ネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクが『ヒーロー』になるまでの物語   作:猫禰捏涅

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41.林間合宿:三日目③ / YOU CAN'T TAKE A HAND

「煙の匂いがひどいね」

「鼻は平気か?」

「うん。嗅覚はあんまり効かないけど」

 

隊列を崩さないよう気をつけながら進む中、ネリエルは少し鼻をすする。

風向きが少し変わったのか、森の奥から流れてくる風の中に黒煙が混じり、煤けた臭いで嗅覚が鈍らされていた。

 

「ケッ、索敵できてねェじゃねェかよ!!」

「森に火をつけられた時点で、匂いは諦めてるよ。耳があれば十分やれる」

 

気遣ってくれる轟に対して、爆豪は何にでも突っかかってくる。それを受け流しつつも、ネリエルは聴覚に意識を集中していた。

 

「___…っ、敵!!」

 

故に、気づく。

煙の匂いに紛れ、気配が希薄であっても、僅かな衣擦れと共に(ヴィラン)が忍び寄っていることに。

 

「はぁ___っ!」

「ってェ!!?」

 

森の影の中から、こっそりと爆豪に向かって伸ばされていた腕を、前脚で蹴り飛ばす。

 

「チッ!何でこれに気づくかね…!」

 

悪態と共に、人影が森の中へと溶け込んでいく。体の向きを変えてそちらを睨みつけながら、ネリエルは一行に警告を飛ばした。

 

「数は一人。だけど、絶対に触れられないようにして。手を伸ばしてくるような奴は、大抵そこが能力の起点よ」

「流石だな…!」

 

轟がネリエルの横に並び、身構える。

隠密に優れている(ヴィラン)のようだが、ネリエルの耳はわずかながら落ち葉や土を踏む足音を捉えている。

 

「そこにいる(・・)…!私と反対側に向かって走って!」

「分かった。走るぞ!」

「ああ…!」

 

障子と常闇は走り出そうとする。

だが、爆豪は止まったまま、ネリエルの背を通り越して(ヴィラン)のいる方角を睨んでいた。

 

「黙れっ!!一人なんだろうが、吹っ飛ばしゃあ勝ちだ…!!」

「爆豪くん!狙われてるのはあなたなの!早く走って!!」

「爆豪!いいから逃げろ!!」

「かっちゃん!!」

「黙れっつってんだろうがァア゛!!!」

 

誰もが爆豪に何かを言うたびに、全て逆効果になってしまう。ボボボッ、と『爆破』が背後で爆ぜる音を聞きながら、ネリエルは唇を噛んだ。

 

「とにかく、進路を塞ぐ…!」

 

轟が前へ踏み出し、大技の構えを取る。

振りかぶられた右手と共に、ズッ、と巨大な氷壁が一瞬で半円状に形成された。

 

「走れ!!」

 

(ヴィラン)を捕らえられてはいないだろうが、一行の背後を守るのには役に立つ。

ネリエルも氷壁の奥を睨んだまま、体を捻って走り出した。

 

「爆豪!早く来い!!」

「っオイ!!放しやがれッ!!」

 

障子の触腕が伸びて爆豪に巻きつき、強引に引っ張っていく。それをチラリと横目で確認した瞬間、近くで声がした。

 

「君()良いね。だが、他はまだまだだな!」

「っ!?」

 

咄嗟に振り回した腕に、黒い布が絡みつく。虚空から突然現れた布に視界を覆われたネリエルの横を、誰かが駆け抜けていった。

 

「っ抜かれた!爆豪くんを!!」

 

頭に被さってきた布を払いながら叫ぶ。

 

「爆豪!!」

「クソ(ヴィラン)が…!!」

 

布を放り捨てて開けた視界に入ってきたのは、触腕を振り解き、障子とその背にいる緑谷から距離を取ろうと身を捩る爆豪だった。

そして、そこに手を伸ばす仮面にトレンチコート、シルクハット姿の(ヴィラン)

