第三十八話【片翼の天使】
第二回戦、決着。
極端な加熱と冷却を利用した連撃によって勝利を掴み取ったローラが、傷ついた身体でステージを降りてくる。
仲間たちのもとへ戻ろうとする彼女の前に、一機の影が立ち塞がった。
ブラックスタッグの竜だった。
特徴的な猫背をさらに深くし、上目使いでローラを見つめている。そのポーカーフェイスからは、隠しきれない不満が滲み出ていた。
竜:「……納得がいきませんね。もし私が、ローラさんのファイヤー攻撃について知っていれば……と思うと、はっきり言って悔しいです……」
十二使徒としての意地ではない。
単純に、負けたことが悔しいのである。
ローラ:「……ほう。では、そのことを知っていれば妾に勝てたと思うのか?」
竜:「思います。勝てます」
ローラの目が鋭くなる。
竜も一歩も退かない。
二機の間に、先ほどとは別の意味で火花が散り始めた。
リーブ:「あわわわ……エライこっちゃ……」
困り果てたリーブが二機を交互に見る。
リーブ:(お竜さんって、たまに子供っぽいから困るわぁ~……)
その時、それまで黙っていたレッドが音もなく一歩前へ出た。
レッド:「…………ダメ…………」
短い一言だった。
だが、それだけでローラと竜の動きが止まる。
ローラ:「…………」
竜:「…………」
紅い目で見つめるレッドを前に、二機はしばらく沈黙した。
ローラ:「……すまなかった」
竜:「はい……私も申し訳ありませんでした」
あっさりと収まった。
ローラは気を取り直すと、次に控えていた青い機体へ振り返る。
ローラ:「……さあ、次だ。ワンダ、行けるな?」
ワンダ:「……うん。任せて! ローラが繋いでくれたチャンス、無駄にはしないわ」
ワンダは力強く頷き、残された片翼を翻してステージへ向かった。
その傍らでは、ディストがリーブの持つ競技用ピストルを羨ましそうに眺めている。
ディスト:「ねぇねぇ、そのピストル、僕が鳴らしてもいいかな?」
リーブ:「ん? やりたいんやったら、ディストさんがやってもかまへんで」
ディスト:「やった~!」
ディストは無邪気な笑顔でピストルを受け取ると、大切そうに両手で構えた。
―
三回戦:ワンダ VS ナギサ
ステージ中央へ進み出たワンダの正面で、パーティクルのナギサは目を閉じたまま鼻歌を歌っていた。
ナギサ:「フンフンフンフン♪ ……フンフンフン、フフ~ン♪」
ワンダ:「…………」
ナギサ:「……嗚呼、やはり歌はいいね。魂の……ソウルの震えを感じるよ」
ワンダ:(……こりゃまた、とんでもなく変な人が来ちゃったわね)
ワンダが半ば呆れながら様子を窺っていると、ナギサがゆっくりと目を開いた。
爽やかな微笑み。
だが、その視線はワンダの顔ではなく、左腕へ向けられていた。
黄金の輪を持つフォー・パーツ。
『ソウス』。
ナギサ:「やあ、待っていたよ。ワンダエンジェルさん。僕はナギサ。パーティクルのナギサだ」
ナギサが優雅に一礼する。
ナギサ:「君と同じく、神の使いたる天使をモチーフにしたメダロットさ」
ワンダ:「どうも、ナギサさん。私のことはワンダでいいわよ」
しかしナギサは返事をせず、慈しむような眼差しでワンダの姿を見つめていた。
ナギサ:「……片翼の天使」
ワンダ:「はい?」
ナギサ:「本来、君の左右にあるべきだった白き翼。その一方を切り離し、フォー・パーツの力をその身へ宿したのか」
ナギサは詩でも詠むかのように続ける。
ナギサ:「けれど、その力があれば……君は片方だけの翼でも、『絶対的自由』という名の大空を飛び回ることができるんだね……」
ワンダ:(ぶっちぎりでヤバイ人に当たったーーーーッ!! ツッコミたいけど、なんか雰囲気がツッコミづらいぃぃ!!)
その時。
――バァンッ!!
ディストが嬉々として引き金を引いた。
乾いた号砲が競技場へ響き渡る。
ロボトル開始。
ワンダはすぐさま左腕のソウスを構えた。
ナギサ:「……さあ、始めようか」
ナギサは両腕を静かに広げる。
ナギサ:「運命……デスティニーを紡ぐ、悲しき舞踏を」
ワンダ:(……この人、本当に戦う気あるの?)
