
ヴァレン:「………私はLです。」
ワンダ:「嘘つけぇぇぇ!!」
感動的な再会は、一秒ともたなかった。
ヴァレン:「僕は初号機パイロット、碇シンジです!!!!」
ワンダ:「それも嘘ぉぉぉ!!」
ヴァレン:「俺はボボボーボ・ボーボボなのか!?」
ワンダ:「聞くなやぁぁぁ!!」
ヴァレン:「俺は海賊王になる男だぁーーー!!」
ワンダ:「それ他人の夢ッッッッ!!」
ヴァレン:「俺はこの物語の主人公さ。」
ワンダ:「 バ ル フ レ ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ! ! ! ! ! 」
怒濤のツッコミを終え、ワンダが肩で息をする。
対するヴァレンは、ケラケラと子供のように笑っていた。
ヴァレン:「ハッハッハッ! 何気に相変わらずだな、ワンダ。そのキレ、懐かしいぜ」
ワンダ:「……あんたこそ、相変わらず過ぎて寒気がするわ……」
ワンダは額を押さえる。
ワンダ:(しかも古ーーーッいネタばっかり……)
かつてN・G・ライトを倒し、戦争を終結へ導いた英雄ジョーカード。
伝説だけを聞けば、誰もが寡黙で威厳に満ちた英雄を想像するだろう。
だが、その実態はこれだった。
ふざけるときは徹底的にふざける。
底抜けに軽薄で、子供じみていて、それでいて何を考えているのか分からない。
それが、ワンダの知るヴァレンという男だった。
ディスト:「あ、あの……」
呆気に取られていたディストが、恐る恐る声を掛ける。
ディスト:「あなたが、本当に……あの伝説のジョーカードなんですか?」
ヴァレン:「あん?」
ヴァレンがディストへ顔を向ける。
ヴァレン:「何気に俺、伝説になってんの?」
ディスト:「えっ?」
ヴァレン:「まぁ、N・G・ライトを倒したってのは何気にマジだがね」
得意げに胸を張る。
その態度にも、英雄としての威厳は微塵もなかった。
――そのとき。
メッシュ:「貴様らぁぁ……」
低い声が響いた。
ヴァレンたちが振り向く。
そこには、大剣となったカリパーを握り締め、怒りに震えるメッシュが立っていた。
メッシュ:「いい加減に俺を無視するんじゃねぇぇぇっ!!」
怒号とともに、メッシュが床を蹴る。
巨大な大剣を振りかぶり、そのままヴァレンへ斬りかかった。
メッシュ:「うぉぉぉぉぉッ!!」
凄まじい質量を乗せた一撃。
だが。
ヴァレン:「おっと」
ヴァレンは笑みを崩さない。
身体をわずかに傾けるだけで、カリパーの刃を紙一重でかわした。
ズガァァァァンッ!!
大剣が大理石の床へ叩き込まれ、巨大な亀裂が走る。
ヴァレンは軽く後方へ跳び、メッシュとの距離を取った。
ヴァレン:「おうおう。何気に元気だなぁ」
メッシュ:「当然だッ!! 我ら十二使徒を舐めるなよ、伝説ッ!!」
ヴァレンは、メッシュを上から下まで眺める。
大剣となったカリパー。
大盾となったゲンジ。
そして、周囲に展開されたメッシュ自身の浮遊装甲。
先ほどまで四機一体でL班を圧倒していたトランプ・フォーメーション。その主力は、キドゥを失ってなお健在だった。
その姿を見ても、ヴァレンの表情は変わらなかった。
ヴァレン:「ちょうどいい」
首を軽く鳴らす。
ヴァレン:「長いこと寝てたせいで、何気に身体がなまってるんだ」
赤い瞳が細められた。
ヴァレン:「何気に付き合えや……そこの『強そうなの』」
メッシュ:「望むところだッ! 伝説ッ!!」
二機が同時に構える。
片や、十二使徒のトランプメダを束ねるエース。
片や、かつて「神」を討ち取ったラヴドの英雄。
道化師の笑みを浮かべたジョーカードと、巨大な剣を掲げたファーストエース。
奇妙な二人の戦いが、幕を開けた。
――激突。
先に攻勢へ出たのは、メッシュだった。
メッシュ:「食らえぇぇぇッ!!」
大剣となったカリパーを横薙ぎに振るう。
刃の軌道から、無数の破壊衝撃が一斉に放たれた。
ズガガガガガガガッ!!
