第五十二話【VALEN'S RESOLUTION】
――――二年前。
すすたけ村付近の森林。
ラヴド軍の進軍路から少し外れた開けた場所に、百機ほどの精鋭部隊が臨時の野営地を設けていた。すでに日は沈み、兵士たちは翌日の進軍に備えて休息を取っている。
その中央では、ラヴド軍リーダーのアークビートルDが地図を広げ、今後の侵攻経路を確認していた。
アークD:「ふぅ……今日はここで野宿になりそうだな。皆、よくやってくれている」
数々のエデン拠点を突破してきた赤い装甲には、大小いくつもの傷が残っている。それでもアークビートルDに疲労を表へ出す様子はなく、兵士たちも彼の存在を頼りにしていた。
その時、野営地の入口を警備していた一機が突然声を上げた。
『アークビートルD様!! ジョ、ジョーカード様です!! ジョーカード様がお戻りになられました!!!』
アークD:「何だって……!? ジョーカードが!?」
アークビートルDが勢いよく顔を上げる。
N・G・ライトとの戦いが終わって以来、長く姿を消していたかつての戦友。その名を聞いた兵士たちの間にも、瞬く間にざわめきが広がった。
ヴァレン:「何気にもう来てるぜ」
アークD:「……!」
声は、すぐ近くから聞こえた。
パチン、と乾いた音を立ててヴァレンが指を鳴らす。一枚のトランプが何もない空間から舞い落ち、地面へ触れた瞬間に巨大化した。そのカードが霧のように消えると、中から黒と白を基調とした道化師型メダロットが姿を現した。
アークD:「……やあ、久しぶりじゃないか、ジョーカード!」
アークビートルDの表情が明るくなる。
アークD:「相変わらず派手な登場だな。……生きていてくれたか」
心から再会を喜び、アークビートルDはヴァレンへ歩み寄った。
しかし、肩へ手を置こうとして、その動きが止まる。
アークD:「……ジョーカード?」
ヴァレンの紅い目には、再会を喜ぶ色がなかった。
アークD:「どうしたんだ、そんな顔をして。何かあったのか?」
ヴァレン:「…………」
ヴァレンは一度だけ視線を逸らした。
目の前にいるのは、自分を救い、鍛え、生きる道を与えてくれた恩人だった。だからこそ、これから話すことから逃げるわけにはいかなかった。
ヴァレン:「アークDさん……何気に話したいことがあるんだ」
アークD:「話?」
ヴァレン:「誰にも聞かれたくねぇ。……悪いけど、少し付き合ってくれねぇか」
アークビートルDはヴァレンの様子をしばらく見つめると、静かに頷いた。
アークD:「分かった」
そして、部下たちへ振り返る。
アークD:「私はジョーカードと少し話をしてくる。皆はここで休んでいてくれ。誰もついて来る必要はない」
『了解しました!』
ジョーカードが帰還したという報告は、まだこの野営地の中だけに留まっていた。本部への正式な連絡が行われる前に、二機は兵たちから十分な距離を取り、森の奥へと入っていった。
―
野営地の明かりも声も届かない森の奥で、ヴァレンが足を止めた。
しばらくアークビートルDへ背を向けたまま黙っていたが、やがて重い口を開く。
ヴァレン:「……実はな」
アークD:「…………」
ヴァレン:「今、俺は何気にエデンにいるんだ」
アークD:「……何だって?」
アークビートルDの表情が変わった。
アークD:「エデンだと? ジョーカード、君は……何を言っているんだ」
ヴァレンは振り返らない。
ヴァレン:「カヲスって奴と出会った。今のエデンを復活させた張本人だ」
アークD:「…………」
ヴァレン:「俺は正体を隠して、そいつのところに潜り込んだ。そして今は、カヲスと一緒にN・G・ライトが遺した『DISAPPEARANCE』を研究してる」
アークD:「……!」