ナギサから殺気は感じられない。
それどころか、まるで戦場にいること自体を悲しんでいるような、奇妙な静けさがあった。
ワンダ:(でも……油断はできない!)
先にワンダが仕掛ける。
ワンダ:「はあああぁぁぁッ!!」
左腕のソウスから、黄金のレーザーが放たれた。
一直線にナギサへ迫る光。
だが、ナギサは避けない。
ナギサ:「……リジェネレート」
掌を前へ向ける。
淡い虹色の障壁がナギサを包み込んだ。
直後。
――キィィンッ!!
ワンダ:「えっ!?」
レーザーが弾かれた。
正確な角度で反射した光が、今度は放った本人であるワンダへ襲いかかる。
ワンダ:「キャッ……!!」
辛うじて身体を捻るが、跳ね返されたレーザーが胸部装甲を掠め、表面を焼いた。
ワンダ:「嘘……今の、私の攻撃……?」
ナギサ:「フフフ……」
ナギサは春風のような笑みを浮かべる。
ナギサ:「……心の壁さ」
―
ディスト:「ココロノカベ……?」
竜:「ただの反射行動です」
―
ナギサ:「戦いとは、常に自分自身を傷つける行為だ。君の放った憎しみの光は、そのまま君へと還る悲しみの円環……」
ワンダ:「…………」
ナギサは攻撃してこない。
ワンダの攻撃を、ただ返すだけだった。
ワンダ:「だったら……!」
ワンダが一気に加速する。
ワンダ:「防ぎきれない角度から叩き込むまでよッ!!」
右。
左。
頭上。
高速で移動しながら、ソウスから次々とレーザーを放つ。
反射障壁がそれらを跳ね返していく。
しかし。
ナギサ:「……!」
障壁を展開する僅かな隙。
そこへワンダの一撃が突き刺さった。
――ズガァンッ!!
ナギサの肩口が大きく抉れ、装甲の奥から内部フレームが覗く。
ワンダ:「手応えあり……!!」
ナギサ:「……痛み」
ナギサは傷口へ視線を落とした。
ナギサ:「嗚呼……やはり戦いとは、悲劇の象徴だ」
その身体が組み変わる。
ナギサ:「……メダチェンジ」
人型だったパーティクルが、重厚な戦車型へと姿を変えた。
ナギサ:「巡りし時の癒し……『継続リペア』」
淡い光がナギサを包み込む。
抉られていた肩の装甲が、見る間に修復されていった。
ワンダ:「なっ……!」
ワンダは再びソウスを撃つ。
ナギサは通常形態へ戻り、反射。
攻撃を受ければメダチェンジし、継続リペア。
そして再び反射。
ワンダ:「くっ……!」
何度攻撃しても。
返される。
傷つけても。
癒される。
その繰り返しだった。
ワンダ:「ハァ……ハァ……っ! なんなのよ、アンタ……!!」
自分自身のレーザーを何度も受け、ワンダの青い装甲には無数の焦げ跡が残っている。
ワンダ:「戦うつもり……ないわけ!?」
ナギサ:「平和を望むなら、まず自らが銃を取るのを止めることだ」
ナギサはいつもの笑みを崩さない。
ナギサ:「僕は誰も傷つけない。ただ平和への道を歩んでいるだけだよ。……そうだろう?」
ワンダ:「…………」
ワンダの目つきが変わった。
ワンダ:「……ふざけないで」
ナギサ:「…………?」
ワンダ:「アンタの言ってることは、ただの『拒絶』だわ」
ワンダの声に怒りが混じる。
ワンダ:「自分から攻撃しないってことは……他の誰かに、その『汚れ仕事』を任せてるってことでしょ!?」
ナギサ:「…………」
ワンダ:「自分が傷つかない場所から平和を語るなんて、ただの卑怯者よ!!」
ワンダは左腕を強く握り締めた。
ワンダ:「私は、自分の手を汚さず、高みの見物で手に入れる平和なんて御免だわ!」
ソウスが光を増していく。
ワンダ:「たとえこの手が泥にまみれても……私は、自分の力で、自分の意志で平和を掴み取りたいのよッ!!」
ナギサの笑みが僅かに消える。
ワンダ:「アンタのその澄ました『偽りの安寧』……私自身の命を懸けて、撃ち抜いてやるわッ!!!」
ワンダの身体から、異常な光が溢れ始めた。
ナギサ:「…………?」
青い装甲の隙間から、黄金の光が漏れ出していく。
ワンダ:「見てなさい……!」
ワンダは叫ぶ。
ワンダ:「私がこの手を汚すのは、誰かを守り抜くため! 綺麗事だけのアンタには……絶対に負けないッ!!」
かつて。
ワンダは戦うことのできない自分を恥じていた。
誰かが傷ついてから癒すことしかできない。
それが、ずっと悔しかった。
だからこそ。
彼女はフォー・パーツ『ソウス』を求めた。
癒しの力を、戦うための力へ変えるために。
誰かが傷ついてから救うのではなく。
傷つけられる前に、自分自身の手で守るために。
目の前のナギサは、その選択を否定している。
それが、ワンダの中に眠っていた闘争心に火をつけた。
背中に残されていた唯一の白い翼が、黄金の粒子となって崩れ始める。
ワンダ:「…………!」
翼だけではない。
装甲。
フレーム。
腕。
指先。
ワンダの全身が、次々と光へ変わっていった。
――シィィィィィィィィンッ!!
