第五話【Don't be afraid】
クロとシロ。因縁の二機による戦いは、なおも激しさを増していた。
コンクリートの破片が弾け、火花が夜の闇へ散っていく。
シロは一気に距離を詰めると、左腕の『スバル』を斜め上から振り下ろした。
クロは右腕の『マーブラー』を盾代わりに掲げ、その一撃を受け止める。だが、その凄まじい衝撃が足元まで伝わり、地面が爆ぜた。
シロ:「アッヒャッ! いいねぇ、熱いねぇクロぉ! 今の火花、見たかよ? まるで星たちが俺たちの結婚を祝福してくれてるみたいじゃないかぁっ!!」
戦場の中心から数十メートル離れた、瓦礫の陰。
クロの指示に従って退避していた三機のもとまで、シロの狂気じみた絶叫が届いた。
ワンダ:「何、あいつ、発言も怖っ!!」
あまりの発言に、ワンダは思わずツッコミを入れていた。
ディスト:「……あはは。ワンダ、声が大きいよ」
眼前で繰り広げられるクロとシロの戦いに、ワンダとディストは目を奪われていた。
しかし、ローラだけは、三機へ近づいてくる新たな殺気を感じ取っていた。
ローラ:「2人とも、ボーっとしている場合ではないぞ」
ローラが警告したのとほぼ同時に、背後から三つの影が躍り出た。
現れたのは、エデン軍の偵察部隊。『シアンドッグ』、『マゼンタキャット』、『イエロータートル』の三機だった。何らかの任務で、この付近を偵察していたのだろう。
マゼンタキャット:「ラヴドのカス共め、ここでスクラップにしてやる」
マゼンタキャットが鋭い爪を展開する。
ワンダ:「うわわわ……、私、初実戦なんだけど!?」
ディスト:「い、いざとなるとやっぱり怖いな」
ローラ:「案ずるな。訓練通りに動けば負ける相手ではない。……行くぞっ!」
互いを敵と認識した瞬間、両部隊は弾かれたように戦闘を開始した。
エデンとラヴドは、互いの存在を許さない敵同士である。鉢合わせれば、どちらかが死ぬまで戦いは終わらない。それが、彼らにとっての日常だった。
先ほど遭遇した『トゥルース』の二機が、いかに例外的な行動を取ったのかがよく分かる。
真っ先に飛び出したのは、ローラだった。
二級兵士から三級兵士へ降格された経験があるとはいえ、彼女はL班の三機のなかで唯一、実戦経験を持っている。
ローラはスキー型の脚部で地面を滑り、一直線にマゼンタキャットへ肉薄した。
ローラ:「はぁっ!」
鋭い回し蹴りを繰り出すが、マゼンタキャットは紙一重で後方へ跳び、攻撃をかわした。
その着地を狙い、後方にいたシアンドッグがライフルを構える。
シアンドッグ:「もらった!」
ディスト:「させないっ!!」
ディストは持ち前の機動力を生かして二機の間へ割り込み、ローラを狙ったライフル弾を左腕で受け止めた。
左腕パーツが大きく歪み、鋭い痛みが走る。それでもディストは一瞬ひるんだだけで、右腕のビームパーツをシアンドッグへ向けた。
ディスト:「ローラを狙わせるもんか!」
ディストの放ったビームは直撃こそしなかったものの、シアンドッグの脚部をかすめ、その体勢を崩させた。
ディストの援護を受け、ローラはマゼンタキャットを追撃する。凍結の力を宿した右拳が、その腹部を正面から捉えた。
マゼンタキャット:「ぐっ……動けな……い……!?」
マゼンタキャットの全身に白い霜が広がり、駆動系が完全に停止する。
イエロータートルは仲間を援護するため、コンクリートの破片を盾代わりに構えて前進した。
ワンダ:「ローラ、イエロータートルを止めて! 今のうちにディストの傷を治すから!」
ワンダの手から放たれた温かな光が、ディストの傷ついた左腕を包み込む。歪んでいたパーツが、瞬く間に修復されていった。
その間にローラは跳躍し、盾を構えたイエロータートルの背後へ回り込んだ。
ローラ:「ここだっ!」
ローラが背後から強烈な一撃を叩き込む。イエロータートルが大きくよろめき、堅固だった守りが崩れた。
ディストはその隙を逃さず、最大出力のビームを放つため、右腕にエネルギーを集中させる。
ディスト:「これで、決める……!!」
L班の連携が、まさに勝利を決定づけようとした瞬間だった。
――ズ、ドォォォォォォォンッ!!