大理石の床が砕け、壁面へ幾筋もの亀裂が走る。
だが、その中心にヴァレンの姿はない。
ヴァレン:「何気に危ねぇな」
紙一重。
ヴァレンは破壊の波を縫うように身を翻し、一気にメッシュとの距離を詰めていた。
赤い瞳が鋭く光る。
ヴァレン:「――サクリファイス!!」
右腕を突き出す。
次の瞬間。
ヴァレンの右腕『ヌキバーバー』そのものが、凄まじいエネルギーを伴って射出された。
自らのパーツを犠牲にし、その破壊をそのまま攻撃力へと変える――サクリファイス。
メッシュ:「ゲンジッ!!」
メッシュが即座に大盾を前へ構える。
ドォォォォォンッ!!
炸裂。
爆炎と衝撃が広間を覆う。
しかし、煙の向こうに立つゲンジの盾は健在だった。
メッシュ:「ファッファッファッ!! 効かぬわぁッ!!」
ヴァレン:「だろうな」
メッシュ:「あ?」
ヴァレンはすでに、メッシュの左側へ回り込んでいた。
盾で右側を守ったことで生じた、防御の薄い位置。
そこへ残る左腕を突き出す。
ヴァレン:「もう一発――何気にサービスだ」
左腕『ヌキジージー』が放たれた。
メッシュ:「カリパーッ!!」
今度は大剣を割り込ませる。
サクリファイスとカリパーが正面から激突した。
ドガァァァァァンッ!!
再び爆発。
巨大な衝撃にメッシュの身体が後方へ押し込まれ、床を大きく削った。
それでも倒れない。
カリパーも、ゲンジも健在。
そして――。
ヴァレンの両腕だけが、完全に失われていた。
メッシュ:「ファッ……ファッファッファッ!」
煙の向こうで、メッシュが笑い始める。
メッシュ:「なんだぁ!? もう両腕がなくなっちまったじゃねぇか!」
ヴァレンの純正機体――ジョーカード。
その構成は、極端なものだった。
右腕と左腕には、どちらも使用と同時に自らのパーツを失う強力なサクリファイス。
対して頭部『ワイルドカード』は、破壊した腕を復活させる能力を持たない。
攻撃後の隙を極端に短縮する、充填性能に特化した特殊なパーツである。
つまり。
二本の腕を使い切った時点で、純正状態のジョーカードにはまともな攻撃手段が残されていなかった。
メッシュ:「終わりだな、伝説ッ!!」
メッシュがカリパーを振り上げる。
対するヴァレンは――。
笑っていた。
メッシュ:「……?」
ヴァレン:「悪いな」
ヴァレンが軽く後方へ跳ぶ。
ヴァレン:「まだまだ闘いは、何気に終わらないぜ」
着地した場所。
そこには、先ほどまでクロとシロだった二つの機体が横たわっていた。
ヴァレンは迷うことなく身を屈める。
クロの右腕――『マーブラー』。
シロの左腕――『スバル』。
両肩の接続部を、それぞれのパーツへと合わせた。
メッシュ:「何を――」
ガシュンッ!!
重い接続音が響く。
右肩へ、漆黒の大型射撃パーツが噛み合った。
複数の砲口を持つ巨大な右腕――マーブラー。
続いて。
ガシュンッ!!
