【完結】DISAPPEARANCE   作:土地_0000

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第十七話【落ちゆく城】

第十七話【落ちゆく城】

 

 

ヴァレン:「メダフォース発動――『 ク エ ス チ ョ ン 』!!」

 

 ヴァレンの宣言と共に、広間の色彩が反転した。

 天井から染み出した不気味な影が形を成し、巨大な死神が姿を現す。

 ボロボロの布切れを纏い、漆黒の翼を広げたその怪物は、手に持った大鎌の刃をメッシュの首筋へと向けた。

 

メッシュ:「な、なんだ……この禍々しい威圧感は……ッ!?」

 

ヴァレン:「何気に『ギャンブル』つっただろ? ルールは簡単だ。ここに裏返した四枚のカードがある。お前はこの中から一枚を選ぶだけだ。ただし……」

 

 ヴァレンが指差した先、虚空に巨大な四枚のトランプが浮かび上がる。

 

ヴァレン:「一枚だけ混ざっている『ジョーカー』を引けば、俺の勝ち。引かなければお前の勝ち。負けた方は……何気にこの死神に、頭を粉砕されるのさ。さぁ、3/4の賭けだ。乗るだろ?」

 

メッシュ:「ファッファッファ……!! 望むところよ! 俺の運、天まで届けッ!!」

 

 メッシュは迷いなく、右端のカードを指差した。

 捲られたカードに描かれていたのは――不敵に笑う道化師(ジョーカー)(かお)

 

メッシュ:「何ぃぃぃ!3/4じゃないのかーーーー!?」

 

 死神が動いた。

 回避不能の死の審判。巨大な鎌が振り下ろされ、メッシュの頭部装甲を真っ向から両断した。

 

メッシュ:「あーーれーーー!!!」

 

 

 死神が消え、世界に色彩が戻る。

 メッシュは頭部を完全に破壊されながらも、膝を屈することなく立ち続けていた。

 その強靭な精神力に、ヴァレンのレンズが微かに見開かれる。

 

メッシュ:「……さ……すが……だ……。伝説の、英雄……」

 

ヴァレン:「頭をイカれてまだ喋れるのか。何気にしぶといな、お前」

 

 ヴァレンは敢えて肩をすくめ、軽薄な調子で応じる。

 

メッシュ:「……しか……し……これも……作戦……だ……。こうしているうちに……ラヴ……ドの……本部は……トゥルースによって……落と……されるはず……」

 

 衝撃の事実。

 ヴァレンに、文字通り冷たい電流が走った。

 ここビッグブロックの戦いは、エデンにとって「陽動」に過ぎなかったのだ。

 激しい焦燥が論理回路を焼きそうになるが、彼は即座にそれを「英雄」という皮の下に封じ込めた。

 ヴァレンは無造作に一歩踏み出すと、冷徹な視線をメッシュへ向けた。

 

ヴァレン:「……何故それを俺に教える?」

 

 声は冷たく、凪いでいた。内心の激動を、一点たりとも外へ漏らさない。

 メッシュは、そのヴァレンの「嘘」を見抜いているのか、いないのか。

 ただ、子供のような汚れなき、どこか救われたような笑みを浮かべて続けた。

 

メッシュ:「同じ……"トランプメダ"……のよしみ……だ……地獄へ行くなら……道連れは……多いほうが……いい……つまり……」

 

 メッシュの胸部にあるメダルが、異常なまでの高熱を放ち、発光し始めた。

 自爆。

 十二使徒としての最期の意地が、ビッグブロックの最上階を吹き飛ばすほどのエネルギーを蓄積していく。

 

メッシュ:「お……前は……こ、ここで……死ぬ!!!」

 

 

 逃げ場はない。至近距離での自爆。

 絶体絶命の瞬間、ヴァレンの全身に、自分ですら理解できない奇妙な感覚が駆け巡った。

 意識の深淵から、氷のように冷たく、それでいて万物を支配するような「全能感」が湧き上がる。

 

 その時だった。

 

 ――シ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……!!

 

 この世のものとは思えない、世界が歪むような異音。

 メッシュが自爆のトリガーを引くと同時に、広間の空間そのものが、

 まるで見えない巨大な洗濯機に放り込まれたかのように捩じれ始めた。

 

ヴァレン:「な、何だ……!? 何が起こってやがる……ッ!!」

 

 眩い閃光。

 直後、本来ならばヴァレンを跡形もなく焼き尽くすはずだったエネルギーの奔流が、

 彼の目の前数センチのところで「凍りついた」かのように静止した。

 いや、それは静止ではなく、そこにある「次元の裂け目」に吸い込まれているのだ。

 

 音もなく、光が消える。

 

 ……数秒の沈黙の後、ヴァレンが目を開けた時。

 目の前にいたはずのメッシュの姿は、どこにもなかった。

 それだけではない。

 床に転がっていたはずのカリパー、キドゥ、ゲンジの残骸までもが、まるで最初から存在しなかったかのように、

 一点の塵も残さず消失していたのだ。

 

ヴァレン:「……消えた……? 自爆の衝撃が、何気に届いてねぇ……?」

 

 自分の手を見る。震えは止まっている。

 何が起こったのかは分からない。だが、少なくとも自分も、ワンダたちも、無傷で生き残っていた。

 

ワンダ:「ヴァレン……! 今、何が……」

 

 回復を終えたワンダたちが駆け寄る。

 

ヴァレン:「……さぁな。何気に運が良かっただけだろ。……それよりも」

 

 ヴァレンは窓の外、遠くラヴド本部の方向を見据えた。

 

ヴァレン:「メッシュの野郎、不吉なことを言い残していきやがった。……今頃、本部はエデンの別働隊に狙われてるぜ」

 

ワンダ:「なんですって!? ……急いで戻らなきゃ!!」

 

 こうして、ビッグブロック作戦はメッシュによる想定外の「自爆(消失)」を以て結末を迎えた。

 

 

――――同時刻、ラヴド本部付近。

 

 荒野の風に吹かれ、二つの影が静かに歩を進めていた。

 

セルヴォ:「さて、久しぶりの登場だな」

ビート:「ああ……そうだな」

 

 トゥルースのセルヴォとビート。その表情は、いつになく真剣だった。

 

セルヴォ:「さて、ビート。今回の任務は?」

ビート:「……ラヴド本部を、ティレルビートルごと破壊。……単独潜入による、施設爆破だ」

 

 彼らの上司、デュオカイザー曰く「すご〜ぃ任務」。

 しかし現場の二人にとっては、これ以上なく理不尽で、死の匂いしかしない無謀な任務だった。

 

セルヴォ:「さて……、行きますかっ。生きてたら一杯飲もうぜ……相棒」

ビート:「あぁそれはいいな……相棒」

 

 最強の諜報員たちが、静寂を味方に付け、ラヴド本部の影へと溶け込んでいく。

 本戦争において、トゥルースにとって最も過酷な任務が、今始まろうとしていた。

 

 

第十七話【落ちゆく城】終わり

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