【完結】DISAPPEARANCE   作:土地_0000

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第二十三話【不幸のメダロット~GILGAMESH !?~】

第二十三話【不幸のメダロット~GILGAMESH !?~】

 

 それから数時間後――メダリンピック決勝トーナメント前日の昼。

 

 ルクたちは街へ繰り出し、最後の戦力となる三機目のメダロットを探していた。

 

 本来、メダリンピックは三機一組のチーム戦が基本である。規約上は二機での出場も認められており、予選まではヴァレンのサクリファイスとワンダの修復を繋ぐ、綱渡りのような連携でどうにか勝ち抜いてきた。

 しかし、世界中から強豪が集まる決勝トーナメントともなれば話は別だ。戦力で一機分の差を背負ったまま優勝できるほど甘くはない。

 

ルク:「あーもう! なかなか『これ!』っていうメダロットがいないわね!」

 

 ルクは街角に立ち、“助っ人求む”と殴り書きした看板を掲げていた。

 

 とはいえ、明日から始まる世界大会の決勝へ、いきなり助っ人として飛び込もうという野良メダロットなど、そう簡単に見つかるものではない。

 ルク自身の容姿に惹かれて声を掛けてくる男は何人かいたものの、肝心の戦力として使えそうな相手は一向に現れなかった。

 

ヴァレン:「……何気に、そろそろ諦めた方がいいんじゃねぇか?」

 

ルク:「嫌よ! ここまで来て優勝逃すなんて絶対イヤ!」

 

ワンダ:「でもルクちゃん、今日中に見つからなかったら……」

 

ルク:「見つけるの! 絶対!」

 

 相変わらず根拠のない自信だった。

 三人が半ば途方に暮れかけていた、その時――。

 

「“助っ人求む人”求むッ!!」

 

ヴァレン:「…………?」

 

ワンダ:「え?」

 

 街の喧騒を力ずくでねじ伏せるような絶叫が響き渡った。

 通行人たちが一斉に振り返る。その人波を割るように、一機の巨大なメダロットが堂々と歩み寄ってきた。

 

 夕刻にはまだ早い陽光を反射する、赤みがかったオレンジ色の装甲。

 そして何より目を引くのは、その肩と背から伸びる――計六本もの逞しい腕だった。

 

シュラ:「これなるはメダ世界一の強者! その名も『烈火の六道』シュラ!!! 知ってる人は知っている! 知らない人は覚えてね! 名高いパーツを求めてやまず、西へ東へさすらう男!! ウワサのアイツが、ここに見参!!!」

 

 ドシンッ!!

 

 地面が揺れるほど勢いよく足を踏み鳴らし、六本腕の巨漢が大仰なポーズを決める。

 

ヴァレン:「…………」

 

ワンダ:「…………」

 

 ヴァレンとワンダが完全に言葉を失う中――。

 

ルク:「キャー! ナニこれ、最高にカッコいい!!」

 

 ルクだけが目を輝かせ、盛大な拍手を送っていた。

 

ヴァレン:「何気にそこ刺さるのかよ!?」

 

 だが、単純に見た目が気に入っただけではない。

 

 六本もの腕を備えた巨体にもかかわらず、シュラの立ち姿には僅かな重心の乱れもなかった。あれほど大袈裟に動き回っているというのに、次の瞬間にはどの方向へでも踏み込めそうなほど身体の軸が安定している。

 

 普段は大雑把なルクだが、ロボトルとなれば話は別だ。

 

 目の前の変人が、ただの変人ではない。

 そのことだけは一目で理解していた。

 

シュラ:「ヒャホーゥ!!! メダを見る目があるねぇちゃんだなァ!!!」

 

 シュラは六本の腕を大きく広げる。

 

シュラ:「助っ人探してるなら、俺ッ様にまかせな!!」

 

ルク:「本当!?」

 

シュラ:「もちろんよォ!!!」

 

 話は驚くほど早かった。

 

 

―

 

 

 近くの広場へ場所を移すと、シュラは助っ人として参加する条件を提示した。

 

シュラ:「俺ッ様が欲しいのは金じゃねぇ! 名高い武器! 珍しいパーツ! まだ見ぬ至高の逸品よォ!!」

 

 シュラが六本の拳を握り締める。

 

