第六話【一つ】
L班は突如現れたシロの猛攻をしのぎ、エデン軍との初陣を勝利で飾った。
ワンダ:「クロさーん!」
ワンダたちは、戦場の中央に立つクロのもとへ駆け寄った。
クロ:「やぁ、皆さん。お疲れ様でした」
クロは何事もなかったかのように微笑み、一同を迎えた。しかし、その漆黒の身体には無数の傷が刻まれ、いたるところから火花が散っている。
ワンダはすぐさま、クロに
その様子を見守りながら、ローラは先ほどから胸に抱いていた疑問を口にした。
ローラ:「クロ殿……あの『シロ』とは、以前から面識があるのですか?」
クロはL班が結成される以前から、部下たちの経歴を調べていた。ローラがシロと、その左腕に装備された『スバル』に深い因縁を持つことも知っている。だからこそ、彼女がこの質問をした理由も理解していた。
クロ:「二年前……私がラヴドに所属して間もない頃のことです。任務中に突然襲撃されたのが彼との出会いでした。それ以来、何度も闘いを挑まれていますが、未だ決着はつかないままです」
ディスト:「シロ……一体何者なんだろう?」
クロ:「軍の幹部たちは、戦争の狂気に呑まれて正気を失った個体だと結論づけています。ですが、私『だけ』を執拗に狙う理由は未だに分かりません。……おっと、今は任務が先ですね」
クロは居住まいを正すと、爽やかな声で告げた。
クロ:「初陣、見事な勝利でした。おめでとうございます」
ワンダ:(トドメ刺したのクロさんだけどね……)
ワンダは心の中でツッコミを入れたが、それを口には出さず、ただ笑顔を返した。
クロ:「次へ行きましょう。目的地は『おみくじ町跡地』です」
一行は再びトラックに乗り込み、おみくじ町跡地へ向けて移動を開始した。
目的地までは目と鼻の先だった。数分も走ると、荒廃した街並みが見えてくる。
最初に一行が足を踏み入れたのは、そのなかでもひときわ異彩を放つ古い工場だった。
扉を開けた瞬間、四機は揃って絶句した。
壁という壁に、同一人物と思われる美しい人間の女性の写真が、隙間もないほどびっしりと貼られていたのだ。その数は、ひと目では数え切れないほどだった。
ワンダ:「……ねぇ、ここ調べなきゃダメ?」
ディスト:「本能が『関わるな』って言ってる気がするよ……」
それでも調査を進めた結果、工場から見つかったのは、写真一三二七枚、等身大の抱き枕、そして「ナエ」という女性へ宛てられた未投函の手紙五二通だった。
調べなければよかった。
四機の意見が、このとき初めて完全に一致した。
気を取り直した一行は、工場の隣に建つ本格的なメダロット研究所跡へ向かった。
ワンダ:「クロさん、こっちを見てください!」
ワンダが研究機材をどけると、その奥から隠し扉らしきものが現れた。
クロは慎重に扉を開け、冷気のこもる暗がりへ足を踏み入れる。
しかし、そこにはすでに「先客」がいた。
セルヴォ:「さて、ちょっと遅かったな」
ビート:「……ああ。遅かったな」
暗がりに立っていたのは、『トゥルース』のセルヴォとビートだった。
セルヴォの手には、グレーの装甲に鮮やかなブルーが映える頭部パーツが握られている。その正面からは、鋭いV字型のアンテナが伸びていた。
ディスト:「まさかフォー・パーツ!?」
ビート:「察しがいいな……」
セルヴォ:「さて、ご丁寧な説明書付きだぜ。あとはこれをエデン本部に持ち帰るだけだな」
クロ:「……そうはさせませんっ!」
クロの右腕に装備された『マーブラー』が火を噴いた。
至近距離から放たれた無数の弾丸が空気を切り裂く。しかし、セルヴォは驚異的な反応速度で射線から逃れ、そのすべてをかわした。
セルヴォ:「さて、トゥルースのセルヴォさんを舐めてもらっちゃ困るぜ?」
セルヴォは足元の瓦礫を蹴り、斜め後方へ宙返りすると、その勢いのまま階段を駆け上がった。ビートもすぐさま彼のあとを追う。
クロ:「逃がさないで! 追いかけて!!」
セルヴォとビートを追う、研究所内での追跡戦が始まった。
迷路のように入り組んだ通路を、青と褐色の影が縫うように駆け抜けていく。
ローラ:「逃がさん!」
ローラはスキー型の脚部で床を滑り、最短距離を通ってビートへ迫った。
しかし、ビートは一切の無駄を省いた動きで次々と障害物を飛び越え、ローラの接近を許さない。
前方を走るセルヴォは、複雑な実験エリアの構造を熟知しているかのようだった。キャットウォークを跳び移り、壁を蹴り、上下の空間まで利用した動きでL班を翻弄する。
ディスト:「ま、待って! 速すぎるよ!」