 

「かっちゃんっ!!!」

 

『爆破』を爆ぜさせる前に、仮面の(ヴィラン)の手が体に触れた瞬間、爆豪の姿はフッと消えた。

 

否、消えたのではない。(ヴィラン)の“個性”によってビー玉状に圧縮され、無力化された。

 

「はい、もーらいっと!」

「この野郎!!返せ!!」

 

ビー玉をひょいとキャッチして、障子の触腕もネリエルの手も躱し、(ヴィラン)が身を翻す。

いっそ優雅なほどの身のこなしで、放たれた氷の波も『黒影(ダークシャドウ)』の手からも逃れ、枝の上へと逃れてしまう。

 

「返せ?妙な話だぜ。爆豪くんは誰のモノでもねえ、彼は彼自身のモノだぞ!!エゴイストめ!!」

「返せよ!!」

 

緑谷の叫びに呼応するように、轟が再び氷の波を放つ。だがその先には(ヴィラン)ではなく、二つの人影があった。

 

「きゃあ!?」

「これ…っ轟ちゃん!?」

 

道の先にいた蛙吹と麗日が、轟の攻撃に巻き込まれかけて悲鳴を上げる。

 

「あ…っ悪ィ!!」

「ハハ、ヒーローの卵は大変だな!」

 

仮面の(ヴィラン)が焦る轟を嘲っている隙に、ネリエルは背中からB組の生徒を下ろした。

そして、力強い跳躍と同時に二足(・・)の『カモシカ』となる。

軽くなった体は四足のパワーでふわりと押し上げられ、仮面の(ヴィラン)の目の前まで跳び上がった。

 

「おっと!?」

「手を離せ…!」

 

木の幹を蹴りながら、鋼鉄の如き硬度を持つ蹄で(ヴィラン)の頭を狙う。

 

「うぉおっ!!躊躇ねえな!」

 

(ヴィラン)の手が足元の枝に触れると同時に、パッ、と枝が消え、ネリエルの蹴りから逃れる。

 

(反膜の匪(カハ・ネガシオン)のような能力…!)

 

だが“個性”ゆえか、手で触れなければ発動はしないらしい。それさえ分かっていれば、ネリエルにとってはいくらでもやりようがある。

 

「爆豪くんを返しなさい」

「そりゃ無理な相談だ。我々の主張のためには必要な人材なもんで」

(ヴィラン)の主張も思想も、碌なものじゃないでしょう」

「ハハハ…言うねえ!」

 

ステッキを巧みに使い、(ヴィラン)はネリエルが振り上げた足も紙一重で躱す。轟が放った氷撃は、そのまま宙に跳ぶ足場に利用された。

 

「我々はただ、凝り固まってしまってた価値観に対し、「それだけじゃないよ」と道を示したいだけだ。今の子らは、価値観に道を選ばされている」

「神のようなことを言うのね。あなたはそんな大層なものには見えないけれど」

 

ストン、と地面に降り立ちながらネリエルがばっさりと切り捨てると、仮面の(ヴィラン)は愉快そうに肩を震わせた。

 

「ククク…ますます良い(・・)ね!なァ、君もこっちに来ないか?その精神性、ずいぶんと(こっち)側に見えるぜ!!」

「断るわ」

「残念だ」

 

仮面の(ヴィラン)は芝居がかった動きで、手の中のビー玉を転がす。

 

「ムーンフィッシュ…『歯刃(しじん)』の男な。アレでも、死刑判決控訴棄却されるような、生粋の殺人鬼だ。それを、ああも一方的に蹂躙する暴力性を持つ常闇くんも、()()。彼もちょっと狙ってたんだが、まァひとまず爆豪くんだけ貰っておくよ!」

「この野郎!!貰うなよ!」

「緑谷、落ち着け」

 

常闇も狙っていたという言葉に、障子が緑谷を宥めながら常闇の前に立つ。

 