ヴァレン:「過去に起きた事実そのものを消す、とんでもねぇ代物だ」
ヴァレンが自嘲するように笑う。
ヴァレン:「何気に俺は、アンタたちを裏切って、世界をひっくり返しかねない機械の研究へ手を貸してたってわけだ」
アークビートルDは何も言わなかった。
ヴァレンも言い訳をしない。
潜入には理由があった。『D』について知る必要もあった。
だが、エデンの敵として戦い続けるアークビートルDから見れば、自分が禁忌の研究へ協力していたという事実は変わらない。
長い沈黙の末、アークビートルDが口を開いた。
アークD:「……ジョーカード」
ヴァレン:「…………」
アークD:「もし、それがすべて本当のことなら……私は君を殺さなければならない」
静かで、迷いのない声だった。
ヴァレンはようやく振り返る。
ヴァレン:「……何気に、そう言うと思ったぜ」
アークD:「…………」
ヴァレン:「アンタに鍛え上げてもらったこの力で、アンタを騙し続けたままカヲスの隣で研究を続けるなんて……何気に筋が通らねぇよな」
ヴァレンが両腕を構える。
ヴァレン:「だから、来た」
アークビートルDも構えを取った。
ヴァレン:「さぁ、
アークD:「…………!」
ヴァレン:「何気にこれが、俺なりの『ケジメ』だ」
二機は互いから目を逸らさなかった。
かつて同じ敵と戦い、ラヴドという組織を共に支えた師と弟子が、今は敵として真正面から向き合った。
―
アークビートルDの頭部『アペンディクス』が光を放った。
直後、高出力レーザーが夜の森を貫く。
ヴァレン:「……ッ!」
ヴァレンは直前に横へ飛び、射線から逃れる。レーザーは背後の大木を焼き抜き、そのさらに奥まで一直線に森を切り裂いた。
ヴァレン:(何気に……冗談じゃねぇ威力だぜ)
ヴァレンがトランプ型の煙幕を撒きながら木々の間を移動する。
しかし、アークビートルDはそれだけでは惑わされない。
右腕『スカッター』から放たれた射撃が、ヴァレンの進路を先回りするように次々と地面を撃ち抜いた。
ヴァレン:「相変わらず何気に容赦ねぇな!」
アークD:「どうした、ジョーカード!」
アークビートルDが追撃を続ける。
アークD:「私を殺す覚悟はその程度か! 正道を外れたというのなら、せめて私を納得させるだけの牙を見せてみろ!!」
ヴァレン:「言われなくても……!」
アークビートルDの機体構造が変化する。
『メダチェンジ』。
二脚形態から車両形態へ変形すると、そのまま森の中を猛烈な速度で駆け始めた。
複数の砲門から一斉に放たれる攻撃を、ヴァレンは何度も紙一重でかわしていく。ヴァレンも隙を見て反撃するが、互いの戦い方を知っている二機だからこそ、一つの判断の遅れがそのまま致命傷になり得た。
二機の戦いは、夜が深まっても終わらなかった。
―
数時間後。
ヴァレンとアークビートルDの装甲は、どちらも原形を保つのが難しいほど傷ついていた。アークビートルDの冷却機構は限界近くまで熱を持ち、ヴァレンの破損箇所からもオイルと冷却液が滴っている。
ヴァレン:「ハァ……ハァ……。これで何気に……最後だ」
アークD:「……ああ」
アークビートルDも最後の力を振り絞る。
アークD:「来い、ジョーカード。私と君、どちらに理があるのか……運命に問おう」
二機が同時に動いた。
ヴァレンは残されたすべての力を両腕へ集中させる。
『サクリファイス』。
自身の腕を犠牲にして放つ、捨て身の攻撃。
アークビートルDも、ヘラクレスオオカブトを思わせる巨大な角を正面へ向け、最後の突進へ入った。
ヴァレン:「うおおおおおおおおッ!!」
アークD:「はあああああああッ!!」
二機が正面から激突する。
――ズドォォォォォォォォンッ!!