黄金の光がコロシアムを満たす。
やがて、その中心から現れたのは。
機械の身体を持たない、人型の光。
ワンダは自身の肉体すべてを『癒しのエネルギー』へと変えていた。
ナギサ:「……!!」
ナギサの表情に、初めて明確な動揺が現れる。
光となったワンダの左腕。
そこに存在していたソウスの輪郭が、黄金の光の中でさらに強く輝いた。
癒しのエネルギーがフォー・パーツ『ソウス』によって、光学エネルギーへと変換されていく。
ナギサ:「君は……」
ナギサが息を呑む。
ナギサ:「自らの実体を捧げ物にして、神の領域へ踏み込むつもりかい……?」
ワンダ:「…………」
ナギサ:「あまりにも危険……デンジャラスだ。そんなことをすれば、君の意識ごと大空へ霧散してしまう!」
だがワンダは止まらない。
ワンダ:「……私は、傷ついてから癒すんじゃない」
黄金の光がさらに膨れ上がる。
ワンダ:「誰かが傷つく前に、戦いを終わらせるためにこの力を使うんだ!」
完全に光学エネルギーへ変換された身体。
今のワンダは『意志をもったレーザー攻撃』そのものだった。
ワンダ:「ここでアンタを……その『心の壁』ごと貫いて、分からせてやる!」
黄金の光が加速する。
ワンダ:「……最大出力ゥゥッッ!!!!」
ワンダそのものが、一筋の巨大なレーザーとなってナギサへ向かった。
―
――――同時刻、巨大戦艦『ノアの箱舟』・甲板。
階下から突如として黄金の光柱が突き抜けてきた。
タイン:「……!?」
親父ギャグの応酬を続けていたタインが振り返る。
タイン:「なんだ……? あの、さり気ねぇ光は……ッ!」
その隣でヴァレンの表情が変わった。
ヴァレン:「…………」
黄金の光を見つめる。
ヴァレン:「ワンダのヤツ……何気に無茶をしていなければいいが」
タイン:「さり気に、どういうことだ?」
ヴァレン:「ワンダは何気に特殊な個体でな。自分自身の装甲やフレームを、『癒しのエネルギー』に変えることができる」
ヴァレンが目を細めた。
ヴァレン:「それをソウスのエネルギー変換へ突っ込んで……全身を純粋な『光学エネルギー』へ変えてやがる」
タイン:「全身を……?」
ヴァレン:「あぁ」
ヴァレンの脳裏に、過去の光景が蘇る。
宝条ルクが死の淵にあった時、ワンダの目から流れ落ちた一滴の『涙』。
アイセンサーの一部を『癒しのエネルギー』へ変えて生まれたその一滴は、消えかけていたルクの命を、ほんの僅かな時間だけ繋ぎ止めた。
ヴァレン:「…………」
もし。
あの時。
今ほど膨大な『癒しのエネルギー』をワンダが使えていたなら。
ルクは。
ヴァレン:「…………」
ヴァレンは勢いよく首を横へ振った。
ヴァレン:「……いや」
もしワンダが全身を癒しのエネルギーへ変え、そのすべてをルクへ注いでいたなら、今度はワンダ自身が消えていた。
そんなものを、ルクが望むはずがない。
ヴァレン:「……ちゃんと元に戻れるように、力を制御できるようになってればいいんだが」
ヴァレンが黄金の光を見上げる。
ヴァレン:「まさか何気に、後先考えずにやってるわけじゃねぇよな……」
タインも黙り込んだ。
ワンダが一歩間違えれば消滅する可能性がある。
さすがのタインも笑えない話だった。
沈黙。
重い空気。
そして。
ヴァレンが動いた。
タイン:「……?」
タインの死角へ一瞬で回り込む。
ヴァレン:「『 ロ シ ア の 殺 し 屋 恐 ろ し や 』ッッッ!!!!! (エコー付)」
――ズ、ドォォォォォォォォォンッ!!
