追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
「『邪族(じゃぞく)』...!?リアルで見たの初めて!」
「ポラリスだ…む?貴様、悪魔か…?」
サリーに声をかけられた紫色の悪魔、ポラリスは、その時初めてサリーがいることに気がつくと、目を鋭くする。同時に、隣にいた巨漢の悪魔、フェルカドがポラリスに尋ねた。
「若、こやつは、裏切り者のサリーですぞ」
「ほぉ?日菜子はこいつのことは話していなかったが…なるほど?そっちの赤毛に憑依しているようだな」
ポラリスは冷静に状況を見て話す。一方の江美は、冷静に周囲を見回していた。
(悪魔の数はさほど多くない…結依は置いてさっさと突破しよう)
江美はそう決めると、自分を取り押さえている悪魔の一瞬の隙をつくと、悪魔の拘束から抜け出し、蹴り飛ばす。
「フェルカド!」
「承知!」
江美の行動を見て即座にポラリスは指示を出す。応えたフェルカドは、背負っていた大剣を振るい、江美の脳天に剣を振り下ろそうとする。
「遅い」
江美は短くそう言うと、フェルカドの攻撃をあっさりと避け、さらには煙幕を地面に叩きつけ、煙を発生させる。
「ぬぅっ!」
煙に包まれた部屋の中、江美は悪魔たちの間を駆け抜け、部屋の外を目指して走る。
(よし、抜けた…)
「フハハ!!」
「!」
部屋から逃げ切れたと思った江美の首を、フェルカドの太い指が掴む。直後、江美はフェルカドに引き込まれるように、部屋の中に戻され、倒された。
「っ!」
江美はすぐに逃げるために立ちあがろうとするが、その江美のボディーに、フェルカドの踏み付けが叩き込まれる。
「ぅぅっ…!!」
「殺すなよ、フェルカド。この女、この動き、おそらく先ほど殺した人間と同じ組織だ。さっきは情報を引き出せなかったが、こいつからは引き出したい」
「若、殺さなければよろしいのですな?」
「あぁ、口だけ利ければいい、好きにしろ」
「御意!」
フェルカドはそう答えると、江美の腹を踏みつける。凄まじい力に、江美が思わず血を吐いたかと思うと、すぐにフェルカドは江美に馬乗りになり、江美の首を絞め始めた。
「ほう…細い首に見えて、人間にしては鍛えているようだな…だが…!」
「うぅぅ…!!」
「ふふふ、このフェルカドの力を以ってすれば貴様の首を折るなど容易い…従順になった方が身のためだぞ…!」
フェルカドが江美に暴行している間に、ポラリスは組み伏せられている結依の姿を見下ろしていた。
「ふむ…こっちの赤毛とサキュパスは...どうでもいいか、殺そう」
ポラリスがそう言うと、結依は絶望し、サリーは大慌てで話し始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!!私だって悪魔軍だよ!?この子が死んだら私も死んじゃうから殺さないでよ!!」
「おい、誰か、刀を持って来い」
「待ってよぉおお!!!」
サリーは必死に訴えかける。そんなサリーに対し、結依は俯きながらサリーに語りかけた。
「サリーさん、あきらめましょう…私たちはもう死んでるんですから…」
結依は自分の口でそう言う。同時に、サリーにしか伝わらない心の声で訴えかけた。
(さっき幸紀さんを呼んだんですよね?時間さえ稼げば、来てくれるかも…!なんとか時間を稼げませんか…!?)
(そっか…!やってみる!)
周囲には伝わらない結依とサリーだけの会話。サリーは決意を固めると、大声で喚き始めた。
「ちょっと待ってよ、ポラリスくぅん、私じゃなきゃ知らない情報があるんだけど、欲しくなぁい?」
「…?」
「そ、コーキの、弱点、とか!ついでにぃ…あんたのその孤独な瞳…私の体で全部癒してあげる…」
「あぁ、命乞いだな、これ」
サリーの言葉を聞き流すと、ポラリスは部下が持ってきた刀を持ってにじり寄る。結依はその刃を見て首を横に振り、サリーは一周回って相手を罵り始めた。
「ふざけんじゃないよ!この紫虫(むらさきむし)!そもそも、あんたみたいな虫野郎がなんで軍の指揮権握ってんのさ!こんな連中に指揮を任せるような悪魔軍なんて終わりだね!ウチらは慈悲であんたらも生かしてやったけど、コーキはそんなことないよ!あの時の続きみたいに、お前らみんな滅ぼしてやる!!生きる価値のない虫野郎!!」
「黙れぇっ!!!」
サリーの言葉で感情的になったポラリスは、勢いそのまま結依の顔面を思い切り蹴り上げる。結依のダメージがサリーにも反映されると、ふたりはその場に倒れ込んだ。
「こいつ…殺してやる…!!」
ポラリスは感情的になりながら、結依に対して刀を振り上げようとする。
その瞬間、フェルカドが立ち上がり、ポラリスに駆け寄った。
「若!!危ない!!」
フェルカドはそう叫ぶと、ポラリスを思い切り突き飛ばす。
直後、ポラリスの立っていたあたりに、「何か」が通り過ぎたような感覚が走る。同時に、あたかもその辺りに一本の線が走ったかのように、悪魔たちが切断された。
「なんだ…?」
ポラリスが疑問を抱いたその瞬間、全員のいる部屋が、あたかも外から一直線に切られたように、ひとつの切断面で割れる。ポラリスたちがいない側の屋敷の部屋が崩れ、真っ二つに割れると、外の光が真上から降り注いだ。
「…まさか、この建物を外から一刀両断したというのか…!!」
「そのまさかだ」
突然聞こえてくる新しい男の声。まだ残っていた屋敷の残骸の陰からポラリスが外を見ると、刀を握った幸紀がひとりそこに立っていた。