第三十六話【The Man with the Machine Gun】
一回戦:ディスト VS リーブ
円形競技場の中心。砂塵が舞うステージの上で、ディストとリーブは数メートルの距離を隔てて対峙していた。
ディストが車両型の脚部を低く沈め、エンジン音のような駆動音を鳴らす。
対するリーブは、愛用しているメタマシンガンを軽く回し、自然体で銃口を地面に向けていた。
ディスト: (最初のロボトル……。絶対に、ローラたちをガッカリさせないぞ!)
ディストが爆発的な初速で地を蹴った。
残像を残すほどの突進。車両型の機動力を活かし、直線的な軌道でリーブの懐へ飛び込む。
その左腕には、かつての弱さを克服した証であるフォー・パーツ『エアスト』の爪が鋭く光る。
リーブ: 「おっと、ディストさん速すぎやで!」
リーブは驚きの声を上げつつも、その挙動には一切の無駄がなかった。
最短の予備動作でバックステップを踏み、ディストの進路を計算し尽くしたように左腕のメタマシンガンを撃つ。
――ダダダダダダッ!!
放たれた弾丸は一点に収束し、ディストの肩口の装甲を正確に叩いた。
ディスト: 「くっ、かわされた!? でも、止まらないよ!」
ディストは強引に姿勢を立て直し、右腕の狙撃パーツからビームを放つ。
だが、リーブは首を僅かに傾けるだけでその熱線を回避し、即座に頭からミサイルを射出した。
リーブ: 「待っとったで、この瞬間!」
ミサイルの爆炎がディストの視界を塞ぐ。
リーブの特徴は派手な特殊ギミックを一切持たないことにあった。
いわば「特徴がないのが特徴」。 目立った弱点がない全身の完璧なバランス。
そして、癖のないパーツ構成ゆえに扱いやすく、彼の射撃精度は非常に高い。
煙の中から飛び出したディストを、リーブのライフル弾が寸分の狂いもなく狙い打つ。
ワンダ: 「ディスト、逃げて! あのリーブって人の攻撃、全然外れないわよ!」
フィールドの外でワンダが叫ぶ。
ディストは『エアスト』の爪を盾にして弾丸を弾くが、衝撃を殺しきれず、着実に装甲が削り取られていく。
ディスト: (一分の隙もない……。普通に戦ってたら、いつか絶対に撃ち抜かれる! なら――!)
ディストの全身から、眩い黄金の光が溢れ出した。
ディスト: 「メダフォース発動……『光学化』!!」
出力を限界まで引き上げたディストが、光の矢となってリーブへ突撃した。リーブは冷静に回避運動を取る。
ディストの爪がリーブの胴体の数センチ横を通り過ぎた。回避成功――そのはずだった。
リーブ: 「なっ!? ガハッ……!!」
直撃していないはずのリーブが、何かに叩き伏せられたように大きく吹っ飛んだ。
リーブ: 「アホな! 確かに僕はかわしたはずやでぇ!」
ディスト: 「一撃のパワーを極限まで上げた今の僕なら、掠っただけでも……その『衝撃波』が牙になるんだ!!」
いわゆる「しかし ばくふうで ダメージをうけた」というやつだ。
ディストは止まらない。光学化による圧倒的な破壊力を、衝撃波という名の不可視の刃に変えて、広範囲を蹂躙し始める。
リーブの完璧な回避が、ディストの暴力的な執念によって根底から崩されようとしていた。
リーブ: 「ホンマ、無茶苦茶やな……すごいで、ディストさん。ほしたら、僕もこれで行かせてもらうわ!」
リーブが腰を落とし、すべての砲門をディストの頭部へと向けた。
リーブ: 「メダフォース発動……『一斉射撃』!!」
―
――― 十二使徒のリーブ。彼にとってこの戦いは「見極め」であった。
彼は十二使徒としてエデンに協力する引き換えに、故郷:すすたけ村の安全をエデンが保障する約束を取り付けていた。
しかし、フォー・パーツ:ソウスを巡った戦いは起きてしまった。
ハードネステン、もといコスモスの指示により死者こそ出なかったが、そのコスモスもエデンを離れてしまった。
もはや、エデンとの約束は果たされない、とリーブは考えた。
だからと言って、ここでリーブがエデンを抜けたところで事態は好転しない。
コスモスのようにラヴドに寝返ったところで、ラヴドも信用ならない。
ならば『この戦争を早急に終わらせるしかない』。これがリーブの結論であった。
今回のノアの箱舟によるラヴド襲撃で、エデンが戦争の覇者になればそれも良し。
この後ラヴドがエデンを打ち倒すならば、それも良し。
ここでリーブがやってはならない事。
それは『両軍の戦力バランスを拮抗させて戦争を長引かせる事』であった。
このままエデンの十二使徒としてエデンを勝利させるか。
ラヴドの仲間となり、ラヴドを勝利させるか。
その「見極め」の為に、彼は全身全霊をラヴドの精鋭との戦いにそそいでいた―――
―
互いに全出力を一点に収束させ、最後にして最大の激突が始まった。
ディストは光り輝く爪を振り上げ、リーブは全砲門から火を噴く。
――ズ、ドォォォォォォォォォンッ!!