「捕まえる…!!」

 

代わりに前に出た轟が、これまでで一番大きな氷壁を撃ち出す。

 

「悪いね、俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!雄英生なんかと戦ってたまるか」

 

仮面の(ヴィラン)は、大規模な氷の槍をひらりと宙返りで躱した。

 

「はっ!!」

「あぶねっ!」

 

同時に氷を足場にして駆け上がっていたネリエルが、再び蹴りを仕掛ける。だが本人が言っていたとおり逃げ足が速く、素早く距離を取られてしまう。

 

「っと!開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったが、これにて幕引き!!予定通り、この通信後5分以内に“回収地点”へ向かえ!」

 

仮面の(ヴィラン)が通信機に向かってそう叫ぶ。

 

「させない…!」

「しつっけえな!」

 

喋っている隙を狙い、木を蹴って頭上の(ヴィラン)を狙うも、応戦せず逃げに徹されると流石に追いつけなかった。

 

「く…ミルコなら…っ!」

 

跳躍力や機動力でネリエルを上回る彼女であれば、確実に追いつけていた。力が足りないことに歯噛みする。

 

「ちくしょう速え!あの仮面…!」

「ネリエルちゃんでもダメなんて…!」

「諦めちゃ…ダメだ…!!っ…!追いついて…取り返さなきゃ!」

「しかしこのままでは、離される一方だぞ」

 

障子の背の上で逃げる(ヴィラン)を睨みつけている緑谷が、声を震わせる。

 

「麗日さん!!僕らを浮かして、早く!そして浮いた僕らを蛙吹さんの舌で思いっきり投げて!さらにネリエルさんに蹴り出してもらえれば、すごいスピードで飛んで行ける!!」

「っ、緑谷くん!」

 

ひどい痛みに襲われているはずだが、緑谷は言葉を止めない。

 

「障子くんは腕で軌道修正しつつ、僕らをけん引して!麗日さんは見えてる範囲でいいから、奴との距離を見はからって解除して!」

「成程、人間弾か」

「待ってよデクくん、その怪我でまだ動くの…!?」

「おまえは残ってろ、痛みでそれどころじゃあ…」

 

作戦自体は合理的だ。だが、緑谷の様子は尋常ではなかった。

 

「痛みなんか今知らない、動けるよ…早くっ!!」

 

誰の言葉も耳に入っていない。ネリエルは無言で、障子の背中から緑谷を引き剥がした。

 

「ダメ。緑谷くんは置いていくわ」

「でも___!!」

 

無理やり緑谷と視線を合わせる。

 

「障子くんの六本腕は、それだけで手数(・・)を増やせる大きな武器。それをあなたは潰している」

「……っ!!」

「アイデアはいいわ、でも足手纏いなの。お茶子ちゃん、お願いできる?」

 

静かに凪いだ視線に圧され、緑谷は言葉に詰まった。ずっと心配そうな表情をしていた麗日が、地面に下ろされた緑谷に駆け寄る。

 

「うん…!」

「緑谷、その怪我でこれ以上動くのは危険だ。爆豪は、なんとかこちらで取り返すから」

 

障子にも諭された緑谷は、麗日のシャツで腕を固定されながら項垂れた。

少し落ち着いたことで骨折の痛みを自覚したのか、立つこともできずに地面にへたり込む。

 

「……オーデルシュヴァンク、俺は…」

「分かってる。『黒影(ダークシャドウ)』がもしまた暴走しても構ってはいられないから、常闇くんは使わないように気をつけて、ここに残って」

「…ああ。すまん」

 

黒影(ダークシャドウ)』は非常に強力だが、暴走する危険性がある以上、頼るのはリスクが高い。自分でもそれを分かっている常闇は、悔しげに嘴を噛み締めながら俯いた。

 