ヴァレンの両腕が爆ぜ、その破壊力がアークビートルDの胸部を正面から貫いた。胸部装甲が砕け、その奥にあったメダルまでサクリファイスの一撃が到達する。
同時に、アークビートルDの巨大な角も、回避を捨てたヴァレンの腹部へ深く突き刺さった。
その先には、ヴァレン自身のメダルがある。
二機の身体が、互いの攻撃によって動きを止めた。
ヴァレン:「……な、何気に……相打ち……か」
ヴァレンが掠れた声を漏らす。
アークビートルDの角は、ヴァレンのメダルを真っ二つに割っていた。その衝撃で、装着されていた『白メダリア』が外れ、夜の草むらへ落ちていく。
一方のアークビートルDも、すでに致命傷を負っていた。
ヴァレンのサクリファイスは、そのメダルまで完全に破壊していた。
アークD:「……ジョーカード」
ヴァレン:「…………」
アークビートルDが最後の力で腕を上げ、弟子の肩を掴む。
アークD:「……強くなったな」
ヴァレン:「アークD……さん……」
アークD:「君が歩もうとする道に……光があらんことを……」
それが最後の言葉だった。
アークビートルDの腕から力が抜け、その身体が動かなくなる。
ラヴドを率いてきたアークビートルDは、ここで完全に死亡した。
そして、本来ならばヴァレンも同じ結末を迎えるはずだった。
メダロットにとって、メダルの破壊は死を意味する。ましてやヴァレンのメダルは、真っ二つに割れている。
ヴァレン:(……終わり……か……)
意識が薄れていく。
しかし、その時だった。
ヴァレン:(……?)
割れたメダルが光り始める。
金色と銀色、そして漆黒の輝きが互いに絡み合い、ヴァレンの内部から溢れ出した。
ヴァレン:(何気に……何だ……これ……)
破壊されたはずのメダルが、砕けて消滅するのではない。
ヴァレン:(分かれて……いく……?)
次の瞬間、凄まじい衝撃がヴァレンの身体から放たれた。
一つだったメダルが、二つのメダルと一つのメダリアへ分かれていく。
『理性』を宿したカブトメダル。
『本能』を宿したクワガタメダル。
そして、ヴァレンが持っていた強大な力の一部が凝縮された『黒メダリア』。
何故、このようなことが起きたのかは誰にも分からない。そもそも、本来ならこの時点でヴァレンは死んでいるはずだった。
だが、異変はそれだけでは終わらなかった。
カブトメダルとクワガタメダルから、金属質の手足が生物のように伸び始める。
メダルを中心に新たな身体が形作られ、一方は黒いカブトムシ型メダロット『ブラックビートル』へ、もう一方は白いクワガタムシ型メダロット『ヘッドシザース』へと変貌した。
後に『クロ』と『シロ』と呼ばれる二機が、この夜に誕生したのである。
だが、二機が同時に目覚めたわけではなかった。
ブラックビートルとなったクロは、地面に倒れたまま動かない。
先に目を開いたのは、ヘッドシザース――シロだった。
シロ:「…………」
白い機体が、ゆっくりと起き上がる。
自分が何者なのか。
何故ここにいるのか。
目の前に倒れている二機が何者なのか。
そのどれも、まだ理解できてはいなかった。
それでも、そのメダルの奥では強烈な衝動だけが動き始めていた。
ヴァレンの『本能』から生まれたシロだけが、月明かりの下で目を覚ました。
それは、メダロットの常識から完全に外れた現象だった。
ヴァレンという存在の異様なしぶとさは、もはや『メダロットあらざる者』とさえ呼べるものだった。
―
アークビートルDとの戦闘が終わってから、ほどなくして複数の足音が森の中へ近づいてきた。
『アークビートルD様!!』
『先ほどの爆発は何です!?』
数時間にわたって続いた激しい戦闘を、野営地の兵たちがいつまでも無視できるはずがなかった。
アークビートルDから待機を命じられていたため、すぐには追わなかった。しかし、最後の巨大な爆発を聞き、ついに何機もの兵士が様子を確認するため森へ入ってきたのである。
やがて兵士たちは、戦闘跡へ辿り着いた。
『…………!』
