ザイン「回復魔法の稽古だ。無茶はするな。俺は僧侶で医者じゃない」
アーニャ「はい!アーニャ、けが なおすの すき。えらい」
ザイン「まず魔力を落ち着かせろ。焦ると痛む」
アーニャ「うん……しずかーー」
ザイン「“静か”じゃなくて、
アーニャ「わかった。なみ ない」
ザイン「……もう無いな」
アーニャ「つぎ!」
ザイン「傷の“境目”を探せ。そこを繋ぐ」
アーニャ「ここ。へんなすきま」
ザイン「雑だが合ってる」
アーニャ「つなぐ!」
ザイン「ゆっくりーー」
アーニャ「できた」
ザイン「……おい」
アーニャ「いたくない?」
ザイン「……痛くない。綺麗すぎる」
アーニャ「えへへ。アーニャてんさい?」
ザイン「調子に乗るな」
ザイン「毒や呪いの残りを抜く。見えない“汚れ”だ」
アーニャ「にがいかんじ」
ザイン「それを薄めてーー」
アーニャ「もう ない」
ザイン「……話の途中だ」
アーニャ「もっとならう」
ザイン「順番がある」
アーニャ「でもすぐできちゃう」
ザイン「……それが問題だ」
アーニャ「ザイン、こまってる?」
ザイン「困ってる。飲み込みが早すぎる」
ザイン「最後。魔力を残さず閉じる」
アーニャ「ぴたっ」
ザイン「……はい終わり」
アーニャ「もっと!」
ザイン「……この調子だと」
ザイン「もう1年後には教える事何も無いな」
アーニャ「やった! じゃあ しつもん」
ザイン「まだ元気かよ」
アーニャ「むかしの たび」
ザイン「……何の話だ」
アーニャ「ははと ちち。たびしてたころ、どんなかんじ?」
ザイン「フェルンとシュタルクか」
アーニャ「うん! ちち、むかし もっと こども?」
ザイン「今も十分子どもだろ」
アーニャ「うける」
ザイン「旅してた頃のフェルンは、今より目が鋭かった」
アーニャ「はは、こわい?」
ザイン「怖いってより、守るために見てた。油断すると全員死ぬからな」
アーニャ「……たいへん」
ザイン「でも甘い物に弱いのは昔からだ」
アーニャ「はは、あまいの すき」
アーニャ「ちちは?」
ザイン「シュタルクは最初、もっとビビりだった」
アーニャ「いまも びびり」
ザイン「今のは慎重。昔は逃げたいが先」
アーニャ「でも まもる」
ザイン「そう。逃げたいのに前に出る。そこが強い」
アーニャ「かっこいい」
アーニャ「ははと ちち、けんか した?」
ザイン「した。しょうもないことでな」
アーニャ「しょうもないの すき」
アーニャ「で、なかなおり した?」
ザイン「した。俺が間に入った」
アーニャ「ザイン えらい」
ザイン「褒めても何も出ねぇ」
アーニャ「そのあと どうした?」
ザイン「そのあと、二人は先に寝た」
アーニャ「ねた」
ザイン「俺はフリーレンと向かい合いながら酒を飲んでた」
アーニャ「なに はなした?」
ザイン「……くだらねぇ話」
アーニャ「くだらない すき」
ザイン「フェルンは怒ってばっかだとか」
アーニャ「ははっぽい」
ザイン「シュタルクは情けないとか」
アーニャ「ちちっぽい」
アーニャ「それで?」
ザイン「酒が進んで、俺は思ったわけだ」
アーニャ「なに?」
ザイン「“あいつら、どう見ても互いが一番大事だろ”って」
アーニャ「うん」
ザイン「だからフリーレンに言った」
アーニャ「なんて?」
ザイン「『もう付き合っちゃえよ!!!』って」
アーニャ「うける!!」
ザイン「笑うな。あの時の俺は真剣だったんだ」
アーニャ「フリーレン なんて いった?」
ザイン「『よくわからないけど、ザインはとても頑張ってると思うよ』って」
アーニャ「ザイン がんばった」
ザイン「あの日のことは、今も良く覚えてるよ」
アーニャ「でも いま かぞく」
ザイン「結局そうなるんだよ。遠回りしても」
アーニャ「えへへ」
ザイン「フェルンはシュタルクの折れないとこが好きで」
ザイン「シュタルクはフェルンの手の届く優しさが好きだった」
アーニャ「ての とどく やさしさ」
ザイン「何気ない事。いただきますとか、おやすみなさいとか」
アーニャ「はは いつも やる」
ザイン「だから家族になる」
アーニャ「アーニャも そういうの できてる?」
ザイン「できてる。毎日ちゃんと大事にしてるから、今ここにいるんだ」
アーニャ「えへへ」
ザイン「……だから、無茶すんなよ」
アーニャ「しない。なおす」
ザイン「治す前に怪我するなって意味だ」
アーニャ「むずかしい」
ザイン「それを覚えるのに一年かかる」
アーニャ「じゃあ いちねん いっしょ!」
ザイン「……はぁ。俺の胃が先に治療必要だな」