「轟くんは右、障子くんは左に。私は後ろで、梅雨ちゃんとお茶子ちゃんとタイミングを合わせて蹴り出すわ」

「俺が二人を掴んでおく。轟はこちらのことは気にせず、仮面の(ヴィラン)に集中してくれ」

「ああ、わかった」

 

障子の腕が轟とネリエルの胴体にしっかりと巻きつく。先に障子と轟を無重力状態にした麗日が、その背後で身構えた。

 

「いいよ、つゆちゃん」

 

三人を蛙吹の舌がぐるん、とまとめて絡め取る。ネリエルは蛙吹と視線を合わせ、力を溜めるためにぐっと体を沈み込ませた。

 

「必ず爆豪ちゃんを助けてね」

 

蛙吹が舌をしならせ、麗日がネリエルに触れて無重力にする。同時にネリエルが力強く地面を蹴り出せば、ものすごい勢いで三人の体は発射された。

 

「おおおおおお!?」

「く…!」

 

瞬時に『変身』を解除すれば、空気抵抗も少なくできる。障子が翼のように広げた腕で軌道を操作しながら、ぐんぐんと仮面の(ヴィラン)へと接近する。

 

「な……っ」

「凍らせて!!」

 

仮面の(ヴィラン)が驚愕の声を漏らして振り返った瞬間、ネリエルが鋭い声を飛ばす。

風圧でもがきながらも、轟がその声に応えて膨大な冷気を(ヴィラン)に浴びせかけた。

 

「ぐぁっ!!?」

 

体の半分を凍らせられた仮面の(ヴィラン)に三人が激突した瞬間、身体に重みが戻る。

 

「ふ___っ!」

 

元より巨体の障子と、“個性”により巨大化するネリエル、二人の体重が『無重力(ゼロ・グラビティ)』から解放され、さらに轟の氷の質量によっても急激に高度が落ちていき、地面に激突した。

 

「ぐぁ…っ!!」

 

その衝撃で氷の塊は砕け散ったが、障子とネリエルの体でしっかりと仮面の(ヴィラン)は押さえつけられている。

 

落ちたのは彼が目指していたらしい地点の近くであり、仲間らしき二人の(ヴィラン)がいる。

 

「知ってるぜこのガキ共!!誰だ!?」

Mr(ミスター)、避けられるか?」

「ぅ、ぐ…っやって、やらあ!!」

 

「何を…」

 

障子とネリエルに拘束されているにも関わらず、そこから抜けられるようなことを示唆する(ヴィラン)の言動。

 

(…まさか、あの『圧縮』は自分にも適応できる!?)

 

ネリエルの思考が素早くその答えへと辿り着き、同時に明らかに“個性”の起点であった仮面の(ヴィラン)の腕を砕こうと前脚を振り上げる。

 

だがその瞬間、仮面の(ヴィラン)の体の上を掠めるように、蒼い炎が放出された。

 

「バッカ冷た!!」

「っぐ!?」

 

炎に対する根源的な恐怖は、簡単に拭い去れるものではない。障子のみでなく、炎への耐性もある程度あり氷という対抗手段を持つ轟でさえ、反射的に飛び退いてしまった。

だがそれは、普通の人間(・・・・・)であれば、の話である。

 

「っぎ、ぃっ!!?」

「は?避けてろよ」

 

仲間を助けるためだろう、出力は必要最低限に絞られ、範囲も狭い炎の攻撃。

 

この程度であれば、ネリエルの皮膚表面を多少焼こうとも致命傷には至らない。

その冷徹な、人間離れした(・・・・・・)思考によりネリエルだけはその場に留まり、炎に巻かれながらも仮面の(ヴィラン)の右腕をそのまま踏み砕いた。

 

「もう片方…!!」

 

炎の(ヴィラン)を警戒しつつも、先程の攻撃から轟同様に炎の放出には予備動作が要ると判断する。

また炎を撃たれる前に仮面の(ヴィラン)の左腕を砕こうと、再度蹄を振り下ろした。

 

