アーニャ「おはよう。きょうも いっしょ ごはん」
フェルン「おはよう、アーニャ。……シュタルク、洗濯は?」
シュタルク「おはよう! ……あ、まだ」
フェルン「昨日、必ずやるって言いましたよね」
シュタルク「分かってる! でも急ぎの用が……」
フェルン「理由より、約束です」
シュタルク「……責められてる気がする」
フェルン「事実です」
シュタルク「その言い方がきつい!」
フェルン「そうしないと、聞いてもらえないから」
シュタルク「……俺、信用されてない?」
フェルン「信用してたから、任せたんです」
アーニャ「……」
フェルン「私、何度も待ちました」
シュタルク「……分かってる」
フェルン「“分かってる”で終わるのが、つらい」
シュタルク「……失望させた?」
フェルン「……少し」
シュタルク「……」
シュタルク「でも、ほんとに忘れてたわけじゃない」
フェルン「では、何ですか」
シュタルク「言えない」
フェルン「言えない理由が、余計に怪しいです」
シュタルク「怪しくない! ただ……今言うと台無しになる」
フェルン「台無し?」
シュタルク「……」
アーニャ「ちちの こころ、ばたばた」
シュタルク「読むなー!」
フェルン「“ばたばた”?」
アーニャ「ちち、こっそり なんか してる」
シュタルク「こっそりしてない!」
フェルン「してるんですね」
シュタルク「いや、その……」
フェルン「約束を破るなら、先に言ってください」
シュタルク「言ったら……怒られるだろ」
フェルン「怒ります」
シュタルク「ほら!」
フェルン「何が“ほら”ですか」
シュタルク「……」
シュタルク「でも、フェルンのためなんだ」
フェルン「それを、今ここで言うんですか」
シュタルク「違う! その、もっと……」
フェルン「もっと?」
シュタルク「……」
アーニャ「ははの こころ、ちくって してる」
フェルン「……」
アーニャ「さびしいの まざってる」
フェルン「アーニャ、心を読まないでください」
アーニャ「でも いま たいへん」
フェルン「私は、家のことを一緒に回したいだけです」
シュタルク「分かってる」
フェルン「それで終わるのが、つらい」
シュタルク「……ごめん」
フェルン「……」
アーニャ「……ははと ちち、けんか いや」
フェルン「……アーニャの前でしたね」
シュタルク「……俺、意地になってた」
フェルン「私も……言い過ぎました」
シュタルク「いや、俺が悪い。約束したのに」
フェルン「……」
アーニャ「……なかなおり、しない?」
フェルン「……ごめんなさい」
シュタルク「……俺が悪かった」
フェルン「信じたかっただけです」
シュタルク「……そうか」
シュタルク「……じゃあ、言う」
フェルン「?」
シュタルク「数日後、フェルンの誕生日だろ」
フェルン「……覚えてたんですね」
シュタルク「当たり前だ!」
シュタルク「それで、その……洗濯の時間、全部そっちに回しちまった」
フェルン「そっち?」
シュタルク「プレゼントの準備。店回ったり、材料探したり、隠したり。洗濯は準備が終わったらやろうと思ってたけど、気がついたら眠っちゃってて……」
アーニャ「ぷれぜんと!」
シュタルク「声でかい!」
フェルン「……それで言えなかったんですか」
シュタルク「言ったらバレるだろ!」
フェルン「……」
シュタルク「笑うなよ」
フェルン「笑ってません」
アーニャ「はは、うれしい こころ」
フェルン「アーニャ……」
シュタルク「だから、洗濯は今日絶対やる。倍やる」
フェルン「倍は要りません」
シュタルク「じゃあ、ちゃんとやる」
フェルン「……私も、ごめんなさい」
シュタルク「え?」
フェルン「疑って、突き放す言い方をしました」
シュタルク「いや、俺が怪しかった」
フェルン「……でも、嬉しいです」
シュタルク「……おう」
アーニャ「ははと ちち なかなおり!」
フェルン「はい、仲直りです」
シュタルク「仲直りだ」
アーニャ「やったー」
フェルン「アーニャも、次からは心を読んで煽らないでください」
アーニャ「はい……ちょっとだけ」
シュタルク「ちょっとだけって言うな!」