会場全体を白一色の閃光が塗り潰した。
爆鳴が止み、ゆっくりと砂煙が晴れていく。
そこに立っていたのは、左腕と両脚を失い、ボロボロになりながらも……
頭部装甲を『残り1』という奇跡的な耐久値で残したリーブの姿だった。
対するディストは、直撃したミサイルの衝撃で頭部パーツを完全に粉砕され、膝からゆっくりと地面に倒れ伏した。
リーブ: 「……ハァ、ハァ……。ホンマに……、ホンマにギリギリやわぁ……」
(これだけの実力者がいてはるならラヴドにつくのも……いや、他の皆さんの戦力も見なアカンかな、やっぱり)
リーブはガクンと力を抜き、機能停止したディストを敬意の籠もった目で見つめた。
そして、遥かかなた、故郷のすすたけ村に思いを馳せる。
リーブ:(待っとってくださいね皆さん。この戦争、すぐに終わらせますから)
第一回戦:ディスト VS リーブ
《勝者:リーブ》
――――同時刻、ノアの箱舟・甲板。
眼下で行われている死闘の地響きが、分厚い床板を越えてここまで伝わってくる。
だが、この場所だけは、戦場の熱狂とは完全に切り離された「異次元の静寂」に包まれていた。
ヴァレン: 「ゼェ、ゼェ……。何気に、今の『わりばし』は重かったぜ……」
タイン: 「ハァ、ハァ……。お前こそ、さり気にいい角度で攻めてきやがる……」
ヴァレンとタイン。二機の
タイン: 「さぁ、さり気に次に行くぜ! 第一回戦のお題は……『あるあるネタ』だ!!」
ヴァレン: 「上等だ、何気にな!!」
今から一回戦が始まるのであれば、その前のやりとりは一体何だったのか?
それは誰にも分からない。
彼ら自身にもである。
タイン: 「まずは俺からだ!! ……『 小学校の時、鉄格子を見つけると、必ず『俺は無実だぁぁぁ!』と叫ぶ 』!!」
ヴァレン: 「グハァッ……!!?」
ヴァレンの胸部装甲が、ありもしない衝撃に激しく軋んだ……かのように錯覚させる、大仰なリアクションを披露した。
ヴァレン: 「な、何気に……あるあるじゃねえか……!! クッ、やるな……。ならオレはこれだ!!
……『 髪を染めるなと怒っている先生の頭が、何気に『白髪染め』なのを見て納得がいかない 』!!」
タイン: 「ガハァァァァッ……!!! ぐ、あるあ……ねーよッ!! だが、さり気にその理不尽さ、俺の心に刺さったぜ……!!」
何の意味もない。まったく勝敗に関係ない。
だが、二機の瞳には、地上の戦争を忘れるほどの「真剣なバカの炎」が燃え盛っていた。
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[機体解説]
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【キャラクター名】
リーブ
【機体名】
メタル・ビートル
【公式/オリメダ区分】
公式(ほぼ全てのメダロット作品)
【モチーフ(型式)】
カブトムシ型メダロット(KBT)
【パーツ】
[頭部]
メタミサイル/ミサイル(うつ)
[右腕]
メタリボルバー/ライフル(ねらいうち)
[左腕]
メタマシンガン/ガトリング(うつ)
[脚部]
オチツカー/二脚
【備考】
公式(メダロットDS)情報を参照
右腕はDS以降の名称となっており、第二十三話で大会商品になっていたものとは別物である
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第三十六話【The Man with the Machine Gun】終わり