左肩へ接続されたのは、白銀の巨大な剣を備えたスバル。
細身の道化師型の身体へ、性質も形状も異なる二つの巨大武装が取り付けられる。
右には、クロの理性と共にあった黒き銃。
左には、シロの本能と共にあった白き剣。
かつて自分から分かれた二つの存在が残した武器を、ヴァレンは再びその身に宿していた。
ヴァレン:「……よし」
右腕を軽く持ち上げる。
マーブラーの砲口が、メッシュを捉えた。
左腕では、スバルの白銀の刃が静かに構えられる。
ヴァレン:「行くぜ……」
赤い瞳が細められた。
ヴァレン:「何気にな」
次の瞬間。
ヴァレンが爆ぜるような速度で踏み込んだ。
右腕のマーブラーが火を噴く。
至近距離から放たれた猛烈な連射が、メッシュへ叩き込まれる。
メッシュ:「ファッファッファッ! 無駄よ無駄!」
メッシュは即座に左腕の大盾――ゲンジを前へ構えた。
無数の弾丸が盾の表面へ命中し、激しい火花を散らす。
だが、巨大な盾はびくともしない。
メッシュ:「我が親友のゲンジを貫けるものなどなしッ!」
銃撃が途切れた瞬間、メッシュが反撃へ転じる。
右腕のカリパーを横薙ぎに振り抜いた。
巨大な刃が、ヴァレンの胴体へ迫る。
ヴァレン:「おっと」
ヴァレンは左腕のスバルを前へ出した。
真正面から受け止めるのではない。
白銀の刃を斜めに添え、カリパーの軌道を横へ滑らせる。
ギャリィィィンッ!!
刃と刃が擦れ合い、激しい火花が散った。
メッシュの一撃はヴァレンの身体を逸れ、そのまま大理石の床を深く抉る。
ヴァレン:(何気に硬ぇな、あの盾……)
ヴァレンは一度距離を取る。
ゲンジの盾そのものを破壊するのは難しい。
ならば――。
ヴァレン:(何気に、こうするか)
姿勢を低く落とした。
そのまま床を這うような超低空の軌道で、メッシュの懐へ潜り込む。
メッシュ:「来たなッ!」
メッシュはゲンジを前面へ構えながら、頭上からカリパーを振り下ろそうとした。
盾で守りながら、剣で叩き潰す。
攻防一体の構え。
だが――。
ヴァレンが跳ねた。
右腕のマーブラーを、ゲンジの盾そのものへ向ける。
ヴァレン:「そこじゃねぇ」
至近距離から一斉射。
ダダダダダダダダッ!!
弾丸そのものでは、ゲンジの装甲を貫けない。
だが、連続して叩き込まれた衝撃によって、巨大な盾がほんのわずかに浮いた。
コンマ数秒。
それだけで十分だった。
ヴァレン:「そこだ!」
スバルが閃く。
狙ったのは盾の装甲ではない。
ゲンジとメッシュの左腕を繋ぐ、接合部。
その一点へ、白銀の刃が正確に突き込まれた。
ガギィィィィィィンッ!!
不快な金属音。
接合部のベアリングが破損し、巨大な盾がメッシュの左腕から弾け飛んだ。
メッシュ:「なにぃッ!?」
吹き飛ばされたゲンジは、そのまま壁へ激突する。
ドゴォォンッ!!
