追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第17話(4)悪魔-結依と江美-

「は、話します!話しますから!わ、私は普通の大学生です!ただ、この間、悪魔に殺されかけて、その時に、そこのサリーさんに憑依されて、ふたりで一緒に生き延びてる感じなんです!」

 

「じゃあどうして『星霊隊』にいるの?サリーさんも悪魔なら、悪魔軍として人間と戦うのが普通でしょう?それが『星霊隊』にいるのは、スパイだから、じゃないんですか?えぇ?」

 

 江美はそう言うと、結依の喉にさらに強く針を突きつける。このままでは自分の身も危ういと考えたサリーも、すぐに話し始めた。

 

「違うってば!結依が殺された時、私も悪魔軍の連中に殺されたの!だから2人で体を補いあってるわけ!」

 

「悪魔軍に殺された…?仲間割れってこと?」

 

「そう!なんか、私もよくわかんないんだけど、コーキと仲が良かった奴らは皆殺しだって!めちゃくちゃリンチされたんだよ!」

 

「私も見てました!すごく恐ろしい光景で…怖くて動けないところを悪魔に襲われて殺されかけたんです…!」

 

 サリーの言葉に結依は付け加える。2人の言葉を聞き、江美は脳裏で考えた。

 

(…確かに、悪魔軍が仲間割れした事例はこの目で見た…私と星海水咲を狙った悪魔、イリーノスが暴走した事例…ならば、一旦信じてみるべきか…)

 

 江美はそう結論づけると、結依に突きつけていた針の力を弱める。そうして質問を続けた。

 

「じゃあ質問なんですけど~、そもそもあなたがコーキと呼ぶ男、東雲幸紀は『星霊隊』を率いて悪魔と戦っているんですか~?まさか彼も悪魔軍と仲間割れをしたんです~?」

 

 江美が尋ねると、結依はサリーの方に目をやる。サリーはその質問に頷いた。

 

「そうっぽいけど…うーん…」

 

「何か隠そうとしてます?」

 

「じゃなくてね、私的にも意味わかんないんだよね。コーキが追放された理由」

 

「『追放』?彼が、悪魔軍から追放されたというの?」

 

「そ。だから復讐のために悪魔と戦ってるってわけ。でも悪魔軍もバカだよね。コーキってマジで最強なんだよ?悪魔軍ってこの世界を侵略する前に8個世界を征服してるんだけど、うち5個はコーキのお手柄って言っても過言じゃないんだよ?残りの3つはまだコーキ産まれてないし」

 

「そんなに強いんですか?」

 

「うん!コーキって、悪魔軍の中ではめちゃくちゃ頭がいいし、同時にめちゃくちゃ強くて、魔力も半端ないの!あとついでに、ベッドの上でも…」

 

「うわぁああ!!余計なこと思い出さないでください!私の頭の中にも映るんですから!…うわ、やば、これ…」

 

 サリーが話していると、結依はサリーの記憶に反応して目を覆う。江美はやはりそれを気にせず、質問を続けた。

 

「それでもコーキを追放したのは、他に優秀な悪魔がいたからかしら?」

 

「いないよ」

 

「?」

 

「悪魔軍って基本的に分業体制なんだよ。主に4つの種族で構成されてて、種族ごとに得意不得意が割とハッキリしてるの。例えば、よく出くわす赤くて角が生えてるやつ!あれは『鬼族(おにぞく)』って言って、バカだけど腕力はあるの。他にも、腕力はクソ雑魚だけど魔力の強い、青白い『妖族(ようぞく)』とか、緑色の『怪族(けぞく)』とか!あ、こいつらは科学とかに詳しいよ」

 

「3つしか出てないような…」

 

「あぁ、最後は『魔族(まぞく)』!青い肌の連中。こいつらは頭もまぁまぁいいし、私を見てればわかると思うけど、顔も良いよ」

 

「あなたも『魔族』なの?肌は青くないけど…?」

 

 江美はサリーの体を見て尋ねる。サリーは自分の体を見て頷いた。

 

「あぁ。えっとね、悪魔は魔力で外見を多少変えられるのよ。コーキがさぁ?抱くんだったら色白の可愛い子がいいって言うからぁ?それに合わせてあげたんだぁ。まぁ基本的に悪魔たちはそんなの気にしないからそのまんまの姿だし、『下級』悪魔たちはそんなことできるほどの魔力もないしね」

 

「『下級』悪魔…?」

 