そこには、動かなくなったアークビートルDが倒れていた。
『アークビートルD様……!?』
『まさか……そんな……!』
一機が慌てて駆け寄ろうとした、その時だった。
『……あれは?』
兵士の視線が、その傍らに立つ白いメダロットへ向いた。
ヘッドシザース――シロ。
その後方には、まだ目覚めていないブラックビートルのクロが倒れている。
『ジョーカード様は……?』
その言葉に反応するように、シロの目が兵士たちへ向いた。
シロ:「…………」
『お前は……何者だ?』
兵士が一歩近づく。
次の瞬間だった。
シロが地面を蹴った。
『なっ――!?』
兵士が反応するより早く、白い刃がその身体を切り裂いた。
『敵襲!!』
『撃て!!』
一斉に攻撃が向けられる。
だが、シロは笑った。
シロ:「ア……ヒャ……」
『……!?』
シロ:「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」
何故戦うのか。
何故殺すのか。
シロ自身にも、そんな理由はなかった。
目の前に相手がいる。
自分には戦う力がある。
ただ、それだけだった。
シロは本能のまま兵士たちへ飛び込み、次々と襲いかかっていった。
最初に森へ向かった兵士たちが戻らない。
それを不審に思った野営地から、さらに別の兵士たちが様子を見に来る。
しかし、その者たちも帰ってこない。
状況を把握できないまま、部隊は少しずつ森の中へ引き込まれていった。
アークビートルDの進軍に付き従ってきた兵士たちは、連日の戦闘によって消耗している。加えて暗い森の中では互いの状況も把握しにくく、何が襲ってきているのかさえ分からなかった。
一方のシロには、躊躇がなかった。
敵味方の区別も、命を奪うことへの恐怖もない。
ただ、自分の中から湧き上がる衝動のまま戦い続ける。
やがて混乱は野営地にまで広がった。
兵士たちは必死に応戦したが、最後まで事態を本部へ伝えることはできなかった。
そして夜が明ける頃。
ジョーカードの帰還を目撃していた進軍部隊から、生きて本部へ戻る者はいなくなっていた。
シロだけが、その殺戮の中で目覚めていた。
クロは、何が起きたのかを知らないまま眠り続けていたのである。
後にクロが目を覚ました時、すでにこの夜の真相を証言できるラヴド兵は一機も残っていなかった。
さらに、ジョーカードが帰還していたという情報も、本部へ正式に報告される前に途絶えていた。
後日、ラヴド本部が把握できたのは、エデン本部へ迫っていたアークビートルDと、その精鋭部隊が全滅したという結果だけだった。
アークビートルDほどの実力者を含む部隊が、エデンの勢力圏で一夜にして壊滅した。
生存者はいない。
そのため本部は、復活したエデンを率いるカヲスによって返り討ちにされた可能性が高いと推測した。
そして年月が経つにつれ、その推測は、
「アークビートルDは、カヲスとの戦いで死亡した」という事実同然の認識へ変わっていった。
実際にアークビートルDを殺したのが誰だったのか。
あの夜、ジョーカードに何が起きたのか。
そして、進軍部隊を全滅させた者が誰だったのか。
その真相は、二年間、誰にも知られることはなかった。
―
ヴァレンの意識が、二年前の記憶から現在へ戻る。
ピー、ピー、ピー……。
機密実験室では、『DISAPPEARANCE』の電子音が規則的に鳴り続けていた。
ヴァレンは一度だけ自分の手を握る。
白メダリア。
そして、先ほど取り戻した黒メダリア。
二つを再びその身へ宿した今、かつての英雄ジョーカードに近い力が戻っている。
しかし、昔話を聞き終えたワンダたちの表情は、それまでとは明らかに変わっていた。
ワンダ:「嘘……」
ヴァレン:「…………」
ワンダ:「嘘よね……ヴァレン……」
ワンダの声が震える。
ワンダ:「アンタが……アークビートルDさんを殺したなんて……」
アークビートルDは、ラヴドの初代リーダー。
その死の真相を、今まで誰も知らなかった。