巨大な盾が壁へ深くめり込んだ。
いかに頑丈な装甲を持っていても、壁へ固定されたままでは盾として機能しない。
ゲンジは脱出するため、メダチェンジを解除しようとする。
メッシュ:「待てゲンジ! これは罠だッ!」
メッシュが叫ぶ。
だが、すでに変形は始まっていた。
巨大な盾が展開し、ガンキング本来の姿へ戻っていく。
トランプの「キング」型メダロット――ガンキング。
その異常なまでの重装甲には、一つだけ明確な弱点が存在した。
通常形態では、頭部パーツの装甲だけが極端に薄い。
そして。
ヴァレンは、それを見逃さない。
ヴァレン:「まずは一枚――」
マーブラーの照準が、ゲンジの頭部へ固定される。
ヴァレン:「
銃声。
放たれた一撃が、ゲンジの頭部を正確に撃ち抜いた。
頭部装甲が砕ける。
ゲンジの身体から力が抜け、そのまま壁際へ崩れ落ちた。
機能停止。
メッシュ:「ゲンジィィィッ!!」
メッシュの叫びが響く。
だが、その動きは止まらなかった。
ヴァレンの身体が完全にゲンジへ向いている。
今度は、メッシュがその隙を見逃さない。
メッシュ:「ならばッ!!」
残された右腕。
大剣となったカリパーを、頭上へ大きく振りかぶる。
メッシュ:「伝説を真っ二つにしてやるぜぇぇぇッ!!」
全力の縦一閃。
大剣が、ヴァレンへ振り下ろされた。
ヴァレン:「……ッ!」
咄嗟にスバルを掲げる。
ガァァァァンッ!!
二つの刃が正面から激突した。
しかし。
今回は受け流せない。
ヴァレンはゲンジを撃ち抜いた直後で、体勢が崩れていた。
巨大な質量を持つカリパーが、スバルを強引に押し込んでいく。
ヴァレン:「ぐっ……!」
メッシュ:「ファッファッファッ!! 押し切るぞぉぉぉッ!!」
白銀の刃が軋む。
そして――。
バギィィンッ!!
カリパーがスバルを押し切った。
ヴァレンの左腕が、肩口から切断される。
ワンダ:「ヴァレンッ!!」
切り離されたスバルが床へ落下した。
だが。
ヴァレンは怯まない。
左腕を失った直後には、すでに次の一手へ移っていた。
残された右腕――マーブラーを、メッシュの右手へ押しつける。
正確には。
メッシュが握っている、大剣カリパーのグリップ部分へ。
メッシュ:「なっ……!?」
ヴァレン:「刃物はな……」
マーブラーの砲口が、至近距離で火を噴いた。
ダダダダダダダダダダッ!!
狙っているのは、カリパー本体の破壊ではない。
猛烈な連射によって生じる振動。
そして、砲身が焼けるほどの熱。
そのすべてを、メッシュがカリパーを保持している接合部分へ直接叩き込む。
ヴァレン:「何気に、握りが命なんだよ」
メッシュ:「ぐっ……ぐぉぉぉッ!?」
振動によって接続部が激しく揺さぶられる。
さらに熱が蓄積し、保持機構が悲鳴を上げた。
ついに。
ガギィンッ!!
カリパーがメッシュの右腕から弾き飛ばされた。
メッシュ:「カリパーッ!!」
大剣は空中で何度も回転し――。
ズガァンッ!!
床へ深々と突き刺さった。
変形したままのカリパーは、刃を床へ食い込ませた状態で身動きが取れない。
ヴァレンはそれを見届けると、すぐ傍へ落ちていたものへ視線を向けた。
先ほど切断された、スバル。その刃。
ヴァレン:「悪いな」
ヴァレンはマーブラーの残った指で、その破片を拾い上げた。
メッシュ:「まさか――」
ヴァレン:「二枚目だ」
振りかぶる。
そして。
白銀の刃を、一直線に投げ放った。
ヒュンッ――。
スバルの破片が空気を切り裂く。
床へ突き刺さったままのカリパーへ、正確に命中した。
バキィィィィンッ!!
