ネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクが『ヒーロー』になるまでの物語   作:猫禰捏涅

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15.障害物競走

5月に開催される体育祭まで、残りは二週間。

ネリエルも他のクラスメイト達と同じく個人での訓練に励んでおり、放課後に雄英高校の豊富な設備を利用して体を動かしていた。

 

ネリエルの“個性”である『カモシカ』は、小さな足場でも高低差が激しい場所でも軽やかに動けるのが大きな長所である。

そのため、体育館γ(ガンマ)___セメントスが管理し、彼の『セメント』の“個性”により適した地形を作ってもらうことができる『T(トレーニングの)D(台所)L(ランド)』に使用申請を出していた。

セメントスも忙しい身ではあるが、二週間のうち三日だけ予定が合い、険しい岩山の地形を再現してもらって存分に訓練を行った。

 

他の日は基礎的な筋力の強化を目的に、グラウンドでの走り込みをしている。

一般社会で生活する中では持て余すだけの『カモシカ』の走力を存分に発揮するのは、ネリエルに心地良い爽快感と適度な疲労感を齎した。

 

「ふー……やっぱり、走るのってすっきりする!障害物競争があるらしいし、楽しみだな」

 

日中は通常の授業を受け、放課後は訓練をする。そんな日々を過ごしていれば二週間はあっという間に過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆準備は出来てるか!?もうじき入場だ!!」

「コスチューム着たかったなー」

「公平を期す為着用不可なんだよ」

「じゃあ私はズボンを脱ぐしかないか」

「ネル、それは競技前にしておこうな」

 

『槍』のサポートアイテムは差し戻しとなったが、レオタードや鎧、ブーツはそのままだ。

それらであれば服が破れる心配はないのだが、体操服での出場となると聞いていたため、ネリエルは“個性”対応の自前のショートパンツをズボンの下に履いてきている。

 

「緑谷」

「轟くん……何?」

 

そろそろ控室を出ようとしたところで、轟が緑谷に話しかける。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「へ!?うっ、うん…」

「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねえが…おまえには勝つぞ」

「おお!?クラス最強が宣戦布告!!?」

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって…」

「仲良しごっこじゃねえんだ。何だって良いだろ」

 

事実ではあるものの、確実に空気を悪くする発言を止めようとする切島を振り払い、轟は緑谷だけを睨みつけている。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか…は、わかんないけど…。そりゃ君の方が上だよ…実力なんて大半の人に敵わないと思う…客観的に見ても…」

「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねえ方が…」

「でも…!!皆…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって…遅れを取るわけには、いかないんだ。僕も本気で、獲りに行く!」

「………おお」

 

轟の圧に負けることなく言い放った緑谷の瞳は強い光を放っている。

 

「切島くん」

「っお、おお…」

「声かけてくれてありがとう。でもあんまり気にしなくていいと思うよ」

「そーだよ切島ー。やらせときゃいーよ」

「おう…でも気になっちまってよ…」

「まーまー!とりあえず行こ!入場だよー!」

 

険悪な雰囲気に困った顔をしている切島に対して芦戸と葉隠と共に声をかけ、ネリエル達は控室を出て体育祭会場へと向かう通路へと踏み出す。

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』

 

一年生ステージの実況解説を担当するプレゼント・マイクの声が鳴り響いてくる。

 

『どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?(ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科!!一年!!!A組だろぉぉ!!?』

 

「そういう風に紹介されるのね」

 

ネリエルは少し複雑な感情でつぶやいた。A組がどのように(ヴィラン)に応戦したのかとの詳細は公表されていない分、『襲撃を受けて乗り越えた』という美談へと変換されているようだった。

 

『B組に続いて、普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・H組も来たぞー!そして経営科、I・J・K組!!整列したら早速選手宣誓だぜ!!!』

 

生徒達が並ぶ前に設置された台にミッドナイトが上がる。携えた鞭が笛代わりにピシャリと鳴らされた。

 