「悪魔軍って、魔力の蓄積量で階級分けされてんの。下から『下級』『中級』『上級』『特級』ってあって、この階級が上がるほど、知能も高くなって強くなるってわけよ。で、魔力を増やすには、人間を食うのが良くて、特に『霊力』を持った連中を食うのが1番ってわけ」

 

「なるほど…結構組織化されてるんですね、悪魔軍って」

 

 結依はサリーの解説を聞き、感心したように呟く。江美も納得はしていたが、気にせずに質問を続けた。

 

「だったらなおのこと気になるわ~。コーキは何者?どうして追放されたの?そして、いつから本物の東雲幸紀と入れ替わっているの?」

 

 江美は率直に、必要なことをサリーに尋ねる。サリーが答えを悩んでいると、江美は結依に針を突きつける。サリーは慌てて答え始めた。

 

「コーキはね、『特級』の…『狂族(きょうぞく)』っていう悪魔だよ。悪魔軍のボスの、『悪魔神王』っていうのと同じ種族。だからこそ色んな悪魔の良い特徴を全部持ってるわけ」

 

「『悪魔神王』と同じ種族…じゃあ、もしかして、幸紀さん、いや、コーキさんは悪魔軍のボスと親戚とかだったりするんですか?」

 

「ごめん、そこまでは私も知らないや。追放された理由も…私だってコーキを追放するなんてバカだと思うもん」

 

「そうですか…まぁもし仮に親戚とかだったら、権力争いとかですかね?人間世界じゃよくある話ですけど…」

 

 結依の仮説を聞き流し、江美はメガネを掛け直して尋ねた。

 

「確定しない話は重要じゃないんです~。コーキはいつから潜り込んでいたんですか~?」

 

「…10年前」

 

「…なにっ?」

 

 サリーの返答に、江美の目が鋭くなる。結依も江美の表情の変化に気がつくと、江美に尋ねた。

 

「どうしたんですか、江美さん?」

 

「…記録でしか知らないけれど、その時期、悪魔軍による清峰早苗誘拐事件が起きている…」

 

「清峰早苗…『星霊隊』の総司令官の、清峰侯爵ですか?」

 

「そう…このとき、悪魔軍の先遣部隊と思わしき軍勢が攻めてきた。そして早苗の命を盾に、先代の清峰侯爵を脅迫した事件…でも、この事件はひとりの男の奮闘により、早苗は救出され、悪魔軍は壊滅した…」

 

「その男ってまさか…!」

 

「東雲幸紀…!本当の彼は、この時に殺され、コーキに憑依されてたのか…!」

 

 江美はその事実に気がつくと、思わず結依から手を離す。しかし、結依は理解しきれないような表情をしていた。

 

「あれ?でも、コーキさんが入り込んだ時期ってそんなに重要ですか?」

 

「我ら『アカツキ』国が本格的に悪魔対策を始動したのはこの時期…そして東雲幸紀は対策部のアドバイザーとしても活動していた…今回の侵攻で悪魔軍があらゆる隙を突いてきたのは彼から情報を得ていたから、だな?」

 

「そ!コーキの悪魔軍での任務はスパイ活動!人間に変装して情報を悪魔軍に流す!他の悪魔には使えない『霊力』も使えたから、並の悪魔たちじゃ潜入できない上層部に直接潜り込めて軍隊すらも操れた!だからコーキはいつも1番手柄だったわけ」

 

 江美の気付きに、サリーが言う。同時に、江美はメガネを掛け直し、ため息を吐いた。

 

「…なるほど…だったら、ここの屋敷がこんなに荒れている理由もわかる」

 

「え?どういうことですか?」

 

「…あなたたちにはもう私の正体がバレているから言う。ここは『皇牙衆』の拠点。結界も張って、悪魔軍の攻撃の際には要人も保護できるようになっているはずだった…でも、あの血は『皇牙衆』の人間の血…既にここは…!」

 

「その通りだ」

 

 突然部屋に響く男の声。

 江美と結依が身構えた次の瞬間には、2人の背後にあった暖炉から、悪魔たちが姿を現し、2人を羽交い締めにするのだった。

 

「しまった…!」

 

「うわぁああっ!!?」

 

 完全に不意を突かれ、両腕を押さえつけられた江美と結依は、そのままその場に組み伏せられる。

 直後、どんでん返しになっていた扉が開き、逆光の中から人の影が現れる。

 

「ネズミが入ってきたと思ったが、こんな大物が2匹もかかっていたとはな」

 

 結依と江美を見下ろす、紫色の肌に銀色の髪の悪魔。結依の背後に浮かび上がっていたサリーは、その悪魔を見て声を上げた。

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