だが、ゴパッという音と共に地面が抉れ、仮面の(ヴィラン)の姿が消えてしまう。

 

「っ!やっぱり、自分にも…!」

 

おそらくは、自分ごと地面を抉って圧縮することで緊急避難をした。ならばあのビー玉状のものがあるはず、と目を皿のようにしたネリエルに、再び炎が襲いかかる。

 

「っづ、ぅっ!!」

 

仲間への遠慮を捨てた大規模な熱が、ネリエルを焼く。

咄嗟に顔を腕で庇い、後ろに跳ぶ。

 

「あー、皮膚が強いタイプかよ。単純に厄介だな…もうちょいアゲりゃ焼き殺せるか?」

「死柄木の殺せリストにあった顔だしな!あのカワイイ女の子と紅白帽!なかったけどな!」

 

黒と赤のコスチュームを纏った(ヴィラン)が轟のほうに、女子高生らしい格好をした金髪の少女(ヴィラン)が障子とネリエルのほうに回り込もうと駆けてくる。

 

「チッ!!」

「熱っつ!!」

 

「あなたネリエルちゃんだよね!?そうだよね!?嬉しいー!私、トガです!恋バナしようネリエルちゃん!」

「は?」

 

黒赤の(ヴィラン)には轟が氷の攻撃で対応するのに対し、ネリエルには金髪の少女が年相応に可愛らしいことを言いながら、注射器のような武器を投げてくる。

 

「何を…!」

「好きな人がいますよね!?私、分かるの!ネリエルちゃん、恋をしてますよね!」

 

管状の針が突き刺さる前に、体を逸らして叩き落とす。攻撃は軽いが、少女から投げかけられる言葉にネリエルは困惑を隠せなかった。

その間に仮面の(ヴィラン)は“個性”を解除して姿を現している。

 

「ってぇ…!アイツ、俺の腕をやりやがって…!」

「ダッセ」

「うるせぇっ!」

 

バッキリと折れた右前腕を庇いながら、仮面の(ヴィラン)は苛立った様子を見せる。

 

「爆豪は本当にちゃんと回収したんだろうな?」

「当たり前だろ!ここに…、……!?」

 

全身に火傷のような傷を負っている(ヴィラン)に疑われ、仮面の(ヴィラン)は体をひねって無事な左手で右のポケットを探る。

 

「二人とも逃げるぞ!!」

 

障子が叫び、投げつけられたナイフを振り払いながら腕の一本を掲げた。その手にはいつの間にか、爆豪が圧縮されたビー玉が握られていた。

 

「人や物をビー玉のように圧縮する“個性”___右ポケットに入っていたこれ(・・)が爆豪だな、エンターテイナー」

 

仮面の(ヴィラン)は感心したように頷いた。

 

「さすがは六本腕!まさぐり上手だな」

「っし、でかした!!」

「待って、それは___…」

 

爆豪は(ヴィラン)連合開闢行動隊と名乗る彼らの目的であったはずだ。

それを奪われたにも関わらず余裕のある態度に、嫌な予感がしたネリエルは仮面の(ヴィラン)へと鋭い視線を向ける。

 

「オイ、何取り返されてやがる。時間切れだぞ」

 

蒼炎の(ヴィラン)が盛大に舌打ちをする。

同時に、その背後に闇色の渦が湧き出でた。

 

「っ、あれは!」

「USJの…っ」

 

(ヴィラン)連合が、雄英高校を襲撃などという大胆なことができた要である、『ワープ』の“個性”。

その“個性”が生み出す闇の奥から現れたのは、脳を晒け出した怪人___脳無だった。

 

「___っ!!」

 

ネリエルの全身に、一気に力が入る。

 

「ちょうどいい…黒霧、俺のも寄越せ(・・・・・・)!」

 

仮面の(ヴィラン)が通信機に向かってそう言うと、黒い渦の奥からさらに、二体目(・・・)の脳無がぬるりと現れた。

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