タイン:「グ、グハァァァァァッ!!?」
タインが胸を押さえて転がる。
タイン:「さ、さり気に……不意打ちはきたねえぞ、テメェッッ!!」
ヴァレン:「何気に勝負に綺麗も汚いもねぇ!」
コロシアムでは一人の少女が消滅の危機に瀕している。
その真上では二機のバカが相変わらず不毛な死闘を続けていた。
―
ワンダ自身、自分の身体に何が起こっているのか、完全には理解していなかった。
戦いが終わった後、元へ戻れる保証もない。
この能力が発現したのは、今回で三回目だった。
一回目。
宝条ルクが死の淵にあった時。
二回目。
すすたけ村で、フォー・パーツ『ソウス』を手に入れた時。
これまで変化したのは、いずれもアイセンサーのごく一部だけだった。
慈悲の心によって、一滴の『涙』として、癒しのエネルギーへ変化した。
しかし、今回は違う。
これまでにない闘争心。
一級兵士となってからの成長。
極限の緊張。
さまざまな要因が重なった結果、暴走にも近い形で、ワンダの全身が『癒しのエネルギー』へ変貌した。
そして、フォー・パーツ『ソウス』によって。
その力すべてが『光学エネルギー』へ変換されている。
黄金の光がナギサへ迫る。
ナギサ:「…………」
ナギサは逃げなかった。
むしろその場へ踏み止まった。
ナギサ:「……リジェネレート」
障壁が展開される。
これまで何度もワンダのレーザーを跳ね返してきた。
『反射』。
ナギサが最後に選んだのも、やはりその力だった。
――ズゥゥゥゥゥゥゥンッ!!
激突。
巨大な黄金のレーザーと化したワンダが、反射障壁へ真正面から衝突する。
ナギサ:「ぐっ……!!」
ナギサの両脚がステージへ沈む。
障壁が軋む。
表面へ、幾筋もの亀裂のような光が走った。
それでもナギサは解除しない。
ナギサ:「……嗚呼」
押し寄せる光の中、ナギサが目を細める。
ナギサ:「痛い……。君の心が、直接僕の奥底へ語りかけてくるよ……」
ワンダ:「うああああぁぁぁぁぁッ!!」
ナギサ:「そうか……」
ナギサの笑みが変わる。
いつもの耽美な微笑みではない。
どこか納得したような笑顔だった。
ナギサ:「この決意……ディタミネーションが、僕に足りなかったものなのかもしれない」
―
十二使徒・ナギサ。
彼にとってこの戦いは「忌むべきもの」だった。
ナギサは平和主義者である。
たとえ今回の五番勝負が、十二使徒たちの善意や友情によって用意されたものであったとしても。
戦いによってコスモスの運命を決める。
その行為自体にナギサは嫌悪感を抱いていた。
そもそもエデンへ所属していることさえ、彼自身の望みではない。
半ば脅されるような形で十二使徒へ加えられた。
それでもナギサは抵抗しなかった。
それが『運命』なのだと受け入れたから。
自ら何かを変えようともせず傍観者としてここまで生きてきた。
だが目の前の少女は違う。
片翼となってでも戦うための力を選んだ。
癒しの力さえ自らの意志で攻撃の力へ変えた。
運命を受け入れるのではなく、自分自身で変えようとしている。
ナギサは生まれて初めて思った。
他者の『運命』へ。
自らの意志で干渉してみたいと。
この戦いは彼にとって忌むべきもの「だった」。
だが、今、それは、彼自身の『運命の分岐点』へ変わった。
―
反射障壁が激しく明滅する。
ワンダ:「うあああああぁぁぁぁッ!!!」
黄金の光が押し返され始めた。
レーザーそのものとなったワンダの軌道が、少しずつナギサから逸れていく。
ワンダ:「なっ……!?」
ワンダ自身が反射されていた。
――キィィィィィィィンッ!!