『選手宣誓!!』

「18禁なのに高校にいてもいいものか」

「いい」

『静かにしなさい!!選手代表!!1-A、爆豪勝己!!』

 

ざわ、と生徒達がざわめく。

 

「え〜〜〜かっちゃんなの!?」

「あいつ一応、入試一位通過だったからな」

ヒーロー科の入試(・・・・・・・・)な」

 

“個性”の影響で普通よりも耳がいいネリエルには、普通科の生徒達が並んでいる方角からため息混じりの声が上がったのが聞こえている。

 

(あの時の放課後で実感したけど…やっぱり僻みも受けるよね)

 

ネリエルは普通科のほうにちらりと視線をやってから、台に登っていく爆豪のほうに戻す。

 

『せんせー。俺が一位になる』

「絶対やると思った!!」

「ふ、ふふっ!!」

 

不遜な選手宣誓に思わず吹き出してしまったネリエルとは対照的に、周囲からは大ブーイングが上がる。

 

「調子のんなよA組オラァ!」

「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」

「ヘドロヤロー!」

『せめて跳ねのいい踏み台になってくれ』

 

親指で首を切る仕草はスロート・スラッシュと呼ばれ、海外のスポーツシーンでは罰則があるほど挑発的な行為だが、ミッドナイトは気にせずホログラムのモニターを指し示した。

 

『さーてそれじゃあ早速、第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!』

 

画面にドゥルルル、とルーレットが表示される。

 

『さて運命の第一種目!!今年は……コレ!!!』

「あっ、やった!」

 

『障害物競争』の文字に、ネリエルは小さく快哉を上げた。

 

『計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって(・・・・・・)構わないわ!さあさあ位置につきまくりなさい…』

「わ、早い…」

 

ネリエルは慌ててズボンを脱ぎ、腰に巻きつけた。周囲の生徒とスタンドにいる観客席の一部が少しざわめいたが、気にする暇もなくスタートゲートに並ぶ。

 

(スタート前から“個性”使うのってさすがにルール違反かな?)

 

『カモシカ』の瞬発力を活かすのであれば、50m走の時のように変身した状態で溜め(・・)を作って飛び出すのが最も早い。

そう思ったがミッドナイトに聞く余裕もなく、勝手にそれをして失格となっては元も子もないため、まだ“個性”は使わないままスタートダッシュの姿勢を取った。

 

ゲートのランプがパッ、パッ、と一つずつ消えていく。

 

『スターーーーート!!』

 

最後の一つが消えると同時にミッドナイトの号令が響き渡り、生徒達が一斉に走り出す。

 

「っと、ダメか…!」

「スタートゲート狭すぎだろ!!」

「うぐぅ!」

 

生徒の数に対してゲートが余りにも狭いのは見えていたので嫌な予感はあったのだが、ネリエルも人混みに一気に体を押し潰されて身動きが取れなくなった。

 

(この状態で変身したら、誰かに怪我をさせてしまうかもしれない!少しでも周りが開けてから…!)

 

通路の中から押し出されるようにして前に行きつつ、ネリエルは“個性”を発動するタイミングを伺う。

その時、前方からパキパキッという氷の音と、「ってぇー!!」という誰かの悲鳴が聞こえてきた。ネリエルは反射的に壁に手をつき、人混みに体を任せるようにして足を浮かせる。

 

「何だ凍った!!動けん!!」

「寒みー!!」

「んのヤロォオオ!!」

「やっぱり轟くんね!」

 

周囲の生徒達の足が凍らされ、動きが止まっている。ネリエルはその隙に間をすり抜けた。

 

『さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?イレイザー!!』

『無理矢理呼びやがって……』

 

正反対のテンションのプレゼント・マイクと相澤の実況解説を聞きながら、ネリエルは開けた場所で“個性”を使う。轟の氷は踏みつけて割り砕きながら、一気に前へと飛び出した。

 

「甘いわ轟さん!」

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

「っぶな!」

 

