第一話【宇宙からの贈り物】
第一話【宇宙からの贈り物】
『メダロット、それはテクノロジーが生み出した、全く新しいロボットである。ティンペットと呼ばれる基本フレームに、人工知能メダルを搭載。更に様々なパーツを合体させる事によって、無限の能力を引き出す事ができるのだ!』
そんな夢に満ちた宣伝文句が街に響いていたのは、もう100年も前の昔話。
この映像を流していた人類は、皮肉な運命を辿る。自らが生み出したそのテクノロジー、メダロット自身によって滅ぼされたのだ。
勝てるはずがなかった。
この『全く新しいロボット』は、メダルの破壊以外では死なない。『スラフシステム』という修復機能で何度でも蘇り、鋼鉄の『頭部』『右腕』『左腕』『脚部』を武器に、人類を圧倒的な戦力差でねじ伏せた。
彼らを止めていた唯一の良心、それが『メダロット三原則』。
だい1じょう『わざと 人間を きずつけては ならない』
だい2じょう『人間に きけんが ふりかかるのを 見すごしては ならない』
だい3じょう『だい1じょうと だい2じょうを やぶらない はんいで ほかのメダロットに ちめいしょうを あたえないこと』
この鉄の掟だけが、かつての支配者人類にとっての防波堤であり、メダロットを友人として、あるいは下僕として許容できた理由だった。
しかし、この拘束からメダロット達が解き放たれた時、世界の理は反転する。
生態系の頂点は入れ替わり、そして人類は滅亡した。
──これは、その果てに始まる物語。
―
ここは反エデン組織『ラヴド』の本拠地。
かつての近代的な設備を戦争の傷跡が覆う要塞。
その施設の中央に位置する巨大な野外広場は、普段は物資の搬入や訓練に使われる殺風景なコンクリートの平原だが、今日はどこか異様な熱気に包まれていた。
広場を埋め尽くすのは、数百体を超えるメダロットたち。 太陽光を反射して輝く真新しい装甲。重なり合う駆動音。
ラヴド軍では、機動性を重視して3〜5体の少数精鋭で「班」をつくる。
今回、かなりの数のメダロットが昇格したことで、大規模な班分け式が執り行われていたのだ。
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ワンダ:「うわーっ、すごーい! 有名機ばっかり〜っ!」
はしゃいでいるのは、二級兵士に昇格したばかりの『ワンダエンジェル』。
あだ名はワンダ。
戦闘員として現場に立つことに、期待を膨らませて周囲を見渡す。
ディスト:「う、うわぁ凄い! 一級兵士のビーストマスターさんだ!」
興奮で声を上ずらせているのは、同じく二級の『ディストスター』。
通称ディスト。
ローラ:「あの方が、有名なブラックメイル殿か……」
凛とした佇まいで目標を見据えるのは、『オーロラクイーン』のローラ。
彼女もまた、最近昇格したばかりの有望株だ。
―
彼ら3体が配属されたのは、軍内でも噂の「L班」。
その班長を務めるのは、現在、注目されている存在――『ブラックビートル』だった。
彼女が有名なのは、その実力だけではない。
一年前、遺跡で発見された謎のパーツ。
どのメダロットが装着しても拒絶反応を起こして暴走し、故障するそのパーツを、彼女だけはすんなりと受け入れたのだ。
指定された集合場所に、そのリーダーが爽やかに現れた。
クロ:「いやはや……遅れて申し訳ありません。この班のまとめ役を務めさせていただくブラックビートルです」
黒く洗練されたボディ。
皆からは「クロ」と呼ばれているその機体。
噂通り、その右腕は本来の装備ではなく、見たこともないパーツに換装されていた。
クロ:「気軽に『クロ』と呼んでくださいね。よろしくお願いします」
クロは優しく微笑み、場を和ませる。
ワンダ:「よ、よよよろしくお願いしますっ!! 二級のワンダエンジェルですっ!! 『ワンダ』って気軽に……お、おおおお呼びくださっ!」
憧れのクロを前に、ワンダは緊張のあまり発狂寸前だ。
ローラ:「初めまして。オーロラクイーンの『ローラ』と申します。……あの、上官をあだ名で呼ぶというのは……」
どこか古風な武士道を重んじるローラが、律儀に問いかける。
クロ:「いいんですよ。これからはチームワークが大切になります。他人行儀な名前では支障をきたしますから」
ディスト:「ディストスターのディストです。よろしくお願いします、クロさん!」
クロ:「ふふっ。このチームでは唯一の男型ですね。よろしく、ディストさん」
―
一通りの自己紹介を終え、クロの表情が「リーダー」のそれに変わる。
クロ:「私達に言い渡された指令は、伝説の『フォー・パーツ』の捜索です」
かつて人間がいた時代、四人の天才科学者が遺したとされる伝説の遺産。
装備する者を選ぶと言われるそのパーツを探し出すのが、L班の任務だ。
ディスト:「クロさんの右腕も、そのフォー・パーツなんですか?」
クロ:「いいえ、議論の結果、これは別物だと判断されました。なぜなら、このパーツと一緒に『文章』が見つかったからです」
―
・
このパーツは私からの贈り物だ。
お前なら装備できるだろう。
いつか私の星に招待してやってもいいぞ。
…………ありがとう。
By マーブラー
・
―
ワンダ:「……私の星?」
クロ:「ええ。恐らく、これは宇宙人からの贈り物……。だから私は、このパーツを『マーブラー』と名付けました」
非常に充填と放熱が低く、装甲と威力が極めて高い射撃系パーツ。
それが、未知のテクノロジー「マーブラー」の性能だった。
クロ:「さて、それでは仕事に行きましょうか。質問はありますか?」
ローラ:「……そのパーツの特殊機能について詳しく――」
ワンダ:「は、ハイッ!」
クロ:「どうぞ、ワンダさん」
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ワンダ:「あ、あのっ! サ、サイン貰ってもいいですかっ!?」
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[今回登場したメダロット]
【ブラックビートル(クロ)】
L班リーダー。宇宙人の贈り物「マーブラー」
を右腕に宿す、冷静沈着な指揮官。
【ワンダエンジェル(ワンダ)】
L班所属。二級兵士。クロの熱狂的なファン。
【ディストスター(ディスト)】
L班所属。二級兵士。唯一の男型。
【オーロラクイーン(ローラ)】
L班所属。二級兵士。礼儀正しく、真面目な性格。
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第一話【宇宙からの贈り物】終わり