黄金の光が大きく弾かれる。
コロシアムの反対側へワンダの全身が吹き飛ばされた。
ワンダ:「あああぁぁぁぁぁぁッ!!」
ステージの上を光が転がる。
その瞬間、黄金の光の中に青いものが混じった。
ナギサ:「…………!」
腕。
肩。
胸部。
エネルギーだったはずのワンダの一部が、僅かに実体へ戻っている。
ワンダ:「う……」
しかし完全ではない。
片腕の先はまだ光のまま。
脚部も黄金の光となって崩れ続けている。
ワンダ:「な……に……これ……」
ナギサが駆け出した。
ワンダ:「……ナギサ……さん……?」
ナギサ:「儚い……イフェメラルだ、ワンダ」
ナギサがワンダの身体を抱き止める。
ナギサ:「君は自らの手で戦うことを選び……そして今、自らという存在……イクジスタンスを失おうとしている」
光と実体の境界が少しずつ崩れていく。
ナギサ:「……けれど」
ナギサは微笑んだ。
ナギサ:「僕はやはり、実体を持って大空を舞う君の方が好きだよ」
右腕をワンダへ向ける。
ナギサ:「『
光がワンダを包む。
全身を侵食していた異常なエネルギー化。
それが少しずつ止まっていく。
反射によって一度実体へ戻った部分を起点に、正常な身体とエネルギー化した身体との境界が押し戻され始める。
ワンダ:「……!」
だがまだ足りない。
すでに失われた部分までは戻らない。
ナギサは左腕を重ねる。
ナギサ:「そして……」
光がさらに強くなる。
ナギサ:「『
失われていた輪郭が再び形を取り始めた。
腕。
脚。
装甲。
フレーム。
黄金の光だった部分が次々と青い身体へ戻っていく。
反射によって生まれた僅かな実体。
ナチュライズによる異常状態の解除。
そして。
カウントラクトによる強制的な再構成。
三つの力が重なり、消滅しかけていたワンダの身体が無理矢理、現実へ引き戻されていく。
――シィィィィィィィィン……。
やがて黄金の光が消えた。
ワンダ:「…………」
ナギサの腕の中、そこには元の青い身体を取り戻したワンダがいた。
欠損していた部分も修復されている。
完全な実体。
完全な身体。
ただ精神的な消耗だけは、どうしようもなかった。
ワンダ:「……ハァ……ハァ……」
ワンダは力なくナギサへ身体を預ける。
ナギサ:「……紙一重だったね」
ナギサが静かに言う。
ナギサ:「君の
ワンダ:「……なんで……」
ワンダが弱々しく顔を上げる。
ワンダ:「なんで、私を助けたの……?」
ナギサはワンダをゆっくりとステージへ座らせた。
そして、いつもの春風のような笑みを浮かべる。
ナギサ:「……君とは異なるけれど」
ナギサが自らの腕を見る。
ナギサ:「これが、僕なりの覚悟さ」
ワンダ:「…………」
ナギサ:「自ら『死』へ向かう者に、『生』を与える」
穏やかな声だった。
ナギサ:「僕は自ら『手を汚す』ことはないのかもしれない」
そしてワンダを見る。
ナギサ:「だけど……君の手が汚れた時、それを『浄化』……ピューリファイすることはできる」
ワンダ:「…………」
それはワンダの言葉に対する、ナギサなりの答えだった。
相手を傷つけるためではなく、相手を救うために、自分から手を伸ばす。
それもまた、彼が選んだ戦い方だった。
ワンダ:「……ナギサさん」
ナギサ:「うん?」
ワンダ:「私、最初はアンタのこと……変な奴って思ってたけど」
ナギサ:「…………」
ワンダ:「……結構、いい男ね」
ワンダが力なく笑った。
ワンダ:「……私の負けだわ」
ナギサの目が僅かに見開かれる。
そして。
ナギサ:「……ありがとう、ワンダ」
静かに頭を下げた。
ナギサ:「僕はまた、自らの未熟さを知ることができた」
第三回戦:ワンダ VS ナギサ
ワンダの戦意喪失により、《勝者:ナギサ》
通算成績。
ラヴドL班、一勝。
十二使徒、二勝。
後がなくなったL班の前に。
更なる宿命が立ちはだかろうとしていた。
第三十八話【片翼の天使】終わり
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[機体解説]
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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【キャラクター名】
ナギサ
【機体名】
パーティクル
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット4など)
【モチーフ(型式)】
大天使型メダロット(AAG)
【パーツ】
[頭部]
リジェネレート/反射(とくしゅ)
[右腕]
ナチュライズ/症状クリア(とくしゅ)
[左腕]
カウントラクト/ファーストエイド(せっち)
[脚部]
オリジン/二脚
【変形後】
[変形後ドライブA]
継続リペア(とくしゅ)
[変形後ドライブB]
自己修復(とくしゅ)
[変形後ドライブC]
カウントアタック(がむしゃら)
[変形後脚部タイプ]
戦車
【備考】
パーティクルは本来女性型メダロットだが、この個体はメダル人格が男のため、本作では男性として扱う。
作品によっては巨大メダロットとして扱われるが、本作では標準サイズのメダロット。
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