ディスト:「……リーダーを殺したの?」
ディストも、信じられないようにヴァレンを見る。
ディスト:「どうして……」
ローラは何も言わなかった。
ただダブレストを構え、ヴァレンから目を離さない。
ヴァレン:「……何気に、これが『真実』だ」
ヴァレンは弁解しなかった。
そして再び、『DISAPPEARANCE』の制御パネルへ視線を向ける。
ローラ:「ヴァレン……」
ヴァレン:「…………」
ローラ:「アークD殿を殺し、カヲスと共に禁忌の研究へ手を貸した。……貴様は、そこまでして何をしようとしているのだ」
ローラの声が次第に強くなる。
ローラ:「『D』で何を消すつもりなのだ!?」
ヴァレンがゆっくり振り返った。
ワンダ:「ひょっとして……」
ワンダが恐る恐る口を開く。
ワンダ:「『DISAPPEARANCE』を使って……ルクちゃんの死を消そうとしてるんじゃ……?」
ヴァレン:「…………」
僅かな沈黙の後、ヴァレンが答える。
ヴァレン:「……それじゃあ足りねぇんだ」
ワンダ:「え……?」
ヴァレン:「何気にもっとシンプルに、根元から断ち切らなきゃならねぇ」
ヴァレンが一歩前へ出る。
ヴァレン:「『D』は万能な魔法じゃねぇ。原理は馬鹿でかいタイムマシンみたいなもんだ」
ディスト:「…………」
ヴァレン:「仮にあの日のルクを助けたって、N・G・ライトがいる限り、人類滅亡は起きる。だったら何気にルクは、別の日に別の形で死ぬことになるかもしれねぇ」
ディスト:「じゃあ……!」
ディストが声を上げる。
ディスト:「N・G・ライトの存在を消せばいいんだ!」
ヴァレン:「……甘ぇな、ディスト」
ディスト:「え……?」
ヴァレン:「お前たちは、いいマスターのところにいたから何気に気づかなかったのかもしれねぇ」
ヴァレンの表情から笑みが消える。
ヴァレン:「でも、あの頃の人間ってのは……野良だった俺から見ても、何気に最っ低だった」
ワンダ:「…………」
ヴァレン:「メダロットを物みたいに扱って、負けりゃ殴る。古くなれば平気で捨てる。そんな奴らは何気にいくらでもいた」
ヴァレンは静かに言葉を続ける。
ヴァレン:「N・G・ライトがいなくても、別の誰かが同じことを考えていたかもしれねぇ」
ディスト:「でも……」
ヴァレン:「原因は、一機じゃねぇんだよ」
ヴァレンが『D』を見る。
ヴァレン:「だから何気に、もっとシンプルに考えることにした」
ローラ:「…………」
ヴァレン:「人類滅亡が起きる根元……ルクがあの日、死ぬ運命へ放り込まれることになった原因そのものを消す」
ワンダ:「原因……?」
ヴァレンが足を止める。
ヴァレン:「全メダロットを……何気にこの世から『消滅』させる」
三機の表情が凍りつく。
ヴァレン:「この『D』を使ってな」
ローラ:「……正気か!?」
ローラが声を荒らげる。
ローラ:「全メダロットを消滅させるだと!? そんなことをすれば、お前自身も歴史から消えるのだぞ!!」
ヴァレン:「何気に分かってるさ」
ローラ:「ならば何故……!」
ヴァレン:「数々の人間を不幸にして、ルクまでその渦へ巻き込んじまった『不幸のメダロット』……」
ヴァレンが自分自身を指す。
ヴァレン:「ジョーカードが、最初から存在しなかったことになる」
ワンダ:「ヴァレン……」
ヴァレン:「最高にめでたい話じゃねぇか」
ディスト:「ダメだよ!!」
ディストが叫ぶ。
ディスト:「そんなのダメだ!! ヴァレンは……『ラヴドの英雄』なんだよ!?」
ヴァレンは、しばらく何も答えなかった。
その横顔に狂気も、喜びもない。
ただ、自分の答えをすでに決めてしまった者だけが持つ、静かな表情があった。
「〝ラヴドの英雄〟?」
「そんな称号何気にどうでもいい」
「 オ レ は 〝 宝 条 ル ク た だ 一 人 の 英 雄 〟 に な れ れ ば 」
「… … そ れ で 構 わ な い 」
第五十二話【VALEN'S RESOLUTION】終わり