第???話【続】
―――そこは、地図からも、歴史からも忘れられた地。
かつて人間が棄てた廃墟には、湿った錆の匂いと、老朽化した配電盤が奏でる不気味な低周波だけが停滞していた。
天井の隙間から差し込む青白い月光が、埃の舞う空間を冷たく切り裂いている。
闇の中に、三つの熱源が揺らめいていた。
中央に置かれた旧式のモニターが不規則に明滅し、その電子光が三機のシルエットを壁に長く、禍々しく投影している。
「お、帰ってきたゼ! 待ちくたびれたゼ!」
「どうだったぁ? 何か面白い『モノ』は得られたのかぁ?」
待ち構えていた二機の男が、闇の中から声を掛けた。
一機は、闘争本能を隠そうともしない荒々しい駆動音。
もう一機は、獲物を観察するような冷徹な排熱音。
その視線の先。
通路の奥からゆっくりと歩み寄ってきたのは、一機の女型メダロットだった。
彼女の手には重厚なデータストレージと、奪取したばかりの青いV字アンテナの頭パーツ――『ノルス』が握られていた。
「クククク…。エデン本部は、まさにその名に相応しい『
女型メダロットは、ノルスと記録媒体を無造作に作業台へと放り出した。鈍い金属音が静寂を打つ。
「そっちはどうだい? 『ラヴド』では、収穫はあったのかな?」
「バッチリ成果アリだゼ! あのバカ正直な連中、総力戦で頭がいっぱいで、裏口の警備はガバガバだったからなぁ」
「ラヴドの機密だぞぉ。……なんでも『白メダリア』という、N・G・ライト様の力の断片があるってデータを、しっかりとコピーさせてもらったぞぉ」
『N・G・ライト』。
かつて世界を焼き、神を名乗ったその名を耳にした瞬間、女型メダロットのセンサーが狂気的な燐光を放った。
「N・G・ライト様の断片……。クククク…。クククククク…ッ!!」
女は、自らが盗み出した記録媒体を愛おしげに、そして歪んだ熱量を持って見つめた。
モニターに接続されたデータが、恐ろしい速度で解析されていく。
「僕がエデンの深淵で見つけたもの……。フォー・パーツ『ノルス』。防衛装置『DancingMad』のデータ。……そして」
モニターの砂嵐が晴れ、一機のダイヤモンド型メダロットの設計図が表示される。
「ハードネステン――彼女は、N・G・ライト様の『復活実験』によって生み出された副産物であった……という、決定的な事実!!」
女の声が、実験室の鉄の壁を震わせる。
「クククク…。『ハードネステン』という器。そして、『白メダリア』という神の意志。……この二つが揃えば、あのお方は……我らが主は、再びこの世に降臨されるのだよ!!」
歓喜。
それは、新世界が謳歌している平和への呪い。
女は首をのけ反らせ、喉の奥から込み上げる不気味な高笑いを解き放った。
「クククク…フヒヒヒヒ……。ハァーーーーハッハハハハハハハッ!!!!」
響き渡る、世界の終わりを予感させる哄笑。
やがて笑いを止めた彼女は、かつて夜空に輝いていた白銀の主を想い、熱烈な祈りを捧げた。
「N・G・ライト様……」
『 あ な た が 神 で す 』
―――To be continued 『REAPPEARANCE』
第???話【続】終わり