突如として、背後から凄まじい衝撃波が押し寄せた。
クロの『マーブラー』とシロの『スバル』が激突し、その瞬間に生じた膨大なエネルギーが、周囲一帯へ広がったのだ。
シアンドッグ&イエロータートル&マゼンタキャット:「……えっ?」
ローラ&ディスト:「……ハッ!?」
危険を察知したローラとディストは、咄嗟にその場から跳び退いた。
しかし、すでに体勢を崩していたエデン軍の三機は、回避が遅れた。
直後、クロがシロへ向けて右腕の『マーブラー』を連射する。シロは間一髪で射線から逃れたが、行き場を失った無数の弾丸が、その先にいたエデン軍へ容赦なく降り注いだ。
断末魔を上げる暇すらなく、マゼンタキャット、シアンドッグ、イエロータートルの頭部パーツが木っ端微塵に吹き飛んだ。
シロ:「アッヒャー! 危ねえなぁ! 今の避けてなかったら、俺まであいつらみたいに消し炭だったぜ!」
クロ:「まだまだだ!」
ディスト:「トドメ横取りされた……」
L班の初勝利を決めるはずだったビームを放つ機会を失い、ディストは力なく呟いた。
その声は、なおも続くクロとシロの戦闘音にかき消された。
こうしてL班の初陣は、因縁の二機が持つ規格外の力を思い知らされる形で幕を閉じた。
全身に傷を負ったクロとシロは、互いに銃口と剣先を向けたまま動きを止める。
先ほどまで剥き出しになっていたクロの殺気は、いつの間にか影を潜めていた。彼女が口を開いたとき、その声は普段の落ち着きを取り戻していた。
クロ:「……ふぅ。お互い、これ以上は無理ですね。パーツの限界です」
シロ:「95戦……95引き分け。……アヒャヒャ! 最高に楽しかったぜ、クロ!!」
クロ:「……次こそは、終わらせます」
二機が戦うのは、今回で九十五度目。そして、そのすべてが引き分けに終わっていた。
シロは満足げに笑うと、闇に溶け込むようにして、その場から去っていった。
シロを見送ったワンダたち三機は、班長のあまりにも桁外れな強さを前に、すっかり力が抜けていた。
第五話【Don't be afraid】終わり
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[今回新しく登場したメダロット]
【マゼンタキャット/シアンドッグ/イエロータートル】
エデン軍の偵察部隊。L班との戦闘中、クロとシロの衝突による「災害」に巻き込まれ、瞬時に頭部を破壊された、かわいそうな三機。
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[機体解説]
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【キャラクター名】
ワンダ
【機体名】
ワンダエンジェル
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット2、4など)
【モチーフ(型式)】
天使型メダロット(ANG)
【パーツ】
[頭部]
チェラブボディ/フォースドレイン(ぼうがい)
[右腕]
チェラブハンド/回復(なおす)
[左腕]
チェラブアーム/復活(なおす)
[脚部]
チェラブレッグ/飛行
【備考】
チェラブボディはメダロット2ではフォースダウンだが、本作ではメダロット4のフォースドレインを採用
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【キャラクター名】
ディスト
【機体名】
ディストスター
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット3、4など)
【モチーフ(型式)】
ザリガニ型メダロット(RAY)
【パーツ】
[頭部]
バックビーム/ビーム(うつ)
[右腕]
アウェイビーム/ビーム(うつ)
[左腕]
フリービーム/ビーム(ねらいうち)
[脚部]
ストリートバギー/車両
【変形後】
[変形後ドライブA]
ビーム(うつ)
[変形後ドライブB]
ビーム(うつ)
[変形後ドライブC]
ビーム(ねらいうち)
[変形後脚部タイプ]
車両
【備考】
メダチェンジをまだ使いこなせていないので、少なくともこの作品ではレクリスモードの出番は無い
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【キャラクター名】
ローラ
【機体名】
オーロラクイーン
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット1、2など)
【モチーフ(型式)】
雪の女王型メダロット(QUN)
【パーツ】
[頭部]
ブリザード/フリーズ(なぐる)
[右腕]
アイス/フリーズ(なぐる)
[左腕]
フリーズ/フリーズ(がむしゃら)
[脚部]
ソリスキー/二脚
【備考】
近年メダロット作品ではオーロラクイーンの行動はフリーズショットによる射撃攻撃が主流だが、本作では初代メダロット登場時の格闘攻撃のイメージを採用
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