ディストは右腕のビームパーツを発射し、セルヴォの進路を塞ごうとした。だが、セルヴォはその狙いさえ読んでいたかのように、射撃の直前で進行方向を変える。
クロ:「チームワークで追い詰めます! ワンダさん、横から! ディストさんは逆方向から追い込んで!」
クロの指示を受け、ローラ、ワンダ、ディストの三機は扇状に展開した。逃げ道を一つずつ塞ぎ、セルヴォとビートを屋上へと追い込んでいく。
一方、クロは二機の逃走経路を読み、地上で迎え撃つために別の通路へ回った。
やがて三機は、『トゥルース』の二機を屋上のフェンス際まで追い詰めた。
屋上から地上までは、飛び降りれば無事では済まないほどの高さがある。
ローラ:「観念しろ。飛び降りても、下ではクロ殿が迎撃態勢を整えているぞ」
ワンダ:「大人しくそのパーツを渡しなさいっ!」
ローラ、ワンダ、ディストの三機が、じりじりと包囲網を狭めていく。
ビートは静かにその場に立ち、セルヴォは困ったように肩をすくめた。
ビート:「……分かった。降参だ」
セルヴォ:「さて、そうだな。降参だ。――なんて、言うと思ったかよ!! うらぁぁぁーーっ!!」
セルヴォは絶叫を上げると、ビートの腕を引き、フェンスの外へ身を投げた。
ディスト:「えっ!? 自殺……!?」
三機は慌ててフェンスへ駆け寄り、地上を覗き込んだ。
しかし、地上に倒れているはずのセルヴォとビートの姿はなかった。
ワンダ:「あ、あそこっ!!」
ワンダが指差した先――建物の陰から、飛行形態の『ロケットランチ』が滑り込んできた。
ガシッ、と重い金属音が響く。
落下したセルヴォとビートは、ロケットランチの決して大きくはない身体に、無理やりしがみついていた。
突然加わった二機の重みに、ロケットランチのエンジンが悲鳴を上げる。セルヴォとビートを乗せたロケットランチは大きく揺れ、高度も安定しない。
ロケットランチは、エデン軍で物資運搬を担う援護部隊の一員だった。『トゥルース』の任務とは何の関係もなく、偶然近くを通りかかったところを巻き込まれたのだ。
ロケットランチ:「ちょ、何!? 重いですよっ! トゥルースのお二人、何やってるんですかぁーっ!」
セルヴォ:「さて、いいタイミングだ。このまま最高速で離脱しろ!」
ロケットランチの困惑をよそに、セルヴォは当然のように命令を下した。
L班の追撃が届くよりも早く、窮屈そうに身を寄せ合った三機の影は、空の彼方へ消えていった。
無情にも、一つ目のフォー・パーツはエデンの手に渡った。
―
セルヴォ:「さて、ビート。こいつの性能を確認するぜ」
逃走を続けるロケットランチの背中で、セルヴォは頭部パーツに添えられていた書面を開いた。
――説明書の内容
名称:『ノルス』
特性:応援(フォースアップ)。
全熟練度の総計が行動の成功率に反映され、増加するメダフォースにも多大なプラス補正を与える。
By A.A
セルヴォ:「さて……、任務完了、と」
セルヴォは余裕の笑みを浮かべた。
その一方で、二機を無理やり乗せたロケットランチは、相変わらず不安定な飛行を続けていた。
第六話【一つ】終わり
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[今回新しく登場したメダロット]
【ロケットランチ】
エデン軍運搬課所属。飛行能力を生かして物資輸送を行う。今回はセルヴォたちの強引な脱出に利用された、かわいそうな一機。
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[機体解説]
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【キャラクター名】
ロケットランチ
【機体名】
ロケットランチ
【公式/オリメダ区分】
公式(メダロット4など)
【モチーフ(型式)】
ロケット発射台型メダロット(RLP)
【パーツ】
[頭部]
3RDステージ/防御(まもる)
[右腕]
2NDステージ/防御(まもる)
[左腕]
1STステージ/防御(まもる)
[脚部]
ランチャー/戦車
【変形後】
[変形後ドライブA]
デストロイ(ねらいうち)
[変形後ドライブB]
アンチエア(まもる)
[変形後ドライブC]
アンチシー(まもる)
[変形後脚部タイプ]
飛行
【備考】
公式(メダロット4)情報を参照
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