周囲ではA組のクラスメイト達も各々の“個性”を使って、見事に氷の妨害を回避している。

『創造』で作った鉄パイプで体を浮かせた八百万、『酸』で氷を溶かす芦戸、『黒影(ダークシャドウ)』と『尻尾』でそれぞれ跳び上がる常闇と尾白、『もぎもぎ』で跳んでいたらしい峰田も一歩前にいた。

 

「クラス連中は当然(・・)として、思ったよりよけられたな…」

「轟のウラのウラをかいてやったぜ、ざまあねえってんだ!くらえオイラの必殺…GRAPE…ッ!!?」

「峰田くん!!」

 

『もぎもぎ』のラッシュをしようとした峰田がロボットアームに殴り飛ばされたことで、ネリエルは少し足を止めた。

人混みに隠れて見えていなかったが、ゲートの先には何体ものロボットが並べられており、その巨体でコース自体が塞がれてしまっている。

 

『ターゲット…大量!』

「入試の仮想(ヴィラン)!!?」

『さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門、ロボ・インフェルノ!!』

「ロボット…!」

 

ネリエルはぐっと四足に力を込める。

 

「入試ん時の0ポイント(ヴィラン)じゃねえか!!!」

「マジか!ヒーロー科あんなんと戦ったの!?」

「多すぎて通れねえ!!」

 

ほとんどの生徒の足が止まる中、ネリエルはダンッと力強く踏み切って高く跳躍し、ロボットが伸ばしてきていたアームの上に着地する。

 

『おおっとA組ネリエル、ロボットアームを足場に駆け上がる!!上を行く作戦かあ!?』

 

「オーデルシュヴァンク…!」

「はっ!」

 

次々と伸ばされるアームを躱しつつ、ロボットの頭上を目指す。

あらゆるところに設置されたカメラはしっかりとその姿を捉えており、スタジアムに流れる中継映像を見た観客からは歓声が上がっていた。

 

「ケンタウロスみてえだ…!」

「上半身ヒトのままなのいいな、腕使えんじゃん!」

「めちゃくちゃ美人ー!!!」

「でっっっか………」

 

頂上までもう少しとなったところで、下から冷気が噴きあがってくる。

 

「おっ…と!」

 

轟の“個性”で凍らされたロボットは、生徒達に向かおうとしていた前のめりの姿勢だったため、ぐらりと不安定に揺れた。

ネリエルは咄嗟に跳躍していたため冷気は届かなかったものの、そのまま連鎖的に倒れていくロボットの上への着地に少し手間取っている内に轟が駆け抜けていった。

 

『1-A轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!すげえな!!一抜けだ!!アレだなもうなんか…ズリィな!!』

『どこがだ。合理的だろうが』

 

ダン、と沈黙したロボットの外装を蹴り、ネリエルは再び跳躍する。轟が凍らせていたのは彼が通る道の分だけで、残ったロボットがまた道を塞いでいた。

 

『ヤレ!足ヲ狙エ!』

『人間ナドブットバセ!』

「邪魔よ」

 

高く跳躍し、その落下のエネルギーを乗せた鋼鉄並みに硬い蹄で踏みつける。ごく単純な攻撃だが、さほど頑丈には作られていないらしいロボットやそのアームは簡単に壊れていく。

 

「お、おい誰か下敷きになったぞ!!」

「死んだんじゃねえか!?死ぬのかこの体育祭!?」

「本当!?下敷きになったのって、誰___…!」

 

背後からの声を聞き、救出のために倒れた近くのロボットを吹き飛ばそうとした時、ロボットの装甲がボゴンッ、と下からぶち破られた。

 

「死ぬかあー!!」

『1-A切島潰されてたー!!』

「切島くん!よかった!!」

「ああ大丈夫だ!だが轟のヤロウ!ワザと倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

 

幸運なことに下敷きになっていたのは『硬化』の“個性”である切島だった。

その横の装甲の下から、「A組のヤロウは本当嫌な奴ばかりだな…!」という恨み節が聞こえてくる。

 

「俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

「B組の奴!!」

「あ…金属の!」

『B組鉄哲も潰されてたー!!ウケる!!』

 

あの日の放課後にA組に宣戦布告をしにきていたB組の男子生徒は、金属質の体や髪の通り頑強さが売りの切島と似た“個性”らしい。

 

「“個性”ダダ被りかよ!!ただでさえ地味なのに!!」

「他に潰されてた人はいない!?」

「大丈夫だよ!早く行きなネル!!」

「ありがとう響香ちゃん!」

 

少し後ろにいた耳郎が、ロボットに『イヤホンジャック』で攻撃をしつつ周囲の音も拾ってくれていた。

ネリエルはその言葉に安心し、倒れたロボットを蹴って次に立ちはだかるロボットめがけて跳躍する。

その横をボボボッ、という爆発音と共に爆豪が高く飛び上がっていった。

 

『1-A爆豪、下がダメなら頭上かよー!クレバー!!』

「おめーこういうの正面突破しそうな性格してんのに、避けんのね!」

「便乗させてもらうぞ」

『1-A瀬呂、常闇も頭上を選択!おっと、1-Aネリエルもロボットの頭を潰しながら飛び越えたー!!』

「よっ、と!」

『一足先行く連中、A組が多いなやっぱ!!』

 

実況されている通り、ネリエルの後も次々とA組のクラスメイト達がロボットの山を乗り越えてくる。

 

『A組は…立ち止まる時間が短い。(ヴィラン)と戦い、上の世界を肌で感じた者、恐怖を植えつけられた者、対峙し凌いだ者…各々が経験を糧とし、迷いを打ち消している』

 

一際大きなロボットが飛んできた砲弾によって、体勢を崩され倒れる。大砲を『創造』した八百万によるものだ。

 

「チョロいですわ!」

『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーール!!!』

 

ネリエルは第二関門が見えた時から走る速度を上げていた。その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

 

「こういうのは…大得意!!」

 

思いきり踏み込んで、大きくジャンプする。石柱の間はだいたい10mほどの間隔で、助走ありのネリエルのジャンプであれば十分に飛び越えられる幅だ。

 

『1-Aネリエル、ロープを使わず柱から柱に跳んでいくー!!あんなに跳躍力あったのかよ!!?』

 

さらに、ネリエルにとっては岩肌というだけで有利な地形だ。頑丈な蹄に巨体の体重と跳躍の加速度を乗せて、垂直の壁(・・・・)に足をめり込ませながら、パルクールの要領で三角跳びを繰り返す。

 

『実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますね、イレイザーヘッドさん』

『何足止めてんだ、あのバカ共』

『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!』

 

ネリエルが目指すのは、既に第二関門の出口にいる轟と、空中を飛んでそれに追いつきかけている爆豪の背中である。

 

「よーしっ!!」

『1-Aネリエル、あっという間にザ・フォールを攻略ー!!第二関門の突破速度は圧倒的1位だぜ!てか1-A飯田!!カッコ悪ィイーーー!!!』

 

プレゼント・マイクが爆笑している理由は気になるものの、ネリエルは第三関門へ続く道をひた走る。

 

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は___…』

 

先頭にいる轟の足が止まった。その先には柔らかい砂が敷き詰められた広いコースがある。

 

『一面地雷原!!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!ちなみに地雷!威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』

『人によるだろ』

「地雷原…!?あっホントだ、よく見ると何か埋まってる!」

 

轟も土の色が変わっているところを避けるようにして進んでいっている。ネリエルは“個性”を解くか一瞬迷ったが、首を振ってそのまま第三関門へと突っ込んだ。

カチ、カチ、カチ、と足元からスイッチが起動した音がする。

 

「っ、と!このぐらいか!」

 

ボボボンッ!!、とネリエルの周囲で地雷が連続して作動する。

だが威力はさほどないと言われていた通り、三つ同時の爆発であってもネリエルの体が吹き飛ぶことはなかった。

 