シュラ:「だから条件は一つ! 優勝した暁には、賞品のレアパーツを俺ッ様に譲ること! 賞金は全部ねぇちゃんの物にしていいぜ!!」

 

ルク:「えっ、本当に!?」

 

シュラ:「ヒャホーゥ!!! 二言はねぇ!!!」

 

 ルクにとって、願ってもない条件だった。

 

 欲しいのは生活費。

 パーツそのものには、今のところ興味がない。

 

ルク:「交渉成立! あたしは現金さえあればパーツには興味ないから。今日からアンタも私たちの仲間よ!」

 

シュラ:「ヒャホーゥ!!! 商談成立だな!!」

 

 ガシッ! ガシッ! ガシッ!

 

 シュラは六本の腕のうち三本を使い、ルクの片手を豪快に握った。

 

ルク:「うわっ、握手に三本も使うの!?」

 

シュラ:「友情は多ければ多いほどいいだろォ!!!」

 

ヴァレン:「何気に意味分かんねぇ理屈だな……」

 

 その異様に芝居がかった男を見つめていたヴァレンが、不意に首を傾げた。

 

ヴァレン:「……なぁ、ワンダ」

 

ワンダ:「何?」

 

ヴァレン:「お前、こいつ何かに似てると思わないか?」

 

ワンダ:「何かって?」

 

ヴァレン:「何気に昔のゲームに出てきた、多腕の――」

 

ワンダ:「ゲーム?」

 

ヴァレン:「ほら、橋の上で待ち伏せして武器を奪っていく……ギルガメ――」

 

シュラ:「ヒャホーゥ!!! これからよろしくな、相棒!!!」

 

ヴァレン:「ぐおっ!?」

 

 最後まで言わせることなく、シュラが残り三本の腕でヴァレンの肩を立て続けに叩いた。

 

ヴァレン:「……あ、あぁ」

 

 ヴァレンは激しく揺さぶられながら、内心で妙な敗北感を覚えていた。

 

ヴァレン:(何気にツッコミ入れる隙がねぇ……こいつ、やるな)

 

ルク:「さぁ! 決戦に向けて前祝いよ! ホテルへ行くわよ!」

 

シュラ:「ヒャホーゥ!!!」

 

 何故かすでに意気投合しているルクとシュラが、揃って駆け出していく。

 その後ろを追いながら、ヴァレンはふと隣を飛ぶワンダへ視線を向けた。

 青い身体。

 背中の翼。

 回復を得意とする天使型。

 

ヴァレン:「……ワンダ」

 

ワンダ:「今度は何?」

 

ヴァレン:「お前、何気にその翼で空飛べて、何気に回復が得意なんだよな?」

 

ワンダ:「だから何を今さら……」

 

ヴァレン:「……いや」

 

 ヴァレンはしばらくワンダを眺め――。

 

ヴァレン:「何気に緑色をしてれば完璧だったなと思って」

 

ワンダ:「?」

 

ヴァレン:「……エンキドウ」

 

ワンダ:「意味わからん」

 

 こうして。

 

 ヴァレン、ワンダ、そして謎の六本腕――シュラ。

 

 世界一を目指すには、いささか騒がしすぎる三機が揃った。

 

 

―

 

 

 ――――翌日。

 

 メダリンピック決勝トーナメント会場。

 

 巨大スタジアムは、爆発寸前と言っても過言ではないほどの熱気に包まれていた。

 

 観客席を埋め尽くす大歓声。

 大型モニターには、世界各地の予選を勝ち抜いてきた強豪チームの姿が次々と映し出されている。

 

 そして中央ステージでは、司会者が拳を突き上げていた。

 

司会:『さぁ、お集まりの皆々様! これより第20回メダリンピック決勝トーナメントを開始するぜぇぇぇ!!!』

 

 スタジアムを揺るがす歓声が爆発する。

 

司会:『そして今回の優勝賞品は、現金二千万円と――開発時・威力調整前の非売品版! 伝説の右腕「リボルバー」だぁぁぁ!!!』

 

シュラ:「何ぃぃぃぃぃ!!!?」

 

 その瞬間。

 

 ルクの隣にいたシュラが、六本の腕を一斉に振り上げた。

 