刃が機体を貫く。
カリパーの変形が解除され、ジャッカル本来の姿へ戻りながら、そのまま床へ倒れ込んだ。
動かない。
機能停止。
メッシュ:「な……カリパーッ!!」
ゲンジ。
カリパー。
先ほど倒されたキドゥ。
四機一体だったトランプ・フォーメーションは、ついにメッシュ一機だけとなった。
それでも。
メッシュは折れなかった。
剥き出しになった星型の瞳が、怒りと――それ以上の愉悦に歪む。
メッシュ:「ファッ……ファッファッファッ!!」
笑う。
メッシュ:「流石だ! 流石は伝説の英雄!!」
メッシュの周囲に浮遊していた装甲ビットが、一斉に動いた。
失った剣と盾を補うように、本体の周囲へ集束していく。
武器を失ってなお。
戦うことをやめようとはしなかった。
メッシュは周囲に浮かぶ装甲ビットを一斉に展開した。
メッシュ:「まだだぁぁぁぁッ!!」
無数の装甲片が、四方八方からヴァレンへ襲いかかる。
剣も盾も失った。
だが、ファーストエース自身の機動力と浮遊装甲は健在だった。
ヴァレン:「何気に、まだやる気満々かよ」
ヴァレンはマーブラーを構える。
銃撃。
迫るビットの一枚を弾き飛ばす。
しかし、その直後には別方向から二枚目が飛来した。
ヴァレン:「おっと!」
身を捻ってかわす。
さらに三枚目。
四枚目。
次々と死角から襲いかかる装甲片を、ヴァレンはかわし、撃ち落としながら後退していく。
だが。
左腕を失った今、すべてを捌き切ることはできない。
ガァンッ!!
側面から飛来した一枚が、ヴァレンの胴体へ直撃した。
ヴァレン:「ぐっ……!」
体勢を崩したところへ、さらに別のビットが叩き込まれる。
装甲が砕け、火花が散った。
メッシュ:「ファッファッファッ!! どうした伝説! さっきまでの余裕はどこへ行ったぁ!!」
メッシュ自身も床を蹴る。
もはや武器はない。
それでも構わず、拳を握り締めてヴァレンへ殴りかかった。
ヴァレンはマーブラーでその拳を受け止める。
ガギィィンッ!!
激突。
二機が正面から押し合う。
ヴァレン:「……何気に、強ぇな」
メッシュ:「当然だぁぁぁッ!!」
メッシュが力任せに押し込む。
その周囲から、再びビットがヴァレンを狙う。
ヴァレンは蹴りを放ってメッシュを引き離すと、その反動で後方へ跳んだ。
着地。
だが、その機体も決して無傷ではなかった。
全身の装甲には大小の亀裂が走り、至るところから火花が漏れている。
残された右腕のマーブラーも、度重なる至近距離での連射と攻撃の応酬によって、一部が大きくひしゃげていた。
―
その激闘を、ワンダたちは床に倒れたまま見つめていた。
ローラ:「ワンダ……」
ローラが静かに口を開く。
ローラ:「彼と……ジョーカードと知り合いなのか?」
ワンダ:「……うん」
ワンダは、戦うヴァレンから目を離さないまま頷いた。
ワンダ:「ヴァレンとはね……昔、同じマスターのところにいたの」
ローラ:「同じ……マスター?」
ワンダ:「あいつは元々、野良メダロットだったんだけど……マスターに拾われたの」
遠い記憶を思い出すように、ワンダの声が少しだけ柔らかくなる。
ワンダ:「一緒にいられたのは、一年くらいだったけどね……」
そして。
その表情が曇った。
ワンダ:「マスターは……エデンに殺されたから」
ローラ:「…………」
ワンダ:「あの日から、ヴァレンは姿を消したの。N・G・ライトを倒したって噂を聞いた後も、すぐに表舞台からいなくなった」
視線の先では、ヴァレンがメッシュの拳をかわし、マーブラーを撃ち返している。
昔と変わらない。
馬鹿なことを言って。
何気なく笑って。
何も悩んでいないような顔をしている。
ワンダ:「ヴァレンは、明るく振る舞ってるけど……本当はすごく根暗なの」
ローラ:「根暗……」
ワンダ:「マスターが死んだのは自分の責任だって、ずっとそう思ってた……」
ローラは何も言わなかった。
ただ、一瞬だけ瞳を伏せる。
その脳裏をよぎったのは、かつて自分の判断によって命を落とした親友――フェニの姿だった。