『オイオイオイ1-Aネリエル、爆発を意に介してねえな!?この程度避けるまでもないってかぁ!!?』

『被毛も皮膚も分厚くなる“個性”だ。まあ通じねえだろうな』

「さすがに、ちょっとバランスは崩れちゃうけどね!」

 

ネリエルはちらりと後続の生徒達を見る。

 

(爆発を受けながら進むのは…後続への一時的な妨害にはなるけど、地雷のない道を作ることにもなる)

「よし、じゃあ普通に歩こう(・・・・・・)!」

 

今までは爆発的な駆け出しと走力を重視していたため足元には気を配っていなかったが、本来の『カモシカ』は前脚の足跡に後ろ脚の足跡を重ねて歩く、いわゆる『ハンター歩き』と呼ばれる歩き方をする。

全速力ではなく早足程度の速度であれば自然とネリエルはこの歩き方をすることになるため、前脚で安全を確認したところに後ろ脚を置くことで、地雷を踏むのは最小限にできる。

 

「はっはぁ俺は___関係ねーーー!!!てめェ宣戦布告する相手を、間違えてんじゃねェよ!!!」

『ここで先頭が変わったーーー!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!』

 

『爆破』で飛んでいった爆豪が、ついに轟を追い抜いた。

後ろからもたくさんの生徒達が追いついてきて、あちこちで地雷が作動する爆発音が聞こえてくる。

 

『後続もスパートかけてきた!!!だが引っ張り合いながらも…先頭二人がリードかあ!!?』

「あと少し、で、___ッ!!?」

 

ドォオオン、と背後から巨大な爆発音が鳴り響いてきた。

 

『後方で大爆発!?何だあの威力!?偶然か故意か___A組緑谷、爆風で猛追_____!!!?』

「緑谷くん!?嘘でしょ!?」

 

思わず振り返ったネリエルの目に、爆風をロボットの装甲らしきもので受けながら飛んできた緑谷の姿が映る。

 

『先頭爆豪・轟!最終関門を今抜けそうだが___…A組緑谷爆風で猛追___…っつーか!!!抜いたあああああー!!!』

「そんな危ないことを…!!」

 

吹き飛んでいく緑谷は明らかに体勢を崩している。

 

『元・先頭の二人、足の引っ張り合いを止め緑谷を追う!!共通の敵が現れれば人は争いを止める!争いはなくならないがな!』

『何言ってんだお前』

 

腕の掴み合いをやめて走り出した爆豪と、足元に氷の道を作った轟のそばに落下していく中、緑谷はロボットの装甲を振りかぶって地面に叩きつけた。

ボォォン、と地雷が爆発し、轟と爆豪が反射的に顔を庇う。

 

『緑谷間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッドおまえのクラスすげえな!!どういう教育してんだ!』

『俺は何もしてねえよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってんだろう』

 

「緑谷くん…そうね、リスクも取らずに甘かった!」

 

ネリエルは静かに歩くことをやめ、強く踏み込んで前に飛び出した。地雷が作動するのにも構わず、爆風を受けて時折体勢を崩しながらもそのまま直進する。

 

『さァさァ序盤の展開から誰が予想出来た!?』

『無視か』

『今一番にスタジアムへ還ってきたその男_____緑谷出久の存在を!!』

 

緑谷の直後に轟、爆豪もゲートに飛び込んでおり、ネリエルもそこから数秒だけ遅れて駆け込んだ。

 

「ふう…!5…いや、4位かな?」

 

邪魔にならないようゲートから離れた位置まで駆けて行ってから、少し荒れた息を整え、大歓声が湧き起こっているスタジアムを見回す。

ネリエルに向かって大きく手を振ってきている観客もいたので、ネリエルはにっこりと笑って手を振り返した。




ネリエルの誕生日は4/24という設定がありますが、ヒロアカ原作では誕生日を祝う描写がないので省きました。おめでとうのメッセージやちょっとしたプレゼントをクラスメイトからもらったりはしています。
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