シュラ:「非売品版リボルバーだとぉ!!!」

 

 興奮のあまり、巨体が小刻みに震えている。

 

ルク:「え、なに? そんなに凄いの、それ?」

 

シュラ:「凄いも何も!! 『最強のライフルパーツ』と噂される至高の逸品だぞ!! オークションに流せば一千万は下らねえ!!」

 

ルク:「…………」

 

 ルクの動きが止まった。

 

ルク:「……いっ」

 

ワンダ:「ルクちゃん?」

 

ルク:「い、いっ……一千万っ!!?」

 

 その瞳が、凄まじい勢いで「$マーク」へと書き換えられた。

 

 一千万。

 

 その響きは、彼女の「生活費優先」という理性を一瞬で焼き切るには十分すぎる魔力を秘めていた。

 

ヴァレン:「……何気に嫌な顔してんな、お前」

 

ルク:「な、何がよ!」

 

 シュラも何かを察したらしい。

 六本の腕を身体の前へ寄せ、不安そうにルクへ詰め寄った。

 

シュラ:「ねぇちゃん……!」

 

ルク:「な、なによ?」

 

シュラ:「パーツは俺ッ様の物にするって約束、忘れてねえだろうな!!?」

 

ルク:「…………」

 

 ルクの目が泳ぐ。

 ほんの数秒前まで、完全に忘れていた。

 

ルク:「わ、わ、忘れてるわけないじゃん♪」

 

ヴァレン:(何気に思いっきり忘れてたろ、今の反応……)

 

ワンダ:(嘘だ。絶対嘘だよルクちゃん。シュラさん、騙されちゃダメだよ……)

 

シュラ:「良かった!! 信じてたぜぇ、ねぇちゃん!!」

 

 六本の腕を広げ、心の底から安心した笑顔を浮かべるシュラ。

 そのあまりにも無垢な反応を前に、ヴァレンとワンダは揃って頭を抱えた。

 

 この男。

 強いかどうか以前に――あまりにも人が良すぎる。

 

ルク:「よーし!」

 

 ルクが勢いよく拳を突き上げる。

 

ルク:「さぁ、出番よ! リボルバー……じゃなくて! 二千万のために、全力で行くわよ!!」

 

ワンダ:(……いまリボルバーって言いかけたよね!?)

 

ヴァレン:(何気に絶対なんか企んでるだろ……)

 

シュラ:「ヒャホーゥ!!! 優勝すっぞォ!!!」

 

 そんな二人の疑念など知る由もなく、シュラは六本の拳を突き上げた。

 ルクの底知れぬ物欲は、早くも新たなトラブルの種を蒔き始めている。

 

 ヴァレン。

 ワンダ。

 シュラ。

 

 そして、その三機を率いる宝条ルク。

 

 史上最も賑やかで――恐らく最も胡散臭いチームが、ついに世界の頂点を懸けた舞台へ足を踏み出した。

 

 

第二十三話【不幸のメダロット~GILGAMESH !?~】終わり

 

 

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[今回登場したメダロット]

 

【シュラ】

 六本の腕を持つ武人型メダロット。レアパーツを求めてさすらう風来坊。テンションが上がると「ヒャホーゥ!!!」と叫ぶ。

※昔、掲示板などで交流のあった友人考案のメダロット。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

[機体解説]

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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【キャラクター名】

 シュラ

 

【機体名】

 シュラ

 

【公式/オリメダ区分】

 オリメダ

 

【モチーフ(型式)】

 阿修羅(ASR)型メダロット

 

【パーツ】

[頭部]

 ホムラガミ/さくてき(おうえん)

[右腕]

 レッカミョウオー/ファイヤー(なぐる)

[左腕]

 ゴウエンニオー/ファイヤー(がむしゃら)

[脚部]

 フドーダチ/二脚

 

【備考】

 オリジナルメダロット。

 六本の腕から繰り出される拳撃は、炎を纏うことで強力無比な威力と化す。

 また、その炎は形を変えて敵へ襲いかかることも可能で、鎖状となって拘束したり、龍のように喰らいついたりすることもできる。

 芝居がかった言動から、一見すると素っ頓狂な男と思われがちだが、その恐るべき実力を知る者からは非常に畏れられている。

 

【挿絵表示】

 

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