ローラ:「……妾にも、彼の気持ちは分かる気がするな」
ワンダは小さく頷いた。
―
戦場では、二機の激突が続いていた。
メッシュの拳がヴァレンの肩を掠める。
ヴァレンの蹴りがメッシュの胴体へ突き刺さる。
ビットが飛び交い、マーブラーが火を噴く。
互いの装甲はさらに削られ、ついには二機とも大きく距離を取った。
ヴァレン:「ハァ……ハァ……」
ヴァレンが荒い呼吸を整える。
ヴァレン:「強えぇな、お前。何気に正直、想定外だぜ」
メッシュ:「ファッファッファ……!」
メッシュも傷だらけだった。
それでも、胸を張る。
メッシュ:「諦めるか、ジョーカード!」
ヴァレン:「……諦める?」
ヴァレンが笑った。
ヴァレン:「あぁ、そうだな」
ひしゃげたマーブラーをゆっくりと下ろす。
ヴァレン:「何気に『普通に戦う』のは諦めたよ」
メッシュ:「……何?」
ヴァレンの全身から、青白い光が溢れ出した。
それまで十二使徒たちが放っていた殺気とは、明らかに異なる。
その場に存在するだけで、空気そのものが重くなる。
メッシュの星型の瞳が、わずかに見開かれた。
メッシュ:「メダフォース……!」
青白い光はさらに強くなる。
メッシュ:「しかし……なんだ、このプレッシャーは……!?」
ヴァレンは、光の中で何気なく笑った。
ヴァレン:「これから俺が、何気に好きなことをするんだ」
右腕を持ち上げる。
その赤い瞳には、戦場に立つ英雄とは思えないほど楽しげな光が宿っていた。
ヴァレン:「……そう」
一瞬の間。
ヴァレン:「『ギャンブル』をな!」
青白い光が爆発的に膨れ上がった。
ヴァレン:「メダフォース発動――」
ヴァレンが、不敵に微笑む。
ヴァレン:「『 ク エ ス チ ョ ン 』!!」
第十六話【?】終わり
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[機体解説]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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【キャラクター名】
ヴァレン
【機体名】
ジョーカード
【公式/オリメダ区分】
オリメダ
【モチーフ(型式)】
トランプ「ジョーカー」型メダロット(TJO)
【パーツ】
[頭部]
ワイルドカード/常時充填(とくしゅ)
[右腕]
ヌキバーバー/サクリファイス(うつ)
[左腕]
ヌキジージー/サクリファイス(なぐる)
[脚部]
リフルシャッフル/二脚
【備考】
本作オリジナルメダロット。ヴァレン本来の純正パーツで構成された姿。
黒と白を基調とした道化師のような外見を持ち、頭部や機体各所にはトランプのスートを思わせる意匠が施されている。
両腕には、自らのパーツを犠牲にして強烈な一撃を放つ『サクリファイス』を搭載。
一方、頭部『ワイルドカード』は失われたパーツを復活させる能力を持たず、充填性能に特化した特殊なパーツとなっている。
詳細は不明だが、百年以上前に存在した天才一族の科学者によって設計されたとされる。
何らかの事情によって製品化には至らず、プロトタイプとして製造された一機のみが現存している。
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【キャラクター名】
ヴァレン
【機体名】
ジョーカード(両腕換装)
【公式/オリメダ区分】
オリメダ
【モチーフ(型式)】
トランプ「ジョーカー」型メダロット(TJO)
【パーツ】
[頭部]
ワイルドカード/常時充填(とくしゅ)
[右腕]
マーブラー/パワーライフル(うつ)
[左腕]
スバル/レンジソード(なぐる)
[脚部]
リフルシャッフル/二脚
【備考】
純正状態で両腕のサクリファイスを使用した後、クロの『マーブラー』とシロの『スバル』を両腕へ換装した姿。
右腕のマーブラーによる強力な射撃と、左腕のスバルによる近接攻撃を併用することで、純正状態とは大きく異なる戦闘スタイルを取る。